たまにはアマチュア無線のことを忘れて、山登りを楽しむこともあります。しかし、ハ ンディー機を持っていくのを忘れる事は皆無です。山の上で、ハンディー機を所持してい るということで、電波で下界の人とつながっているという、安心感を得ることが出来るよ うに感じているからです。何かあった時には、ハンディー機を使って、助けを呼ぶことが 出来るという期待感からであります。実際、ハンディー機を持って登ったハイカーが、無 事に助け出されたという話は、頻繁に聞きます。 平成14年7月、奈良県吉野郡の大普賢岳(1780m)に登ってきました。NETで お友達になった一般の方々で、アマチュア無線とは無縁の、山登り好きの方4人との山行 でした。ハイキング程度の山行経験は、並の山登り愛好者以上にあるのですが、1,00 0mを越える山の経験は、それほどはありません。標高1000mを越える山と、そうで ない山では、別物だとよく聞きます。それでも、幼少の頃から低山で鍛えた経験は、山で のグループ行動には十分なものです。 この日の大普賢岳では、遭難があったようで、救助隊や警察の方が大規模な捜索をして おりました。山の中で見かけただけでも10名以上、ベースには20人ほどの方が、捜索 隊として活動されておられました。その1人に遭難についての話を聞くと、20代の経験 のある方が、日の出を眺めようと、朝2時半に麓を出発してから、2日経ったこの日もま だ下山されないということでした。 話を聞いて怖くなり、今まで提出したことのない登山届けを記入し、麓の駐車場に出し てきました。なにかの力になればと、持参した無線機で、捜索隊と役場の方からお聞きし た連絡周波数の受信を行い、遭難者がどこかに居ないか、注意しながら山に登りました。 尾根の途中、無線中継のために、待機している捜索隊の方とお話をしました。普段の山 登りでは実感がわかない、危険を教えていただきました。 吉野郡天川村、上北山村、川上村にまたがる大峰山系では、年間十数人の遭難者や、け が人がおり、救助隊や警察の、お世話になる方が居るそうです。大捜索したにもかかわら ず、手がかり一つ無く、行方不明のままという方もおられるのだそうです。 私たちアマチュア無線家は、所持する無線機で、下界と連絡が取れる安心感や、誰かが 助けてくれるという甘えがあるのが、正直なところだとおもいます。私自身、この日に捜 索隊の方から話を聞くまでは、そのような他力本願な甘い考えをしていました。しかし無 線機によって、連絡がとれたとしても、たくさんの方に甘えることになり、助けていただ かなければいけないのです。 私は、今日の日を境に、そのような甘い考えは、捨て去る決心をしました。万が一、助 けを呼ばなくてはいけないときは、切羽詰まってどうしようもなく、命の危機に直面して いるときだけに限り、アマチュア無線機を使用する。それ以前に、アマチュア無線機で助 けを呼ばなければいけないような、危険な山行をしない。 経験を過信することなく、安全第一で、無理がない移動運用をする事が、最も大切なこ とだと、学ばせていただきました。 そしてもう一つ決めたこと。相反する様に感じる方も居られるかも知れませんが、アマ チュア無線機を決して忘れず携帯して、山行を楽しもうと心に決めました。 残念ながら、この日の山行中に、遭難者が見つかることはありませんでした。 下山し終え、捜索隊ベースのある山麓に戻ると、駆けつけた遭難者の家族達が、やつれ た表情で、無線機からの受信音に耳を傾けておられました。なんとも書き表せない気持ち になってしまいました。 |