電力線搬送波通信(PLC)とラジオ受信 〜HFPLCは短波放送受信を死滅させる

電力線搬送通信設備(PLC)問題に関しては昨年来、問題提起以降、BCL関係者の間でも次第に注目されるようになった。 アマチュア無線家の間では早くから、自ら電波を出していることから関心も高く、仲間同士の意見交換も活発だ。
 搬送波通信は、現在450kHz以下の周波数帯が許可されているが。これでISDNなどが電話回線で利用できる根拠にもなっている。しかしこれでは通信速度に限界があり、より高速化を求めるには、高い周波数帯の使用が不可欠となり、短波帯の使用を認めるよう要望が出されていた。
 しかしここで大きな問題が懸念されている。地下埋設されていない日本の電灯線にこういった周波数帯を使うことは、それがそのままアンテナの役目を果たし短波放送受信に重大な障害が生じることは明らかである。今のISDN機器でさえ、これら本来問題とならないはずの不要輻射が原因で、直接波の長波放送は全く受信不可能、中波・短波放送の受信障害も起きている。それを短波帯の2〜30MHzに周波数の拡大をしようとしている。

そこで総務省は2002年4月23日、「電力線に高周波の電流を流すと、漏洩電波が放射されそれが妨害波となって短波放送等の様々な無線通信や放送の受信に影響を与える可能性があります。拡大対象としている周波数を使用している既存無線通信との共用の可能性について検討するため、電力線搬送設備に関する研究会を開催し、その下に設置されたヒアリングワーキンググループにおいて、各方面の関係者からご意見を聞くことと致しました。」と発表した。
研究会の構成員は以下の通りである。(五十音順、敬称略)

あめみや ふじお

雨宮 不二雄

NTTアドバンステクノロジ株式会社電波事業部EMCセンタ所長

あんどう  まこと

安藤 真

東京工業大学工学部電気電子工学科教授

えなみ   かずまさ

榎並 和雅

日本放送協会技術局技術主幹

こばやし  さとし

小林 哲

社団法人電波産業会常務理事

しおみ   ただし

塩見 正

独立行政法人通信総合研究所理事

すぎうら  あきら

杉浦 行

東北大学電気通信研究所教授

すずき   ひろし

鈴木 博

東京工業大学大学院理工学研究科教授

とくだ    まさみつ

徳田 正満

武蔵工業大学工学部電子通信工学科教授

とみた   せいえつ

富田 誠悦

財団法人電力中央研究所狛江研究所電気絶縁部上席研究員

そして総務省では「電力線搬送通信設備に関する研究会」を設けヒアリングと実環境実験2つのワーキングループ(以下WG)を設置して,電力線搬送通信が短波帯通信に与える影響に関する実験・研究,会合を実施してきた。2002年7月までに以下のように実施された。

4月30日 電力線搬送通信設備に関する研究会第1回(総務省801会議室)
(ヒアリングWG第1回)
5月16日 ヒアリングWG第2回(経済産業省別館1111会議室)
5月22日

実環境実験WG第1回

5月23日 ヒアリングWG第3回(総務省1101会議室)
5月27日 ヒアリングWG第4回(経済産業省別館1020会議室)
5月29日 電力線搬送通信設備に関する研究会第2回(総務省第三特別会議室) 
5月30日 ヒアリングWG第5回(経済産業省別館825会議室)
6月6日 ヒアリングWG第6回(NDXCなどBCL団体も参加)
実環境実験WG第2回(経済産業省別館1020会議室)
6月12〜19日 実環境実験WG実験(NTT-AT、武蔵野電波暗室)
6月14日 電力線搬送通信設備に関する研究会第3回(総務省801会議室)
6月17〜19日  実環境実験WG実験(茨木市、建家1)
6月20〜21日 実環境実験WG実験(NTT-AT、杉並研修センター建家2)
6月24〜27日 実環境実験WG実験(福岡市、集合住宅)
7月1〜4日 実環境実験WG実験(松山市、一戸建て住宅)
7月8〜10日 実環境実験WG実験(電力中央研究所、赤城実験センター)
7月9日 実環境実験WG第3回(経済産業省別館1111会議室)
7月16日 電力線搬送通信設備に関する研究会第4回(総務省地下会議室)
7月22〜24日 実環境実験WG実験(実規模仮設設備実験、赤城実験センター)
7月26日 実環境実験WG第4回(総務省第三特別会議室)
7月31日 電力線搬送通信設備に関する研究会第5回(総務省地下2階)

実環境実験は「一戸建て住宅」「集合住宅」「建家1」「建家2」「電波暗室」「実規模仮設設備」等について実施された模様。実験は一部、一般の住宅などを使って行われたのもあり、実験場所が非公開となったところもある。

4月30日に第1回の研究会が開催された。このときのあるマスコミの報道記事から。
電力線ブロードバンド開放の条件は? 
総務省、PLC用周波数の拡大について検討を開始
 総務省は、電力線搬送通信(Power Line Communication:PLC)で使用できる周波数の拡大について検討を開始した。4月30日、「電力線搬送通信設備に関する研究会」の第1回会合を開催した。電力線に高周波を重畳した際に漏洩する電波の測定実験を行なうとともに、電力会社やモデムメーカー、無線通信/放送従事者などへのヒアリング調査も実施。PLC用周波数拡大の可能性と漏洩電波の許容レベルについて、技術的条件を7月中にとりまとめる。 
 現在、国内でPLCに使用できる周波数として開放されているのは10kHz〜450kHz。通信速度は9.6kbps程度に止まっているが、すでに機器制御用などの用途ではモデム製品も発表されている。 
 これに対して、研究会が検討対象としているのは2MHz〜30MHzといったより高い周波数帯についてだ。ブロードバンドのアクセス回線として高速通信にも対応できるよう周波数の規制緩和を求める動きがあり、これをふまえて政府のe-Japan重点計画にも2002年度までに結論を出すことが盛り込まれている。 
 規制緩和の大きなハードルとなるのが、漏洩電波が既存の無線通信に及ぼす影響である。電話線などと異なり、電力線はもともと高速データ通信に適した構造になっていない。このため、電力線に高周波を重畳した場合、周囲に電波が漏洩してしまうことになり、同じ周波数を使っている短波放送や船舶無線、アマチュア無線など既存の無線通信への干渉が懸念されている。また、コンセントに接続した家電や医療機器などへ影響を及ぼす可能性も指摘されている。 

 PLCの高速化実現に向けて解決するべき課題が残されている中で、国内では昨年ごろから、規制緩和に先行するかたちでPLC事業に参入する動きがちらほらと見られるようになった。高周波PLCモデムを開発する海外メーカーと共同で、PLC事業の会社を設立した電力会社や電気メーカーも現われている。ブロードバンド普及の流れの中で、ADSLやFTTHと並ぶアクセス回線のいち手段としてPLCに期待が寄せられているわけだ。 
 ところが、総務省が今回やっと研究会を発足させたことからもわかるように、PLCの周波数拡大については検討が始まったばかりだ。実際のところ、既存の無線通信に対してPLCの漏洩電波がどれほど影響を及ぼすのか、データがほとんど公開されていないのが実状だ。 
 第1回会合では、電波産業会(ARIB)と日本アマチュア無線連盟(JARL)が今年1月に共同で実施した測定実験の報告書が配布され、それぞれ代表者による説明が行なわれた。データについてはJARLのウェブサイトでも公開されているが、結果をどう評価するかが難しい。漏洩電波のレベルが自然界のノイズの範囲内だったという実験項目のデータを紹介したARIBと、干渉の大きいデータから到底容認できないレベルだと強調したJARLで、立場によって評価が異なっている。 
 研究会では今後、実験方法そのものの検討も含めて取り組むことになる。総務省では、既存の無線通信とPLCの周波数が共用可能という結論が示されれば、規制緩和を審議会に答申し、電波法の改正にとりかかる予定だ。 

 欧米ではすでに数千世帯規模での試験サービスが行なわれている例もあるようだが、ケーブルの構造や敷設形式で日本とは大きな違いがある。漏洩電波がシールドされるということで、電力線の地下埋設エリアに提供を限定しようという動きもあるという。特に空中架線が大部分の日本では、ケーブルの地下埋設が比較的進んでいる欧米に比べ、漏洩電波についてより厳しい基準が求められることも予想される。研究会が示す漏洩電波の許容レベルによっては、ブロードバンド用としては「使いものにならないという結論もあり得る」(研究会の座長を務める杉浦行・東北大学電気通信研究所教授)わけだ。 
 もちろんモデムメーカーは、厳しい条件が示されたとしても、その範囲内で高速化が可能な技術の開発に取り組むことも考えられる。ただし、新技術開発のためのコストや期間を考えると、今後コスト低下が進むであろう光ファイバーにどこまで対抗できるかという疑問もある。電力線というもっとも普及率の高い既存インフラをデータ通信に活用できるというPLC最大の強みは、ことブロードバンド目的に限って見れば、どこまで通用するか微妙なところだ。

電力線搬送通信設備に関する研究会(第1回)に配布された資料によれば、ヒアリング対象者として法人、会社関係のみで、まして日本BCL連盟を始めどこもこういった団体名は無かった。
しかしこれではPLC推進派側のヒアリングで最大の短波利用者である我々BCLといわれる立場の意見聴取が無いのはおかしいという事になり、昨年来、問題提起をされている大阪大学大学院基礎工学研究科の北川先生の呼びかけ等もあり、日常組織的に活動している当会と、日本短波クラブ、日本BCL連盟、名古屋DXersサークルの4団体に対するヒアリングが実施される運びとなった。ヒアリング対象者は個人ではダメと言うことで、国内でよく知られている4団体をその対象とした。
関係者に対するヒアリングは、事前に与えられた項目に対して、説明資料を作成、これに基づき実施された。6回にわたって開かれた電力線搬送通信設備に関する研究会でヒアリング対象となった企業団体等は別掲(資料H‐1)のとおりである。ヒアリング資料の中から短波放送受信を技術的な見地で考察した北川先生の資料を別掲載する。(資料K‐1)
これまでのヒアリングで、JARL、NHK、日本短波放送、SONY、電波天文観測グループ、日本医師会などのほか、諸官庁の短波ユーザーが、HF‐PLCの問題点を指摘し、PLC送信レベルを従来の短波ユーザーや各種機器に影響しないレベルでの実施を強調している。
BCL関係者へのヒアリングは6月6日1300から経済産業省別館1020号会議室で開かれた。傍聴者は、報道陣を含め60名ほど。今回は資料作成等も含め4団体合同で参加した。一団体あたりに割り当てられた時間は約20分で、この間に資料説明(資料H‐2)と質疑応答があった。技術集団ではないため、PLC技術のデータ収集は出来ないが、一番の短波放送ユーザーの立場から、これ以上雑音は増やさないで欲しいという気持ちは十分伝えられたと思う。
毎回必ず出る質問に、「既に電灯線には家電製品などから出るノイズがたくさん乗っているがこれら影響を受けたことがあるか」というのがある。影響を受けているのは当然だが、この質問の背景には、今もここまで出ているのだから、このレベルまでは問題ないだろうという考えが見え隠れしている。
環境問題が取りざたされていながら、いわゆる識者、技術屋といわれる人たちは今以上に環境を良くしようという考えは全く無いようである。「クリーンな電波環境が、IT社会を支えます」が電波利用保護の標語でもある。今以上にノイズレベルを下げる努力をすることも電波環境を保護することに他ならない。

インターネットの高速化は、この様な危険性をはらんでいるHF-PLCに頼ることなく、他にいくらでも代替手段があり、CATV、ADSL、FTTH(光ファイバー高速通信)等の利用促進を図るべきで、ノイズ発生が予測される機器のこれ以上の使用は避けるべきである。電力線搬送通信は、これらで十分代替できると考えられるが、短波放送には有効な代替手段がないことを考慮すべきである。
e-Japan重点計画2002でも、現状既に高速インターネット加入可能が3400万世帯、超高速インターネットFTTH加入可能数は1400万世帯に上り、2005年までに1000万世帯の目標を前倒しで達成したことになっている。
関係者に対するヒアリングワーキンググループで聴取した意見等がまとめられ総務省から発表されている。(資料3‐3)
電力線搬送通信を積極的に推進している関西電力グループは、「建築とエネルギー」誌でPLCの取り組みを述べている。(PDF)
これで見る関西電力/ラインコムのPLCへの取り組みでは、ITU-Rに定める放送受信者の保護をよく理解していないようだ。特に短波リスナーから見れば、PLCに影響を与えるどころか一方的に漏洩電磁波の妨害を受ける被害者となる。当然ながらe-Japan2002でも取り上げられ、すでに内閣は重大な検討課題として当問題を明確に認識している。 
 また既存無線とPLC信号がお互いに干渉しあうと簡単に言っているが、総務省の研究会では防衛庁、国土交通省航空局、警察庁等が懸念、すなわち事実上の反対表明をしているほか、CATV事業者も上り信号に信号が混入すると憂慮している。ラインコムの考え方は、既存の放送や短波通信に干渉しないのが前提という政府の方針に真っ向から対決するものである。また欧米では電線は地中化されているところが殆どであるという事実や、人口密度や木造家屋であることなどの我が国固有の事情を全く考慮していない。
 漏洩電磁波が最大課題とすれば、それを解決してから実験を開始すべきであるのに、いきなり規制緩和というのは虫が良すぎる。電波暗室やSGの実験ならば今でも十分実験は可能であり、規制緩和の要求理由には全く不適切であると言わざるを得ない。
要するに、海外の安い技術をそのまま転用しようとしている「直線思考」ではなく、独自に技術開発に力を注いで、同一部屋内の短波受信機に全くノイズが入らず、しかも医療用測定器やCATVなどの同一電源線に接続されている機器にも影響がない、というPLCを開発するのが先ではないか。私たちリスナーは、PLCそのものに反対しているのではなく、PLCがもたらす漏洩電磁波や流合雑音などの「障害」に反対しているのである。

 「e-Japan重点計画-2002(案)」に関するパブリック・コメントの募集が実施され多くの短波リスナーたちの声も、内閣官房IT担当室へ届けられた。総数は318件、うち個人からは262件の意見が寄せられた。これら意見をまとめた資料が公開されている。

 日本アマチュア無線連盟関西地方本部では、各種催事などで配布するためのパンフレットも作成し、PLCの危険性を訴えている。(資料P‐2)

7月8日、日本天文学会は「電力線搬送通信が低周波電波天文観測にもたらす有害干渉への懸念」と題して総務省へ要望書を提出した。(資料T‐1) 

研究会では、関連する業界からのヒアリング調査や、実際にPLCモデムを使ったモデルハウス実験を実施、漏洩電磁波の影響や許容値などについて検討してきた。実環境実験ワーキンググループ第3回参照
実環境実験は測定手法の段階から模索しているのが現状で、測定値の誤差など問題も多くある。データ収集できたが、許容値などを導き出すには信頼性に欠ける面が大きく早急には結論を出せない状況である。要するに測定そのものは正しかったが、方法論が間違っていた、結論的には短波放送に対する実害を正確に反映できず、参考にはなるだろうが、決定打ではないということである。測定器のグラフを見ているだけでは実態が分からないと言う訳だ。測定現場に立ち会ったアマチュア無線家が、短波ラジオで受信したその音が一番実態を物語っている。日中強力に受信できる6055kHzが、PLCモデムをONにした途端ノイズに埋もれたその様は同席していた関係者一同唖然としていた。実験で得られた音声データ
 しかし、委員の中には、短波放送など聴いたこともない人もいるようで、こんな程度しか聞こえないのかと言うような発言も聞かれた。やはりこの世界を知らない実態を見せ付けられた場面である。
またPLCの2MHz〜30MHz帯対応についてルール化されておらず、まったく使用できない現在の状況がこのまま続けば、通信事業者がフィールド実験さえ実施できないと、7月16日の第4回研究会で杉浦座長は、いきなり商用サービス向けに開放するのではなく、暫定的な漏洩電磁波の許容値を設定し、問題が起きた場合の措置などを規定した上で、実験ベースの個別許可、大量生産対応の型式指定の対象とはしない等の試案を口頭で述べた。

この日は日本医師会からのヒアリングもあり、総務大臣宛てに要望書が出された。(資料T‐2)
ヨーロッパにおけるPLCの現状も報告された。(資料T‐3)
諸外国のPLC設備の許容値と、日本の各機器の許容値を示す(資料4‐6他)。
ドイツ電力会社RWEではPLC事業をスタートさせたが、一年間で予定した一割の2,000端末しか獲得できず、不振続く電力線通信事業の提携先を模索、またシーメンス社はこの事業から撤退した。
 
 PLC推進企業は、既に答申通り規制緩和されると見込んでいるようだ。7月18日の日経産業新聞に載った記事。
松下電工、電線使いネット制御・来春から事業化
 松下電工は来春から、家庭やビルの電力線を利用して家電製品や設備機器をネットで操作・制御するシステムを事業化する。次世代インターネット技術「IPv6」を活用し、外出先の携帯電話から家電製品を遠隔操作したり、ビルの照明・空調を制御したりする。
 関連機器の販売やサービス提供で2005年に1000億円の売り上げを目指す。家電製品などにインターネットのアドレスを付与する「IPv6」技術と、松下電工が推進するネット接続ソフト「EMIT」、関西電力などと共同で開発する電力線通信技術を組み合わせた。
 「IPv6」技術を組み込んだ通信装置を、照明器具や空調機器に搭載。家庭やビルの電力線を使った構内情報通信網(LAN)を通じて機器を制御する仕組みだ。屋外の電力線を利用したネット通信も、電波法の規制緩和による実用化の検討が進んでおり、これを利用して、屋外からの遠隔操作ができるようにする考えだ。

いつものことながら新聞記事が如何に実態とかけ離れた内容かがわかる。7月22日の日経新聞朝刊にも、あるメーカーが日本では実験が出来ないのでスペインで実験した結果、漏洩電波強度が国内で許可されている微弱電波を下回った、だから国内で許可されないのが問題であるという趣旨の記事。日本とは住環境、電気設備が全く異なることを認識してないメーカーの言い分をそのまま記事にしている。

電灯線はあくまで電気を送るもの、50または60Hzの正弦波を正しく伝えるために架空されている。今まで行われてきた実験でもモデムの信号が電灯線から漏洩している実態が明らかとなっている。PLC技術は実験に留め、環境汚染が危惧される規制緩和がされないようこれからも注目している。時の為政者たちの過ちが、如何に生活を脅かしているかを見れば安易な妥協は許されない。
7月26日に行われた実環境実験WGは、これで終了となる。しかしこの状況でPLCを商用利用するのは、まず無理と思われる。過去に例の無い電灯線への電波重畳を既存の規制値で行うこと自体不合理である。まだ実験して実証すべき課題が山積みである。

「電力線搬送通信設備に関する研究会」最終回開催された。
4月30日に開催して以降ヒアリングと実環境実験2つのワーキングループを設置して、電力線搬送通信が短波帯通信に与える影響に関する実験・研究・会合を重ねてきた総務省は、7月31日最終回の討議の中で、現状での規制緩和は無理との結論を出した。
 これまでにヒアリングWGは6回(6月6日のヒアリングにBCL団体としてNDXCも参加した)、実環境実験WGは5回開催された。この間に各地の実験設備で、WG実験が繰返され各種データ等の収集が行われた。実環境実験WGの最終研究会が7月31日に開催され、これまでの実環境実験の結果や、電力線搬送通信設備に関する研究会報告書(案)について討議された。

実験結果の概要として、

○漏洩電界強度等の数値
l 実験に使用したモデムの種類、場所等によって漏洩電界強度の数値は大きく異なるが、微弱無線局の限度値(54μV/m)を超える場合が多数あり、特に実規模仮設設備では、配電線から水平離隔距離3mの地点において、80μV/m以上の数値が測定された。
l 建屋1及び集合住宅では、コンクリート壁により隔てられた屋外においては漏洩電界と環境電界との違いが明確に現れていない。ただし測定の際にカップラを接続しており、漏洩電界強度について2〜16dBの低減があったものと考えられる。また電界強度については、MaxHoldで測定されたものである。
l 実規模仮設設備では、配電線から水平距離10mの地点における漏洩電界強度は45〜55dBμV/mに分布し、また雑音端子電圧は76〜95dBμVに分布しており、漏洩電界強度、雑音端子電圧の両方とも国際規格(CISPR22)の数値を超えている。

○漏洩電界強度の距離減衰特性
l 電波暗室では、電源線から10mまでの距離においては、距離が10倍になると、漏洩電界強度は概ね26dB減衰する特性を示した。
l 実規模仮設設備において、配電線からの距離45mと165mの地点で測定した漏洩電界強度の比較により、遠方界での漏洩電界強度は距離の1/2乗から1乗に反比例して減衰すると推察される。

○各実験箇所における電力線の特性
l 電力線のコモンモードインピーダンス特性や不平衡減衰量特性は、実験を行った場所によって大きく異なっている。

○電力線の特性と漏洩電界強度の相関等
l 漏洩電界強度は、電源線の設置状態にかかわらず、電源線に現れるコモンモード電流と相関傾向にある。
l 電源線に現れるコモンモード電流は、電源線の不平衡減衰量特性以外にモデム出力端の不平衡減衰量特性の影響を受けていると考えられる。
l 電源線の不平衡減衰量が大きいと、漏洩電界強度が小さくなる傾向がある。

○短波放送等の受信に与える影響
l 配電線から3mの距離においては、30μV/m程度の短波放送等はモデムの漏洩電界により全く受信不能となる。
l モデムからの漏洩電界は数百mの範囲にわたって受信され、実規模仮設設備では156m地点で31dBμV/mが記録された。このことは、広い範囲で放送受信及び無線通信に影響を及ぼすことを意味する。
l 漏洩電界が短波放送受信に与える影響の主観評価実験により、妨害に対する許容受信品質を得るための信号対妨害比(S/I)は、30〜35dBと、この場合の放送搬送波対妨害比(C/I)は40〜45dBと示された。

○漏洩電界強度の低減に関する対策の可能性
l 実規模仮設設備において、コモンモードフィルタを挿入して測定したところ、漏洩電界強度について、アクセス系で10dB程度、宅内系で15dB程度の低減効果が確認された。

○その他特記事項
l モデムからの漏洩電界について、遠方界に関するデータ取得は他に比べて不十分である。

研究会最終日の休憩時間後に配布された、報告書結論の素案は次の通りである。

[国際的な動向]
●欧米では、実証実験や試験サービスが実施されており、一部商用サービスを開始した国もあるが、限定された地域で実施されている状況。

●英国、ドイツ等の一部の国では独自に漏洩電界強度の基準を設けているが、実際の漏洩電界強度とは乖離したものであり、各国とも CISPR(国際無線障害特別委員会)等において国際基準を策定すべく鋭意検討を進めているところ。

●CISPR では、現在専門家によるタスクフォースを設置して、各国の電力線の状況等のデータ収集・解析等の作業を行っているところであり、国際基準が出されるまでには1乃至2年を要する見込み。

[ヒアリングの結果]
●航空管制、短波放送等の短波帯利用者は、電力線からの漏洩電波による影響につい て強い懸念を表明。短波帯利用者は保護レベルとして現状の環境雑音レベルと同等又はそれ以下の値を要望。

●モデムの製造メーカ、電力事業者等は、電力線搬送通信の早急な周波数拡大を要望。また、一部の製造メーカは、現時点での実用化が困難であっても、技術開発を継続し、国際競争力を維持するために実証実験等を継続できる環境整備を強く要望。

[実環境実験の結果]
●実験に使用したモデムの種類、場所等によって漏洩電界強度の数値は大きく異なるが、多数のケースで微弱無線局の許容値の数十倍の値を示している状況。

●電力線の特性が各実証実験の場所で大きく異なることから、現在得られているデータでは、モデムを接続した際の漏洩電界強度を予測することは困難。
電力線搬送の共用条件(モデムの許容出力等)を検討するためには統計処理が可能な程度のより詳細な電力線の特性のデータが必要。

[結論]
●現在開発されているモデム及び現在の電力線の状況では、電力線搬送通信設備が航空管制や短波放送等の無線通信に対する有害な混信源となり得ることから、使用周波数帯を拡大することは困難。しかし、今後モデムや電力線等において漏洩電界強度を大幅に低減する技術の開発が期待されることから、研究開発等を継続することが必要。

●モデムの研究開発を促進し、国際基準策定に必要なデータ取得等のため、実証実験を今後も実施する必要があり、そのための制度整備(研究開発目的の設備の許可制度)が必要。

●実証実験では、既存の短波放送等の無線通信、電波観測等に影響を与えないことが必要であり、個別許可とすべき。また、実験の実施に当たっては、付近の住民等と充分な調整を図り、既存の通信への影響がでた場合には、実証実験側で適切に対応すること等を条件とすべき。

●今後、CISPR等で行われている国際基準の検討に情報通信審議会 CISPR委員会を通じ
て積極的に貢献し、我が国の状況を反映した国際基準の策定を目指すべき。

こうして3ヶ月にわたって討議されてきたPLC問題は、現時点で2−30MHzの規制緩和は時期尚早であるとの結論が出され、商用運用は不可能となった。今回の結論は一部規制緩和の道を残したものの、概ね妥当な判断だったようだ。しかしまだまだ気は緩められない。
7月31日の結論を得て、各メディアもいっせいに時期尚早と報道した。

インプレスの記事から。
電力線インターネットの高速化へ向けた規制緩和は見送り
総務省の研究会、現在の技術では時期尚早との結論
 国内における電力線ブロードバンドの実用化は、当分先の話になりそうだ。電力線搬送通信(Power Line Communication:PLC)で使用できる周波数の拡大について検討を進めてきた総務省の「電力線搬送通信設備に関する研究会」は31日、PLC用に高周波帯(2〜30MHz帯)を開放することは困難であるとの報告書案をまとめた。 
 研究会が電力線モデムを使って実際の家屋などで行なった実験で、同じ周波数を使う航空管制や短波放送に対して有害な混信源となる漏えい電波が確認された。製品によってそのレベルにバラツキがあり、漏えい電波が少ない製品もあったが、今の技術レベルでは既存無線通信への妨害が避けられないと判断した。 
 その一方で、今回の実験により電力線モデム技術がまだ未熟であることが判明。今後の技術開発の余地を残すため、研究・開発目的に限定して、条件付きの許可制で高周波帯利用を認める制度の必要性が盛り込まれている。 
 なお、今回の規制緩和を見据えた検討はあくまでも既存の無線通信業務に影響を与えないことが前提に開始されたものだ。したがって、漏えい電波のレベルがどの程度まで抑えられれば問題ないのかということも焦点の一つだった。しかし、報告書案では、その許容値を示すまでには至らなかった。現在、CISPR(国際無線障害特別委員会)で国際的な基準の策定作業がスタートしているとしており、ここで1、2年後にも示される見込みの許容値を待つことになる。 
 漏えい電波を含め、PLCの性能は、利用する電力線自体の特性に大きく影響されるという。それに加え、電力線の特性が家屋ごとに大きく異なっている実状もあり、漏えい電波の影響などを計算で予測することはきわめて難しい。研究会は今年4月末に開催されのたのち、約3カ月にわたって実環境などにおける実験を行なってきたわけだが、それでも十分なデータは得られていないという。今後、モデムメーカーなどが実証実験を円滑に開始できる制度を整えることで、技術開発を促す一方、CISPRでの検討材料となる多くのデータの収集に結びつける狙いもある。

同じく、日経コミュニケーションズの記事
高速電力線通信の商用利用は当面困難 総務省は「実験なら個別判断」
 総務省は7月31日,今回で5回めとなる「電力線搬送通信設備に関する研究会」を開催し,高速な電力線通信(PLC)の規制緩和に関する最終報告を出した。結論は,現在のPLCモデムや電力線の状況では,数メガ・ビット/秒以上の高速なPLCの利用に必要な周波数の商用利用への開放は困難,ただし実験目的ではケースバイケースの判断になる――という内容となっている。
 総務省は,研究会の報告を高速PLCに対する事実上の結論とする姿勢をとっている。このため,政府が2001年3月に発表した「e-Japan重点計画」に端を発する高速PLCの商用利用に対する規制緩和の動きは,実験に道を開いただけで決着することになった。
 高速PLCは,宅内や架線の電力線/電灯線に周波数が1.7M〜30MHzの搬送波を流して,数メガ〜数十メガ・ビット/秒の通信速度でのインターネット接続サービスやLANを実現する技術。欧米を中心に技術開発が進み,ドイツの一部地域ではインターネット接続サービスも始まっている。住友電気工業は3月に,上り(ユーザー宅から局舎方向)18Mビット/秒,下り27Mビット/秒の高速モデムを開発するなど,日本での製品開発も活発になってきている。
 一方,1.7M〜30MHzの電波は,短波放送,アマチュア無線,航空管制業務,船舶の通信,電波天文学など各種の目的で既に利用されている。今回の規制緩和の動きに対してそれぞれの立場から,PLCモデムが出す漏えい電波による電波干渉への懸念が出されていた。今回の同研究会は,関係者の関心の高さを反映し,約80の傍聴席がほぼ埋まった。
 商用利用は困難という結論について,同研究会は,PLCモデムの漏えい電波が「航空管制や短波放送などの無線通信に対する有害な混信源となり得る」ことを挙げた。同研究会が6月〜7月に実施した実験では,「多数のケースで微弱無線局の許容値の数十倍の値」となったという。
 ただ,モデム製品によって測定値に大きなばらつきがあることや,実験の方法,精度などに不十分な点があることから,「今後の技術開発の余地が大きい」(研究会座長の杉浦 行・東北大学教授)とし,これまで電波法上出来なかったフィールド実験を,個別許可という形ながら可能にした。

共同通信、
周波数割り当ては困難 電線使うインターネット
電線をインターネット接続に使う電力線搬送通信(PLC)に、短波放送や無線と重なる周波数を割り当てられるか検討していた総務省の研究会(座長、杉浦行東北大教授)は31日、電線などから電波が漏れて混信を起こす可能性があり、割り当ては困難とする見解をまとめた。PLCは、パソコンを家庭用コンセントに接続し、電線を経て光ファイバーにつなぎ、データを伝送する技術。電力会社などは、高速通信に必要な周波数帯2メガヘルツ−30メガヘルツの割り当てを政府に要望していた。同研究会は今年4月から、帯域が重なる航空管制やアマチュア無線、天体から来る微弱な電波の観測と共存できるかどうか関係者の事情聴取や実験を実施。その結果、有害な混信源となりうるため現時点での共存は難しいと結論を出した。

朝日新聞
電力線通信「現状での実用化は困難」 総務省研究会
 ADSL(非対称デジタル加入者線)の数倍の通信速度を簡便に実現できる電力線を使った通信について、総務省の「電力線搬送通信設備に関する研究会」は31日、「現状では無線通信への有害な混信源になりうるため実用化は困難」との結論をまとめた。 
 電力会社などが研究を進めているが、この通信を実現するには、現在は認められていない周波数帯の使用が不可欠。これに対し、その帯域を使っている短波放送や各種無線の関係者から懸念の声が高まっていた。 
 同研究会は、今後、電波漏れをさらに減らす技術の研究や、実証実験を行いやすくする制度の整備も必要としている。

毎日新聞
<電力線ネット>「有害な混信源となる可能性大」 総務省研究会
 総務省の「電力線搬送通信設備に関する研究会」は31日、電力線を利用してブロードバンドデータ通信が実現できる電力線インターネットについて「現在の技術水準では航空管制や短波放送などに対する有害な混信源となる可能性が大きい」とする報告をまとめた。これを受け、総務省は周波数割り当てを当面は見送る方針。

読売新聞
電力線経由の高速インターネット、実用化先送り
 電気コンセントを通じた高速インターネット接続は、専用の通信機器から妨害電波が漏れることが分かり、総務省の研究会は31日、実用化は時期尚早との結論を出した。電力線通信は、光ファイバーや電話線を使う高速インターネットに比べ、手軽さと高機能が特長で注目されていたが、実現時期は一歩後退した。 
 電力線通信は、コンセントがそのまま家庭内コンピューター網になったり、家電製品を外出先から携帯電話で操作することも可能になる。しかし通信に使う高周波を電力線に流すことは、余計な電波を発生させる恐れがあるため、電波法で規制されている。 
 総務省は研究会を設置し、通信実験を行った。その結果、通信中の電線から3メートル以内では短波放送の音声が完全にかき消されるほどの雑音が発生。電線から数百メートル離れても入るほどだった。また航空管制無線にも影響を与えることもわかった。

日本経済新聞
電力線通信、実用化は時期尚早・総務省研究会
 家庭の電源コンセントから高速インターネットに接続できる電力線通信(PLC)の実用化を検討してきた総務省の研究会(座長・杉浦行・東北大教授)は31日、実用化は時期尚早とする報告書をまとめた。短波ラジオやアマチュア無線への電波漏えいの可能性が残るためで、新たな周波数の割り当ては認めるべきでないと結論づけた。 
 PLCは家庭への引き込み線として配電線を使うため、新たに光ファイバーなどを引き込む必要がないことからブロードバンド(高速大容量)の有力候補とみられていた。ただ、電線が発する電波で雑音が出るとしてNHKやアマチュア無線利用者が強硬に反対していた。 
 研究会が実験した結果、許容量の十倍の漏えい電波が出るケースもあり現時点での実用化は困難との結論に達した。ただ、モデムの性能向上で漏えいを防げる技術などもすでに開発されており、今後はメーカーなどが技術革新できるように国内で実証実験ができる環境を整える。

電気新聞8月1日付
短波帯、現時点での開放は困難 ― 総務省・PLC研究会
   総務省の電力線搬送(パワー・ライン・コミュニケーション=PLC)通信設備に関する研究会(座長=杉浦行・東北大教授)は三十一日の第五回会合で、毎秒十メガビット以上の高速通信を可能にするPLCの一・七―三十メガヘルツの短波周波数帯利用は困難だが、実証実験を継続するために制度整備が必要との報告をまとめた。
 また実証実験を行う際は、漏えい電波の影響が懸念される短波放送やアマチュア無線などの既存の短波利用者の受信を妨害しないよう、個別許可とするべきとした。

とりあえず米国並(注:欧米並みではない、英国の規制案はもっと厳しい)の規制緩和は避けられたが、これからは具体的な短波PLCの実験方法が焦点になろう。今回の結論は一部規制緩和の道を残したものの、概ね妥当な判断だったようだ。しかしまだまだ気は緩められない。

ZDNET JAPANより:Broadband:NEWS 2002年8月8日 02:39 PM 更新 
http://www.zdnet.co.jp/broadband/0208/08/xjrb_04.htmlの記事が大幅に訂正された。 
短時間で2回も変えられ、一番問題であった部分がすっかり削除された。更にタイトルも 
変更されて、最初の記事の3分の2程度に減っている。間違いを早速訂正する勇気はメディアにも必要である。

総務省、いわゆる「電力線モデム」について規制を緩和
総務省は7日、電力線搬送通信設備、いわゆる「電力線モデム」について規制緩和を行うことを明らかにした。型式指定を受けるための条件が「他の通信を妨害しないこと」という条件のみにあらためられる。

 総務省は7日、電力線搬送通信設備、いわゆる「電力線モデム」について規制緩和を行うことを明らかにした。これまでは、型式指定(*)を受けるための条件として、他の通信を妨害しないことと、総務省が定めた技術的な条件を満たしていることが必要だったが、今回の規制緩和により、「他の通信を妨害しないこと」という条件のみにあらためられる。 

 あわせて、型式指定を受けていない電力線搬送通信設備について、受信のみを目的とする機器であれば従来必要とされていた総務大臣の設置許可を不要とする規制緩和も行われるが、インターネットに使用する場合は発信も必要なため、こちらについては直接の恩恵はない。 

 現在、日本国内については、電力線モデムが使用可能な周波数帯は450kHz以下となっている。 

(*:電力線モデムについては、原則として設置時に総務大臣の許可を受ける必要がある。しかし、総務大臣の指定を受けた型式に属する設備であれば許可が不要となるため、商用サービスに使用する機器では現実に型式指定が必須となる)

この記事の発端は、8月7日の報道発表資料だろう。既存の450kHz以下の機器に関する緩和であるが、最初の記事では勘違いしたのかHFPLCとの区別がつかなかったみたい。
総務省5月24日発表の資料は:
無線局免許手続規則等の一部改正案に対する意見の募集
−「ワイヤレスカードシステムの利用拡大に向けて」及び「電力線搬送通信設備に関する規制緩和」等−
 総務省は、「ワイヤレスカードシステムの利用拡大」、「電力線搬送通信設備に関する規制緩和」及び「150MHz帯又は400MHz帯の簡易無線局のデータ伝送の導入」に向け必要な規定を整備するため、無線局免許手続規則の一部を改正する省令案、告示の一部を改正する及び廃止する告示案並びに電波法関係審査基準及び高周波利用設備許可関係審査基準の各一部を改正する訓令案を別添のとおり作成しました。
 つきましては、これらの改正案に対する皆様からの意見を以下の要領で募集することといたします。
1 ワイヤレスカードシステムの利用拡大に向けて
2 電力線搬送通信設備に関する規制緩和 
電力線搬送通信設備は原則としてその設置に際し総務大臣の許可が必要とされていますが、総務大臣の指定を受けた型式に属する設備を設置する場合には、許可を不要としています。
 この指定を受けるための条件としては、他の通信への妨害を排除するための条件の他に、通信方式等当該通信設備が確実に通信を行うことができるための条件を定めているところですが、前者以外の条件は削除することにより、通信方式等の多様化に対応可能とし、新たな技術等により開発される電力線搬送通信設備について、その型式が容易に総務大臣の指定を受けることができるようにするものです。併せて、受信のみを目的とする電力線搬送通信設備については設置許可を不要とするものです。
そして8月7日の報道発表となった。
 総務省は、「ワイヤレスカードシステムの利用拡大」、「電力線搬送通信設備に関する規制緩和」及び「150MHz帯又は400MHz帯の簡易無線局のデータ伝送の導入」に向け必要な規定を整備するため、無線局免許手続規則の一部を改正する省令案、告示の一部を改正する及び廃止する告示案並びに電波法関係審査基準及び高周波利用設備許可関係審査基準の各一部を改正する訓令案について、平成14年5月24日から平成14年6月17日までの間、意見の募集を行いました。この結果、「ワイヤレスカードシステムの利用拡大」及び「電力線搬送通信設備に関する規制緩和」に係る意見は提出されず、また、「150MHz帯又は400MHz帯の簡易無線局のデータ伝送の導入」については21件の意見が寄せられましたが、全て賛成意見でした。よって、関係省令等については、原案どおり改正することとします。
HF-PLCのどさくさに紛れてやられてしまった。このためにこういった機器が今後大量に使用されることになれば、今以上に環境ノイズの増加が予想される。電波時計がこの周波数帯(40,60kHz)を使っていることは良く知られている。

電力線搬送通信設備に関する研究会」報告書の公表
−現時点において電力線搬送通信設備に使用する周波数帯の拡大は困難−
報道資料

        平成14年8月9日
総務省

「電力線搬送通信設備に関する研究会」報告書の公表
−現時点において電力線搬送通信設備に使用する周波数帯の拡大は困難−

総務省では、本年4月から「電力線搬送通信設備に関する研究会」を開催し、電力線搬送通信の高度化のための使用周波数帯の拡大について、既存無線通信との共用の可能性を検討してきました。このたび、その報告書がとりまとめられ、現時点において電力線搬送通信設備に使用する周波数帯の拡大は困難であること、モデムの研究開発の促進等のために実証実験を実施できる環境整備を行うこと等が提言されました。

1.背景
電力線搬送通信は、商用電力を供給する電力線を用いてデータ通信を行うものです。 
 現行制度では、電力線搬送通信に使用できる周波数帯は、無線通信への影響を考慮して10kHz 〜450kHz と定められており、低速のデータ通信(9.6kbps 程度)に利用されていますが、近年、数10Mbps 程度の高速データ通信への利用を図るため、利用周波数帯の拡大が要望されています。 
 また、「e-Japan重点計画 -2002(平成14年6月18日IT戦略本部)」において、「電力線搬送通信設備に使用する周波数帯域の拡大(2MHz 〜30MHz を追加)について、放送その他の無線業務への影響について調査を行い、その帯域の利用の可能性について検討し、2002年度中に結論を得る」こととされています。 
 これらを踏まえ、「電力線搬送通信設備に関する研究会」(座長:杉浦 行 東北大学教授)を開催して、電力線搬送通信の高度化のための使用周波数の拡大について、既存無線通信との共用の可能性を検討してきたところですが、このたび報告書がとりまとめられました。

2.検討事項 
本研究会の主要な検討事項は次のとおり。
(1)  実環境実験等による電力線からの漏洩電波の調査
(2)  ヒアリング等による既存無線通信の運用実態等の調査
(3)  既存無線局との共用の可能性の検討

関係報道資料
 ○電力線搬送通信設備に関する研究会報告書
電力線搬送通信設備に関する研究会報告書

平成14年7月

第1章はじめに 

インターネットの利用者はここ数年急速に増加しており、これに伴って、国民から、より高速の通信方式、いわゆるブロードバンド通信が求められている。このような中、光ファイバ網やDSL等の技術が実用化され普及が進んでいるところであるが、その一方で電力線搬送通信にも注目が集まっている。 
電力線搬送通信は、商用電力を供給する屋内外の電力線を伝送路として通信を行うものであり、これまでも、家庭内用インターホンや家電機器のリモコン操作等の低速データ伝送(9.6kbps程度)に利用されてきたが、架線の敷設コストが不要であり、また、近年ではOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の実用化、誤り制御方式の高度化等の技術の進展により、数10Mbps程度の高速のデータ伝送が技術的に可能となってきていることなどから、インターネット・アクセスや家庭内LANの手段として期待が高まっている。しかし、そのような高速のデータ伝送を実現するためには、現行制度において電力線搬送通信に使用が認められている周波数帯よりも高い周波数帯を使う必要がある。このため、数10Mbps程度の伝送速度を実現するのに必要な使用周波数帯の拡大、具体的には、2MHz〜30MHzの帯域を追加することが強く要望されているところである。 
しかしながら、電力線にそのような高周波の信号を流した場合、漏えい電波が放射され、それが妨害波となって、それと同じ周波数帯を使用している既存の航空・船舶の通信や短波放送の受信等に影響を与える可能性がある。特に我が国においては、諸外国と異なり、電力線の地中化が進んでいないことなどにより、より強い電波が漏えいする可能性がある。電力線の地中化が進んでいる欧米の一部の国では、既に高速の電力線搬送通信のサービスが行われているが、これらの国と電力線の状況が異なる我が国においては、電力線搬送通信に使用する周波数帯を拡大することについて、独自の検討が必要である。 
また、「e-Japan重点計画- 2002」(平成14年6月18日IT戦略本部)においても、「電力線搬送通信設備に使用する周波数帯域の拡大(2MHz〜30MHzを追加)について、放送その他の無線業務への影響について調査を行い、その帯域の利用の可能性について検討し、2002年度中に結論を得る」こととされている。 
本研究会では、このような状況を踏まえ、各方面の関係者からのヒアリングや実環境での実験を行い、電力線搬送通信に使用する周波数帯を拡大した場合に同じ周波数帯を既存の無線通信等と共用することができるか否かについて、その可能性について検討を行った。本報告書は、その検討結果をとりまとめたものである。 

第2章我が国の現状

1 現行の制度 
電力線搬送通信設備は、高周波利用設備の一つとして電波法において規律されており、その設備が副次的に発する電波(高周波電流による放射電波)は放送や通信に影響を与えるおそれがあることから、原則として、その設備を設置しようとする者は、当該設備につき、総務大臣の許可を受けなければならないこととされている。 
電力線搬送通信設備については、その周波数及び出力が、 
・10kHzから450kHzまでの範囲内の周波数 
・送信設備の高周波出力が10W以下のもの(特殊な装置のものを除く) 
という条件に適合するものでなければならないこととされているほか、周波数の許容偏差や漏洩電界強度の許容値等の条件が定められている。 
このうち、定格電圧100V又は200V及び定格周波数50Hz又は60Hzの単相交流を通ずる電力線を使用するものであって、その型式について総務大臣の指定を受けたものについては、その設置に当たり総務大臣の許可を要しないものとされている。その型式の指定については、 
・搬送式インターホン(音声信号を送信し、及び受信するもの) 
・一般搬送式デジタル伝送装置(デジタル信号を送信し、及び受信するものであって、40dB以上の減衰量を有するブロッキングフィルタにより他の通信設備に混信を与えないような措置が講じられた電力線又は他への分岐がない電力線を使用するもの) 
・特別搬送式デジタル伝送装置(デジタル信号を送信し、及び受信するものであって、使用する電力線に制限がないもの) 
という区分ごとに行うこととされており、それぞれの区分について、漏洩電界強度の許容値等の条件が定められている。 

2 使用周波数の拡大に関する検討状況
(1) 開発動向 
電力線搬送通信は、電気事業では古くから電力の安定供給を目的とし、送電線や高圧配電線で利用されてきた。送電線では、給電指令用・保線用の搬送電話装置、遠方監視制御信号伝送用の搬送端局装置及び保護継電装置に用いられる搬送端局装置に利用されており、高圧配電線では、開閉器等を遠方より監視制御して系統運用の効率化や信頼度の向上等を図る配電自動化システムの中で、一つの通信方式として採用されている。 
従来の電力線搬送通信設備は、振幅変調方式(ASK:Amplitude Shift Keying)、周波数変調方式(FSK:Frequency Shift Keying)及び位相変調方式(PSK:Phase Shift Keying)の技術を利用し、伝送速度は100bps前後と低速であった。しかし、上記の技術を複合させた技術革新、例えば振幅変調と位相変調を合わせた振幅位相変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)技術や、直交する搬送波を使用することで、各被変調波の重なりを許し、周波数利用効率を最大にする直交周波数分割多重(OFDM)等、限られた周波数帯域を有効利用するための多重化変調技術、各種変調技術を応用することで、劣悪な環境下でも多くの情報を高速で伝送することができるようになり、さらに使用周波数の拡大(2MHz〜30MHz)によって数十Mbpsの高速通信まで可能となってきた。 
このため、米国、イスラエルをはじめとする諸外国においては、2MHz〜30MHzの周波数帯を使用する電力線搬送通信用のモデム(以下単に「モデム」という。)やチップの開発が進み、伝送速度が最大45Mbpsのものも現れている。我が国においては、それら諸外国のメーカが開発した技術を用いるなどして、製品化等が行われている。 
(2) 利用形態 
電力線は、電力を供給する手段としてすべての家庭に構築済みのインフラであり、インターネット等へのアクセス網(アクセス系)として、また宅内ではLAN(宅内系)として使用する場合、新たな通信インフラを整備する必要がないため、施設設置コスト面でメリットがある。さらに、その場合、家庭内のすべての電気コンセントがそのまま情報コンセントとして活用できるため、家電製品を結ぶホームネットワーク等、家庭内の情報化が容易に実現できる。図2.1及び図2.2にアクセス系及び宅内系の例を示す。

図2.1 アクセス系の例
図2.2 宅内系の例

第3章国際的な動向

1 諸外国におけるサービスの状況
欧米(英国、フランス、スイス、スウェーデン、ノルウェー、オーストリア、米国、カナダ等)やアジア(韓国、シンガポール等)の諸外国においては、各国政府の特別の許可等により、実証実験や試験サービスが実施されている。ドイツ、イタリア及びスペインにおいては、商用サービスが開始されているが、限定された地域で実施され、ユーザは数千程度にとどまっている状況である。 
なお、フィンランドにおいては、技術的問題のため、短波帯を使用した電力線搬送通信を導入しないことが決定されている。 

2 諸外国における規制の状況 
欧米の一部の国においては、独自に漏洩電界強度の基準を設け規制を行っている。ドイツ、英国及び米国の規制の状況について、以下に示す。 

(1) ドイツ(NB30) 
ドイツにおいては、周波数領域割当計画政令付表の脚注として各周波数帯における「利用規則(略称NB)」が定められており、その30番目の脚注として「NB30」が規定されている。ただし、NB30についてはその規定の中で、30MHz以下の周波数帯における許容値については2001年7月1日より有効としているものの、30MHz以上については同じ周波数帯の既存の利用者を考慮し、2003年7月1日以降に有効となるものとしている。 
NB30の技術的条件については、概して言えば、米国FCCの基準よりは厳しいが、英国の基準よりは緩やかである。

(2) 英国(MPT1570) 
英国においては、9kHzから300MHzまでの周波数帯を使用する通信システムからの電磁波の放射について、放射レベルの許容値と測定法(MPT1570)を検討中である。現在検討されている案では、NB30及びFCC Part15と比較すると、最も厳しい基準となっている。 

(3) 米国(FCC Part15) 
米国においては、電力線搬送通信について、連邦通信委員会(FCC)が定める規則の第15章無線周波機器で規定している。これは、個々の免許を取得せずに運用することのできる意図、非意図または不要放射機器を運用する規則について規定したものである。電力線搬送通信設備は非意図放射機器に該当し、放射妨害許容値等が規定されているが、NB30及びMPT1570と比較すると最も緩やかな基準となっている。 

図3.1 漏洩電界の限度値比較
[FCC Part15の1〜30MHzの値は、電界強度が距離の2乗に反比例すると仮定して、
測定距離3mに換算したものである]

3 国際規格の動向

(1) CISPR 
CISPR(国際無線障害特別委員会)は、無線障害の原因となる各種機器からの不要電波(妨害波)に関し、その許容値と測定法を国際的に合意することによって国際貿易を促進することを目的として1934年に設立されたIEC(国際電気標準会議)の特別委員会である。 
CISPRにおいては、電力線通信の妨害波許容値と測定法について、1999年6月に米国サンディエゴで開催されたCISPR/G/WG1会議に、欧州電気標準会議(CENELEC)のメンバが提案したWG文書がトリガとなり、CISPR/Gで検討が開始された。その後、2000年6月のCISPR/Gサンクトペテルブルク会議においてドイツメンバ(RegTP)が、CISPR第3版の通信ポート許容値に等しい妨害波電流をRegTPオフィス内の通信ケーブルに注入したときに、通信ケーブルから3mの距離の電界強度を観測した例を報告し、広帯域信号を用いる通信システム(PLT、xDSL等)から放射される妨害波(希望信号がシステムの平衡度に依存して変換される妨害波)は、中波放送や短波放送の周波数範囲をほぼマスクすることを指摘し、これはこれまで許容値と測定法を規定してきた、スイッチングレギュレータやディジタル回路等装置内部で生成される妨害波とは性質が異なるため、新たな許容値と測定法の検討が必要であることを提案した。 
本問題の重要性と緊急性が認識され、急遽、各国の専門家によるタスクフォース(広帯域TF)が結成されて、妨害波発生のメカニズム、妨害波許容値案とその根拠、妨害波の測定法等の検討が開始された。これと並行して、通信線路の伝導妨害波を測定するプローブを検討している別のタスクフォースが、PLTの妨害波測定法を委員会草案として取りまとめ、各国国内委員会に投票にかけられたが、不合理な部分が判明し投票はキャンセルされた。 

その後、広帯域TFのリーダが、英国(MPT1570)、ドイツ(NB30)の規格をベースに、CISPR22第3版の通信ポート許容値(クラスB)より10〜20dB厳しい伝導妨害波許容値を提案したが、否決され委員会草案となるには至っていない。一方、その後の広帯域TFでの検討結果をベースに、投票がキャンセルされた委員会草案に代わる文書(CISPR/I/26/DC)が作成された。この文書について本年6月のCISPR/I/WG3会議(レッドバンク)で審議され、委員会草案(CISPR/I/44/CD)が作成されて、現在、各国国内委員会の意見照会(締切:10月18日)にかけられている。 
本文書では、電源線の平衡度(LCL)とコモンモードインピーダンスは暫定案であり、これを決めるためには配線方式が異なる電源線の特性を含め、各国からの多くのデータを持ち寄って検討する必要があることが認識されている。本年6月のI/WG3会議では、電源線の平衡度(LCL)とコモンモードインピーダンスを議論し、本文書を改版するためには、タスクフォースを結成して集中的に議論する必要があることが合意された。そして、このタスクフォースでは、 
○ 電源線のLCLとコモンモードインピーダンスを決定するため、各国メンバはデータを持ち寄る 
○ 電源線のLCLとコモンモードインピーダンスを決定し、多目的ポート用擬似通信回路網(ISN)に要求される特性を決定する 
○ 決定した電源線の特性に基づき、多目的ポートの妨害波許容値の設定を行う 
こととなった。 
なお、LCLとコモンモードインピーダンスのデータについてはデータベース化し、技術資料として残すことが合意されている。 

(2) ITU 

ITU(国際電気通信連合)は、電気通信分野における国際連合の専門機関で、無線通信部門(ITU-R: ITU Radiocommunication Sector)、電気通信標準化部門(ITU-T: ITU Telecommunication Standardization Sector)、電気通信開発部門(ITU-D: ITU Development Sector)等から成っており、有限な資源である電波の混信の防止、多国間の円滑な通信を行うため、世界各国が独自の通信方式を採用することによる弊害の除去や、電気通信の整備が不十分な国に対する技術援助等を目的としている。ITU-R及びITU-Tにおいて、電力線搬送通信設備に関する事項について審議されている。 

ア ITU-Rにおける動向 
ITU-Rにおいては、無線通信に関する国際的規則である無線通信規則(RR:Radio Ragulations)の改正、無線通信の技術・運用等の問題の研究、勧告の作成及び周波数の割当て・登録等を行っている。 
その中で、電力線及び電話線を用いた高速通信設備からの放射に関する研究課題(Question ITU-R 218/1及び221/1)が2つ設定されている。また、放送に関して、電力線や電話線を用いた新しい有線通信設備、ISM機器等からの不要放射から放送の受信を保護するための条件を検討する新しい研究課題の案が作成されたところである。 

イ ITU-Tにおける動向 
ITU-Tにおいては、電気通信に関する技術、運用及び料金について研究を行い、電気通信を世界規模で標準化するとの見地から、技術標準等を定める勧告の作成などを行っている。 
ITU-T/SG5では2001年〜2004年の会期において、今後、広帯域アクセスシステムに予測されるEMC問題に対し、EMC勧告を作成する方向で検討が進んでいる。これまで、実際のADSLシステムからのエミッション測定結果や、広帯域アクセスシステム(VDSL)からのエミッションの実レベル情報等が提供され、勧告に向けた議論が行なわれている。これらの会合ではVDSLが動作することに起因するエミッションは確認できるが、かなり低レベルであることが確認されたことや、エミッションの検出方法(検波方式)の違いによりエミッション評価結果が異なること等が情報提供されている。 

第4章ヒアリング 

平成14年4月から7月まで、短波帯の利用者、電力事業者、モデムの製造業者等、延べ57の関係者(このうち11団体は辞退)から、電力線搬送通信設備に使用する周波数帯を拡大することなどに関するヒアリングを行った。このヒアリングにおいて聴取した要望事項のうち、主要なものは次のとおりである。 

1 既存の無線通信等の保護に関する要望 

(1) 短波帯の利用者から、既存の無線通信等が妨害を受け、業務に支障を来すなどのおそれがあることから、次のような要望があった。 
ア 漏洩電界強度の許容値について、電力線からの離隔距離3mにおいてITU-R勧告に規定された静穏な田園地帯の人工雑音電界強度以下とすること 
イ 場所について、電力線がすべて地中化された地域においてのみ使用可能とすること 
ウ 設置の許可について、個別に行い、既存の無線通信等に影響がないことを担保すること 
エ 設置者や連絡先について、混信があった場合に速やかに解決するため、設備ごとに公開すること 
オ 混信が発生した場合には、運用停止とすること、など 
(2) 特に、航空交通の安全に係る無線通信や捜索救助通信等に影響を与えた場合には、事故や人命にかかわる事態の発生のおそれがあることから、それらの保護について強い要望があった。 
(3) また、配電設備は、本来の目的である電力供給を優先すべきで、その支障となるおそれがあるため、次のような要望があった。 
ア 電力供給設備の保安確保が図られること 
イ アクセス系については電力会社の管理のもとに実施すること 
ウ 電力会社以外の事業者がサービスを提供する場合等において、電力線設備の利用、故障・障害発生時の対応等をルール化すること、など 
(4) これらのほか、次のような要望があった。 
ア 電力線に信号を重畳させることにより、医用機器等の各種電気設備へ悪影響を及ぼさないこと 
イ 低電力で通信可能な方式や、電力線からの漏洩電界強度を低減させるための技術を開発すること、など 

2 電力線搬送通信設備に使用する周波数の拡大に関する要望 

モデムの製造業者や電力事業者から、高速のインターネットサービスや宅内ネットワーク等の様々な分野に電力線搬送通信設備を活用するため、次のような要望があった。 
ア 早急に2MHz〜30MHzの周波数帯を電力線搬送通信設備に使用することができるよう措置すること 
イ その際の許容値については、外部雑音の実態、室内の環境雑音上昇、建物の遮断効果等を実測し、一般的に取り得る最小離隔距離において実用上影響を与えない値とすべきであること 
ウ 使用場所を限定しない場合の許容値だけでなく、使用場所を限定した場合の許容値についても検討すること 
エ 現時点での実用化が困難であっても、技術開発を継続し、国際競争力を維持するために実証実験等を継続できるような環境整備を実現すること、など 

第5章実環境実験 

1 目的 
モデム、配電線/配線等の実物を使用して、電力線搬送通信設備による高速通信が行われている環境を構築し、その状態における漏洩電界強度等を測定することにより、既存無線通信等との周波数共用の可能性の検討に資するデータを取得すること。 

2 実験対象 
電力線搬送通信設備の適用形態を考慮し、様々な種類の実験を実施した。また、比較対照して検討を行うことができるよう、電波暗室及び実規模仮設設備において、模擬環境実験を実施した。 
・電波暗室:宅内系システム 
・建屋1:宅内系(建屋内)システム 
・建屋2:宅内系(建屋内)システム 
・集合住宅:アクセス系システム 
・一戸建住宅:アクセス系システム 
・実規模仮設設備:アクセス系システム・宅内系システム 

3 測定項目等 
伝送路特性、モデムの電源端子電圧・電流(ディファレンシャルモード及びコモンモード)及び漏洩電界強度・環境電界強度については、各実験場所において測定した。電波暗室においては、漏洩電界強度の分布特性、漏洩電界受信レベルの検波方式の違い及び測定帯域幅に対する依存性を測定した。集合住宅、一戸建住宅及び実規模仮設設備においては、短波放送等受信信号のS/N及び受信状況について測定した。実規模仮設設備においては、漏洩電界強度の距離減衰特性及びVHF/UHF帯におけるスプリアスを測定した。このほか、放送サンプルと放送劣化サンプルにより聴感試験を実施した。 

4 実験結果の概要 

(1) 漏洩電界強度等の数値 
○ 実験に使用したモデムの種類、場所等によって漏洩電界強度の数値は大きく異なるが、微弱無線局の限度値(54dBμV/m)を超える場合が多数あり、特に実規模仮設設備の実験では、配電線から水平離隔距離3mの地点において、80dBμV/m(ピーク検波)以上の数値が測定された場合があった。 
○ 建屋1及び集合住宅の実験では、コンクリート壁により隔てられた屋外においては漏洩電界と環境電界との違いが明確に現れていない。ただし、電界強度測定の際に電圧等測定用の高絶縁耐圧高周波カップラを接続しており、漏洩電界強度について2〜16dBの低減があったものと考えられる。また、電界強度については、測定器のMaxHold表示モード(Hold時間:1分間)で測定されたものである。 
○ 実規模仮設設備の実験では、配電線から水平離隔距離10mの地点における漏洩電界強度は概ね45〜55dBμV/m(QP検波)に分布し、また、雑音端子電圧(コモンモード)は概ね76〜95dBμVに分布しており、漏洩電界強度、雑音端子電圧の両方とも国際規格(CISPR22)を超える数値を示していた。一方、実験によっては、電力線から水平離隔距離3mの地点において、測定された最も大きな数値が約37 dBμV/m(QP検波)であった場合もあった。 

(2) 漏洩電界強度の距離減衰特性 
○ 電波暗室の実験では、電源線から10mまでの距離においては、距離が10倍になると、漏洩電界強度は概ね26dB減衰する特性を示した。 
○ 実規模仮設設備において、配電線からの距離45mと165mの地点で測定した漏洩電界強度の比較により、遠方界での漏洩電界強度は距離の1/2乗から1乗に反比例して減衰すると推察される。 

(3) 各実験箇所における電力線の特性 
○ 電力線のコモンモードインピーダンス特性や不平衡減衰量特性は、実験を行った場所によって大きく異なっている。 

(4) 電力線の特性と漏洩電界強度の相関等 
○ 漏洩電界強度は、電源線の接地状態にかかわらず、電源線に現れるコモンモード電流と相関傾向にある。 
○ 電源線に現れるコモンモード電流は、電源線の不平衡減衰量特性以外にモデム出力端の不平衡減衰量特性の影響を受けていると考えられる。 
○ 電源線の不平衡減衰量が大きいと、漏洩電界強度が小さくなる傾向がある。

(5) 短波放送等の受信に与える影響 
○ 配電線から3mの距離においては、30dBμV/m程度の短波放送等は漏洩電界により全く受信不能となった。 
○ 一戸建住宅及び実規模仮設設備の実験では、漏洩電界は数百mの範囲にわたって受信され、実規模仮設設備では156m地点で31dBμV/m(平均値)が記録された。このことは、広い範囲で放送受信及び無線通信に影響を及ぼすことを意味する。 
○ 漏洩電界が短波放送受信に与える影響の主観評価実験により、妨害に対する許容受信品質を得るための信号対妨害比(S/I)は30〜35dBと、この場合の放送搬送波対妨害比(C/I)は40〜45dBと示された。 

(6) 漏洩電界強度の低減に関する対策の可能性 
○ 実規模仮設設備において、コモンモードフィルタを挿入して測定したところ、漏洩電界強度について、アクセス系で 1 0dB程度、宅内系で15dB程度の低減効果が確認された。 

(7) その他特記事項 
○ モデムからの漏洩電界について、遠方界に関するデータ取得は他に比べて不十分である。 

第6章既存無線局との周波数共用の可能性と今後の取組み 

本研究会においては、平成14年4月から7月までに合計5回の会合開催し、また、この間にヒアリングワーキンググループを6回開催し、実環境実験ワーキンググループを4回開催するとともに、6箇所において実環境実験を実施するなどして検討を行ってきた。 
電力線搬送通信設備については、国際的には、欧米等において、実証実験や試験サービスが実施されており、一部商用サービスを開始した国もあるが、限定された地域で実施されている状況である。また、基準については、ドイツ、英国等の一部の国では独自に漏洩電界強度の基準を設けているが、実際の漏洩電界強度とは乖離したものであり、各国ともCISPR(国際無線障害特別委員会)等において国際基準を策定すべく鋭意検討を進めているところである。CISPRでは、現在専門家によるタスクフォースを設置して、各国の電力線の状況等のデータ収集・解析等の作業を行っているところであり、国際基準が出されるまでには1乃至2年を要する見込みである。 
本研究会において行ったヒアリングにおいては、航空管制、短波放送等の短波帯利用者から、電力線からの漏洩電波による影響について強い懸念が表明されるとともに、保護レベルとして現状の環境雑音レベルと同等又はそれ以下の値を要望された。一方、モデムの製造メーカ、電力事業者等から、電力線搬送通信の早急な周波数拡大が要望され、また、一部の製造メーカから、現時点での実用化が困難であっても、技術開発を継続し、国際競争力を維持するために実証実験等を継続できる環境を整備することが強く要望された。 
また、実環境実験では、実験に使用したモデムの種類、場所等によって漏洩電界強度の数値は大きく異なるが、多数のケースで微弱無線局の許容値の数十倍の値を示す結果が得られた。また、電力線の特性が各実証実験の場所で大きく異なることから、現在得られているデータでは、モデムを接続した際の漏洩電界強度を予測することは困難であり、電力線搬送通信の周波数共用条件(モデムの許容出力等)を検討するためには統計処理が可能な程度のより詳細な電力線の特性のデータが必要であることが明らかになった。 

本研究会は、このような状況を鑑み、以下のとおり提言する。

○ 現在開発されているモデム及び現在の電力線の状況では、電力線搬送通信設備が航空管制や短波放送等の無線通信に対する有害な混信源となり得ることから、使用周波数帯を拡大することは困難である。しかし、今後モデムや電力線等において漏洩電界強度を大幅に低減する技術の開発が期待されることから、研究開発等を継続することが必要である。 

○ モデムの研究開発の促進、国際基準策定に必要なデータ取得等のため、実証実験を今後も実施する必要があり、そのための制度整備(研究開発目的の設備の許可制度)が必要である。 

○ 実証実験では、既存の短波放送等の無線通信、電波観測等に影響を与えないことが必要であり、個別許可とすべきである。また、実験の実施に当たっては、付近の住民等と十分な調整を図り、既存の通信への影響がでた場合には、実証実験側で適切に対応すること等を条件とすべきである。 

○ 今後、CISPR等で行われている国際基準の検討に情報通信審議会情報通信技術分科会CISPR委員会等を通じて積極的に貢献し、我が国の状況を反映した国際基準の策定を目指すべきである。

約一年半前からPLC問題を取り上げてきたNDXC、従来の受身だけの活動から、ダメなものはダメとはっきりとものを言う行動が出来たことは大きな成果だと思う。パブリックコメントに象徴されるように、誰もが意見の言える時代を尊重したい。ただし○○リスト一覧表には掲載されるが。
多くの方の危惧する意見が取り入れられ、ひとまず規制緩和は見送られた。しかしまだ実験を目的とした法改正の道は残されており、気を緩めることは出来ない。ここにいたっても、まだ日本の電灯線を搬送波通信にも利用しようと電力会社は考えるのだろうか。もっと本業に徹し、クリーンな電力供給に専念してほしい。そして処理できない放射性廃棄物を出し続ける原子力発電をまだまだ推し進める電力会社であり続ける事だろう。ウソで塗り固められた原発のどこが魅力なのだろうか。東京電力の愚態を見るにつけ、改めて高い電気代が腹立たしくなる。
 規制緩和は時期尚早の結論を経て、各種専門誌などもその結果に注目した。その中から日経エレクトロニクスの記事を紹介する。(次頁)
海外からの情報では、オランダの230VラインにおけるPLC想定の実験結果が公開され現在のCISPR22Bの規定を満たすだけでは短波通信(受信)の保護は全く成立しないと明確に示されている。詳しくはここを。
 http://www.darc.de/referate/ausland/plc/VERON_PLC_Report.pdf 
ワシントンポスト紙は8月25日付け7面で、Phonex Broadband社のHome Plug1.0準拠PLCモデムNever Wire 14 QX-201の運用結果を掲載、コンセントの接続は簡単でもソフトウェアの設定が難しいこと、無線LAN同様セキュリティ確保には暗号化が必要なことを指摘し、通信速度では無線LANにまさるものの、ほとんどのユーザーは無線LANを使い続けると述べている。 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A56014-2002Aug24.html 

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