宇宙空間に人工衛星を持って行く為には、衛星をなるべく軽くしなければなりません、
また、電気伝導性の無い物質では、打ち上げ時に静電気が発生し、スパーク=>燃料への引火=>爆発の可能性があります。
他、宇宙空間では、外装部分は高温から超低温までの環境に耐えなければなりません。
このような問題から、人工衛星の躯体などはアルミニウムが多用されています。
一般に用いられているアルミ合金では、構造体に用いるためには厚い材料を用いなければならず、質量的に他の金属に対する優位性が薄れてしまいます。
A7075、A2219など、鉄に匹敵するような強度を持った合金が採用される事となるのですが、これらの材質には、腐食しやすく、腐食が材料の割れを引き起こすと言う欠点があることが知られています。
したがって、防食処理が必要不可欠となります。
アルミニウムの防食処理として一般に用いられている方法として、
1.アルマイト+塗装
2.アルマイト
3.化成皮膜+塗装
4.化成皮膜
5.塗装
などがありますが、宇宙空間での使用に付いては、真空中で皮膜中の成分が放出されてしまったり、剥がれて遊離したりしては困りますので、塗装に付いては極力使わない方向にあります。
宇宙空間の環境の特筆すべき点は、超低温の真空中で強い太陽光、放射線を受けることとなりますので(人工衛星に関しては、アンテナ、太陽発電パネル、高額観測系などを除き、衛星本体は特殊なフィルムで覆われているため、宇宙空間に露出する部分以外は、太陽光や放射線などの影響に付いては除外出来る)、これらの環境に耐える表面処理を選択する必要があります。
また、打ち上げ時に相当な荷重が掛かるため、構造体部分では、応力割れの発生を考慮する必要があります。
前置きが長くなりましたが、アルミニウムの表面処理について、宇宙空間でどのような種類が用いられているのか紹介します。
なお、宇宙部品には、通常、米軍規格が適用されていますので、処理規格は米軍規格で表示します。
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クロム酸法陽極酸化皮膜(MIL-A-8625 Type-I )
アルミ材料の疲労強度を低下させないアルマイトとして宇宙航空の構造材料に広く採用されています。
超低温やヒートショックに強い皮膜としても知られています。
難点としては、対磨耗性や高度が比較的低い、製造上、環境問題があると言う問題があります。
硫酸法陽極酸化皮膜(MIL-A-8625 Type-U )
いわゆる一般的なアルマイトです。
特徴はクロム酸法の逆。 構造材料としての使用には問題があるが、赤や青に着色する部品にはこれが用いられる。
また、衛星内部の搭載機器には広く用いられる。
アルミ材料の疲労強度を低下させると言う事と、高温に比較的弱い事が欠点です。
硬質陽極酸化皮膜(MIL-A-8625 Type-V )
対磨耗性が高く、厚い皮膜。
摺動部に用いられる。
宇宙空間では、湿式潤滑が行えないので、二硫化モリブデンなどの固体潤滑材のコーティングが採用されるが、この下地処理としても使用される。 かじり防止対策として有効である。
また、硫酸法に比べて高温に強く、ヒートショックによる剥離が生じにくい。
欠点は、耐えられる限度以上の曲げ荷重が掛かった場合に折損(破断)が発生する、鋭角部に皮膜の脱落が発生しやすい、などがあります。
以上の陽極酸化皮膜には、電導性がありません。 グランドを取りたい場合には、マスキングや処理後の切削により電気接点を確保する必要があります。 この部分には、後述の化成皮膜を施す場合がほとんどです。
化成皮膜処理(MIL-C-5541 C1A 又は C3 )
化成皮膜処理には、アロジンを代表としたクローメート法のほか、燐酸亜鉛処理、ベーマイト処理などがありますが、通常はクロメート法が用いられます。
クロメート法には有色(黄色)と無色があり、耐食性を優先する場合は有色、電気伝導性を重視する場合には無色が採用されます。
アルミ材の疲労強度に全く影響を与えないが、軟らかく、非常に薄い皮膜であるため、皮膜が損傷しやすいと言う問題があります。
但し、はけ塗りによる補修が出来るので、組み立て中に傷をつけてしまったり、取り扱いで皮膜を剥がしてしまった場合にも、容易に修復が可能です。
なお、空気中で60℃以上に加熱した場合には耐食性が劣化しますので、高温となる部分には使用できません。