返して

 反省する素振りも見せない殺人者に判決が下った。死刑だ。
「返して! 娘の命を返して!!」
法廷の柵の向こうから、泣きながら被害者の遺族が訴えた。
声に反応して、殺人者が振り返った。
殺人者はポケットに手を突っ込み、何かをつかみ、泣き叫ぶ遺族に向かって投げた。

 フワフワとした綿毛のかたまりのようなモノだ。薄く光っている。
遺族は反射的に手を差し出し、受け取った。

 綿毛のようなモノは、遺族の手の上でどんどん四散していく。
10秒ほどの後、それは消滅した。

 殺人者が遺族に言った。
「おいおい。命は大切にしろよ。」

 手に残る感覚、遺族は理解した。
これは、娘の命だ。

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