1. 目的
融液内部に対流が生じると,それにともなって圧力差が発生し,融液表面が歪められる.このような表面形状変化を測定してマランゴニ対流の様子を調べようというのがこの章の目的.ここでは光干渉法を使って測定します。光を使うことによって、融液に触れず測定することが本研究の狙いです.

2.光干渉法の基礎
光は波です.波であれば,干渉という現象が現れます.2つの波が図1のように同じ位相である場合,つまり波の山と山、谷と谷が一致している場合は波は強調されます.一方図2のように位相が逆である場合,つまり山と波が重なっている場合は2つの波が打ち消されます.このように2つの波の位相差を変えてやると波が強調されたり減衰されたりするのです.これを波の干渉といいます.

図1 波が強調される場合 図2 波が消滅する場合


光干渉法はその原理を用いています.ここではマイケルソン干渉法というのを使います.その原理は図3のように光を2つに分岐させ,片方を測定したい物体に,もう片方を参照面といって普通は平らな鏡に当て反射光を干渉させます.光を分岐した点から測定面と参照面までの距離の差の2倍の値を光路差といいます。2倍にしたのは行きと帰りがあるからです.光路差が例えば光の波長の整数倍のとき,2つの波は同位相になるので光は増幅されます.一方光路差が波長の整数倍+半波長となっている場合2つの波は逆位相になるので両者は打ち消し合います.これを観察すると波が増幅されるところは明るくなり,打ち消し合うところは暗くなります.


図3 マイケルソン干渉系


3. シリコン融液表面振動
このマイケルソン干渉系を使ってシリコン融液表面を観察した写真が図4です.この写真のように光が強いところと弱いところがあり,そのため白黒の縞ができます。これを干渉縞と呼びます.この干渉縞をさらに高分解能で表すために画像解析を行い,図5のように変換します.この画像は0から255までの数字で表されているデータを図示化したものです.白から黒に急激に変化しているところは位相接続という処理を行うと各点での表面形状が得られます.ここでは液柱の微小領域の観察なので液柱振動の全体像は読み取れませんが,局所的な振動の様子が観察できます.

図4 融液表面の干渉縞 図5 図4の干渉縞の高分解画像


4. 表面振動の周波数 このようにして測定した表面振動を周波数解析しますと、図6のようになります。ここで横軸は振動の周波数、縦軸はPSD(Power Spectrum Density)といい、その周波数に対応する振動の強さを表します。この図を見てわかることは、0.1〜5Hzの間に複数周期の振動と20〜25Hzの間に2つ強いピークが見られます。この強いピークは他の周波数とは孤立して存在しているため、液柱の共鳴振動であると考えられます。このようなピークは液柱の高さを変えると周波数も変化することがわかりました。ここで共鳴振動とは、液柱の形状、物性値に依存して決まる振動数を指します。共鳴振動数は理論的にも求められていて、本研究で用いたシリコン融液の熱物性値、及び液柱の形状から共鳴振動数を計算して先ほどのピークと比較します。すると図7のように両者はよく一致し、先ほどのピークは共鳴振動によるものと照明できました。
一方、0.1〜5Hzの低周波側の振動数はマランゴニ対流によるものと考えられます。マランゴニ対流による振動数は、過去に温度振動の測定や対流の可視化で0.1〜1Hzの範囲に見つかっていましたが、本研究では光学的測定によって高い周波数も検知することができました。



図6 表面振動の周波数分布 図7 液柱表面振動に現れた強いピークと理論共鳴振動数の比較