1. 固液界面での現象
固液界面(結晶と融液の界面)での現象は結晶成長において重要な役割を果たします。例えば結晶成長の際に,マランゴニ対流によって引き起こされる温度振動は結晶が成長する速さ(成長率)を時間的に変化させます.そのため固液界面を実際に見てみようとしたのが本章の研究です.固液界面は図のように液柱外周部から観察しました.固体と液体で光の反射率が異なるため,図のように固液界面がくっきりと観察されます.固液界面はゆっくりと上下に動く様子が観察されこれを筆者は固液界面振動と名づけました.
2.温度振動との相関
固液界面振動が融液内部の温度振動によるものであることを確かめるため,熱電対を融液に挿入して温度振動と固液界面振動を同時測定しました.温度振動は高い周波数を含むため0.2Hz以上の周波数はローパスフィルターでカットし両者を比べると,同位相の関係が見られることがわかりました.このことから,固液界面振動が温度振動に起因するものであることが証明できました.そしてこのことから固液界面振動が融液・結晶界面近傍での温度振動を反映しているものであることがわかります.
3.固液界面振動の2方向観察
固液界面振動が界面近傍での温度振動によるものであることがわかったので,2方向から固液界面振動を観察すれば界面近傍での温度場の動きを把握することができます.この実験では周方向に135度離れた2方向から固液界面振動を観察しました.その結果,2方向から観察した振動には同位相,逆位相,そして時間がずれた相関という3種類の相関が見られました。一見して何もかも現れているように見えますが,これを図3のような温度分布をしていると考えると実験結果がうまく説明できます.このモデルはシミュレーション計算で予測されたものを用いました.
4. 固液界面振動の振幅と酸素分圧の関係
固液界面振動の振幅と雰囲気酸素分圧の関係を調べた.2章で述べたように,マランゴニ対流の駆動力となる表面張力の温度係数は雰囲気酸素分圧に大きく依存するから,酸素分圧を変化させることでマランゴニ対流に起因する固液界面振動にも影響があると考えられます.図4は酸素分圧を変化させたときの固液界面振動の振幅を表します.横軸は酸素分圧の値からマランゴニ数を計算した値です.このように酸素分圧の増加と共に固液界面振動の振幅が小さくなることがわかりました.つまりこれは界面近傍での温度振動が酸素分圧の増加と共に減少したことを表しています.これは結晶成長において成長率振動が小さくなることを示すので,結晶成長においてもマランゴニ対流を酸素ガスの導入によって制御できることが考えられます.