1. マランゴニ対流が結晶成長に与える影響
序論で述べたようにマランゴニ対流の研究の目的はシリコン結晶成長に役立てることです.そのため成長したシリコン結晶を分析し,マランゴニ対流の影響がどのように現れているかを直接観察する方法もあります.図1の写真は微小重力下で成長させたシリコン結晶のX線トポグラフです。結晶中央部に見える縞は成長縞と呼ばれ、成長界面での熱揺らぎに起因するものです。ドーパント(1章で述べたボロンやアンチモンなどの物質)の取りこみ量の違いに起因します。成長縞は振動流に伴う温度振動が原因であると考えられます.微小重力では浮力対流は消滅しますから,これはマランゴニ対流によるものであるということがわかりました.したがって成長縞を観察することによりマランゴニ対流の挙動の変化の様子も観察できると考えられます。本章ではFZ法で結晶を成長させ、成長縞を観察する事により、雰囲気酸素分圧の影響がどのように現れるのか論じます。
2.実験方法
シリコンは今までの実験で使った回転楕円体型のイメージ炉で溶融し,FZ法によって結晶を成長させました.表1に結晶成長条件を示します.ドーパントは実際の結晶成長では正孔や電子をつくるためのものですが,ここでは成長縞を観察しやすくするために用いました.FZ結晶成長については第1章で説明してあります.この実験では高周波コイルに熱振動が発生しないように,イメージ炉で成長させました.成長後の結晶は成長方向に平行に1mm厚さで切断し,表面を鏡面化した後Seccoエッチングを行い,成長縞を可視化させました.このような処理を行った結晶をノマルスキー微分干渉顕微鏡(NDIC)で観察しました.
| 結晶成長速度 | 0.5mm/min |
| 融液直径 | 8mm |
| ドーパント | アンチモン 0.01Ω・cm |
| 結晶長さ | 20〜30 mm |
| 融帯長さ | 6〜8 mm |
3. 実験結果と考察
図2はNDICによって観察されたシリコン結晶表面のNDIC写真の一部です.この写真を見ると,成長方向に垂直に(つまり成長界面に平行に)成長縞が発生しているのがわかります.Dの線上の輝度データを数値化したものが図3,図4です.図4の周波数分布から、0.19Hzに強い周波数が現れているのがわかります。0.38Hz,0.57Hzにもピークが現れていますが,これは非線形効果による倍周波数です.このような強いピークはマランゴニ対流の単一周期化によるものと考えられます.マランゴニ対流の単一周期化は温度振動の測定によっても観察されています.単一周期化はマランゴニ数が小さくなると現れると考えられています.本研究では酸素分圧の増加により単一周期のピークが現れましたから,酸素分圧の増加によってマランゴニ数が小さくなることがFZ結晶成長においても確かめられました.このことから,結晶成長において,温度制御をすることなく酸素ガスのみによってマランゴニ対流を制御できることが明らかになりました.
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| 図3 単一周期化しているデータ | 図4 図3のフーリエスペクトル |