1. マランゴニ数と表面張力
序論で述べたようにマランゴニ対流は表面張力差で発生するものだから、温度差マランゴニ対流の性質を調べるためには表面張力の温度係数、つまり同じ温度だけ融液温度が変化したときどれだけ表面張力が変化するかということを調べる必要があります。

2.表面張力と酸素の関係
表面張力とは表面のエネルギーのこと。表面では図のように結合の手が余った状態ができるので、ここではエネルギーが内部よりも高くなります。すると表面の原子はよりエネルギーの低い方へと動こうとしますから、結果として表面は丸くなろうとします。これが表面張力です。


融液表面の模式図

表面張力

表面に酸素が吸着すると図のように表面で余っていた結合の手が酸素原子と結びつくため、表面のエネルギーが下がります。また酸素原子が吸着することによって表面の自由度(乱雑さ、エントロピー)も下がるので、エントロピー=表面エネルギーの温度微分も減少します。したがって酸素濃度が増加すると表面張力の温度係数が減少すると考えられます。


シリコン融液表面に吸着した酸素原子

このことを実験的に示したのは九州工業大学の向井らのグループです。この実験ではシリコン融液を溶かした炉から出てくるガスの酸素分圧を測定し、それと表面張力の関係を調べました。すると下図のように表面張力、及びその温度係数が共に酸素分圧に大きく依存することがわかりました。表面張力の温度係数はマランゴニ対流の駆動力となっているので、マランゴニ対流は酸素分圧に依存することが推測できます。


表面張力と酸素分圧の関係

3. 酸素ガスと融液の反応
向井らの実験結果では出口側で測った酸素ガスが全体の10-20 となっていて酸素濃度がかなり低い状態になっています。これは融液と酸素が反応し、SiOガスとなるため、入り口側で高かった酸素分圧が出口側では低くなるためです。本研究では以降入り口側で酸素分圧を測定するため向井らの得た実験結果を入り口側での酸素分圧と表面張力との関係にする必要があります。ここではイタリア、ジェノバ大のRattoらが求めた理論を用いて入り口側酸素分圧と表面張力の温度係数の関係を求めました(下図)。