■私はデモに参加したことがありません。

昨年某日、都内の通りで自衛隊のイラク派遣反対を訴える2〜30人位の小集団がデモンストレーションをしているのを見かけた。

参加者たちはのぼりを掲げ、「政府は自衛隊のイラク派遣を止めろー」などとシュプレヒコールしながら通りを練り歩いていた。

個人的には自衛隊のイラク派遣には反対だし、デモに参加した経験も無い。

人がやらないことをするのは立派なことだと感心しながらデモを眺めていた。

しかし、次第に強烈な違和感が不謹慎にも自分の中に芽生え始めた。

なぜならって…

    デモ隊は機動隊に誘導されてとても行儀善く練り歩いていた。

    参加者たちのシュプレヒコールが棒読みでリズムが単調。半笑いでやっている参加者も。

    自分たちが何者なのか、趣旨な何なのかなどを書いたビラ類を配っていない。

                 周りの人達はデモ隊に冷たい視線を送り、嘲笑するクラクションが鳴り狂っていた。

普段色々なデモを見慣れているだけに体が痒くなった。




まず政府の政策に抗議しているデモ隊と機動隊が共存しているのはおかしい。

デモと言えば体制側の象徴たる「警察」に対してぶつかっていくのが常套手段。

なのに、機動隊が交通整理をし、デモ隊はそれに従って非常に行儀よく練り歩いていた。

正直気味が悪い共存だった。



デモそのものが主張するだけで終わっているのも気にかかる。

あくまで多くの人に対して自分たちの憤りを知ってもらい、問題提起のきっかけを与えてこそ活動に意味がある。

ただ一方通行的に主張するだけでは、ナルシストの自己満足に終わってしまう。

なのに、ビラも配らず、シュプレヒコールのリズムは棒読みで声も小さい。

見ている人たちの飛び入り参加も出来そうになかった。

ただでさえ「デモってどうなの」みたいな妙な偏見で見られがちなのに、周りから冷たい視線を浴びても仕方がない。



言うまでもないが、その時見かけたデモはニュースや新聞には登場しなかった。

効果的にデモを成功させるためには、新聞・ラジオ・テレビといったメディアで扱われるための話題性がなんといっても大事。

通行人たちの間だけで「今日自衛隊のイラク派遣反対デモを見た」と話題にされるのと、メディアで扱われ、

「今日昼頃、自衛隊のイラク派遣に反対するデモがありました」と話題にされるのでは効果は天文学的に違う。

 

■各国のメディアで登場したデモ

メディアでデモがどれくらい頻繁に紹介されるかどうかで、その国の報道のあり方や国民性が非常に良くわかるもの。

「デモが話題を呼ぶ」というだけでも日本人としては違和感がある。

社会や世の中に強い憤りを抱いている人がたくさんいたとしても、デモという形で憤りを表現する人たちを見かけることはあまりない。

絶対的少数派と言える。

そんな日本で2003年に行われ、話題を呼んだデモはざっとこんなところ。
(マンション建設反対、旧正田邸取り壊し反対といったワイドショーネタは省略)

1月


新潟県 北朝鮮の客船「マンギョンボン号」入港反対デモ

東京都 日比谷公園でイラク攻撃反対デモ

2月


東京都 ロシア大使館前で右翼デモ
東京都 イラク攻撃反対デモ


3月


広島県 イラク攻撃反対デモ

東京都 イラク攻撃反対デモ
    (20日 イラク侵攻開始)
各地  反戦デモ

東京都 アメリカ大使館前で反戦デモ

4月


各地  反戦デモ


5月


各地  春闘デモ


7月


東京都 イギリスのブレア首相来日・抗議デモ


8月 


新潟県 マンギョンボン号の入港反対デモ


10月


東京都 アメリカのブッシュ大統領来日・抗議デモ


11月


東京都 アメリカのラムズフェルド国防長官来日・抗議デモ


12月 


東京都 自衛隊イラク派遣反対デモ

東京都 ロシアのカシヤノフ首相来日・空港で抗議デモ

多ければ良いというわけではないが、これだけ見るとただ淡白に「要所では行われている」としか言いようが無い。

メディアによる話題の幅が狭いせいか、扱い辛く話題を呼びにくいデモはカットされているはずだから上記のデモはあくまで氷山の一角に過ぎない。

実際は知らないところでたくさんやっているけど、話題性のあるものとしてメディアから紹介される機会が無かったのかもしれない。

しかし数が少ないことは間違いない。

かつては日本でも安保・沖縄闘争など国家権力と闘い、身を呈したデモ活動が活発な時代もあったが今ではかなり下火だ。

例えば千代田区で歩きタバコが罰金になったとき、年金制度が変わったとき、韓国が竹島切手を発行したときなどに抗議デモが起こったら話題になっただろう(実はやったとか?)。


デモへの期待や取り扱いはあまりにも軽い。


 

●次はフランス。これも2003年に行われたデモ全般。

1月


「緑の党」が治安維持強化策に抗議デモ


コートジボワール和平交渉開催でデモ

西仏トンネル開通に抗議デモ

2月


航空会社「AIR LIB」の労使交渉決裂。従業員デモ


ロシアのプーチン大統領訪問、対チェチェン政策に絡み抗議デモ

パリでイラク攻撃反対デモ

フランス・アフリカ首脳会議、人権団体や「国境なき記者団」が抗議デモ

G7財務相・中央銀行総裁会議、反グローバル化団体抗議デモ

仏生まれのコロンビア大統領候補誘拐事件から1年、抗議デモ

3月


イラク攻撃反対デモ


アメリカ支持デモ

国際婦人デーに反戦デモ

港湾労働者が労働条件改善求めデモ

20日イラク戦争開始)

パリで連日に渡り大規模反戦デモ

4月


各公共交通機関がスト突入、従業員デモ行進

キューバ大使館前で反キューバ・親キューバ団体がデモ

5月


メーデー、全国で労働者が大規模デモ

全国の教師が労働条件改善を求めデモ、ほとんどの学校が自習

6月


G8首脳会議、反グローバル化団体抗議デモ

政府の年金制度改革案に反対し労働者抗議デモ

大検に反対する教師が妨害デモ

イラン反体制派組織一斉摘発に抗議デモ

7月


ラオスで仏人カメラマンに禁固刑、パリのラオス大使館前で抗議デモ

鉄道メーカー本社前で欧州各国の従業員が抗議デモ

コルシカ島で自治拡大の住民投票求めデモ

失業保険改正案反対デモ、オペラ祭が中止に

エイズ対策基金支援会合でエイズ撲滅デモ

8月


(記録的猛暑の話題が優先したためか記録なし)

9月


石油化学工場爆発事件から2年、被害者抗議デモ

パリで反戦デモ

10月


失業保険改正案に抗議するデモ隊がTV局乱入

海水浴場の管理規定見直し政策に、サーファーらが欧州議会前で抗議デモ

11月


失業保険改正案に抗議しショービジネス界の労働者がニュース番組乱入

パリのマクドナルド前で反グローバル化デモ

航空機の陸上輸送訓練に抗議デモ

反グローバル化団体やNGOが集会

タバコ屋店主が政府の禁煙対策に抗議デモ

12月


公立学校でイスラム教のスカーフ着用禁止措置に抗議デモ

 

 

全部読んだ人はエライ。

一目瞭然だが、フランスのデモ人口は日本とは比べものにならない。

そして色々手を伸ばし過ぎってくらい外国の問題に抗議しているし、生活に密着していることにも抗議して多種多様だ。

これでも一応は氷山の一角。
 

フランスのようにデモが活発な社会の中で育つと、関心を自分の外に向ける心や、怒りを表現する手段が自然に育つのだろう。

デモに寛容な社会基盤がすでにできているから軽い気持ちで参加できるし、躊躇する理由も特に無い。

実際フランスのデモは年齢層や人種が多用で、普通の若者が多く、お年寄りや子供たち、果てはペットや乳児、芸能人や政治家までもが参加している。

若者が多いデモは特にシュプレヒコールがリズミカルで活気に満ちている。

それに暴力的で機動隊と衝突することが多い。

逮捕者やけが人は当たり前のように出るし、滅多に出ないが死者が出る時もある。

中には単に暴れたいだけの若者いるのだと思うが、自分の私生活とはあまり関係のないところで身を呈してまで訴えたいこととはなんだろうかと見ている方は真剣に考えてしまう。

多少暴力的だとメディアにも取り扱われやすい。

車が燃える絵や機動隊に袋叩きにされる参加者がいればメディアとしてはしめしめといったところだろう。

 

    さらにお隣韓国。

1月


ソウルで大規模年越し反米デモ

外務次官が日米合同会議に出発、ソウルで反米デモ

米軍基地前で退役軍人が新米・反北朝鮮デモ

北朝鮮がNPT(核不拡散条約)脱退、ソウルで大規模抗議デモ

ソウルで反米デモ、機動隊と衝突

アメリカ国務次官訪問、抗議デモ

南北閣僚級会談開催、反北朝鮮デモ

国防省前で反米デモ

2月


北朝鮮核施設稼動、抗議デモ

EU上級代表が訪問、抗議デモ

日本大使館前で元従軍慰安婦が反日デモ

ソウルでWTO農業交渉反対デモ

ソウルで反戦デモ

韓国地下鉄火災で地下鉄職員ら逮捕、抗議デモ

ソウルで反米&反日デモ

3月

 


ソウルで大規模反北朝鮮デモ

アメリカ軍空母「カール・ビンソン」プサン港入港、抗議デモ

イラク攻撃開始、米大使館前で反戦デモ

米韓合同軍事演習実施、抗議デモ

国会でイラク派兵採決、国会前で抗議デモ・機動隊と衝突

学生が米大使館前で反戦デモ

〜連日に渡りソウルで反戦デモ〜

労組主催の反戦デモに数万人集結

4月


ノ・ムヒョン大統領、国会でイラク派兵に理解求める、抗議デモで機動隊と衝突

学生数百万人が大規模反戦デモ

韓国医療部隊がイラク出発、空港外で抗議デモ

5月


メーデー労働者デモ


6月


政府の干潟干拓計画に反対した60日間デモ終わる

米軍に轢き殺された女子中学生追悼集会

韓国鉄道スト、労働者が抗議デモ

7月


南北閣僚級会談開催、抗議デモ

核廃棄物集積場建設案発表、抗議デモ

朝鮮戦争休戦50周年、追悼集会

8月


各地で学生が反米デモ

米軍小型機墜落で2人死亡、ソウルで反米デモ

光復節、反米・反北朝鮮デモ

反北朝鮮デモ隊が北朝鮮国旗を焼却、ノ・ムヒョン大統領が謝罪

(韓国でユニバーシアード大会開催)

ユニバで北朝鮮の報道関係者が反北朝鮮デモ隊と小競り合い

9月


イラク追加派兵反対デモ

WTOに抗議して農民が自殺

10月


韓国軍創設55周年記念式典で集会

北朝鮮のスパイ容疑の社会学者逮捕、抗議デモ

イラク追加派兵反対デモ

イラク追加派兵賛成デモ

労組がイラク追加派兵&労働条件不公正への抗議デモ、機動隊と衝突

11月


チリとの自由貿易協定締結で農民ら反対デモ

アメリカのラムズフェルド国防長官訪問、抗議デモ

農民デモ暴徒化

12月


イラクで韓国人技師殺害、抗議デモ

イラク追加派兵閣議決定、抗議デモ

チリとの自由貿易協定に反対して農民デモ

種類としては少ないが、もうかなりたくさんやっている。

しかもワールドカップでの賑わいよろしくといった感じである。

特徴としては大人数で音楽に合わせて拳を上下させたり、やりすぎとも思えるくらい警察と衝突したりする過激なデモが多い。

韓国は北朝鮮問題を切に感じたりして外に目を向ける機会が多いかもしれないが、

同じアジアでもこれほど規模や基盤が違うともはや地域の問題ではなく、国民性の問題になってくる。
 


    日本は特殊?

こうしたデモが活発な風潮は何もフランス、韓国に限ったことではない。

イラクも今となっては選挙や職を求めるデモが活発になっているが、フセイン政権崩壊前では考えられないことだった。

また、現在の北朝鮮のような独裁国家、中国のような一党独裁政権下ではデモは決して許されるものではない。

グルジアでは連日のデモによって大統領が追放され、デモを指導した36歳の男が選挙の末の大統領の座に就任した。




これら例もまた氷山の一角に過ぎず、デモは諸外国で日常のように行われている。

北米でも、南米でも、アフリカでも、中東やオセアニア、アジアでも地球規模で実に活発なもの。

別に特別なものでなければ、非日常的なものでも全くない。

ただの表現手段であり、表現の自由が認められた民主主義国家ならではの健全な姿と言える。

よく「やっても意味がない」とデモを毛嫌いする人たちもいるが、そういう人たちはおそらく投票にもいかない。

今度デモを見かけたら、少し目線を変えて、寛容な心を持ってみてはいかがでしょう。