DINOSAURS 2

2000/4/21 ([Bilab:4175] より一部改編)
いきなり朝からタイムリーな記事が…
恐竜の心臓は哺乳類に近い構造 「混血説」に有力証拠


 米ノースカロライナ州立大などの研究グループが、恐竜の胸部の化石をコンピューター断層撮影(CT)で分析し、心臓が鳥類や哺乳類(ほにゅうるい)に近い構造であることを突きとめた。酸素の多い血液を効率よく使うことができ、爬虫類(はちゅうるい)より活動的な動物であることの裏づけになる。長く論争が続いてきた「恐竜温血動物説」の有力な証拠として注目を集めそうだ。21日付の米科学誌サイエンスに報告される。

 CTによる3次元画像には、左右の心室が厚い壁で仕切られた心臓と、大動脈とみられる1本の太い管がくっきりとした濃淡で写しだされていた。これは、左右の心室が完全に分かれ、大動脈は1本だけの哺乳類、鳥類に近い。爬虫類は心室が左右に完全には分かれておらず、酸素の多い血液と少ない血液が混ざってしまう。大動脈も2本ある。

 恐竜は冷血(変温)動物のトカゲやワニと同じ爬虫類に分類されているが、心臓が温血(恒温)動物に近いものがいたことになる。

 分析したのは、米サウスダコタ州の白亜紀末期(約6600万年前)の地層で見つかった小型草食恐竜テスケロサウルスの化石。体長は3.9メートル。

 保存状態が極めてよく、内臓の痕跡のような石のかたまりが胸の骨にくっついていた。化石になる過程で特殊な条件がそろい、筋肉の部分の成分が周囲と違うものになっていたとみられるが、詳しいしくみはわかっていない。

 恐竜はかつて、冷血で動きが鈍い「巨大トカゲ」のイメージだったが、1970年代から、体温維持機能がある活発な動物とみる温血説が盛んになった。羽毛をもった皮膚の化石が見つかり、群れや子育てなどの高度な行動もわかってくるなど、温血説の「状況証拠」は多い。しかし決め手がなく、否定的な見方も根強い。

生物に関するどの分野にもあてはまることだけど、「観測機械」の性能向上ってホントすごいですね。X線しかり、NMRしかり、今回のCTスキャンしかり…今まで見えてこなかったものが、どんどん見えてくる、いやはや、トンデモない時代になったものです。

さて、今回の記事で興味を惹くのは2段落目の

 CTによる3次元画像には、左右の心室が厚い壁で仕切られた心臓と、大動脈とみられる1本の太い管がくっきりとした濃淡で写しだされていた。これは、左右の心室が完全に分かれ、大動脈は1本だけの哺乳類、鳥類に近い。爬虫類は心室が左右に完全には分かれておらず、酸素の多い血液と少ない血液が混ざってしまう。大動脈も2本ある。

まず脊椎動物の心臓について簡単に説明すると、哺乳類と鳥類は完全に2心房2心室がわかれており、そしてそれぞれの心室からは大動脈と肺動脈が1本づつでています。(大静脈、肺静脈はそれぞれの心房につながっています。中学校2年の理科2の範囲です。)

しかし、爬虫類では試行錯誤の途中だったらしく、その形態にはばらつきが多少あり、恐竜の直前で分岐したと考えられるワニ類では、2本ある大動脈が1本になれば、ほぼ鳥類の心臓と同じなると言われています。(つまり、鳥類・哺乳類と同じ2心房2心室ということです。)

しかし、この昔で分岐した典型的な現生爬虫類(トカゲ・ヘビ・カメなど)では、心室中隔(心室を分ける壁のようなもの)が不完全で、心室が完全に2分割されてなく、また動脈円錐は3本にわかれています。(心室から出ている「動脈の束」のこと。哺乳類・鳥類では2本(大動脈・肺動脈)。)

両生類までくると、心房中隔もあやしくなってきますが、動脈円錐に関しては、きちんと2本に分かれていないものの、その入り口は、2つに区分けされています。

この動脈円錐の状態より、哺乳類の心臓は、両生類に残っている原始型から直接由来したと考えられています。また、鳥類の心臓は爬虫類から由来していると考えられているので、実は同じ2心房2心室の心臓でも、明らかに、鳥類と哺乳類では、その発達の経路は違い、両者の心臓が、実は相同ではないと考えられています。

ここで、今回の記事の内容に戻しますが、

左右の心室が厚い壁で仕切られた心臓と、

恐竜がワニに近縁であることを考えれば、左右の心室をわける厚い壁があるのは、おかしなことではないと思います。つまり心室中隔による2心室の獲得が、ワニ類と恐竜類の分岐以前で起こったと考えればいいのですから。

さらに面白いのは、

大動脈とみられる1本の太い管が、くっきりとした濃淡で写しだされていた。

これは、恐竜が鳥類に近かった、あるいは鳥類への進化の途中であった、と考えられる重要な証拠になるかもしれません。2心房2心室を獲得したワニ類でさえも、大動脈(?)は2本あるのですから。まぁ羽毛をもった小型恐竜がいたとされているので、かなり鳥類に近かったのでしょうね。

また、もう一つ注目すべき所は、見つかった化石が

小型草食恐竜テスケロサウルスの化石

であることでしょう。

前回のメールで書いたように、足(指)の形状から、爬虫類は、小型肉食恐竜を経て、鳥類に進化したのでは?と考えられています。このことは、小型の草食恐竜の中にも、鳥類に近かったものがいたということを示す重要な証拠になるかもしれません。

僕らの世代のイメージでは、恐竜は「狂暴で大きな体をもち、愚鈍で寒さに弱い」というようなイメージでした。しかし、今回の発見で、恐竜は「意外に頭が良く、また寒さにも案外強かったのでは?」というイメージに変わってきましたね。

ん…だとすると、絶滅したのは寒さが理由ではなかったのか?なんていう、新しい疑問もまた生まれてきます。

先日の朝日新聞の記事の中で東先生がいっていたように、この分野、これからますます面白くなってきそうです。