不老不死と進化:読者との対話

2000/2/18-/23 ([Bilab:4022][Bilab:4028][Bilab:4029][Bilab:4031][Bilab:4033] より一部改編)

しゅうごです。

ちょっと、ちゃちゃっぽいのですが、

jun> つまり自分の持っている遺伝子と、
jun> 相方の持っている遺伝子を組み合わせることで、
jun> 新しい遺伝子を作り、次世代に、より環境に適した
jun> 遺伝子が現れることを期待する。

現生人類の遺伝子って、出現以来どのくらい現在の環境に「フィット」してきてるんだろう。(以前に昼食を食べているときにも同じ話が出たような気がしますが)たとえば、徳川家康の遺伝子よりも僕の遺伝子の方が「フィット」してるんでしょうか。もっと年数が必要なんだったら、聖徳太子あたりだとどうでしょう。 さらに千年分くらいのトライアルが行われているはずだけど。そもそも、ほんとうに「環境」にフィットしてきているのかな? フィットするべき環境の変化が遺伝子の変化よりも速いとすると、遺伝子は環境にフィットできなかったりする気もするのだけど?

クロマニヨン人とかアウストラロピテクスとか出てくると進化って感じもするのだけど、自分や自分の親・子どもの遺伝子?、と考えると、偶然による遺伝子のかき混ぜ以外の進化ってほんとにあるのか?? と、研究では AGTC を扱ったり遺伝的アルゴリズムを使ったりしながらも、ついついド素人考えをしてし まうのであった。



さがらです。

shugo> 現生人類の遺伝子って、出現以来どのくらい現在の環境「フィット」してきてるんだろう。
shugo> (以前に昼食を食べているときにも同じ話が出たような気がしますが)
shugo> たとえば、徳川家康の遺伝子よりも僕の遺伝子の方が「フィット」してるんでしょうか。
shugo> もっと年数が必要なんだったら、聖徳太子あたりだとどうでしょう。
shugo> さらに千年分くらいのトライアルが行われているはずだけど。
shugo> そもそも、ほんとうに「環境」にフィットしてきているのかな?
shugo> フィットするべき環境の変化が遺伝子の変化よりも速いとすると、
shugo> 遺伝子は環境にフィットできなかったりする気もするのだけど?
shugo> クロマニヨン人とかアウストラロピテクスとか出てくると
shugo> 進化って感じもするのだけど、自分や自分の親・子どもの遺伝子?
shugo> と考えると、偶然による遺伝子のかき混ぜ以外の進化ってほんとにあるのか??
shugo> と、研究では AGTC を扱ったり遺伝的アルゴリズムを使ったりしながらも、
shugo> ついついド素人考えをしてしまうのであった。

う〜ん、なんて説明すればいいのでしょう。遺伝子が環境にフィットしていくのではなく、たまたま偶然に、環境にフィットした遺伝子が現在残っている遺伝子であると言えばよいでしょうか?環境が劇的に変わった時に生き残る遺伝子は、たまたま偶然に、その環境にフィットした遺伝子なのでしょう。つまり、遺伝子の側から環境変化に歩み寄ることはないのです。

そのような劇的な変化が起った時に、遺伝子型のバリエーションが多ければ多いほどフィットする確立は高くなると思います。その確立を少しでも高めるために有性生殖がはじまったのではないでしょうか?

うまく説明できていないかもしれませんがこの辺で。



さがらです。
shugo> クロマニヨン人とかアウストラロピテクスとか出てくると進化って感じもするのだけど…
jun> 環境が劇的に変わった時に生き残る遺伝子は…

知っている人も多いとおもいますが、木村資生先生の提唱した「中立説」を書いておきます。1990年に発表された生命の大規模な進化のメカニズムを説明する仮説です。この仮説によると進化は「一定の速度で進む」のではなく四つの段階を経ながら「断続的に進」まなければならないことになっています。

まずはその四つの段階の説明から。

第一段階:生態系になんらかの理由で大きな空白が生じる
          ・それまでの競合相手の絶滅
          ・大陸同士の結合による新天地の獲得
          など

第二段階:選択圧からの開放された生物種の中に中立的な変異の蓄積される

第三段階:ちょっとした環境の変化により、それまで中立だった遺伝子が有利になる
          ・その変異の強調されたサブグループが形成

第四段階:変異種がたくさん生じ、環境を埋め尽くす
          ・自然選択がはたらき、もっとも有利な種がのこる

この四つの段階を経ることで、でこれまでの「自然選択により、極まれな、有利な変異だけが定着する」という場合に比べて、はるかに早く、新しい形質が定着し、自然選択の作用を受けるので、早く進化が進むことが期待できる。この理論は、地球生命史上たびたび見られた生物の大量絶滅と、それに続く適応放散(カンブリア大爆発など)を、みごとに取り込んでいる。

たまたま運良く、確率的に環境に対してもっとも有利な形質を身につけていたものだけが、自然選択によって 生き残るのである。つまり「適者生存」ではなく、「運者生存」なのである。

ビックバンが、ものすごい小さな確立で、それこそ「運」良く起ったように、進化もまた「運」なのです。



しゅうごです。

jun> 知っている人が多いとおもいますが、木村先生の「中立説」を書いておきます。
jun> …中略…
jun> ビックバンが、ものすごい小さな確立で、それこそ「運」良く起ったように、進化もまた「運」なのです。

そうそう、これこれ。そうするとね、「種内の遺伝子にバリエーションがあった方が有利」というくらいの大きな淘汰圧がかかるのは、彗星が地球にぶつかるとか、大陸がくっつくとか、非常にまれなきっかけが必要なわけだよね。だから、たとえば前のメールにあった、

jun>ですから将来、もし人工長寿時代が実現したとしたら、人類の進化を遅くすることになるかもしれません。

というような、「進化」が短いスパンで起きるような(しばしばあちこちで見受けられる)表現ってのに、ちょっと抵抗があるな、と思いました。そもそも「進化」って言葉は、新たな種の出現に使うの? 1つの種内でも「進化」はあるのかな?

それから、ヒトの遺伝子のバリエーションが年々増えているのなら、不老長寿でバリエーション拡張は止まるだろうけど、たとえば今日突然人類が不老長寿を獲得したとしても、現在種として十分なバリエーションがあればとくに不利にならないのでは? とも思ったり。これまでは自分はなんとなく不利だろうなぁと思っていたけど、よく考えると、そうでもないかも? とも思ってしまう。もちろん子どもを作らないと、事故などによる人口減少は補正できないし、遺伝子損傷の回復とかもできなくなるから生存能力は低下するだろうけど、あくまで「遺伝子のバリエーションは進化に有利」という枠組の中で、ね。

夕焼けはなぜ赤いの と似たレベルの質問ばっかりですみません。



さがらです。

shugo> そうするとね、「種内の遺伝子にバリエーションがあった方が有利」
shugo> というくらいの大きな淘汰圧がかかるのは、彗星が地球にぶつかるとか、
shugo> 大陸がくっつくとか、非常にまれなきっかけが必要なわけだよね。
shugo> だから、たとえば前のメールにあった、
jun> ですから将来、もし人工長寿時代が実現したとしたら、
jun> 人類の進化を遅くすることになるかもしれません。
shugo> というような、「進化」が短いスパンで起きるような
shugo> (しばしばあちこちで見受けられる)表現ってのに、
shugo> ちょっと抵抗があるな、と思いました。

「人工長寿」というのが、「かなりまれ」なきっかけになると思います。子孫を増やしつづけるなら、確実に、なんらかの争いが起り、人類は滅亡し、そこに「ブランク」ができることでしょう。また、子孫を増やさなかった場合、環境の変化が起った時に人類が淘汰されてしまう可能性もあり、そこに「ブランク」ができることでしょう。だから、そう考えると「進化が遅くなる」のではなく「人類が滅びる」という表現の方があっているかもしれません。

shugo> そもそも「進化」って言葉は、新たな種の出現に使うの? 1つの種内でも「進化」はあるのかな?

岩波の生物学辞典の「進化」の引用です。読みにくいかもしれませんが、これで勘弁を。
進化[英evolution 仏_volution 独Evolution 露эволюция]
生物個体あるいは生物集団の伝達的性質の累積的変化.どのレベルで生じる累積的変化を進化とみなすかについては意見が分かれる.種あるいはそれより高次レベルの変化だけを進化とみなす意見があるが,一般的には集団内の変化や集団・種以上の主に遺伝的な性質の変化を進化とよぶ.
進化遺伝学では,集団内の遺伝子頻度の変化を進化とよぶことがある.また,文化的伝達による累積的変化を進化に含めるときもある.さらに,生物個体や集団の進化に伴って生じる生物群集の構造変化も進化とみなすことがある.
生物進化は,遺伝的に異なる性質をもつ生物個体の頻度が時間につれて変化することによって,あるいは異なる特性をもつ生物集団が新たに起原することによって生じるので,生物集団(個体群,あるいは種)より高次のレベルの変化は,生物個体や集団の進化の結果であるとみなす考えもある.
evolution の語は,元来,発達・発生・発展・展開などの意味や,個体発生上の展開の意味で用いられていたが,後に,種の分化や種形成など種形成あるいはそれより高次レベルでも用いられるようになった.なお,歴史的に C.ダーウィンは‘変化を伴う由来’(descent with modification) で進化の意味を表わし,フランス語では transmutation, transformation,ドイツ語では Deszendenz, Abstammung の語が使われた.

shugo> それから、ヒトの遺伝子のバリエーションが年々増えているのなら、
shugo> 不老長寿でバリエーション拡張は止まるだろうけど、
shugo> たとえば今日突然人類が不老長寿を獲得したとしても、
shugo> 現在種として十分なバリエーションがあればとくに不利にならないのでは?とも思ったり。
shugo> これまでは自分はなんとなく不利だろうなぁと思っていたけど、
shugo> よく考えると、そうでもないかも?とも思ってしまう。
shugo> もちろん子どもを作らないと、事故などによる人口減少は補正できないし、
shugo> 遺伝子損傷の回復とかもできなくなるから生存能力は低下するだろうけど、
shugo> あくまで「遺伝子のバリエーションは進化に有利」という枠組の中で、ね。

どこがどうなったら有利に、あるいは不利になるのかわからないかぎり、どれだけバリエーションを増やせばいいのかわかりませんね。結果としてもとにもどることも考えられるだろうし…。こればっかりは、そういう事態が起ってみないとわからないことですね。

昔の生物学者が「進化は歳をとってから、リタイアしてから研究する学問だ」と言った理由、すこ〜しだけですが、わかったような気がします。だって本当の答えが「絶対に」と言っていいほど、わからないのですから。阪大の四方さんも若手の会の講義で言ってましたが「進化はタイムマシンがなけりゃわからん」のですよね、ホントに。しかも、タイムマシンがあったとしても本当に進化を、あるいは地球の歴史を研究しようとしたら…数十億年かけなければ、同じタイムスケールで進化や歴史を観測することはできないんですよね。そうなると、タイムマシンに早送り機能をつけなくちゃならないとか、難しそうな問題が山のようにでてくると思います。そう考えると…進化を解明することって難しいです。でも、難しいからこそ面白い、これが僕が進化にハマっている理由でしょうか?

どこまで「進化」の神髄に近づけるのか?もう少し、進化にハマってみようと思います。