Q1.米大統領がヒトゲノム研究を賞賛の背景とは
日米欧の公的機関とアメリカの民間会社セレラ・ジェノミクス社とが競い合いながら進めてきた、ヒトゲノム(人間の全遺伝子情報)の解読計画。6月26日、それぞれの研究成果について、クリントン大統領が米ホワイトハウスでの記者会見で発表し、両陣営の功績を称えた。
バイオという特定分野の研究成果をアメリカ大統領が直々に発表して、褒め称えるという異例のトピックをどう受け止めるべきなのか?( 出題者:「週刊東洋経済」編集長・山縣裕一郎)
Q2.ヒトゲノム完全解明がはらむ危機とは
「国際ヒトゲノム計画」と、アメリカのバイオベンチャー企業セレラ・ジェノミクス社によるヒトゲノム解読の成果をクリントン大統領は「ヒトゲノムは人類がこれまで作った中で最も重要な地図だ」と称えたことは「Q1」で解説した。ヒトゲノムの解明が21世紀の医療現場にもらたす成果ははかりしれない。しかし、一方で”ヒトの設計図”を解き明かしてしまうことを危惧する声も強まっている。
浮かれてばかりではいられないゲノム研究の問題点とは何か?(出題者:フリージャーナリスト・斉藤貴男)
A1.ヒトゲノムの解読は21世紀の医学・生物学分野における技術革新、ひいては経済の鍵を握る重要なテーマです。クリントン大統領はそれがわかっているから記者会見で大々的に発表した。その意義を強調するために、イギリスのブレア首相を衛星回線を使って会見に参加させたり、ライバル関係にあった米国国立衛生研究所のヒトゲノム・プロジェクトの代表とセレラ社の社長を会見に招くなど、ショーアップに励んだわけです。いち早く、その分野でのリーダーシップをアピールするという政治的意図もあるのです。
ところが、ゲノム問題のメッカではない日本では、この分野の世間的な認知度は低い。新聞というのは日本の社会を映す鏡ですから、世界的には重要な問題でも、日本で関心が低ければあまり大きく取り扱わないというケースがある。その場合には、海外の文献を読むなどして、新聞の次のステップを求める必要があります。
A2.ヒトゲノムの解明には新たな差別を生み出す危険が伴います。遺伝子検査で、どんな病気にかかりやすいか、いつ頃発病するのかがある程度確定できる。実際、アメリカではすでに生命保険差別が起きています。アメリカの場合、国民皆保険の日本とは違い健康保険の段階から個々に加入する必要があるので事態は深刻です。ガンや糖尿病など、遺伝的要因の大きい病気はたくさんある。ビジネスの論理だけでいえば、遺伝的要因がない人の保険料を安くできるし、保険会社も支払コストを減らす理由もできる。
今後は遺伝情報の取り扱いに関する規制もでてきます。ヒトゲノムにビジネスチャンスを見いだすのなら、くれぐれも配慮を。差別主義者になってはおしまいです。