お詫びと訂正〜セレンについて〜

2000/5/30
先々週の輪講 (5/15) で「セレンは金属の一種で…」という間違った発言をしていました。その後、「酸素と同属で…」と言った時点で、頭の中に大きな「?」が浮かんだのですが、泥沼にはまるのを恐れて、訂正を後まわしにしてしまいました。改めて、ここで訂正が遅れたことをお詫びするとともに、せめてもの罪滅ぼしにと、セレンに関する資料をまとめてみました。

  1. Se: セレン

  2. 歴史
    * マルコ=ポーロの旅行記。1271-1295 年の中央アジア・中国への紀行で、ジパング (日本) に関する記述もあり、ヨーロッパ人の東洋への感心を高めた。(広辞苑・第四版)
    ** 克山病、カシンベック病 (欠乏) や、アルカリ病 、暈倒 (うんとう) 病 (過剰) などがある。詳しくは 5. を参照
  3. 存在

    表 1. 動植物体中のセレン含有量
    種類含有量 [mg/Kg]
    穀物類0.1 〜 2.8
    葉野菜類0 〜 0.01
    茸類0.03 〜 0.09
    哺乳動物の肉1.0 〜 8.0
    海藻類0 〜 0.02
    魚介類0.2 〜 1.0


  4. 吸収と排出
    • 日本人では、大気中や食物から 50〜300 μg/day 程度摂取
    • 必要量だけが体内に残り、過剰分は Se2- を経て、(CH3)2Se、(CH3)3Se+ の形ですみやかに体外へ排出
    • 腸より血液中に入り、αグロブリンなどにより、肝臓、腎臓などの各臓器に運ばれる

  5. 必須性
    • シュワルツとフォルツが 1957 年、セレンとラットの肝臓壊疽の因果関係を見出し、セレンの必然性を確認
    • トンプソンとスコットはセレン化合物がヒツジ、ウマ、ウシの筋ジストロフィーの治療に有効であることを発見
    • 男性の生殖能とも密接な関係
    • 欠乏症には、克山病i)、カシンベック病ii)、多発性硬化病iii)、クワシオルコルiv)、不妊症などが知られる
    • ガン患者の血液中のセレン濃度は、正常なヒトの値よりも 80 % 低い
    • マウスの実験において、セレンの制ガン作用v)が知られている
    • 生体内に取り込まれた砒素、水銀、カドミウム、鉛などの有毒元素と反 応して、金属イオン相互間の毒性を軽減する拮抗作用をもつ
    i) 中国の東北部から雲南省に至る地帯の風土病。致死率の高い心筋症を主体とした疾患。
    ii) ロシアの風土病。骨の関節が変型する変型性骨関節炎。
    iii) 脱髄性疾患の一種。
    iv) 低タンパク栄養失調症。
    v) 先日 (5/24)、朝の情報番組で、セレンの制ガン作用 (「抗」ガンではありません) が紹介されていました。「にんにく」に多量に含まれており、一日にひとかけら食べるだけで効果があるそうです。
  6. 酵素
    図 1. セレノメチオニン図 2. セレノシステイン (Se-Cys)

    表 2. セレン含有酵素
    セレノシステイン系グルタチオンペルオキシターゼ
    グリシンレダクターゼ
    ギ酸デヒドロゲナーゼ
    テトラヨードチロニン-5-デヨーディナーゼ
    セレノメチオニン系チオラーゼ
    ニコチン酸デヒドロゲナーゼ
    3-ヒドロキシブチル-CoA-デヒドロゲナーゼ


  7. 毒性と薬理作用
    図 3. 生体内におけるセレンの挙動