C O L U M N L I B R A R Y
イデオンの物語に描かれた神
2007/12/10

イデオンの物語に描かれた人類は、イデという人工物、意志を持つ物質、機械によって創造された。もし神の定義を「人類の創造者」「人類の幸福を願う強力な知的存在」とすれば、イデオンの物語の舞台は有神論が正となる。神が存在する世界だ。しかし、神の定義を「全知全能の存在」「宇宙と人類の全てを創造した知的存在」「非物質、非物理存在」としたら、イデオンの物語は神について何も描いていないということになる。ただイデという人類の創造者が描かれているだけである。実際、イデオンの物語には「神」という名詞の入ったセリフは登場しない。人類の創造者が描かれていながら「神」とは呼ばず「イデ」と呼ぶのだ。ちなみに「霊」は「残留思念」と呼ばれていた。富野アニメでは「ロボット」というオーソドクスな呼び名はほとんど使わず、その代りに「モビルスーツ」とか「重機動メカ」とか「ウォーカーマシーン」、「オーラバトラー」等のしゃれた呼び名が使われた。恐らく監督はちょっとシャイなのか、へそ曲がりなのだろう。
ところでこの実際の世界、ノンフィクションの世界には神は存在するのだろうか? ここで先ず問題になるのがやはり定義である。100人いれば100通りの定義が生じる問題、大多数の人が認める定義は正しい定義なのかという問題、また更に、人間が神を選別し認定するのかという問題、人間に神を探し出す能力が備わっているのかという問題、問題は多い。
さて仮に、イデオンの物語で描かれたイデが、実際の世界の神に大変近いのだとしても著者はほとんど不満はない(注)。イデは人間の挙動を、固唾を呑んで見つめていた。イデは人類の幸福を願っていた。人間も必死だったが、イデはもっと必死だったのだ。イデは、瞬間物質移動・テレポートや謎の発光現象、幻聴、幻覚、霊との接触等アクロバットを駆使して不和を起こした人間の和解を模索した。しかし、人間はイデの意志をくみ取ることができなかった。映画版「イデオン」DVDに付録された映像特典の予告編に、イデが人間の無知を痛哭する描写がある。「人達よ! 我の意志をなぜ、くんでくれぬ!」「人達は、一つのものだということが分らぬのか!」。なんと切ない描写か。なんと意味深長な描写か。映画の予告編には、その映画のメッセージのエキスがある。イデオンの物語のエキスがイデの痛哭として、描写されたのだ。
勿論、イデオンの物語で描かれたイデが、実際の世界の神に近いという確証など何もない。しかし、著者はあり得る可能性の一つだと信じている。勿論、多くの可能性の中のほんの一つにすぎないとしても。勿論、実際に神が全知全能の存在であれば、文句のつけようはない。
今後人類がいかに科学を進歩させようとも、イデオンの物語で描かれた血みどろの格闘、許し難き者を許し、愛し難き者を愛するという格闘、創造者の意志をくみ取るという格闘、それらを人類はメッセージとして教訓として記憶していってもらいたい。
やはり今回もアニソンで締めくくることにしよう。ガンダムZZ(ダブルゼータ)のテーマソングだ。これもまた意味深長な歌詞である。
アニメじゃない
−夢を忘れた古い地球人よ−
作詞 秋元康
作曲 芹澤廣明
編曲 鷺巣詩郎
歌 新井正人
アニメじゃない アニメじゃない 本当のことさ
みんなが寝静まった夜 窓から空を見ていると
とっても すごいものを見たんだ
大人は誰も笑いながら テレビの見過ぎと言うけど
僕は 絶対に絶対に 嘘なんか言ってない
常識という眼鏡で 僕たちの世界は
のぞけやしないのさ 夢を忘れた 古い地球人よ
アニメじゃない アニメじゃない 素敵な世界
アニメじゃない アニメじゃない 現実なのさ
アニメじゃない アニメじゃない 不思議な気持ち
アニメじゃない アニメじゃない 本当のことさ
夜明けに部屋を抜け出して 渚でずっと待ってると
とっても すごいものを見たんだ
秘密の話 話すたびに マンガの読み過ぎと言うけど
僕は 絶対に絶対に 嘘なんか言ってない
常識というルールで はかれない世界を
忘れちゃいけないよ 夢を忘れた 古い地球人よ
アニメじゃない アニメじゃない 素敵な世界
アニメじゃない アニメじゃない 現実なのさ
アニメじゃない アニメじゃない 不思議な気持ち
アニメじゃない アニメじゃない 本当のことさ 本当のことさ
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(注)なかには、神が人工物かとか、物質かとか言って、大きな拒絶反応を訴える人もいるだろう。仮に、人間を生み出した創造者が、不完全で問題をはらんだ存在(しかし、人間から見ればそれは驚異的、超越的知や能力を持たれたお方には違いない)だとしても考えようは様々ある。人間は大人になれば体格にしろ、体力にしろ、知識にしろ親を乗り越えるものである。人類が創造者以上に素晴らしい存在に成長すれば、創造者は悲しまれるだろうか? 人間の潜在能力がどれほどのものか、創造者はどこまでご存じなのだろうか?
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