□ お粥
『こちら、田中。応答せよ』
「こちら、ボビー応答したよ」
『中の様子はどうだ』
「人質を取られている模様」
『そうか、そのまま待機して居ろ』
「なんで?」
『後で、応援が来るからな。そのまま動くなよ』
「一歩も動くな、ってことですね」
『そうだ、一歩も動くな』
「お粥は食べて良いですか?」
『ん?』
「……え?」
『今、なんつった』
「お粥を食べて良いかと聞きました」
『なぜ、お粥を持っているんだ』
「お粥が好きだからです」
『もっと集中しろ』
「お粥にですね」
『違う!人質にだ!お粥は何処かにしまっておけ!』
『こちら、田中応答せよ。ボビー』
「はい?もっしー?だれー?」
『え?いや、こちら、田中だが』
「え?田中?あー、高校の時の。久しぶりー」
『あっ、久しぶり』
「え?今、何やってんの」
『今、人質を見張っているのだが』
「へー、何それ。ちょーウケるじゃん」
『あの、ボビーじゃないよな』
「ボビーって何?ねぇ、ミキ、ちょっと来てよー。なんかおもしろいよ、田中」
(え?田中って誰?)
(ほら、高校の時の)
(あー、あのハーフの)
(そうそう)
(あの子、学者になるって言ってなかった)
(え?そうだっけ?)
(で、田中、なんて言ってるの?)
(なんか『ボビーじゃないよね?』だってさ)
(何それー。笑えなーい)
(私って、ボビーじゃないわよね)
(そうそう、ボビーじゃないわ)
(誰よ、ボビーって)
(あんた、田中ってほんとに高校の時の田中なの?)
(え?)
(だって、高校の時の田中ってさ、ボビーって言ったことないわよ)
(そうよね〜、間違い無線機かしら)
(そうよ!絶対そうよ!)
(ヤバイ!私、ちょー普通に喋ってた)
(あんた、ウケるー)
(田中間違いも、ここまで来ると神業だわ)
(そうよ!ちゃんと丁重に断りなさいよ)
(分かったわ。やっぱミキは賢いわ)
(ふふふ)
『あの、ボビー……』
「はいはいはい!ごめんなさいねー」
『ボビーじゃないよな』
「うん、あの、私ね、ボビーじゃないわ」
『えーっと』
「えっとね、田中さんね、多分それ間違い無線機してますよ」
『あー、やっぱり』
「考えてみたら、高校の時の田中はこの世に居ないんだったわ」
『そうですか』
「すいませんね」
『いえいえ、ご迷惑をお掛けしました』
「では、ボビーという人に会えますように」
『あっ、はい、失礼します』
「…こちら、田中応答せよ。ボビー」
『こちら、ボビー応答したよ』
「あの、ボビーすまんな」
『急にどうしたんですか』
「いや、色々あってな。で、人質の様子はどうなってる」
『死にました』
「なんだと!」
『死にました!』
「な、何故だ」
『さあ、それはさすがに僕でも』
「何故、死んだんだ。殺されたのか」
『いや、多分、風邪じゃないですか』
「なんだそれは」
『教官、風邪をご存知なく?』
「知っているが、私が知っているような風邪では死なないのだ」
『…そうですか』
「なぜ、風邪だと思ったんだ」
『風の噂です』
「……。」
『風の噂です!!』
「もういい!(飽きました)」
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