旧約聖書における地震記事
旧約聖書は、読んだ事がないが、竹内均および
Bruce A. Boltという著名な地震学者が、それぞれ1件づつ、その記事と地震との関係を示唆しているので、その部分を抜粋して、以下に示す。また、断層との関連は、十分しらべていないが、現時点での考えられることを示す。(a)
竹内による記事竹内(1988)は、旧約聖書中、モーゼに率いられたイスラエル人が出エジプトし、カナンの地に入った記述において、次のようなに地震が起こったと推定している。
「彼らが最初に占領したのは、エリコの町である。地図を開いてみればすぐわかるように、エリコは死海の北西約11km、エルサレムの北東約24kmにある。南流して死海へ注ぐヨルダン川は、エリコの東10kmのところを流れている。それはヨルダン川の谷の底にある。海面下250mの町である。そのために気候は暑く、また乾燥している。しかし土地は肥えており、四季を通じてさまざまな農作物が採れる。おまけに死海が近いとあって、塩を手にいれることも容易である。彼らはヨルダン川の東から、ヨルダン川を越えてエリコへ迫った。
“契約の箱”をかついだ祭司を戦闘に立てて、ヨシュアの率いるイスラエル人たちはヨルダン川を渡り始めた。驚いたことに死海へ注ぐヨルダン川の水が流れを止めた。祭司たちは、“契約の箱”を川の真ん中に据え、すべてのイスラエル人たちが無事に川を渡りきるまで動かなかった。“エホバの神が私たちを守っていてくださる”と言ってイスラエル人たちは勇気百倍した。しかし行く手には堅く門を閉ざしたエリコの城がそびえ立っていた。この城をどのようにして攻め落としたらよいかで、ヨシュアはあれこれと思い悩んだ。一人の天使が現れて、エリコの攻め方をヨシュアに教えてくれた。奇想天外な方法ではあったけれどもヨシュアはその教えに素直に従った。“契約の箱”をかついだ祭司を先頭に立て、雄牛の角でつくったラッパを吹き鳴らしながら、毎朝ヨシュアの軍隊はエリコの城壁のまわりを静かにまわった。7日目にはそれを7回もくり返した。そこで彼らは立ち止まり、角笛のラッパを吹き鳴らしてからときの声をあげた。とたんに大地が揺れ動き、エリコの城壁が崩れ落ちた。こうしてカナンの地の入口にあるカナン第一の城がイスラエル人たちの手に落ちた。
その時に起こったのは疑いもなく地震である。現在でもこのあたりではかなり大きい地震が起こっている。たとえば1927年にマグニチュード6.2のエリコの地震とよばれる地震が起こっている。1943年に起こったマグニチュード6.0の地震の前には、死海の湖岸の近くに新しい一つの泉が湧き出し、そこからあふれ出た白い物質が湖に流入し、湖水を白濁させた。それから一週間めに地震が起こっている。死海の湖底に堆積した堆積物の中には、いろいろな深さにこれと似た白色の物質が混じっている。これはこれくらいの大きさの地震がくり返し起こったことを示している。
死海を通ってほぼ南北に、死海断層とよばれる断層が走っている。断層に沿った動きは左横ずれ型である。左横ずれ型というのは断層のこちら側に立って向こう側の地面の動きを見た時、それが断層に沿って左向きであるような断層である。一般的に言って、断層に沿ったこのような動きが地震の原因であることが確かめられている。したがってエリコを含む死海の近くで起こる地震をひき起こしているのは、この死海断層に沿った地面の動きである。
もう少し大きく目を見開いてみても、このあたりはいかにも地震の起こりそうな地域である。エチオピアの高地から発して三方へ走る大きい地球の割れ目がある。そこから南へ向けて走るアフリカ大地溝帯、東へ向けて走るアデン湾の割れ目、北へ向けて走る紅海に沿った割れ目が開いて、アラビア半島がアフリカ大陸から遠ざかりつつある。これらはいずれも現在起こりつつある大陸移動である。紅海の北にはシナイ半島があり、そのシナイ半島の東の縁に沿ってアカバ湾が北へ向けて走る。その延長上に死海があると言ってよい。アラビア半島がアフリカから離れ去りつつある運動と関係して、死海断層に沿った動きが左ずれ型になっているのである。アデン湾も紅海も、アカバ湾も死海も、このような大陸移動と関係して新しく生まれつつある海である。」
(b)Bolt
による記事聖書の次の記述について、ボルト(1993)はクイズ形式であるが断層運動と考えている。ただし、縦ずれ、横ずれのどちらかは特定されていない。
「オリーブ山は、東と西に半分に裂け、非常に大きな谷ができる。山の半分は、北へ退き、半分は、南へ退く。−ゼカリア書14.4」
オリーブ山の断層運動形式
オリーブ山は、死海に近い場所にある。死海断層は、竹内(1988)によれば、南北走向の左よこずれ断層であることは、現在の地球物理学から確かなものであると考えられる。よって、ボルト(1993)の考えている上記オリーブ山の地形変動が断層運動によるものであれば、南北走向の断層の東側が北に動き、西側が南側に動いたものと考える事ができる。
文献
竹内均(1988) 地球物理学者竹内均の旧約聖書―私は好奇心に満ちている−、
同文書院、pp.147
ボルト
,ブルース A.(1993) 地震、古今書院、pp.340(松田時彦・渡邊トキエ訳)