Neuron 41 Feb. 5, 2004, pp405-415

アストロサイトとの局所的接触から起こるPKCシグナリングはニューロンの興奮性シナプス発生をグローバルに増幅する

Hiroshi Hama, Chikako Hara, Kazuhiko Yamaguchi & Atsushi Miyawaki

Lab. Cell Function Dynam. Adv. Tech. Dev. Group, Wako-City, Waitama, Lab. Learn. Memory, Brain Sci. Inst., RIKEN, Wako-City, Saitama, CREST, Japan Sci. Tech. Corp., Kawaguchi, Saitama, Japan
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Hamaらはアストロサイト1)が細胞間接着の過程でニューロンのシナプス発生を引き起こすことを明らかにした。アストロサイト用に調整された培養液中で培養されたニューロンにおいて、インテグリン受容体2)を介して局所的に接着したアストロサイトが個々の分散したニューロン内のプロテインキナーゼC(PKC)3)を活性化した。この活性化は最初一点に集中しているが、すぐにニューロン全体に広がる。Hamaらは薬理学的にアラキドン酸カスケート4)を作り出しインテグリン受容を誘発したところ、PKCがグローバルな活性化に応答した。また局所的なアストロサイトとの接触は興奮性シナプス発生をニューロン全体で促進され、この過程はインテグリン阻害剤とPCK阻害剤の両方でブロックされた。このことからPKCシグナリングの伝播は、局所的なアストロサイトとの接触によりニューロンがグローバルに成熟するメカニズムであると考えられた。


1)アストロサイト:神経細胞には電気的信号を伝達するニューロンと、電気的信号は伝えられないがニューロンをサポートする役割を果たすグリア細胞の2種類に大きく分かれる。グリア細胞のうちもっとも大量に脳内に存在し、ニューロンに酸素や養分を供給する役割を果たすのがアストロサイトである。特にニューロンを細胞培養する際、アストロサイトと同時に培養することで生理的機能を保ちやすくできる。
2)インテグリン: 細胞と細胞を接着させる役割をもつ、細胞間接着因子の一つ。
3)
プロテインキナーゼC(PKC): 特定のタンパク質にリン酸基を結合させて機能を変化させる酵素を、プロテインキナーゼと呼ぶ。このプロテインキナーゼには様々な種類があり、このプロテインキナーゼCは日本の生化学研究者、神戸大学西塚教授により発見された、生体に広く分布する大変重要な役割を果たす酵素である。

コメント
Miyawakiらは生きた細胞の中で、蛍光物質が付いた特定のタンパク質を作らせ、その動きを蛍光顕微鏡とビデオ撮影を用いてとらえる、という方法で次々と新しい発見をしてきた。生きた細胞で情報伝播を可視化するこの方法は「バイオイメージング」と呼ばれ、現在では多くの研究室で広く用いられている。タンパク質内の蛍光物質を取り付ける場所は、生理的機能を失わないよう生化学的・構造タンパク的知見を考慮し遺伝子レベルで組み立てられる。例えばカルシウムイオンと結合する性質のタンパク質に、カルシウムと結合するとどのようにふるまうのかを蛍光物質の光を追跡することで調べてきた。この実験では、外部からの刺激やカルシウムにより活性化する、PKCの動きを、蛍光顕微鏡下で美しく光る光の波で捉えている素晴らしい研究である。

Miyawaki氏による研究の紹介
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