Aya ko Yamaguchi, Leonard K. Kaczmarek & Darcy B. Kelley
Dept. Biol. Sci. Columbia Univ., New York, USA, Dept. Pharm. Yale Univ.
Sch. Med., New Haven, USA.
アフリカツメガエルの発声行動は一対の筋肉により形成される。この単一のシステムは他の脊椎動物に比べると、中枢神経系(CNS)1)機能からどのように性特異的な歌が作り出されるかを調べるには、より簡単なモデルといえる。この論文でKelleyらは、発声運動ニューロンにおける幾つかのはっきりとした性差は、オスとメスの声による要求の違いと一致していることを示した。
性の間で活性・不動型の両者へと、興奮性膜の動きが異なっている。オスとメスの間で、発火2)パターンに二つの明確な差が見られた。オスで優位である強い適応性ニューロンは、短いスパイクと信頼性のある潜時3)を示し、一方メスの特徴である弱い適応性のニューロンは、異なる発火率において脱分極4)レベルが基準値であった。低閾値カリウム電流(IKL)5)はオスにおいて優位であったが、過分極4)活性型の陽イオン電流5)(IH)は殆どオスではみられなかった。モデルの結果から、性により典型的な活性および不動型のパターンを示し、特にIKLが、神経の発火パターンを決めるのに重要なようだ。これらの生理的差異は、シナプスからの入力をオス(およびメス)特異的な出力変換―つまり生体外で性的にはっきりと異なる歌を作り出す―を促している。
注釈
1)CNS:Central Nervous System(中枢神経系)の略。末梢神経系の反対語。大脳から直接支配を受ける経路。
2)発火: 外部から刺激を受けるとその電気刺激が神経を伝って伝導される。この時の神経興奮を発火という。
3)潜時: 神経興奮が電気的波形として現れるまでに見られるタイムラグのこと。
4)脱分極・過分極:生理学用語。神経をマイナスの刺激電極で刺激したときに神経内部に流れるパターンを過分極(hyperpolarization)という。これに対して電流の向きを逆さにし刺激電極で細胞膜を内側から外側に流れるような電流を短い時間与えたとき、細胞内の静止電位が変化する時のパターンを脱分極(depolarization)という。
5)カリウム電流・陽イオン電流:神経の興奮伝達は、ナトリウムやカリウムがチャンネルという通り道を通り、そのイオンの動きが電流を作り出している。この神経興奮におけるカリウム電流のこと。IKLのIとはInward current(内向き電流)の頭文字、KLはその電流をつくるイオン(この場合カリウムK+)を示す。IHも同様で、電流を作りだすイオンがH+の場合IH(陽イオン電流)となる。
コメント ♂と♀で異なる歌を歌う動物は数多くいるが、彼らはあえてアフリカツメガエルを使って発声の仕組みの性差を調べた。アフリカツメガエルって鳴くの?と思う人もいるかもしれない。実は鳴くらしく、非常に長いトリル音なんだそうだ。またこの研究者によると、その声帯機能やその支配が哺乳類より単純なため生理学的に調べるにはよい材料だということだ。生理学といえばウシガエルなど跳躍性のカエルの脹脛を実験に使う場合が多かった。アフリカツメガエルは人工繁殖が容易なため、かつては主に発生の分野で用いられた動物であった。近年は実験動物化し入手しやすくなったことから多方面における実験に用いられ、利用価値が再認識されたのだろう。私も一度この声を聞いてみたいものだ。