第1章 学習指導要領を理解する

 

学習指導要領の概要

新しい指導要領は高等学校においては平成15年度4月から学年進行で実施される。小中学校は平成14年度4月から一斉に実施されたが、それ以前も移行措置で進行してきた。

今回の学習指導要領の改訂は、内容の3割減である。これは定着率を上げ、考える力を向上させることを目指している。これを「生きる力」として、以下の3点にまとめた。

その1 みずから課題を見つけ、学び、考え主体的に判断し行動し、問題を解決することのできる力を育成すること。

その2 自らを律し、他人と協調し、思いやりの心を持った、豊かな人間性を育てること。

その3 これらを支える、たくましく生きるための健康と体力をしっかりとつけていくこと。

これは、今の子供たちに欠けている学力は、知識の量や内容ではなくて、基礎的な知識を使って、自分で学ぶ、あるいは、知的好奇心や探究心を身につけることである、ということである。

高等学校での必履修科目、すなわち共通に学ぶ科目と単位数は減少した。多様な興味・関心、進路、理解や習熟に応じて、より深く、あるいはより広く、より基礎的な部分に集中して学ぶこともできるよう、高校の教育課程が弾力化された。

今回の学習指導要領の改訂は、内容の大きな変更は意外と少ない。こどもの生活体験、自然体験の不足、国際化、情報化、完全学校週5日制といった現在の問題に対応したものである。理科に関して、内容に大きな削減はない。他教科も同様である。すなわち、高校卒業時の教科の学習レベルは現状同様である。しかし、選択する生徒数は減少する。

学校の裁量と責任が大きくなった。文部省からの拘束は学習指導要領と解説書がすべてである。そこから何ができるかは学校ごとに創意工夫するようになった。

 

これまでの学習指導要領の改訂

昭和4345年改訂            教育内容の一層の向上

時代の進展に対応した教育内容の導入

教育内容の現代化

昭和5253年改訂            ゆとりある充実した学校生活の実現=学習負担の適正化

各教科等の目標・内容を中核的事項にしぼる

理科Tの設置、必修

平成元年改訂                   社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成

小学校低学年の理科の廃止と生活科の新設、道徳教育の充実

教養的なTA科目と系統性を重視するTB、U

平成10年改訂                 自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成

教育内容の厳選 総合的な学習の時間の新設

                                           理科基礎、理科総合A,Bの新設、必履修


 

1 改定の経緯

(1)生きる力と理科

 中央教育審議会は第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」を1996年(平成8年)7月19日に文部大臣に提出した。この答申に基づき、教育課程審議会は1998年(平成10年)7月29日に「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」答申を行ない、教育課程の基準の改定が示された。そして、学校現場などの意見をまとめたうえで、高等学校学習指導要領が平成11年3月29日に文部省告示として発表された。続いて、高等学校学習指導要領解説が平成11年12月28日に発行された。

 また、教育課程審議会から「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価のありかたについて」が平成12年12月に答申された。そして、指導要録の改善(通知)が平成13年4月27日付の文部科学省初等中等教育局長より「高等学校生徒指導要録に関する通知」で各都道府県及び市町村の教育委員会へなされた。

 これらをうけて、「長野県高等学校教育課程編成の手引き」が長野県教育委員会で平成13年3月に作成された。

 中央教育審議会答申では「生きる力」を次のように述べている。

 

 今後における教育の在り方として、[ゆとり]の中で、子供たちに[生きる力]をはぐくんでいくことが基本であると考えた。そして、[生きる力]は、学校・家庭・地域社会が相互に連携しつつ、社会全体ではぐくんでいくものであり、その育成は、大人一人一人が、社会のあらゆる場で取り組んでいくべき課題であると考えた。

 これからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。

 

すなわち、次の3点を持って生きる力としている。

その1 みずから課題を見つけ、学び、考え主体的に判断し行動し、問題を解決することのできる力を育成すること。

その2 自らを律し、他人と協調し、思いやりの心を持った、豊かな人間性を育てること。

その3 これらを支える、たくましく生きるための健康と体力をしっかりとつけていくこと。

 

生きる力をはぐくむために理科教育が直接関わることは多い。以下「今後における教育の在り方の基本的な方向」より引用であるが、理科教育そのものである。新学習指導要領の実現と、さらに、よりよい教育の実現のために、理科教育への期待と責任を感じるものである。

 

[生きる力]は、全人的な力であり、幅広く様々な観点から敷衍することができる。
まず、[生きる力]は、これからの変化の激しい社会において、いかなる場面でも他人と協調しつつ自律的に社会生活を送っていくために必要となる、人間としての実践的な力である。それは、紙の上だけの知識でなく、生きていくための「知恵」とも言うべきものであり、我々の文化や社会についての知識を基礎にしつつ、社会生活において実際に生かされるものでなければならない。
 [生きる力]は、単に過去の知識を記憶しているということではなく、初めて遭遇するような場面でも、自分で課題を見つけ、自ら考え、自ら問題を解決していく資質や能力である。これからの情報化の進展に伴ってますます必要になる、あふれる情報の中から、自分に本当に必要な情報を選択し、主体的に自らの考えを築き上げていく力などは、この[生きる力]の重要な要素である。
 また、[生きる力]は、理性的な判断力や合理的な精神だけでなく、美しいものや自然に感動する心といった柔らかな感性を含むものである。さらに、よい行いに感銘し、間違った行いを憎むといった正義感や公正さを重んじる心、生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観や、他人を思いやる心や優しさ、相手の立場になって考えたり、共感することのできる温かい心、ボランティアなど社会貢献の精神も、[生きる力]を形作る大切な柱である。

 

(2)学習指導要領の改訂

 今回の学習指導要領の教科に関する改正点は、義務教育の内容の3割減である。これは、定着率を上げるとともに考える力の向上を目指している。

 内容の3割減から、新しい高校理科は現行の中学から始まると考えたほうが近い。

これは理科に限ったことではなく、算数、数学、国語でも影響が大きく、計算や数値の感覚、読解力などの低下が予想される。一方、定着率と考える力の向上から、学習した知識を活用ことや、自ら課題を見つけ、問題を解決する経験は、豊かになるはずである。

 高等学校で、共通に学ぶ科目、単位数は減らした。多様な興味関心、進路、理解や習熟に応じて、より深く、あるいはより広く、より基礎的な部分に集中して学ぶこともできるよう、高校の教育課程が弾力化された。弾力的な学習指導要領を生かしながら、どう進路を保証するか、学習指導、進路のガイダンスを子供たちにおこない、将来必要な学習分野はしっかり身につけさせなければならない。

 学校教育は各学校が行なうことは当然のことだが、学校の判断と責任が大きくなった。教育課程も含めた教育内容については、学習指導要領に基づき、各学校が創意工夫して決定する。たとえば、現行のその他の教科・科目は、名称、目標、単位数など設置者が決定したが、新学習指導要領で示された学校設定科目は、すべて学校が決定する。県教育委員会など設置者の役割は学習指導要領では述べられていないが、人事や予算及び一般的な意味での、学校教育法による管理を行なう。

学校の責任と判断という制度では、計画、実施内容そして結果と評価に責任を持ち、生徒、保護者はもちろん地域などの外部や県教育委員会に対して説明責任を負う。明確な意図、手続きを経た決定、必要な書類の作成と保管などが必要である。

 教育問題が政治的、社会的に大きくとりあげられるなかで行なわれた今回の改訂であるが、教科に関しては、内容の変化は少ない。まず、授業時数の削減は、完全学校週5日制の実施に伴い、必然的に行なわれるものである。また、こどもの生活体験、自然体験の不足、社会の国際化、情報化、といった現在明らかになった状況に対応して、変更がなされた。

 理科に関しても、内容の大きな削減はない。従来の教科内容を踏襲し、必要な変更がなされたものである。すなわち、履修した生徒にとって、高校卒業時のレベルは現行同様である。しかし、選択が大幅に取り入れられたことから、選択する生徒は減少することのなろう。また、学校の創意工夫と、生徒の興味、関心、進路に応じた学習が大きく取り入れられたため、学習のレベルや内容は、学校や生徒により変わるものである。

他教科についても、大きな変更はない。

 

(3)理科の改定の基本方針

 教育課程審議会答申において示された高等学校はじめ小中学校まで含めた理科の改善の基本方針は以下のとおりである。知的好奇心、自然体験やに日常生活との関連、問題解決能力などが注目される。

(ア)小学校、中学校、高等学校を通じて、児童生徒が知的好奇心や探究心をもって、自然に親しみ、目的意識をもった観察、実験を行うことにより、科学的に調べる能力や態度を育てるとともに、科学的な見方や考え方を養うことができるようにする。

(イ)そのため、自然体験や日常生活との関連を図った学習及び自然環境と人間とのかかわりなどの学習を一層重視するとともに、児童生徒がゆとりをもって観察、実験に取り組み、問題解決能力や多面的・総合的な見方を培うことを重視して内容の改善を図る

 これを踏まえ、理科の学習指導要領の基本方針を次のように定めた。

(ア)知的好奇心や探究心を高める。

(イ)自然を探究する態度や能力、問題解決能力を育成するとともに、科学的な見方、考え方を養う

(ウ)日常生活との関連を重視するとともに、自然を総合的に見る見方を育てる。

(エ)観察・実験を一層重視する。

 

(4) 高校理科の目標

新学習指導要領 高等学校理科 目標は次のとおりである。

 自然に対する関心や,観察・実験などを行い,科学的に探究する能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め,科学的な自然観を育成する。

 理科の目標は総合的な目標であり、これを受けて各科目ごとに具体的な目標が設定されている。この目標は、小中理科の目標と関連を図りながら高等学校理科のねらいを述べたものであり、以下の4点に要約することができる。

(ア)目的意識をもって実験観察などを行なうことにより、知的好奇心や探究心を喚起し、自ら学ぶ意欲を高め、自然を主体的に学習しようとする態度を育てること。

(イ)実験・観察を通して探究活動を行い、科学的に自然を調べる方法を身に付けるなど、案給する能力と態度を育てるとともに、問題解決能力を養うこと。

(ウ)自然にかかわる基礎的・基本的な学習を通して自然の事物・現象に見られる原理や法則などを理解し、自然の仕組みや働きについて分析的かつ総合的に考察する能力を養い、さらに進んで化学的な自然観を育成すること。

(エ)多様な自然現象について客観的に考察して合理的に思考する能力を育成するとともに、科学や自然と人間とのかかわりの視点に立ち、自然を総合的にみる見方や科学的なものの見方を育成することを重視すること。

この目標は次のように改善された。

自然に対する関心や探究心を高め、観察・実験などを行い、自然を探究する能力や態度を育成することを重視した。また、科学や自然と人間とのかかわりなどの視点に立ち、自然を総合的にみる見方や科学的なものの見方を育成することを重視した。

文言の上では、現行の目標に、「探究心を高め」を追加した。小学校では観察・実験を「見通しをもって行う」中学校では「目的意識をもって行う」高校では「探究心を高める」ということで同じねらいを共通している。


 

2 理科の構成と内容

(1)科目の構成

 「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」を新設した。物理、化学、生物、地学の4分野は、それぞれTを付した科目とUを付した科目を設定した。

現行

新学習指導要領

科目名

標準単位数

科目名

標準単位数

総合理科

理科基礎

物理TA

理科総合A

物理TB

理科総合B

物理U

物理T

化学TA

物理U

化学TB

化学T

化学U

化学U

生物TA

生物T

生物TB

生物U

生物U

地学T

地学TA

地学U

地学TB

 

 

地学U

 

 

 必履修科目は、「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」、「物理T」、「化学T」、「生物T」、「地学T」から2科目とするが、この2科目に「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」のいずれか1科目以上を含むものとする。これは、より幅広く、より基礎的な自然科学の能力が身につくようにするものである。

 理科全体の内容は従来同様であり、大きな削減はない。従来の教科内容を踏襲し、必要な変更がなされたものである。すなわち、履修した生徒にとって、高校卒業時のレベルは現行同様である。しかし、選択が大幅に取り入れられたことから、選択する生徒は減少することのなろう。また、学校の創意工夫と、生徒の興味、関心、進路に応じた学習が大きく取り入れられたため、学習のレベルや内容は、学校や生徒により変わるものである。

 

(2)科目の新設

 今回の改訂では、「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」の3つの科目が新設された。この3つの新設科目は、いずれも2単位であり、3科目の中から最低1科目は必履修である。新設科目は、理科の物理・化学・生物・地学の分野にこだわらない総合的な科目である。今までの物理・化学・生物・地学といった分野にとらわれない新しい形の新設科目が必履修になったことを、生徒や学校の実態に応じて、活用することができよう。広く、浅く、及び学びやすく、親しみやすい内容であり、教養的な科目である。自然科学の見方、考え方を身につける。数式や用語は限定されるが、高度な概念まで扱うことができる。たとえば、「理科基礎」の化学は全分野にわたり、「理科総合A」ではエントロピーの概念まで発展できる。

 「理科総合A」の分野は物理、化学であり、中学理科の第1分野に当たるが、生物、地学を中心とした「理科総合B」とともに理科の4分野を、単に二分したのではない。目標における「理科総合A」及びBの共通点は、自然の事物・現象に関する観察・実験などを通して自然の事物・現象について理解させるとともに、人間と自然とのかかわりについて考察させ、自然に対する総合的な見方や考え方を養うことにある。自然科学の基礎的、基本的な知識を精選して身につけさせ、自然を探究する方法を、数値の処理やグラフの表現など基礎的な力を含め、身につけさせ、報告書にまとめたり、発表を行うことで、知的好奇心、問題解決学習能力を養う。すなわち、自然科学を総合的に扱い、基礎的な日常生活との関連や身近な事物・現象についての理解を無理なく行わせながら、発展的な高度な理解へつながる可能性を持った科目である。

 「理科基礎」は、科学と人間のかかわりを考察させるとともに、過去において自然観を大きく転換させることになった物質の成り立ちの研究、細胞の発見や進化論、エネルギーの考え方の確立の過程、地動説やプレートテクトニクスなどを取り上げて扱い、科学的な見方や考え方を育成する。

 「理科基礎」は、最終学年の3学年で履修しても趣旨が生かせる。すなわち、履修しなかった理科の分野や、教養的な自然科学、4分野にとらわれない総合的な学習といった様々な可能性がある。また、例えば理系進学を希望する生徒は、進路に応じた分野の、発展的、応用的な内容を学習できよう。新設科目の内容は基礎的、基本的であり、中学からの移行内容が多く含まれている。自然科学の入門として、特に高校での理科の学習の動機が不十分な生徒に対して、中学から高校への橋渡しになる。また、新設科目の履修だけで、高校の理科を終える生徒もいる。将来にわたって自然科学に対する関心を持ち続け、必要なときに学習ができるよう、生涯学習の中で、高校理科を位置付けたい。

 「理科基礎」では4分野、「理科総合A」、及び「理科総合B」ではそれぞれ2分野が中心なので、理科の広い分野を学ぶことができる。物理、化学、生物、地学各分野の、体系的なアカデミックな構成の基礎的な内容を扱い、Tを付した科目へ直接つなげることもできる。この場合、Tを付した科目と、内容の一部、およそ30%は重複することとなる。このように新設科目は、多くの可能性をもち、それぞれの学校の教育目標と実態に合わせて、柔軟に対応することができる。

 以下、中央教育審議会答申より関連部分を抜粋する。

 高等学校については、生徒の能力・適性、興味・関心等の多様化の実態を踏まえ、生徒の選択をできるだけ生かし得るような教育課程の編成が望まれる。したがって、生徒が共通に学ぶものは最小限にとどめる必要があると考えるが、科学と人間や自然とのかかわりについて適切な知識を持っておくことの必要性や、そのことを理解するために求められる科学に関する知識のレベル等を考慮すると、高等学校の段階で、中学校の理科の基礎的な学習の上に、例えば、科学がこれまで、自然の謎の探究・解明にいかに挑戦し、文明の発展に寄与してきたか、また、今日、科学が人間の生活にどのようにかかわり、どのような課題に直面しているかなどを学ばせることが必要であろう。その基礎の上に、生徒の能力・適性、興味・関心等に応じて、さらに専門的な学習に進んでいけるような履修の仕組みを高等学校段階で整えることを検討する必要があると考える。

 


 

3 科目の概要

 「理科総合A」、「理科総合B」、「理科基礎」は基礎的基本的な内容で構成されている。現行の高校理科の基礎的な部分を再構成したものというより、現行の中学程度の知識を高校理科の見方、考え方へ発展させるものと考えたほうがよい。「理科基礎」の履修は3年でも可能である。

 T、Uを付した科目は名称を引き継いでいることわかるように、基本的には現行のTB・Uを再構成したものである。従来のTBを付した科目の4単位は、文系の生徒には内容が高度になってしまった。そこでTを付した科目は日常生活に即した内容にし、より多くの生徒が学習できるよう、内容を厳選し、標準単位も3単位に減じた。Uを付した科目は、理系の生徒対象に、従来通りアカデミックな内容を維持した。標準単位数も3単位に増やした。

 「物理T」、「化学T」、「生物T」、「地学T」といったTを付した科目も、現行の中学程度から始まる。構成の形式や内容に科目間の差異を感じる。また、今回の学習指導要領は、学習指導の方法まで踏み込んでいる。

 「物理T」は、特に中学からの移行統合内容が多い。物理の専門にこだわらず、幅広い生徒が興味を持って学べるようにした。

 「化学T」は、内容は現行と同様だが、応用や生活との関連を重視した。

 「生物T」は、現行と同様だが、バイオテクノロジーや遺伝子など現代の生物学を考慮した。

 「地学T」は、地学の全分野を扱うようになり、地学のさまざまな分野に興味を持った生徒が学べるようにした。

 Uを付した科目に項目選択を導入した。なお、増加単位で両方の項目を学ぶことは可能である。課題研究では、「研究報告書を作成させ研究発表をおこなわせる、適切な時期に行う」ことを追加した。

 「物理U」、「化学U」、「生物U」、「地学U」といったUを付した科目は、現行程度または、より高度な内容が可能になった。学習指導要領では内容の大筋を示している。

 

(1) 理科基礎

 中教審の答申を反映した科目である。科学が文明の発展に寄与してきたことや、人間生活とどのように関わり、どのような課題に直面しているか高校段階で学ぶべき、エポックメーキングな科学史としたい。また科学に対する批判力を養うことも目的としたい。

理科は苦手でも理科基礎は楽しく学べ、数式等は出てこない。観察実験を通して学ぶが、内容によってはコンピューターによるシュミレーションを活用する。

他の科目との履修の順序性はないため、新設2単位科目の中で唯一3年次におくことが可能である。

人名、年代等を暗記させる学習を行うのは避けてほしい。

(1)科学の始まり 導入、探究的に扱う。

(2)自然の探究と科学の発展 物理、化学、生物、地学の分野に対応した4つの中項目から構成され、教科書で選択を義務付けた。何でも扱えるが、難しくなりすぎないよう留意が必要である。

(3)科学の課題とこれからの人間生活 課題研究的に扱う。

 

(2) 理科総合A

 主として物理、化学であり、エネルギーと物質について学ぶ。科学的なものの見方や考え方として必要な客観的・論理的・実証的の三つの要素を育成し、科学の基礎概念や原理・法則を厳選して学習し、科学的に調べる能力と態度すなわちスキルを身に付けさせ、問題解決能力を最終的に目指したい。内容は物理・化学が中心だが、一部に生物・地学も含まれている。

(1)自然の探究 導入。探究活動を経験する。

(2)資源エネルギーと人間 自然界をエネルギーという共通の概念でみると様々な現象が関連している。現象からはじまり、理論へすすんでいく。中学校からの移行項目「仕事と仕事率」を受けている。

(3)物質と人間生活 理論からはじまり、現象へ進んでいく。化学的な内容に偏らないように半導体・磁性体という物理的な内容や、微生物の利用など生物的な内容を含んでいる。

(4)科学技術の進歩と人間生活 課題研究的に扱う。

 

(3) 理科総合B

 分野としては生物・地学になった。理科総合Bのコンセプトは明快である。それは、地球の誕生から現在に至る時間の流れ、というようにストーリー性があること、自然に対する総合的な見方を多様性と共通性、変化と平衡で養うことの2点である。環境問題を学ぶことができる科目であり、環境については生物や地学Tにもあるが、履修率を考えればこの科目の重要性が伺える。

(1)自然の探究 導入。探究の仕方はAと異なり、文献の利用に触れ、すべての内容が観察実験できるわけではない部分を示している。

(2)生命と地球の移り変わり 地球の誕生から現在にいたる過程を多様性と共通性、変化と平衡から扱う。「生物の進化」では放射エネルギー、光といった物理的な内容を含む。

(3)多様な生物と自然のつり合い 現在の地球が多様性と共通性、変化と平衡から成立している。生態系は、中学および生物Tからなくなり、この科目以外では生物Uで扱う。

(4)人間の活動と地球環境の変化 課題研究的に扱う。例示は@人間の活動が主な誘引となる観点 A自然現象が主な誘引となる観点 B人間の活動と自然現象が複雑に影響しあって引き起こされると考えられる観点の3要素を取り上げた。

 

(4) 物理T

 中学からの移行統合内容が多く、現行から大きく削減された。内容は現在の中学程度と考えたほうが近い。物理選択者を増やしさらには理系へ進む生徒を増やしたい。従前は、内容、特に数式が多すぎ、物理の本質の楽しさを教える時間が少なすぎた。内容はやさしく質は高いことを目指した。

内容は、動機付けとして日常生活に役立っている「電気」からはじめる。電気に続いて身近な物理現象として「波」を取り上げる。内容をやさしくし、特に波動の式を扱わない。概念を理解させることを優先させた。波は物理Uにはない。「物体とエネルギー」について、物体の運動も摩擦を伴う直線運動など実際に起こる現象を定性的に扱う。エネルギーについては定性的には理科全体で詳しく扱うようになった。不足する内容は、生徒の求めに応じて補っていけばよい。

 

(5) 化学T

 化学と日常生活の関連を重視する考え方を取り入れた。「物質と人間生活」が最初に置かれ、化学が生活を豊かにしてきたこと、危険物は正しく扱うことなどを触れる。化学結合は化学Tからなくなったが、必要な内容は扱うことができ、現行と同様になった。イオンは中学からの移行内容である。「純物質と混合物」「気体の性質」もUへ移行した。目に見えないものの振る舞いに1年の約1/3を費やすことを改善し、より物質に触れさせたい。「物質の種類と性質」「物質の変化」は現行と同じ扱いであるが、項目を減らし、内容の厳選を示し、内容が膨らむのを抑えた。

 

(6) 生物T

 生物T、Uは極力、内容の重複を避けて構成した。その中で、TはできるだけやさしくUは高度なものもあつかえるようにした。「生命の連続性」におけるDNAの構造については、二重らせん構造に触れる程度にとどめることと内容を制限したものであるが、新たに扱えるようになった。バクテリオファージの宿主細胞への感染・増殖などは社会的要請に基づく学習内容といえる。「環境と生物の反応」は人間生活との関わりに配慮した。人の健康との関連にも簡単に触れること、糖尿病など人の健康とのかかわりについても簡単に扱うなどとした。

 

(7) 地学T

 地学はTとUでほぼ同じ内容のものをTは基礎的Uは発展的に扱うようにした。地学Tは発展的に膨らまないよう留意が必要である。また、地学全体として環境問題に配慮した。

野外観察は内容の一部である。環境教育の知的基盤として、オゾン層の破壊やエルニーニョ現象も扱う。

 

(8) 物理U

 物理Tと異なり内容的に難しくなっても良い。物理Uを履修すれば、現行と同じレベルになる。「力と運動」で力学が、「電気と磁気」で電磁気学が完成する。「物質と原子」および「原子と原子核」は大項目選択であり、電子を扱うという面では、両項目に共通部分がある。「素粒子と宇宙」は高校生が現代物理学に触れ、夢を持つために特に加えた。

 

(9) 化学U

特に生活や実用性との関連を重視して構成されている。「物質の構造と化学平衡」における「物質の構造(化学結合、気体の法則、液体と固体)」は現行化学TB。「化学平衡」は現行化学U。「生活と物質」および「生命と物質」は大項目選択である。現行同様だが、日常生活との関連が強調されている。生活の中で役立っている化学の側面を学習し、一般の人たちがもちつつある化学アレルギーを払拭したい。化学系へ進学する学生の減少に歯止めをし化学の発展を妨げる要因を緩和してくれるだろうという大学側の要望もあった。内容については、Uということもありかなり発展的な内容も扱える。「生命の化学」では生物Uと重複しないよう配慮した。「薬品の化学」アスピリンなど現行程度の内容で扱う。高分子や生化学はこの項目選択の両方に共通した内容である。

 

(10) 生物U

 「生物現象と物質」について「タンパク質と生物体の機能」の同化と異化など生化学的な内容は現行TBからの移行項目であるが、Uで扱うという事で深めて扱える。とくに光合成や呼吸のしくみは深められる。代謝を理解するために必要な最小限の化学の基礎知識にふれること、は新たに付け加わったものである。「遺伝情報とその発現について」は形質発現の調節と形態形成や、転写レベルの調節の仕組みなど、最先端の生物学の進歩を取り入れ、「バイオテクノロジー」項目として新たに起こした。「生物の分類と進化」は現行生物Uと同様。「生物の進化」や「生物の集団」(生態)など重要な教養が生物Uで扱うようになった。

 

(11) 地学U

 地学に興味関心の強い生徒が選択するのであるから、発展的で深い扱いでもよい。3つの大項目から二つ選択という項目選択は地学独自であり、これは地質、天体、気象の各分野が独立性を考慮した。

地質・地球「地球の探究」ではプリュームテクトニクスなど深い扱いが可能になった。気象「地球表層の探究」では現行同様の内容はより深めて扱う。「気象と海洋の観測」項目新設。

天文「宇宙の探究」では現行同様の内容はより深めて扱う。「天体の様々な観測」は項目新設。宇宙の大規模構造など宇宙論など最近の成果を取り入れ、内容を深めて扱う。

 

4 教育課程の編成

学校の教育課程は、学校の責任において、学校が適切に行なうものである。同時に、学習指導要領を理解することは、それぞれの学校教育にとって、必要かつ有益である。それぞれの学校の目指す教育を、学習指導要領を利用して実現する、と言い換えてもよい。ここでは、学習指導要領の意図する理科教育を述べる。

 

(1)3年間を見通した履修計画

ア 理科の必履修科目

 必履修科目は、「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」(以上2単位)、「物理T」、「化学T」、「生物T」、「地学T」(以上3単位)から2科目とするが、この2科目に「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」のいづれか1科目以上を含むものとする。これは、より幅広く、より基礎的な自然科学の能力が身につくようにするものである。現行のTBを付した科目の4単位が新課程のTを付した科目では3単位になり、幅広い分野の履修ができるようになった。

 

イ 幅広く履修と深く履修

 「理科総合A」または「理科総合B」と、物理、化学、生物、地学のTを付した科目の関係を考える。

 「理科総合A」と「生物T」を履修すると、物理、化学、生物の3分野を学ぶことができる。「理科総合A」と「地学T」や「理科総合B」と物理または化学の組み合わせも同様に広く学ぶことができる。

 「理科総合A」と「化学T」の履修の組み合わせは、化学分野を重点的に深く学ぶことができる。同様に、「理科総合A」と「物理T」、「理科総合B」と「生物T」または「地学T」の組み合わせは、それぞれ物理、生物、地学の分野を深く履修することになる。また、Uを付した科目は、現行の2単位から3単位に増加した。Uを付した科目では大項目の選択があるが、選択を行なわない場合は4単位が必要であり、増加単位で対応することになる。特に、将来理系に進む生徒に対しては、じっくり学んでほしい。内容は現行のTBからの移行項目があるが、科目によっては、Tを付した科目との関連で、より深い学習が可能である。「化学U」は、日常生活との関連が重視されるが、理論的な基礎と物質の性質は「化学T」で扱っている。「地学U」は、「地学T」と同様地学の全範囲を対象にするが、大項目の選択により、生徒の求める分野を重点的に学習する。

 学習指導要領の意図としては幅広く学ぶ方向である。幅広く履修か、深く履修かということは、学校の意図でもあり、生徒個人の進路によっても異なる。また、実現可能な講座を考えなければならない。

 

ウ Tを付した科目とUを付した科目の関連を考える

 従来の形から考えて、第1,2学年でTを付した科目を履修し、第3学年でUを付した科目という教育課程が基本になろうが、学習効率を考慮すると、Tを付した科目とUを付した科目は、連続して履修したい。

 たとえば第1学年で「化学T」を履修すると、第2学年では「化学U」と、その他のTを付した科目、たとえば「物理T」を履修する。さらに第3学年では「物理U」と、さらにもう1科目のTを付した科目、この例では「生物T」や「地学T」が履修できる。すなわち2分野をTUを通して完成させ、さらに1分野はTを付した科目を履修する。多くの学校で第2,3学年では科目の選択の幅が広がるだろうが、そのためには、第1学年でTを付した科目を履修したほうがよい。なお2単位科目の必履修を考えると、第1学年における理科の単位数は5単位がのぞましい。

 

エ 「理科基礎」の履修を考える

 「理科基礎」の場合は「理科総合A」 「理科総合B」と違って、3年で学ぶこともできる。

 「理科総合A」及び「理科総合B」は、同一の分野のTを付した科目に先立って履修することが望ましい。「理科総合A」や「理科総合B」の、Tを付した後に履修は、良いとか悪いとかいう話ではなく、学習計画がたてにくい。

 

(2)指導計画作成上の配慮事項

ア 単位数

 教科、科目の単位数の決定は、各学校の責任で行なう。総則(第2款)において、以下のように示されている。

 各学校においては,教育課程の編成に当たって,生徒に履修させる普通教育に関する各教科・科目及びその単位数について,次の表に掲げる各教科・科目及び標準単位数を踏まえ適切に定めるものとする。

 

(ア)減単位について

 必履修の科目、「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」のような、標準単位数が2単位である必履修科目は減単位はできない。必履修の3単位以上の科目、すなわちTを付した科目の減単位は、総則(第3款)に、生徒の実態及び専門教育を主とする学科の特色等を考慮し,特に必要がある場合には,標準単位数が2単位である必履修教科・科目を除き,その単位数の一部を減じることができる、と示されている。減単位ができる場合は、専門教育を指導する学科の特色や多様な生徒の実態を考慮し、いちじるしく履修が困難な場合など、特に必要のある場合に限定されていると受け取らなければならない。

 必履修でない科目の減単位については特に示されていない。しかし、標準単位以下の単位数で、科目の内容を履修することは困難であろう。安易な減単位は避けなければならない。

 

(イ)増加単位

 単位数を標準単位を超えて増加させることは、たとえばUを付した科目を大項目の選択しないですべてを学習する場合には4単位とすることなどが考えられる。「理科総合A」や「理科総合B」、「理科基礎」の観察・実験を十分行なうことや、Tを付した科目の基礎、基本をしっかり学ぶ、探究活動をより深く行なうなど、学習効果を高めるために、増加単位は活用できる。

 

イ 分割履修

 各教科・科目の単位数配当する場合、2以上の学年で分割して履修する場合もある。また各教科科目の授業を特定の学期に行うということも可能である。たとえば学年を前期・後期と分けて、総合科目(「理科総合A」、「理科総合B」、「理科基礎」)を前期に履修し後期にTを付した科目を行なう、あるいは前期にTを付した科目を履修し後期にUを付した科目を学ぶなどが可能である。

 しかし、分割履修はただ数字をあわせと、編成しやすくなるからといって、安易に分割することは適当ではない。

履修の順序は、Tを付した科目とUを付した科目で、指定があるが、教育課程表上は、Tを付した科目とUを付した科目が同一学年に並ぶ場合もある。この場合も、前半でTをやって、後半でUをやるということになる。また、

「理科総合A」,Bは、基本的にはTを付した科目より基礎的基本的な内容で構成されていることに留意する必要がある。「理科基礎」は将来理系に進む生徒が科学に対する興味関心を高めることをねらいとして他の科目を履修した後でもまた並行して選択履修すること等も考えられる。

なお、長野県では、分割履修は可能であるが、重習は制限がある。教育課程編成の手引きには、以下のように述べている。

必履修科目を一旦履修して科目の目標を達成した後に、再度、選択科目として履修することは「重習」となるので行なわない。ただし、項目を選択して履修する次の科目(項目選択科目)については、重習とならない配慮のもとに、再度選択科目として履修することができる。

理科で該当する科目は、「理科基礎」である。

 

ウ 科目の履修の順序と履修学年

 理科の各科目の履修に学年指定はない。履修の順序は学習指導要領(理科 第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い より)に、Uを付した科目はTを付した科目を履修した後に学習するよう定められている。

指導計画の作成に当たっては,「物理II」,「化学II」,「生物II」及び「地学II」の各科目については,原則として,それぞれに対応するIを付した科目を履修した後に履修させるものとする。

これは、Uを付した科目の内容は、Tを付した科目の内容をさらに発展させた内容から構成されているからである。

 その他の科目については、履修の順序は示されていないが、「理科総合A」及び「理科総合B」は、対応する物理、化学、生物、地学のTを付した科目より基礎的な内容で構成されているため、Tを付した科目のあとに履修することには難がある。Tを付した科目の後に総合科目を学ぶ場合は、「理科基礎」が無難である。Tを付した科目の後に、対応する分野の「理科総合A」または「理科総合B」を学ぶ場合は、学習の目的を明らかにし、学習内容を考慮しなければならない。

 「理科基礎」は、科目の趣旨から、3年で履修してもよい。すなわち、履修しなかった理科の分野や、教養的な自然科学、4分野にとらわれない総合的な学習といった様々な可能性がある。また、例えば理系進学を希望する生徒は、進路に応じた分野の、発展的、応用的な内容を学習できよう。

 

エ 学校設定科目

 学習指導要領の考え方は、共通の部分は最小限におさえ、後は生徒や学校の実態に応じてできるだけ幅広く履修できることである。すなわち、学習指導要領にない内容も、学校設定科目として、学習させる事ができる。

 

オ 校外の自然あるいは施設の活用

 校外の自然については、「地学T」は、内容として野外観察が必修の項目で指定され、探究活動について、「生物T」では調査、「地学T」では野外観察の要素が示されている。「生物U」、「地学U」の課題研究には、選択の項目としてある。

 子どもの自然体験の不足を、学校教育が対応しなければならないわけであり、意図的計画的に生徒に自然体験を経験させることが課題になっている。

 校外の施設としては、博物館、研究所、企業、他の学校などが考えられる。教育センターを利用している学校もある。企業との接触は、就職活動にも利用できる。

 大学も校外の施設の1つであり、例えば大学の先生を招く、子どもが大学に行って大学で講義を受けるなどがある。大学も学外との交流は積極的に取り組んでいるため、敷居の高さを意識せず、アプローチしてほしい。大学で学んだ成果を高等学校の単位として認めることも可能となった。単位の認定については、「学校外における学修の単位認定の基準」(教育課程編成の手引き 資料)に記載がある。

 

カ 生命の尊重と自然環境の保全

生命の尊重や、自然環境の保全に対する態度の育成にも留意すること。使用薬品等の管理や廃棄についても、適切な処置を講ずること。

 化学薬品の適切な管理は、「化学T」で扱うが、実験で使った廃液の処理を正しく行なうことは、教育的にも大切であり、廃液処理そのものも授業で扱える。野外観察調査については事故に十分注意することが大切である。

 

キ 自然科学的な観点

 環境問題や科学技術の進歩と人間生活に関わる内容などについては自然学的な見地から取り扱うこと。あくまでも理科であるから、から扱う。言い換えると、多様な考え方のある環境問題について、科学的な見方、考え方を示すことが、環境教育に対する理科の最低限の役割であろう。

 

ク コンピューターやインターネットの利用

科目の指導に当たっては、観察・実験の過程での情報の収集・検索、計測、結果の集計・処理などにおいて、コンピューターや情報通信ネットワークなどを積極的に活用すること。

 コンピューターは実験・観察に換わるものではないことが基本である。しかし、理科においても理論や仮説のシミュレーション、統計処理、情報の収集、発表など、コンピューターを利用していきたい。長野県ではコンピュータルームの設置、インターネットの接続はすべての高校で整備された。今後は各教室へコンピューターやプロジェクターが入り、LAN、光ファイバーが整備されよう。また、文部科学省では、科学技術関係の研究機関に蓄積されている最先端の科学に関する情報を活用し、児童生徒にわかりやすく理科を教えるためのデジタル教材ソフトの開発も各方面で進んでいるということである。

 

ケ 最低基準の明確化

 学習指導要領に示す各教科、道徳及び特別活動の内容に関する事項は、特に示す場合を除き、いずれの学校においても取り扱わなければならない。特に必要ある場合には、指導要領に示していない内容を加えて指導することもできる。全国全ての児童生徒に対し、共通に指導する必要があるという意味において学習指導要領は最低基準としての性格を有している。

 

(3)学習指導上の留意事項

ア 授業の基調を変えること。

 多くの知識を教え込むことになりがちであった教育の基調を転換し、自ら学び、自ら考える力を育成すること。教育課程審議会答申(改善のねらい)にあるように、自ら学び、自ら考える力を育成すること。知的好奇心、探究心を意識すること。高校理科の場合は、探究活動と課題研究にあたり、質を重視される。

 学習指導要領どおり行なえば、「授業の基調を変える」ことになる。高校の理科の場合すべての授業を探究活動にすることはできないが、探究活動を必ず生徒が経験するようにする。

 

イ 観察・実験を一層重視し、自然を探究する力を育成する。

(ア)自然に対する関心と探究心を高める

 教育課程審議会答申における「知的好奇心・探究心を持って自ら学ぶ意欲や主体的に学ぶ力を身につける」ことが提言された。改定にねらいに「自ら学び自ら考える力を育成する」ことがあげられた。理科の目標、Tを付した科目及びUを付した科目の目標に、「探究心を高め」を入れた。生徒が自ら進んで自然を探究していくという姿勢が明確になった。

 

(イ)観察・実験の一層の重視

理科の目標、Tを付した科目、Uを付した科目の目標に、「観察・実験などを行い」と入れた。「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」の目標では「実験・観察などを通して」と記述した。大項目のねらいや、内容の取り扱いでも同様の記述がある。これらは、観察・実験が内容の一部であることを示している。つまり、各項目の内容を学習する時は、必ず観察・実験を一体として行わなければならないし、実験・観察を行なわなければ、科目の内容を履修したことにならない。

 

(ウ)探究活動、課題研究の一層の重視

 探究活動はTを付した科目にあり、中項目に相当する。課題研究はUを付した科目にあり、大項目に相当する。相当する量を教科書に確保するであろう。学校でも探究活動は中項目、課題研究は大項目であるということをふまえて行なわなければならない。

 探究活動は、中項目であるが、当該大項目の他の中項目の学習とあわせて行なうか、または探究活動を独立して行なうか、両方のやり方がある。実験を行なえば探究活動になるものでもないし、文献調査やコンピューターシミュレーションが中心になる探究活動も内容によってはありうる。探究活動は中項目に相当する。「化学T」を例にとると探究活動を除いた中項目の数は5つ、探究活動は大項目ごとに3つある。ただし、探究活動を2つ行なうという指定があり、探究活動の数は4つになる。中項目にふさわしい量とは、「化学T」のおよそ2分の1になる。これだけの授業時数を割り当てなければいけないというわけではないが、かなりの時間が探究活動になる。探究活動が実験だけではないことが、時間数からも示される。これより、探究活動以外の授業では、基礎的な学習を行い、探究活動では、生徒の求めに応じて、実験を中心にする場合、基礎を重視する場合、応用や発展の学習を行なう場合と、さまざまな内容が考えられる。

 

(エ)問題解決の能力の育成

問題解決能力は、生きる力の要素の3つあるうちの一つであり、生きる力は今回の改定の一番の基本である。理科では探究活動、課題研究あるいは観察・実験をおこなうことが、問題解決能力の育成になる。特にUを付した科目の課題研究では、問題解決能力を育成する、と明確に記述した。問題解決の過程で、問題解決能力を養い、科学的な思考力、判断力、表現力を培うことになる。

 

(オ)表現力の育成

表現力の育成は、11科目全ての科目、すなわちTを付した科目の探究活動、Uを付した科目の課題研究、「理科基礎」の「科学の課題とこれからの人間生活」、「理科総合A」「科学技術の進歩と人間生活」、「理科総合B」「人間の活動と地球環境の変化」に発表をおこなわせる、を全部いれた。プレゼンテーション能力や発表を聞いたり質問やディスカッションもちろん大切だが、発表ができるような内容を、生徒は、まとめるようになる。形式も講演だけでなく、ポスターセッションなども考えられる。

 

(カ)野外観察

校外の自然については、「地学T」は、内容として野外観察が必修の項目で指定され、探究活動について、「生物T」では調査、「地学T」では野外観察の要素が示されている。「生物U」、「地学U」の課題研究には、選択の項目としてある。科目の内容の一部であり、積極的に利用したい。

また、専門の異なる教員にとっては、調査、露頭、巡検などの重い用語もあるが、風景をながめて地学を考えるなど、できる範囲から気楽にはじめたい。

 

ウ 人間生活の関連の重視、

(ア)日常生活との関連

 高校理科も身近な日常生活と関連を重視し、理科を学ぶ意義を明確にした。

 「理科総合A」では、大項目「資源・エネルギーと人間生活」「物質と人間生活」というように名称から強調されている。「物質と人間生活」では小項目「日常生活と物質」があり、人間生活とかかわりの深い物質の特性と利用などを扱う。

 「物理T」は、「電気」から始まり、日常生活と関連の深い電気を物理の導入とし、つづいて「波」に続く。音や光を含む「波」は、電気と同様に日常生活との関連で学ぶ。3つ目の大項目「運動とエネルギー」も日常に起こる物体の運動や様々なエネルギーの現象から力学に入る。そのため、空気抵抗や摩擦のある運動からはじまり、従来の物理の体系とは異なる構成になっている。理想運動による力学の体系は「物理U」で扱う。

 化学分野は、日常生活との関連が特に意識されている。「化学T」では、中項目「物質と人間生活」が導入として設定され、小項目「化学とその役割」では、化学の成果が人間生活を豊かにしたこと、有害な物質については適切な管理が必要であることなどを学ぶ。大項目「物質の種類と性質」でも、 日常生活と関連付けて考察できるようにすることを求めている。「化学U」では、大項目「生活と物質」で日常生活と関連の深い食品.医療、衣料、プラスチックなどを扱い、大項目「生命と物質」では医薬品や肥料を扱う。

 「生物T」では、「体液とその恒常性」において、人の健康との関連にも簡単に触れること、となっている。

 

(イ)環境問題と人間生活

 理科の4分野すべてが環境問題とかかわりがあり、探究活動や課題研究においてテーマを選べば扱うことができる。教科の内容としては、生物、地学と「理科総合B」が中心になる。

 「理科総合B」は地球環境そのものを対象にした科目であるが、特に、「人間の活動と地球環境の変化」において、具体的な環境問題を扱うようにしている。

 「地学T」では、オゾン層の破壊、エルニーニョ現象などを学び、地球温暖化なども扱うことができる。

 「生物U」及び「地学U」の課題研究では、「自然環境についての調査」が中項目としてあり、地球環境問題を扱うことができる。

 生態系は、「理科総合B」及び「生物U」で扱うが、「生物T」では扱わない。「生物U」を選択する生徒が限られることを考えると、環境問題を科学的に正面から学ぶためには、「理科総合B」がふさわしい。

 

エ 先端的な内容

 主としてUを付した科目で扱う。

 「物理U」では、先端的な物理学として素粒子論や宇宙論に触れる。物性物理学を紹介する機会もあろう。

 「化学U」では、化学の応用を重視し、食品や衣料など生活の化学、プラスチックやセラミックスなどの材料の化学から現代の材料化学、特に高分子化学へ発展できよう。また、医薬品や肥料については、化学的な高度さではなく、応用を重視して扱う。

 「生物U」では、「遺伝情報とその発現」の大項目を設け、そこに小項目「バイオテクノロジー」を新設し、タンパク質や遺伝子、バイオテクノロジーについて学ぶ。

 「地学U」では、気象と海洋の観測法や、天体の観測法などを最新の成果を取り入れて学ぶ。プリュームテクトニクスや宇宙の大規模構造など新たな学説にも触れる。

 もちろん、Tを付した科目でも探究活動を利用したり、「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」においても、生徒の求めに応じて、先端的な内容に触れることはできる。子どもたちの知的好奇心には、大いに応えたいものである。

 

オ 情報活用能力の育成

 コンピュータの利用は、理科に限らず、すべての教科、科目で行なわれるが、理科では理科に適した使い方をしたい。それが、理科のねらいを達成するとともに、情報活用能力が身に付くという側面が得られる。

 コンピュータは実験・観察に換わるものではないことが基本である。しかし、理科においても理論や仮説のシミュレーション、統計処理、情報の収集、発表などにコンピュータを利用していきたい。

 コンピュータシミュレーションやインターネットによる情報の収集は、特に理科においては、コンピュータと現実の違いや限界なども経験することになろう。情報化の「影」の部分は教育課程審議会答申でも指摘されているが、情報化社会で生きる子どもたちには、まさしく学んでほしいことである。

 

5 理数理科について

 本県の理数科は、東海大学第三高等学校、屋代高等学校に始まり、現在8校に設置されている。学校の設置者、学校規模、地域などさまざまであるが、理科教育をリードしている。

 以下、理数理科について述べる。普通科の理数コースなどは、ここには当てはまらない。

 理数科の理数理科は3科目が必履修である。3科目とは理数物理、理数化学、理数生物、理数地学の4科目から3科目である。理科総合A,、理科総合B、理科基礎の履修は義務付けられない。

 理数理科の各科目の内容はTを付した科目とUを付した科目がもとになり、教科書も独自のものが作成されなければ、Tを付した科目とUを付した科目の教科書を使用する。しかし、あくまでも理数理科の科目は、Tを付した科目やUを付した科目とは違う科目である。

 理数理科の特徴を述べる。

 Uを付した科目にある大項目は選択ではなく、すべて扱う。理数化学と理数生物は内容の構成がほぼTを付した科目にUを付した科目であるが、理数物理、理数地学は構成が異なっているので留意が必要である。理数科目の標準単位数は文部省としては定めない。県や学校で策定する。長野県では理数理科の標準単位は各科目6〜8単位である。普通科理科と比較すると、Tを付した科目3単位、Uを付した科目3単位だが大項目の選択をすべてあつかうことから4単位、合計7単位から設定した。

 課題研究は、理数科の特徴でもあり、総合的な学習の時間を活用することなどが考えられる。

 

6 小中学校の理科

(1)中学が変わる

 理科に関しては、選択が取り入れられ、中学生によって履修単位が異なること、課題研究的な内容があること、小学校にも内容の選択があることなどが挙げられる。もっとも大きな変化は内容の3割減であろう。

 高校へ移行統合された内容は、特に物理分野に多い。詳しくは表を参照されたい。プレートテクトニクスやエネルギーの役割など、詳しくなった内容もある。

 選択教科としての理科においては、生徒の特性などの応じ、多様な学習活動が展開できるように、各学校が独自にを定める。たとえば、課題研究や野外観察、すでに学習した内容を補充する学習、より進んだ内容を含む発展的な学習などがあり、形態としては、全員が同一の課題、グループ、個人などさまざまに考えられる。中学校ごとの教育方針が反映され、中学生の学んだ理科は、さまざまになろう。

中学理科の内容の改善

 

現行

新学習指導要領

小項目数

第1分野

45

27

第2分野

36

23

授業時間数

 

1年

105

105

選択教科等 0〜30

2年

105

105

選択教科等 50〜85

3年

105〜140

80

選択教科等 105〜165

高校の目標とするレベルが現行と変わらないことを考えると、中学から高校への橋渡し、高校理科の入門が必要になろう。これが、新設の2単位科目、「理科総合A」、「理科総合B」、「理科基礎」の大きな役割になろう。

 中学から高校への橋渡しとは、知識の量ではなく、より高度な自然科学の理解へのアプローチと考える。そのため、特定の分野の学習であっても目的は達成され、「理科総合A」、「理科総合B」、「理科基礎」いづれか1科目の履修でよい。そのために、これらの科目の履修は、高校の1学年がのぞましい。

 

(2)小学校・中学校の理科

 小学校から中学までの理科教育の概略を以下に述べる。これにより学習指導要領の理科教育全体の特徴がわかってくる。もっとも、小学校入学から中学卒業までの9年間、さらに高校卒業までの12年間を同一の教育指導要領ですごす子どもは、ほとんどいないので、子どもの教育上の実用性は少ない。 

 小学校の1,2年は理科はなくなり、社会科とともに生活科という教科である。身近な自然の観察や動物や植物の飼育・栽培を経験する。

 理科が始まるのは小学校3年からであるが、理科の内容は小学校の4年間でひととおり扱う構成である。内容によっては、小学校の次は高校で扱う内容もある。たとえば溶解度曲線や光の放射である。

 小学校にも内容の選択が取り入れられ、子どもが選択することになっている。小学校5年の魚の成育または人の発生、同じく5年でおもりについての内容、6年の火山または地震である。

 物質とエネルギーでは、3年では3種類程度、4,5,6年では各学年で2種類程度のものづくりが行なわれる。

 中学の理科については、内容は現行同様でも、教材はより身近な材料を扱うようになっている。中学では、数式による、量的な扱いはほとんどない。自然科学のさまざまな概念を定性的に、イメージとして捉えるようになる。

 

(3)中学校から高等学校への移行統合内容

理科総合A 物理T

仕事と仕事率、電力量、水の加熱と熱量

理科総合A 化学T

電気分解とイオン

理科総合B 生物T

遺伝の規則性 

理科総合B 地学T

地球上の生物の生存要因 地球の表面の様子 惑星の表面の様子 大地の変化の一部 日本の天気の特徴

物理T

比熱 水圧 浮力 力とばねの伸び 質量と重さの違い 力の合成と分解 直流と交流 真空放電

化学T

中和反応の量的関係 電池

地学T

月の表面の様子 外惑星の視運動

理科総合B 生物U

生物の進化 花の咲かない植物 無脊椎動物

削除

天気図の作成

情報手段の発展(他教科で扱う)

 

7 評価

(1) 4観点による評価

 評価は、新学習指導要領の実現のためには、きわめて重要な課題である。各学校において、児童生徒の学習状況や、教育課程の実施状況を適切に評価しなければならない。こうした観点から、評価について、教育課程審議会から「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価のありかたについて」が平成12年12月に答申された。そして、指導要録の改善(通知)が平成13年4月27日付の文部科学省の高等学校生徒指導要録に関する通知で各都道府県及び市町村の教育委員会へなされた。

 以下、理科に関して述べる。

評価は、関心・意欲・態度、思考・判断、技能・表現、知識・理解 の4つの観点による評価をおこなう

理科の4観点は以下のとおりである。高等学校生徒指導要録に関する通知より示す。

理科

関心・意欲・態度

自然の事物・現象に関心や探究心を持ち、意欲的にそれらを探究するとともに、科学的態度を身に付けている。

思考・判断

自然の事物・現象の中に問題を見いだし、観察・実験などを行なうとともに、事象を実証的、論理的に考えたり、分析的・総合的に考察したりして問題を解決し、事実に基づいて科学的に判断する。

観察・実験の技能・表現

観察・実験の技能を習得するとともに、自然の事物・現象を科学的に探究する方法を身に付け、それらの過程や結果及びそこから導きだした自らの考えを的確に表現する。

知識・理解

観察・実験などを通して自然の事物・現象についての基本的な概念や原理・法則を理解し、知識を身に付けている。

 

(ア)関心・意欲・態度

 観察・実験、自然体験や問題解決学習が重視され、自然に対する興味・関心や知的好奇心、探究心と科学的態度を評価する。

(イ)思考・判断 観察、

科学的な思考力・判断力を評価する。実験・観察を行なうこと。そして、実証的・論理的に考え、分析的・総合的に考察し、帰納的・演繹的に思考したりすること。

(ウ)技能・表現

 観察・実験の技能、科学的に探究する方法を評価する。発表もここに含まれる。特に、実験・観察から導き出した、自らの考えを重視する。技能的観点は操作的技能と知的技能から構成される。操作的技能は、適切な器具の選定と安全な操作技能の習得であり、知的技能は実験の計画、観察、測定、数的処理、結果の記録と考察、発表など科学的に探究する方法の習得である。

(エ)知識・理解

 自然科学の基本的概念や原理・法則についての知識・理解、自然の事物・現象についての性質や特徴、内容や働き、名称、記号、述語等についての知識・理解、科学的方法・手続き・手順についての知識・理解などを評価する。

 

(2) 評価における配慮事項

 以上をもとにして、学習指導と評価の工夫について、配慮すべき点を考えてみる。

 

(ア)指導と評価の一体化

 学習の後の評価だけでなく、学習前の診断的評価、学習の過程の評価などを取り入れる。

(イ)評価方法の多様化

 ペーパーテストだけでなく、観察・実験レポート、製作物、教師の観察記録、発表、生徒の自己評価など多様な評価方法を取り入れる。

(ウ)ペーパーテスト問題の改善

 知識・理解だけでなく、思考力や表現力を見るペーパーテストを作成する。言い換えれば、知識・理解だけでなく関心・意欲・態度、思考・判断、技能・表現もペーパーテストで評価することは可能である。そのための研修や研究が大切である。

(エ)評価規準の研究

 評定が、客観的で信頼できるよう、たとえば担当する教師間で統一した評価規準になるよう、研究に取り組み共通理解を図るなど、学校として留意する。