本委員会で新学習指導要領について意見交換を続け、次の3点に至った。
@ 新学習指導要領の趣旨を理解することは、教育課程の編成に有益である。
教科に関する最大の変化は、時間数、内容の3割減である。
A 物理、化学、生物、地学のできるだけ広い分野を学習させたい。
B 新設科目(理科基礎、理科総合A、理科総合B)は、あらゆる可能性がある。
内容の3割減について、学習指導要領の意図は次のとおりである。
高等学校で、共通に学ぶ科目、単位数は減らした。多様な興味関心、進路、理解や習熟に応じて、進路、将来にあわせて、より深く、あるいはより広く、より基礎的な部分に集中して学ぶこともできる、高校の教育課程が弾力化された。
学習指導要領で応じきれない教育内容について、学校設定科目を自由に作る。
高校を卒業した時点での生徒の知的レベルは下げない。むしろ上がる。
高校で今まで教えられていた内容で削られたという内容はほとんどないはずである。ただ、選択になっているので履修しなければ削られたことにはなる。
2 教育課程の例
標準単位で十分かどうかはともかく、標準単位で作成した。減単位は考慮しなかった。各学校の目標や実態により、増加単位を考えるとよい。
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例1 |
1年 |
2年 |
3年 |
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理想的といわれている。1年で総合科目とTを付した科目を履修するもの。1年で理科の3分野、2年では最大4分野を学ぶことができる。ただし1年で5単位が必要である。さらに3年までに1を付した科目が3科目履修できる。生徒の進路、興味、関心が高まるに伴い、科目を選択できる。 |
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理科基礎 |
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理科総合A |
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理科総合B |
◎2 |
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物理T |
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○3 |
△3 |
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化学T |
◎3 |
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生物T |
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○3 |
△3 |
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地学T |
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○3 |
△3 |
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物理U |
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|
△3 |
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化学U |
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○3 |
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生物U |
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△3 |
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地学U |
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△3 |
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単位数 |
5 |
3 理系6 |
0,3 理系3,6 |
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例2 |
1年 |
2年 |
3年 |
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1年で理科総合A、理科総合Bの両方を履修するもの。中学の変化が大きいことから、新設2単位科目の1年での履修は意義が大きいと考えられる。多くの高校生に、中学と高校の橋渡しが必要であろう。 1年の理科の単位が4単位のとき、特定の分野に重点をおく場合と、広い分野を学ぶ場合の二つがあるが、中学の内容の3割減を考えるとこのような教育課程表となった。 |
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理科基礎 |
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理科総合A |
◎2 |
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理科総合B |
◎2 |
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物理T |
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○3 |
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||
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化学T |
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○3 |
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生物T |
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○3 |
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||
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地学T |
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○3 |
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物理U |
|
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△3 |
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化学U |
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|
△3 |
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生物U |
|
|
△3 |
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地学U |
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|
△3 |
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単位数 |
4 |
3 理系6 |
0,3 理系6 |
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例3 |
1年 |
2年 |
3年 |
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1年でTを付した科目1科目を履修し、3年で理科基礎を行なうもの。1年でTを付した科目からはいるのは、生徒の学ぶ意欲と、目的がはっきりしている高校であろう。大学進学など、高校理科での学習の動機が十分な学校では、現行の教育課程の改良で対応できよう。 3年の理科基礎は、さまざまな可能性がある。自然科学の総合的な見方考え方を身に付けること、生徒一人ひとりの進路、興味、関心に応じて特定の分野に重点をおいて学習すること、幅広く楽しく理科を学ぶことなどが考えられ、生徒の要望に合致した内容になろう。 |
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理科基礎 |
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◎2 |
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理科総合A |
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理科総合B |
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物理T |
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○3 |
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化学T |
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○3 |
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生物T |
◎3 |
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地学T |
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○3 |
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物理U |
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|
△3 |
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化学U |
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|
△3 |
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生物U |
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|
△3 |
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地学U |
|
|
△3 |
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単位数 |
3 |
3, 理系6 |
2, 理系8 |
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例4 |
1年 |
2年 |
3年 |
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1年で2単位の場合 理科総合A、理科総合Bであろう。どちらを選ぶかは、学習指導要領の趣旨は生徒選択であるが、現実的には学校選択が望ましいと考える。 3年の科目は、ここではUを付した科目を例示したが、理科基礎やTを付した科目を設置することで、理系でない生徒にもより広い自然科学の学習の機会を与えることができる。 |
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理科基礎 |
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理科総合A |
○2 |
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理科総合B |
○2 |
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物理T |
|
○3 |
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化学T |
|
○3 |
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生物T |
|
○3 |
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地学T |
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○3 |
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物理U |
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△3 |
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化学U |
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△3 |
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生物U |
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|
△3 |
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地学U |
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△3 |
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単位数 |
2 |
3 理系6 |
0,3 理系6 |
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例5 |
同一学年で 理科総合A 2単位 化学T 3単位 |
化学に重点をおいてより深く学ぶ。理科総合Aと化学Tなど、理科総合AまたはBとTを付した科目の対応する分野は内容の一部、およそ30%は重複する。 |
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例6 |
同一学年で 理科総合B 2単位 化学T 3単位 |
より広く学ぶ。こちらのほうが学習指導要領の趣旨にあっている。 |
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例7 のぞましくない |
1年
理科総合A 1単位 化学T 3単位 2年
理科総合A 1単位 物理T 3単位 |
2単位科目を1単位に分割しては学習効果があがらない。 理科総合Aを化学と物理に分割することは科目の趣旨にあわない。理科総合B、理科基礎も同様に分野で分割しない。 |
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例8 のぞましくない |
1年 生物T 3単位 2年 理科総合B 2単位 |
理科総合Bは、基礎的基本的な内容なので、生物Tや地学Tのあとでは学習しにくい。 理科総合Aと物理Tや化学Tも同様。このような場合、理科総合Bにかえて、理科基礎が望ましい。 |
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例9 のぞましくない |
1年
理科総合A 1単位 2年
理科総合A 1単位 |
2単位科目を1単位に分割しては学習効果があがらない。 |
なお、のぞましくない、とは、だめ、とか、不可能ではない。例7,8,9はいずれも禁止されてはいない。問題がある、という意味である。こうした無難でない教育課程表に対しては、公式な説明責任を求められる。
総合的な学習の時間は、中央教育審議会答申及び教育課程審議会答申に基づき設置された。教育課程審議会答申では総合的な学習の時間の創設の趣旨を、各学校の創意工夫、国際化や情報化に対応するための教科横断的総合的で生きる力をはぐくむため、とまとめている。
すなわち、そのねらいと学習活動を各学校の創意工夫を生かした横断的・総合的な学習や児童生徒の興味・関心等に基づく学習などを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることである。また、情報の集め方・調べ方・まとめ方・報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付けること、問題の解決や探究活動に主体的・創造的に取り組む態度を育成すること、自己の生き方についての自覚を深めることも大きなねらいとしてあげらる。これらを通じて、各教科等それぞれで身に付けられた知識や技能などが相互に関連付けられ、深められ児童生徒の中で総合的に働くようになるものと考える。
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【総合的な学習の時間のねらい】 1 総合的な学習の時間においては,各学校は,地域や学校,生徒の実態等に応じて,横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。 2 総合的な学習の時間においては,次のようなねらいをもって指導を行うものとする。 (1) 自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。 (2) 学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の在り方生き方を考えることができるようにすること。 (学習指導要領 第1章 総則 第4款 総合的な学習の時間) |
総合的な学習の時間は、小中学校でも行なわれるので、高校学校としての特色を生かしたい。学習指導要領から高校の特徴は、就業体験、進路指導、実習、研究、個人研究であり、総合学科においては課題研究、職業教育等であると読み取れる。
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【高等学校の内容】 各学校においては,上記2に示すねらいを踏まえ,地域や学校の特色,生徒の特性等に応じ,例えば,次のような学習活動などを行うものとする。 ア 国際理解,情報,環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題についての学習活動 イ 生徒が興味・関心,進路等に応じて設定した課題について,知識や技能の深化,総合化を図る学習活動 ウ 自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動 |
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【中学校 及び 小学校の内容】 各学校においては,2に示すねらいを踏まえ,例えば国際理解,情報,環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題,生徒の興味・関心に基づく課題,地域や学校の特色に応じた課題などについて,学校の実態に応じた学習活動を行うものとする。 |
総合的な学習の時間の形態は、様々な形式と内容が考えられるが、学校の意図と、課題を設定した生徒の意識が重要であろう。学校は、総合的な学習のねらいが達成されるよう計画しなければならない。横断的総合的な課題が原則であり、学校行事そのもの、受験対策の入試問題演習、従来の教科・科目や学校設定教科・科目と同じでは、総合的な学習の時間の趣旨が生かされない。
実際の内容は、イベント的なものもあるだろうが、特定の教科と結びつく場合もあり、教科との関連をうまく生かしたい。総合的な学習の時間の趣旨を理解し、無理なく、積極的に理科の内容を取り入れていきたい。
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【総合的な学習の時間の特徴】 教科横断的、総合的な学習活動のための時間枠である。 教科とのつながりを重視し、教科の内容を取り入れることができる。 生徒一人一人の興味、関心、進路に応じて行なう。課題の設定が重要である。 各学校の責任において行われる。計画、実施、評価などに対し、説明責任を持つ。 学校の特色を反映させる。 |
【資料】日本教育新聞HP http://www.kyoiku-press.co.jp/index.html より
新しい概念「時間の枠」 文部省初中局企画官・小学校課教育課程企画室長 徳久治彦氏
教育課程審議会の話しあいの中では「総合的な学習の時間」というネーミングは、長すぎるんじゃないか、シンプルに「総合」にしては、という意見もありました。しかし、それでは「総合」という教科を新設したようにも取れてしまう。新しい概念である時間の枠という性格を強調するには「時間」という用語があった方がいいと考えたのです。では、時間の枠とはどういうものなのでしょうか。
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教科、すなわち理科と関連の深い総合的な学習の時間について述べる。
生徒の進路と興味・関心に応じ、理科の発展的な内容を中心に、大学1年程度の内容を、経験するような総合的な学習の時間を例示する。年間70単位時間を想定した。
生徒一人一人が、講座を選択し、または講座を組み合わせ、大学進学などの進路と、興味・関心に応じて学習する。講座は、教科との関連を重視され、高校の教科・科目と大学の学部・学科が対応するように設定される。大学の教科書や学術雑誌を教材にする。内容は、高校の学習を大学1年程度まで発展させる。必要に応じて高校の関連分野の復習を行ない、なるべく先端的な内容を取り入れる。理科のUを付した科目の課題研究ではないが、内容は関連する。また、教科の枠にとらわれない課題を希望する生徒のための講座を用意する。なお、受験対策の演習や小論文ではないことに留意する。
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発展的な分野 |
高校の科目 |
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物理系(物理、応用物理、電子、電気、機械、建築、土木) |
物理 |
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化学系(化学、応用化学、工業化学、物質工学) |
化学 |
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生物系(生物学、生態学、バイオテクノロジー、農学) |
生物 |
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地学系(地質学、気象学、天文学、地球物理学) |
地学 |
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情報系(情報工学、ソフトウエア) |
物理・情報・数学 |
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数学系(数学、応用数学) |
数学・物理 |
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家政系(被服、栄養) |
家庭科・化学・生物 |
例えば、学期ごとに次のような内容を行なう。(年間70時間)
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分野 |
1学期(20時間) |
2学期(32時間) |
3学期(18時間) |
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物理系 |
力学 |
電磁気学 |
量子論、相対性理論 |
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化学系 |
物理化学 |
無機化学、有機化学 |
生化学、高分子化学 |
|
生物系 |
細胞学、発生学、遺伝学 |
生化学、生理学 |
分類学・進化学、生態学 |
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地学系 |
地質学 |
地球物理学、気象学 |
天文学 |
1学期の展開例 化学系より物理化学20時間
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テーマ |
時間 |
内容 |
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原子の構造と電子軌道 |
3 |
原子の構造や分子の形を電子軌道から考える。 |
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気体の分子運動論 |
3 |
気体の法則を応用し、エントロピーを考える。 |
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酸と塩基 |
3 |
酸と塩基を拡張し、ルイスの定義で考える。 |
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酸化還元反応 |
3 |
電気分解から溶液を、電池からエネルギーを考える |
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大学見学 |
4 |
信州大学の見学と授業を参観する。 |
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実験と研究 |
3 |
実験または小論文の作成をおこなう。学習が不十分な分野を復習する。 |
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発表 |
1 |
物理化学の学習の成果を発表する。講座では口頭発表、文化祭でポスターセッションを行なう。 |
地球環境に関する内容は、生態学はじめ生物のほとんどの分野と、水圏・気圏など地学の多くの分野が該当し、化学、物理も関係する、。また、多くの生徒が興味・関心をもって課題研究的に行なうには、「理科総合B」が適している。しかし、「理科総合B」では、自然科学的な見地から扱うことに限定されている。キーワード環境から思いつく課題を以下に示す。
森林の減少と砂漠化 種の絶滅と生物の多様性の減少 地球温暖化 オゾン層の破壊 酸性雨 残留性有機汚染物質、環境ホルモン 水資源の減少 エネルギー資源の枯渇 廃棄物とゴミ 自然災害 異常気象 自然保護 その他
いずれの課題も、社会的な観点を含みながら、自然科学的な内容を持っている。特に、現状の理解には自然科学的な視点が必要である。また、自然科学的な見方と解釈が必要なことを、生徒には学んでほしい。
地球温暖化と二酸化炭素を例に、理科の関連分野を以下に示す。
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地球温暖化と理科の関係 |
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温室効果 |
地学(地球の熱収支) |
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温暖化の原理 |
化学(化学結合の応用) |
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熱の吸収と放射 |
物理(応用 黒体放射) |
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大気の組成 |
地学、化学 |
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二酸化炭素 |
化学、生物(炭素の循環)、地学(応用 炭酸塩の循環) |
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メタン |
化学、生物(嫌気呼吸) |
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フロン |
化学 |
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気象の変化 |
地学 |
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生態系の変化 |
生物 |
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海面の上昇 |
(地学) |
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災害の増加 |
(地学) |
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食糧危機 |
(生物) |
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文化への影響 |
(理科では扱わない) |
特定の分野に対応しないからこそ、総合的な学習の時間の課題になるわけだが、課題を解決するために従来の教科の学習が有効であるという経験と認識を生徒に与えることができよう。
地球温暖化の場合には、理論的な背景を理解するためには、地学で扱う温室効果、地球の熱収支はもちろんだが、化学結合論の応用、黒体放射など高校の範囲を超えたものが必要である。こうした高度な内容を、高校生が理解することも可能であるが、分野の存在を知るだけでも十分であろう。
現代社会において、コンピュータはあらゆる分野で、今や欠くことのできない強力な道具となっている。コンピュータを使いこなす一定の能力は、これから益々多くの場面で必要となろう。高校理科の新学習指導要領でも、第3款において「各教科の指導にあたっては、観察、実験の過程での情報の収集・検索、計測・制御、結果の集計・処理などにおいて、コンピュータや情報通信ネットワークなどを積極的に活用すること」とあるように、理科における情報活用の一層の推進をうたっている。このような状況の中、学校教育においても積極的にコンピュータの有効利用を考えていく必要がある。
以下具体的利用形態ごとに、内容とその留意点についてまとめておく。
(1) 実験の計測・制御
光、音、温度、電圧、圧力、加速度、pHなどの量を感知する各種センサーを接続することによって、測定データの記録・表示を行わせる。接続にはADコンバーターが必要であるが、センサーとセットで販売しているものを利用してもよい。この目的であれば旧式の処理能力の低いコンピュータでも十分利用できる。また、ステッピングモーターなどの機械制御にも利用できる。
(2) 実験データの処理
実験の測定データを集計処理させるのに利用する。この目的には一般的な表計算ソフトが最適である。関数などを上手に使えば比較的労力をかけずに、プログラミングに匹敵するような、かなり複雑な処理・分析も可能である。また、グラフを描かせることもできるので、生徒の能力に応じてこれらの機能を上手に利用させたい。
(3) シミュレーション
実際の観察が困難な現象について、数学的な類似モデルに置き換えて計算することによって行う模擬実験で使用する。たとえば惑星の運動、波の干渉のシミュレーションなどが考えられる。生物分野では、乱数などを利用して遺伝のシミュレーションも考えられよう。
シミュレーションは分野によっては非常に効果的で積極的に使用を考えるべきであるが、実際の実験・観察が可能なものまでシミュレーションで済ますことは本末転倒であり注意を要する。
(4) 情報の取得と発信
インターネット、データベースを利用して必要な情報を検索・収集する。また、自分の課題研究の成果等を、外部に発信するためのホームページを作成することも考えられる。但し、このように情報通信ネットワークを利用するに際しては、コンピュータウィルス、個人情報の流出等の様々な危険性についても十分理解させなければならない。
(5)
プレゼンテーション能力の育成
課題研究等の発表において、プレゼンテーション用にコンピュータを利用し、より効果的な表現方法を研究するのに役立てる。
(1)環境教育とは
人類は産業革命以来、資源・エネルギ−を有効に利用し、大量生産・大量消費により、豊かな物質文明を築き上げ、今日のような便利で快適な生活を手にすることができるようになった。しかし、その一方で、資源・エネルギ−の消費は膨大なものとなり、自然の浄化能力を超え、その結果、人類は自分の手で地球の再生循環システムを壊しかけている。これがまさに、近年、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすことが懸念されている環境問題である。「くらしと地球環境」(犬飼栄吉 著)
現代科学技術をどう評価するかは人によって意見は異なるが、科学の進歩が人類の生存にとって厳しい条件を生じさせてしまったことは否めない。環境破壊の問題とされるものに砂漠化の進行、酸性雨、温室効果、オゾン層の破壊、水質汚染、土壌・淡水系の酸性化、生物多様性の減少、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)、産業廃棄物の増大、核廃棄物の増加などがある。
これらの現状、原因、対策を理解し、そして現代科学がこの問題に対して果たせる役割は何か、という視点から、これからの理科教育の果たすべき使命は重大であると考えられる。
一口に環境教育といってもアプロ−チの仕方はいろいろあるが、個々の問題の分析、身近な環境問題を取り上げてみる、という展開のほかに、太陽系における定常解放系としての地球のとらえ方、その中における水の循環を中心とする熱機構と物質循環に基づく代謝機構が地球の生命系を維持していること、宇宙に関する知識から比較惑星学的に地球がかけがえのない星であることが判ってきたことなどの視点があると、このテ−マをよりダイナミックに扱うことができる。
更に、文明を発展させるためにはそれだけエネルギ−が必要なことと、そのエネルギ−消費によって必ず廃棄物・廃熱が生じることをおさえたい。また、このような文明の廃棄物の、環境への循環の可否によって技術の健全性が問われることも環境教育の大切な観点である。
現状を憂え、暗い未来ばかり提示するのでなく、かつて当面した諸問題に科学が果たしてきた役割と同様に、科学がこれらの問題も解決していける展望を示すことも大切なのではないだろうか。
理科の各科目では、例えば、物理分野においてはエネルギ−、代替エネルギ−などの観点から、化学分野では環境に優しい物質などの観点から、生物分野では生態系などの観点から、地学分野では多重バリヤ−で囲まれた地球などの観点からこのテ−マに迫ることが考えられる。
(2)具体的展開例(生徒の課題研究より)
ア 研究の目的
長野地方測候所から頂いてきた100年間の長野市の気象データ(気温および降水量)をもとに、グラフを作ってその変化を読み取り、考察する。
イ 研究の動機
最近、世間では温暖化、温暖化と注目されているけれど、実際長野でもその現象が起こっているのか?と思い、調べようということになりました。また、気象変動の要因は太陽活動にあるという説があります。太陽活動との関係や、1970年代頃から、定説となって来たエルニ−ニョ現象と関係があるかどうかも調べてみました。
ウ 研究結果と考察
地球温暖化について
<温室効果>
地球温暖化は、温室効果によって引き起こされるので、温室効果について説明します。
地球は、太陽光を受けているけれども、その波長は0.2〜2μmの間で、そのエネルギーの大部分は0.4〜0.8μmの可視光線領域に集中しています。また、この太陽光によって暖められた地面からは、宇宙空間に向かって赤外線が放出されていて、その波長は4〜30μmの範囲にあります。
ここで、大気中の温室効果ガスは可視光線に対してほぼ透明でありますが赤外線に対しては、8〜12μmの波長を除いてはほぼ不透明です。よって、この温室効果ガスが赤外線を吸収して大気が暖まります。この暖まった温室効果ガスからは、再び赤外線が放出されその一部は地面に向けられ、地面付近がいっそう暖められます。これが、温室効果です。
<温室効果ガス>
温室効果ガスの主なものは、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、フロン類などです。この中でも、二酸化炭素は量が多く、寿命が500年と長いので温室効果が大きく、注目されています。
<地球温暖化>
地球温暖化は、温室効果によって起きますが温室効果がなければよいというわけではありません。
温室効果が、全くないと地球は今より30℃以上も低温になるといわれています。逆に、温室効果ガスが増えると気温が上昇して温暖化することになります。今は、地球の地上気温が平均して15℃に保たれています。しかし、化石燃料の燃焼や森林伐採などの人間の活動により大気中の二酸化炭素濃度が増すと、温室効果が必要以上に進み、これが原因となり地球温暖化ということになるのです。
<地球温暖化の被害>
地球温暖化に伴って、動植物は生存に適した場所への移動をしなければならなくなります。多くの動物は、歩く、飛ぶ、泳ぐといった方法で移動することになります。植物は受動的な方法で、風によって運ばれたり、動物に食べられた果実の種子が排泄物とともに体外へ出された場所で芽生えます。しかし、その道のりは過去のように野生動物が移動できた草原や森林地域はなく、人間が作った、道路、運河、農地、大牧場、プランテーション、採掘場、住宅地などに成り、移動することができません。
また、二酸化炭素の増加も植物に影響を与えます。現在の二酸化炭素量は、多くの植物にとっては不十分です。今後、増加する二酸化炭素を利用できる植物は、成長が促進され繁栄します。一方、増加する二酸化炭素を上手に利用できない植物は減少します。動物は植物を餌にしているため、植物の変化に応じて変化しなければなりません。特に、多くの昆虫は特定の植物しか餌にできない特殊なものが多いのです。よって、それらの動植物は絶滅してしまうかもしれないのです。
このほかには、地球温暖化によって海水の温度が上昇して、グリーンランドなどの氷河が融解して海面が上昇するということがあります。海面上昇は、2100年には65〜100cmと予想されていて、オランダやバングラデッシュなどの海抜の低い国や地域では、国土の減少の心配がされています。日本も例外ではなく砂浜の9割が消失してしまうかもしれないのです。そして、東京都、大阪府、秋田県などの8つの都府県では砂浜は完全に失われてしまうというのです。
地球温暖化はこれらの他にも、ハリケーン、暴風雨、異常な積雪、猛暑などの異常気象が生じるだろうと予想されています。
2図は、全世界の地上平均気温(年平均値の5年間移動平均)で、この100年間で0.6℃の割合で上昇していることが判ります。
一方、3図は長野市の1891年からの年平均気温です(年平均値の5年間移動平均)。全地球と長野の平均気温を比べると、2つの変化にはあまりつながりがありません。
長野の気温上昇率は100年で1℃と、長野の方が多少高いようです。続いて、長野市の5年間移動平均気温について 見てみると、徐々に上がり100年間でおよそ1℃の変化があります。また、1月と8月の気温差を見てみると、気温の変化には何年かの周期があり、数年ごとにプラスになったりマイナスになったりしていることが、よく分かります。さらに、1946年あたりまでの1月と8月の気温差を比べてみると、1月の気温差がプラスの時は、8月の気温差はマイナスで、1月の気温差がマイナスの時は、8月の気温差がプラスになっています。よって夏と冬が互いに影響し合い、年平均としてはだいたい均一に保たれているのです。その後は、1月の気温差も8月の気温差もプラスとなり、年平均も上がっています。
(以下、略)
今回の改訂において、「地学T」では「野外観察と地形・地質」という項目において野外観察をすることが盛り込まれている。野外観察は地域の特性を生かしつつ、実施する事が望ましい。
地域素材の教材化は、地域の特質や、教師の観点、生徒の実情などによって様々な選択肢がある。
以下に羅列するものは、素材を見る視点とそこから発展的に追求できる項目の例である。地学的な要素を中心に列挙してあるが、力学的に見たり、分子・原子の挙動で見たり、生物とのかかわりで見たりすると様々なバリエ−ションが考えられる。
(1)地形の観察
@たとえば、大地と低地、盆地と山、段丘地形、川の流れ方、等。
A隆起地形・沈降地形・浸食地形・断層地形などと分類する。
Bこのような地形を生じさせる地球の内的要因や、太陽などの外的要因を考える。
C地殻変動の成因、地殻変動の速さ、水の三作用などから地球のエネルギ−、太陽エネルギ−について考える。
(2)現在起こりつつある現象
@たとえば地盤沈下、地滑り、活断層など。
Aそれらをもたらす要因を考える。(地殻変動・地域地質の特質など)
(3)河川の観察
@流路の変遷、れきの配列、
A水の三作用について考える。
(4)地形と気象・気候との関係
@降水量、年平均気温、日較差、卓越する風系など
A地域気象の特質や、気候区との対応を考える。
(5)表土の観察
@粘土・土壌・ロ−ムの採集。サンプルの作成(プレパラ−ト作り・土壌中の鉱物の洗い出し)
A土壌の由来を考える。風化について考える。火山灰の噴出源を追う、腐植土の成因など。
B鉱物の観察
C火成岩の分類、マグマの発生、地球内部の熱源、地球の熱収支、など。
(6)地層や岩体の岩石の採集
@産状、露頭の観察、サンプルの採り方、地層の観察、地層の堆積構造の観察、異なる岩体間の接し方の観察、など。
A岩石の成因(火成岩、変成岩、堆積岩の分類と成因)
(7)化石の採集
@産状の観察、化石を含む地層の観察
A化石のクリ−ニング、化石のレプリカの作成
B生物の進化、地球の歴史、など。
(8)地質構造の調査
@走向傾斜をクリノメ−タ−で測る、ル−トマップ作成、地質図を作る、植生との対応、など
A地質構造の特徴や成因を考える、地域の地質を考える、地域の地史を編む、地球のダイナミクス・地球の歴史について考える、など。
高等学校の理科においては、「観察・実験などを通して科学的な自然観を育成する」ということが全科目の目標に盛り込まれている。そのため「Tを付した科目」には探究活動が中項目として、また「Uを付した科目」では課題研究が大項目として設定されている。理想を言えば、理科の4領域(物理・科学・生物・地学)すべてについて、これらの探究活動や課題研究を生徒に体験させることが望まれるが、学校全体の教育課程の編成上、これは不可能である。
また探究活動に限って言えば、新設科目である「理科総合A」・「理科総合B」を履修することによって4領域をカバーすることはできる。しかしこれだけでは、「Uを付した科目」で設定されている課題研究のように、「生徒自身が自らテーマを考え、観察・実験計画を作成し、長期間にわたって実験・観察を行うことによって、主体的に問題解決をする能力を習得させる」ことは難しい。さらに、「Uを付した科目」の履修は一部理系の生徒だけに限られ、しかも1領域か2領域に限定されるのが普通である。したがって、できるだけ多くの生徒に理科における探究的な活動を体験させるためには、教科の授業以外の部分を考えていかなければならない。
教科の授業以外の部分としてあげられるのが、生徒会活動やクラブ活動などの生徒の「自主的活動」と、今回の改訂で新設された「総合的な学習の時間」である。
(1) クラブ活動と理科
教科の授業以外で探究的な活動を実施しようとする場合、最も有効なものがクラブ活動であろう。理科系のクラブ活動の中では、生徒が主体となり、教師はあくまでも助言・補佐役として探究的な活動を展開することができる。加えて、授業の進行状況などに左右されることなく、1年を通じて都合のよいときに実験・観察を行うことができる。
たとえば、化学系クラブにおける1年を通じての水質調査やダイヤモンドの合成など長期にわたって継続して実験を行う必要のあるもの、生物クラブにおける植物の組織培養・細胞融合の実験、環境にかかわる野外調査、天文クラブにおける通年の天体観測による年周運動の観測など、様々なことが考えられる。
このようなクラブ活動を行うことにより、本来「Uを付した科目」を履修する機会のない文系の生徒や、理系であっても履修をしない領域に関する課題研究的な活動を経験させることができ、より多くの生徒に科学的な問題解決の手法を学ばせることができる。
しかしながら、昨今クラブ活動が衰退してきている学校もあり、特に運動系クラブに比べて発表などの機会が少ない文化系クラブでその傾向が強い。普段の授業の中などで、自然科学に対する興味・関心を持たせ、疑問点を見つけ、その解決に向けての意欲を引き出すような指導を行いながら、クラブ活動への参加を呼びかける必要がある。
(2) 生徒会活動と理科
学校の生徒全体がかかわる生徒会活動においては、その活動主体が全校生徒となるため、授業やクラブ活動で行われるような高度な専門的知識を必要とするような活動は難しい。しかし、美化・清掃活動の一環として環境問題やリサイクル問題に取り組み、様々な調査活動・発表を行うことや、文化祭のテーマとして環境問題にかかわるような内容のものを設定し、それに沿った形での展示発表・オブジェの制作などを行うことが考えられる。
しかし、クラブ活動が原則として任意参加であり、ある程度意欲を持った生徒で構成されているのに対し、生徒会活動の場合には先にも述べたように、全校生徒が対象となっており、必ずしも自然科学などに対する興味・関心のある生徒ばかりではない。したがって生徒会活動における活動の場合、生徒に「やらされている」という意識を持たせないよう、テーマの設定から実施計画、実際の活動にいたるまで、自主的に行えるような指導・助言を行っていくことが大切である。
以上のように、単に授業の場だけにとどまることなく、少しでも多くの生徒に理科にかかわる探究的な活動を経験させ、科学的な自然観を育成するための場として、クラブ活動や生徒会活動などの自主的活動に対するかかわりを深めていく必要がある。
現在、受験生のモチベーションの低下、高校の多様化、大学生の基礎学力格差の拡大、入試の変化などから、高校・大学の連携が叫ばれ、また幾つかの試みも思考されている。
旧・中央教育審議会は、平成11年12月、『初等中等教育と高等教育との接続の改善について』の答申の中で、次のような高校と大学との幅広い連携の必要性を提言している。
●高等教育を受けるのに十分な能力と意欲をもつ高校生が大学レベルの教育を履修する機会の拡大方策: 科目等履修生の活用など、大学レベルの教育を生徒が履修する機会を積極的に拡大する。
●大学がその求める学生像や教育内容等の情報を的確に周知するための方策:大学入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)をはじめ、教育の理念と目標、教育指導体制、成績評価の方法、就職・進学状況などについて積極的に情報を公開する。
●生徒の能力・適性・意欲・関心等に応じた進路指導や学習指導の充実:将来の進路や職業選択を見通した進路指導や学習指導を実施。大学の教員や企業の協力を得て、高等教育の具体的な内容や、将来の職業選択との関係、企業の在り方や職業生活について、実際的・体験的な情報を提供してもらったり、体験入学や就業体験の機会の拡充を図る。
こうした提言を受け、高校生が大学の授業を受けたり、大学教授が高等学校でいわゆる「出前授業」を行ったりして、その講座履修を単位認定する学校が全国では増加している。文部科学省がまとめた報告書によると、高校と大学との連携が急速に進んでおり、大学教員による高校での学校紹介や講義等(高校で単位認定しているものを除く)を実施している高校は平成12年度現在、国公私立高校を合わせて45都道府県8市の977校に上る。中には三重県や石川県の高校のように通年で授業を行っている例(公立)も見られる。
また物理学会東北支部と協力して宮城県内の公立高校の希望に添って出前授業を行っている例もあった。このうち私立高校に関しては38都道府県273校(12年度)で実施されており、おおむね同じ学園内での併設校間の連携が多い。また大学の科目等履修生、聴講生、公開講座などの制度を活用して連携を図っている高校(高校で単位認定しているものを除く)は68校へと拡大している。特に公立は前年度の3校から43校に増加するなど、増加ぶりが顕著であった。
高校側からはこれらの連携によって、大学から高校への学問的刺激の付与や、大学の「考えさせる教育」を高校生に体験させることができたり、自分の進路をより具体化させる、等のメリットが考えられる。
以下、屋代高等学校で例年行われている信州大学との連携授業の様子を例に挙げる。
理数科大学実習実施要項
1.目的
書籍やパンフレットだけではわかりにくい科学の面白さを、大学の研究室で行われている最先端の実験や模擬講義の体験を通じて実感し、自然科学の特質などを学ばせる。また、大学の先生方や学生たちとの交流を通じ、大学の理工系学部の特質を理解させ、将来の進路選択の一助とする。
2.期日
8月20日
3.場所
信州大学繊維学部
4.屋代高校理数科全員
5.日程
学部・学科案内、入試関係説明、質疑応答
大学教授による模擬講義
資源・エネルギ−、地球環境を支える21世紀の新素材創製を目指して
教官との昼食会
大学体験実習(以下の中から、一人が2テ−マを選択する)
・動物の受精メカニズム
・水質浄化を演ずる主役達
・炭素百態 −ダイヤモンドからサッカ−ボ−ル状分子C60まで−
・振動する化学反応 −色が変わる、模様が現れる−
・コンピュ−タ−グラフィックスの世界
・超薄膜の世界 −分子を並べる−
その他
生徒の感想
◇こんな場所で、自分の好きなことができたら・・・と、ますます大学へ行きたくなった。図書館も見てきたが、英語の本が普通においてあるのには驚いた。
◇自分が理系に向いているか不安だったけど、興味を持っていることが分かった。
(1)人間生活と理科の関連
新指導要領では日常生活との関連を図った学習及び自然環境と人間生活とのかかわりなどの学習をより一層重視し理科を学ぶ意義を明確にしている。理科離れが叫ばれる昨今、身近な日常生活と関連させることは、生徒に理科への興味関心を喚起しやすいという点と、学習内容を環境問題などに発展させて、自然に対する総合的な見方や考え方を養うのに適しているという点で重要である。
(2)各科目における人間生活との関連
ア.「基礎理科」
大項目「科学の課題とこれからの人間生活」は、正に人間生活と科学のかかわりをテーマにしたものである。「物質とエネルギー」「生命と環境」「宇宙と地球」などの分野から適当な課題を設定し、現在および将来における科学の課題と身近な人間生活とのかかわりについて考察させる。
イ.「理科総合A・B」
「理科総合A」では「資源・エネルギーと人間生活」という大項目を設け、人間生活と関連の深い化石燃料、原子力、水力、太陽光などのエネルギーや、金属、非金属資源の利用を扱う。また、大項目「物質と人間生活」の中の中項目に「物質の利用」があるが、この中の小項目に「日常生活と物質」を設け、人間生活とかかわりの深い物質の特性と利用及び物質の製造にエネルギーが必要なことを扱う。さらに大項目「科学技術の進歩と人間生活」においては、生徒の興味関心等に応じて、科学技術と人間生活とのかかわりなどを平易に扱える課題を設定し探究活動をおこなう。
「理科総合B」では「人間の活動と地球環境の変化」という大項目で、環境問題に関連した課題を設定し探究する。その際、人間生活が環境問題の主な誘因となる例、人間生活と自然現象が相互に影響しあって引き起こされる例など、人間生活とのかかわりに留意した課題の設定が重要となる。
ウ.「物理T・U」
「物理T」では「生活の中の電気」という中項目で、人間生活と電気とのかかわりを扱う。モーターや発電機を取り上げ、家庭の電源が交流であることや、情報通信に電磁波を利用していることなど、身近に使われている電気や電磁波の性質などを扱う。従前の「物理TB」と異なり、定性的な扱いにとどめる部分が多い。
「物理U」では、小項目「固体の性質と電子」において導体、不導体、半導体などを扱う。このような学問分野の発展が今日の電子工学、コンピュータ、情報技術の基礎となり、豊かな現代生活が成り立っていることにも触れたい。
エ.「化学T・U」
「化学T」における小項目「化学とその役割」では化学の成果が人間生活を豊かにしたことを具例を通して扱い、生徒の興味関心を喚起したい。また有害物質の適切な管理にも触れる。
「化学U」の中項目「食品と衣料の化学」では、日常生活に関連する食品、衣料を扱い、これらの中の代表的な物質の性質を探究するなかで、快適で安全な生活をしていくために必要な物質に対する考え方や扱い方を身につけさせる。
オ.「生物T・U」
「生物T」の小項目「体液とその恒常性」では、体液とその働きや循環、恒常性の維持の原理、生体防衛などを扱うが、人の健康とのかかわりについても触れることに留意したい。
「生物U」における小項目「バイオテクノロジー」では、遺伝子操作が様々な分野で用いられていること、遺伝子組み換えや組織培養、核移植、細胞融合などの技術が医療や、作物の品種改良などに利用されていることに触れ、正しく理解させることが重要である。課題研究では「自然環境の調査」について扱うことができる。
カ.「地学T・U」
「地学T」の小項目「大気の熱収支と大気の運動」では、オゾン層の破壊などの地球環境問題にも触れる。その際地球温暖化などに触れることも考えられる。
「地学U」の中項目「日本列島の変遷」では日本列島の地質構造や火山、地震に見られる特徴について扱う。生活の場である自分の住む地域における地形、地質の成因などに興味を持たせることは重要である。課題研究では「生物U」と同様に、「自然環境の調査」について扱うことができる。