第3章 学習指導要領を考える

 

 

学習指導要領は最低基準

 

 学習指導要領が最低基準であることを文部科学省は明らかにした。

 高等学校では、大学入試の内容は学習指導要領に規制されると考えられ、いわば最大内容枠を示すと捉えられている。いずれにしても、教育行政は教室には入らない。内容を決めるのは授業である。その意味では、学習指導要領は実質的には教科書の内容を規定するものと考えられる。

 今回、教科書への拘束が強まった。たとえば、学習指導要領解説書の項目の名称が「指導上の留意事項」から「内容の構成とその取り扱い」となった。なお、学習指導要領解説書の内容は教科により様々である。

 また、教科の内容だけでなく、授業の方法に踏み込んだ。たとえば、物理Tは、身近な物理現象から始め、まず電気、続いて波と学習することを示した。ただし履修の順序に拘束力はない。

 理科では、探究活動や課題研究では生徒の求めに応じて学習が進むため、内容の制限はない。また、総合的な学習に時間や学校設定科目・教科では学校独自に内容を決めていく。学習指導要領にない内容を授業で扱うことについては、次のように総則に明記され認められている。

 

学習指導要領に示されない内容の学習

学習指導要領 第1章 総則 より

 

第2款 各教科・科目及び単位数等 

4 学校設定科目

 学校においては,地域,学校及び生徒の実態,学科の特色等に応じ,特色ある教育課程の編成に資するよう,上記2及び3の表に掲げる教科について,これらに属する科目以外の科目(以下「学校設定科目」という。)を設けることができる。この場合において,学校設定科目の名称,目標,内容,単位数等については,その科目の属する教科の目標に基づき,各学校の定めるところによるものとする。

5 学校設定教科

(1) 学校においては,地域,学校及び生徒の実態,学科の特色等に応じ,特色ある教育課程の編成に資するよう,上記2及び3の表に掲げる教科以外の普通教育又は専門教育に関する教科(以下「学校設定教科」という。)及び当該教科に関する科目を設けることができる。この場合において,学校設定教科及び当該教科に関する科目の名称,目標,内容,単位数等については,高等学校教育の目標及びその水準の維持等に十分配慮し,各学校の定めるところによるものとする。

 

第6款 教育課程に編成・実施に当たって配慮すべき事項 2 各教科・科目等の取り扱い

(1)学校においては、第2章以下に示していない事項を加えて指導することができる・・・・・・

 

 

また、文部科学省では以下のように最低基準性を強調し、教育内容が低下しないことを訴えている。

 

学習指導要領は最低基準

新学習指導要領パンフレット(教師向け)

文部科学省HP http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/020502.htm など

Q 学習指導要領が最低基準であるということは、各学校においては、児童生徒に学習指導要領に示す内容を教えただけでは十分ではないということなのでしょうか。

 学習指導要領は、全国的に一定の教育水準を確保するために設けられた基準であり、共通の教育課程においては、学習指導要領に示す内容をすべての児童生徒に指導することが基本となります。しかし、児童生徒の理解の程度には差があることを踏まえれば、必ずしもそれだけで十分であるとは言えません。

 したがって、理解の程度に応じたきめ細かな指導を行うとともに、その実施状況を適切に評価し、さらなる指導の改善に生かすなど、学習指導要領に示す目標の着実な実現に努めることが重要です。

 例えば、学習指導要領に示す内容の理解が十分でない児童生徒に対しては、繰り返し指導など補充的な学習を行ったりするなど、一人一人の児童生徒の実態に即した個に応じた指導を一層充実させることが必要であると考えています。

 また、学習指導要領に示す内容を十分に理解している児童生徒に対しては、個別指導や習熟度別のグループ別指導、選択教科における指導などを通じて、その理解をより深めるなどの発展的な学習を行うことも個性の伸長という観点から必要であると考えています。

Q 学習指導要領に示す内容を十分理解している児童生徒に対して、学習指導要領に示されていない内容を加えて指導する場合に制限はないのでしょうか。

 学習指導要領に示す内容を十分理解している児童生徒に対して、どのような内容を加えて指導するかは、児童生徒の実態を踏まえ、その興味・関心を高め、理解を深める観点から、各学校が判断すべき事柄です。

 各学校において、児童生徒の負担過重となったりすることのないよう配慮するなど、学習指導要領総則を踏まえて判断していただきたいと考えています。

Q 新しい学習指導要領において削除された内容や、中学校理科の「イオン」など扱わないこととされている内容を加えて指導してよいのでしょうか。

 学習指導要領に示す内容やその取扱いは、すべての児童生徒に共通の教育課程を編成する場合に適用するものです。新しい学習指導要領においては、知識の暗記に偏重せず、「ゆとり」の中で自ら考える力をはぐくむために、教育内容を厳選しています。このため、新しい学習指導要領において削除した内容や取り扱わないこととした内容を、すべての児童生徒に一律に指導することは、新しい学習指導要領の趣旨にそぐわないものと考えます。

 その一方、学習指導要領に示す内容を十分理解している児童生徒に対して、児童生徒の興味・関心等を一層伸ばす観点から、個別指導や習熟度別のグループ別指導、選択教科における指導などを通じて、発展的な学習を行う際には、このような内容を加えて指導することも可能です。

 各学校において、児童生徒の負担過重となったりすることのないよう配慮するなど、学習指導要領総則を踏まえて判断していただきたいと考えています。

(文部科学省初等中等教育局教育課程教育課程企画室課)

 


 

教科書検定に関して

 

 関係者の情報から、従来の検定は、教科書本文を中心に行われ脚注や囲み記事は運用に差異があったが、今回はこうした区別なく教科書の内容すべてが検定の対象とされることとなった。

ところが、平成15年度から使用する新高校教科書の検定方針を文部省が突然変更し、学習指導要領を超える難しい内容の記載を容認するようになった。この情報は平成13年8月にはインターネットに現れ、9月にはマスコミでも報道された。ただし、この時期、検定の結果はすでに決定していた。

これは新学習指導要領による学力低下の懸念と、学習指導要領は最低基準との見解を打ち出したことから、進行中の教科書検定方針を変更する異例の措置をとった。同省は、最近になって検定方針を変更する旨の文書を作成し、選択科目については、発展的な内容の記述を許容すると明言し、学習指導要領にない内容でも、理解を深めたり、興味・関心に対応したりする内容は記載を可能とした。ただし、学習指導要領を超える記載を禁じた検定基準に反するため、「本文と分け、参考資料やコラム扱いにする」との条件を付けた。さらに、「必履修科目」についても、既に検定意見のついた記述は削除させるが、ページ数は減らさなくともよく、代わりに学習指導要領を多少超える部分を含む「丁寧な記述」で埋めることを許容し、事実上検定を緩めた。


 

【平成13年度教科用図書検定結果の概要】(文部科学省初等中等教育局教科書課)

平成13年度においては,平成15年度から高等学校の主として低学年で使用される教科用図書の検定を実施した。検定申請点数は393点であり,このうち387点が合格し,次の6点が不合格となった。

なお,不合格となった申請図書は,検定実施の翌年度に再申請することができる。

 

不合格となった教科(種目)

理科(生物T)

3点

芸術科(美術T)

2点

外国語(英語T)

1点

 

 

教科・種目

申請受理点数

検定終了点数

理科

理科基礎

4

4

0

4

理科総合A

10

10

0

10

理科総合B

9

9

0

9

物理T

9

9

0

9

化学T

12

12

0

12

生物T

12

9

3

12

地学T

5

5

0

5

61

58

3

61

普通教科

327

321

6

327

 

○文部科学省告示平成14年1月31日(初等中等教育局教科書課)

高等学校用定価認可基準最高額一覧表(平成14年度用)

 

科目

価格

 

 

 

 

 

 

総合理科

1,015

 

 

 

 

 

 

物理TA

770

化学TA

770

生物TA

865

地学TA

865

物理TB

940

化学TB

940

生物TB

1,075

地学TB

1,075

物理U

580

化学U

580

生物U

660

地学U

660

 

 

 


 

大学入試と高校理科

 

 今回の学習指導要領に伴う教育課程の研究で生じた最大の問題点は、大学入試制度の変更であろう。このことを通していくつかのことをわれわれは学んだ。まず、大学は大学の主体性によって入試改革を進めること。入試科目の決定は入試の前年、すなわち受験生が高校3年生のときに決定すること。センター試験についても、従来のスケジュールを早めることはないこと。次に、文部科学省においても、高等学校教育を担当する初等中等教育局と大学を担当する高等教育局は一体ではなく、風通しが悪いこと。さらに大学入試を決定するのは各大学および大学入試センターであることなど、学習指導要領と高等学校の教育が直接大学入試に反映するものではないことを経験した。また、大学側も、公式に非公式に高等学校との接触を求め、入試だけでなく、幅広く連携を求めている。

 高等学校の教育課程は、生徒の入学の前年度に提示することをから、大学入試科目にあわせた教育課程の編成は大変困難である。大学入試にあわせた教育課程と生徒の科目選択が不可能だとしたら、より多くの入試に対応できる学習を積み重ねること、後期中等教育で教えるべきことを教え、学ぶべきことを学ぶという学校本来の教育がより重要になってくる。

 センター試験が5教科7科目と増加する一方、入試の制度そのものが多様化し、国立大学に関しても推薦入試などを利用することで、5教科7科目の学習だけが大学への必要条件ではなくなっている。

 なお国立大学協会は国立大学だけで構成され、県立など公立大学は含まれない。国立大学協会の発表した5教科7科目入試についての提言を示す。


 

センター試験は5教科7科目に

国立大学の入試改革 -大学入試の大衆化を超えて-            平成12年11月15日

国立大学協会

提言2.2    国立大学志願者(一般選抜)については、原則としてセンター試験5教科7科目の受験を課す。

提言の解説   大学入学の基礎学力を如何に担保するかはたいへんな問題であるが、共通1次試験時代を想起すれば問題点はかなり予見できる。それらを十分踏まえたうえで、センター試験を国立大学における入学者選抜のための第1段階目の試験と位置付け、受験教科数は5教科とし、受験科目は7科目とする。地歴・公民は理科とのバランス上、1教科として扱い、受験者は地理歴史・公民から2科目、理科は物理・化学・生物・地学等から2科目を選択する。各大学・学部は、アドミッション・ポリシーに従って科目の指定を行う。その際、現行課程では4単位科目と2単位科目の取り扱いが問題視されるが、基本は4単位科目とする。

 2003(平成15)年度からの新学習指導要領による受験者の取り扱いは、今後の決定に委ねられることとなるが、国語として国語総合4単位、理科として理科基礎、理科総合A・Bに物理、化学、生物、地学の3単位の中から2科目を選択するのが妥当であろう。地理歴史・公民は各大学の指定に委ね4単位科目を2科目選択させる、外国語は英語・を選択する等の案が考えられる。

 

提言2.3    試験科目の選択が制限されぬように、また余裕をもって受験ができるように、センター試験の試験期間を1日延長して3日間とする。

提言の解説   現行のセンター試験のあり方としては、少なくとも理科の「物理」と「生物」の組合せ受験を実現させたい。その可能性としては実施日を1月の3日間とし、おおかたの受験者が2日間で試験を終了するとしても、特定の受験者については最大3日間を要することも含め、試験期間のスケジュールを検討する必要がある。

 センター試験は現在、6教科31科目の試験を2日間で実施している。そのために、物理と生物のように、理科の選択科目でありながら、実際には受験することのできない科目の組み合わせが生じている。このことは大学にとっても受験生にとってもきわめて不合理であり、センター試験の理念にも反する。センター試験の期間を2日から3日に延長することは、これまでも検討されなかったわけではないが、試験場の確保がむずかしいこと等から、なかなか実現の見通しが立たなかった。しかしながら、1月の祝日である成人の日が第2月曜日に確定したことから、この祝日を利用し、土、日、月の3日間にわたって試験場を確保する道が開けた。試験期間を延長できれば、従来、組み合わせ受験が不可能であった科目をなくすことができる。また、そればかりでなく、通常受験者の1.5倍の時間を要している障害者の受験においても、ある程度余裕をもって試験時間を確保することも可能となる。

Copyright (C) 2001 国立大学協会. All Rights Reserved.


 

学習指導要領の改訂と国立大学協会の5教科7科目の提言に基づき、大学入試センターから、センター試験に関して、より具体的な方法が検討され公表されておる。

 

新学習指導要領と入試科目

大学入試センター-平成18年度からのセンター試験の出題教科・科目等について-中間まとめ-

平成14年3月28日

独立行政法人大学入試センター

 

平成11年3月29日付けで新しい高等学校学習指導要領(以下「新指導要領」という。)が告示され,高等学校においては,平成15年度から新指導要領に基づく学習が学年進行で開始されるため,平成18年度からの大学入試センター試験(以下「センター試験」という。)の出題教科・科目や出題方法等について,新指導要領に即した検討が必要となった。

このため,大学入試センターでは,平成11年7月から国公私立大学及び高等学校関係者等で構成する「運営委員会試験問題特別委員会企画部会」において検討を開始した。その後,平成13年4月の当センターの独立行政法人化に伴い,新たに設置した「試験企画委員会」及び「教科・科目等検討委員会」において検討を引き継ぎ,審議を重ねてきた。

センター試験は,大学に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを主たる目的として実施されていることから,新指導要領を受けて多様に展開される高等学校教育と変革期にある大学教育の双方に対応する必要がある。この点に立って,出題教科・科目とその範囲の設定に当たっては,高等学校教育に及ぼす影響や各大学・学部の多様な入学者選抜に応ずる資料として十分な機能を果たすことができるよう配慮した。

これまでの検討の過程では,新指導要領の改訂の基本的なねらい・特色等を踏まえるとともに,高等学校の教科書が刊行されていない段階で,新指導要領及びその解説書などを資料としながら,そこに示されている各教科・科目の設定の趣旨や目標・内容については,現行のものとの詳細な比較検討を行うことに努めた。

そこで,当センターでは,現時点におけるセンター試験の出題教科・科目等についての審議状況を,次のとおり「中間まとめ」として明らかにし,各方面の意見を求めるとともに,高等学校における教育課程の編成状況や,利用大学におけるセンター試験の利用の方法等の調査も実施するなど,更に詳細な検討を行った上で最終的な結論を得る予定としている。

なお,「中間まとめ」における今後の検討課題とされた事項を含め,「中間まとめ」の内容を変更する場合は,高等学校における教育課程編成を考慮し,速やかに修正して公表することとしたい。


理科の科目は以下のように3つのグループに分ける案が示された。2単位科目は1科目しか選択できないことになる。物理を選択すると2単位科目が受けられないことは物理を理系の科目と限定した現れであろう。生物、地学の組み合わせができないことは、実際は文系の理科は1科目と想定していることを伺わせるものである。今後も検討が続くであろうが、問題に対しては、我々も意見を表明することも必要であろう。

新学習指導要領における理科の入試科目

各教科の出題科目等 より 理科

出題科目は「理科基礎」,「理科総合A」,「理科総合B」,「物理」,「化学」,「生物」及び「地学」の7科目とし,次のように3グループに分け,それぞれのグループにおいて,1科目を選択解答させる。

グループ@ : 「理科基礎」,「理科総合A」,「理科総合B」及び「物理」

グループA : 「化学」

グループB : 「生物」及び「地学」

(説明)

新指導要領では,11科目(「理科基礎」,「理科総合A」,「理科総合B」,「物理」,「物理」,「化学」,「化学」,「生物」,「生物」,「地学」及び「地学」)が設定されている。これらのうち,「理科基礎」,「理科総合A」,「理科総合B」,「物理」,「化学」,「生物」及び「地学」の7科目のうちから2科目を必履修科目とし,その際,「理科基礎」,「理科総合A」及び「理科総合B」のうちから少なくとも1科目以上を含むものとしている。したがって,7科目すべてを出題する。グループ@,グループA及びグループBの科目配置は,受験者の理科の選択科目の組合せ等を考慮した。なお,「理科基礎」,「理科総合A」及び「理科総合B」は,物理,化学,生物,地学の内容を総合的に取り扱う科目となっている。そのため,これら3科目の出題内容をすべて重複させずに別々のグループに配置することは困難なため,同一のグループに配置した。

Copyright-2002 National Center for University Entrance Examinations All rights reserved. http://www.dcn.ac.jp/center_exam/18kyouka-chuukann.html

 

現行の教育課程でも、センター試験における理科の科目の選択の幅が広げられる。

 

平成16年度センター試験出題教科・科目】 (抜粋)

独立行政法人大学入試センター

教科

グループ

出題科目

試験時間

(配点)

出題方法等

科目選択の方法

理科

@

総合理科

物理TA

物理TB

60分

(100点)

 

左記出題科目の3科目のうちから1科目を選択し解答する

A

化学TA

化学TB

地学TA

地学TB

60分

(100点)

 

左記出題科目の4科目のうちから1科目を選択し解答する

B

生物TA

生物TB

60分

(100点)

 

左記出題科目の2科目のうちから1科目を選択し解答する

 


 

これからの理科教育

 教育問題が山積し、社会的政治的に議論される中で行われた教育課程の改定は、理科に限らず、意外なほど変化はなかった。こどもの生活体験、自然体験の不足、国際化、情報化、完全学校週5日制といった現在の問題に対応した改定であった。これは教科教育の成熟を示すのだろうか。それとも限界に達したのだろうか。嵐の前の静けさだろうか。

 教科教育に関して、中央教育審議会から、将来における教科の再編の可能性が指摘された(第2部 学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方 第1章 これからの学校教育の在り方 (1)これからの学校教育の目指す方向 [6]教科の再編・統合を含めた将来の教科等の構成の在り方)。

 

教科の再編・統合の可能性

第2部 学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方 

第1章 これからの学校教育の在り方 

(1)これからの学校教育の目指す方向 

[6]教科の再編・統合を含めた将来の教科等の構成の在り方

 学校の教科等の構成の在り方については、学校教育に対する新たな社会的要請、学校教育を取り巻く環境の変化、教育課程に関する最新の学問成果等を勘案し、不断に見直していく必要があるが、この問題は、理論的な検討とともに学校現場での研究実践の積み重ねを行うほか、教員養成等、教科等の見直しに伴う種々の条件整備も考慮した総合的な検討を要する問題である。
 このような考えの下に、教科の再編・統合を含めた将来の教科等の構成の在り方について、早急に検討に着手する必要がある。そして、この問題の特質にかんがみ、検討の場として、教育課程審議会に、教科の再編・統合を含めた教科等の構成の在り方について継続的に調査審議する常設の委員会を設けるとともに、その審議の成果を施策に反映することが適当である。この調査研究に当たっては、国立教育研究所、大学、各都道府県の教育センターや民間教育研究団体等の研究者の研究成果、国立大学の附属学校や研究開発学校の実践研究などの様々な研究成果を適切に反映するようにする必要があり、また、その際は、大学等の研究者等によるカリキュラムに関する研究を一層推進するための積極的な支援措置を講じることが必要である。
 なお、今後の教育課程審議会の発足に当たっては、学校関係者や教科の専門家の意見を尊重することはもとよりであるが、幅広い各界の人々や保護者など広く国民の声を反映するような配慮を望んでおきたい。

 

 答申がありながら、教科の再編はなされなかったが、中央教育審議会、教育課程審議会が、現行の学校制度を改正していくという役目を反映していることと思う。たとえば、教育改革国民会議では、より大きな改革を提案している。

 次回の改定が、教科の再編と教科教育に及ぶとしたら、現行の教科は存在の意義を示し、新しい制度へ対応できるよう改革を行わなければならない。理科教育の重要性を、生徒、保護者、社会へ対し積極的に説明し、理科に興味関心を持つ生徒を増やし、理科に対して高い意欲を持つ生徒には、その要求と可能性に応じた理科教育を行い、多くの生徒が授業を受け学習してよかったと思える教科教育を行い、教科の存続のための自己改革を続けなければならない。

 説明責任の対象として、社会と述べたが、具体的にはたとえば中央教育審議会の委員が考えられる。いかに名簿を示すが、初等中等教育の関係者は限られている。教育を考える視点をどこに取るかという意図を感じるものである。

 

教育の方針を決める人々

第1期中央教育審議会委員

平成13年1月31日発令 *は平成14年5月27日発令

会 長 鳥居泰彦  慶應義塾学事顧問、日本私立学校振興・共済事業団理事長

副会長 木村孟  大学評価・学位授与機構長

副会長 茂木友三郎 キッコーマン株式会社代表取締役社長

荒木喜久子 新宿区立津久戸小学校長

千田捷熙  東京都立両国高等学校長

田村哲夫  学校法人渋谷教育学園理事長,渋谷幕張中学・高等学校長

横山洋吉  東京都教育委員会教育長

奥島孝康  早稲田大学総長

梶田叡一  京都ノートルダム女子大学長

岸本忠三  大阪大学長

倉翔   明海大学長

中嶋嶺雄  アジア太平洋大学交流機構(UMAP)国際事務総長,北九州市立大学大学院教授

佐藤幸治  近畿大学法学部教授,京都大学名誉教授

石倉洋子  一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授

森隆夫   お茶の水女子大学名誉教授

山下泰裕  東海大学体育学部教授

山本恒夫  大学評価・学位授与機構評価研究部教授

中村桂子  JT生命誌研究館長

渡久山長輝 財団法人全国退職教職員生きがい支援協会理事長

今井佐知子 社団法人日本PTA全国協議会顧問

浅見俊雄  日本体育・学校健康センター国立スポーツ科学センター長

國分正明  日本芸術文化振興会理事長

寺島実郎  株式会社三井物産戦略研究所取締役所長,財団法人日本総合研究所理事長

内永ゆか子 日本アイ・ビー・エム株式会社常務取締役

江上節子  東日本旅客鉄道株式会社フロンティアサービス研究所長

木剛   ゼンセン同盟会長

松下倶子  独立行政法人国立少年自然の家理事長

吉川弘之  独立行政法人産業技術総合研究所理事長

永井多惠子 世田谷文化生活情報センター館長

増田明美  スポーツジャーナリスト,スポーツライター

役職は平成14年5月現在

 

 理科の内容は現行同様だが、理科の学習を選択するのは生徒一人ひとりである。科目の選択によっては、進化もイオンも学ぶことなく高校を卒業することになる。短期的には、必履修科目で自然科学の面白さと大切さを伝え、理科を選択する生徒を増やしていきたい。特に理系進学者に対しては従来以上に充実した内容を保障していきたい。

 一方、長期的には自然科学に限らず学習の場は高等学校だけではないこと、生涯学習の制度と機会が増えていることがあげられる。必履修科目の学習で、もうひとつ必要なことは、生涯学習につながるような興味関心と基礎的な知識を身に付けさせることにある。

 現行の制度でも、理数科、英語科、総合学科など多様な学科やコース、単位制や通信制など様々な形態の高校があり、後期中等教育については、大学受験資格検定試験もある。そして中高一貫教育、スーパーサイエンスハイスクール、大学への早期入学など学校制度そのものも多様化が始まっている。学習指導要領の枠を超える教育が例外ではなくなっている。

 多様な選択肢の中でも、後期中等教育の主力は高等学校が担うであろう。高等学校に対する期待に応え、我々自身あるべき高等学校教育を考えていきたい。