マーケティング・リサーチ概要
−市場調査機関を使うには−
Abstract マーケティング・リサーチを有効に活用することは経営に保険を掛けることである。しかし巷にあふれる調査票の多くはマーケティング・リサーチの持つ統計的な意味合いを持たないように感じる。マーケティング・リサーチを有効に活用したい企業がどのようにマーケティング・リサーチと取り組むべきか一般の啓蒙書には書いていない市場調査機関のリサーチャーからの提言となっている。
1. はじめに
昨今、書店でマーケティングの啓蒙書は見かけるようになりましたが、マーケティング・リサーチ(以下市場調査とする。)の啓蒙書は見かけなくなりました。マーケティングと異なり、市場調査は統計学・心理学・社会学などを多用しながら、科学的な手法にもとづいて行うことを前提としています。このため概念の理解は進んでも実務レベルでは数式が邪魔をして導入が進んではいません。日本の大学などの教育機関においても抽象的な推測統計学の理論に注力を注いでいる傾向があるようです。市場調査は純粋数学や理論物理などと異なり、実務に適用されて初めてその存在意義があります。
最近、ちょっとした買い物や食事の際に、何かしらのアンケート(市場調査)に答える機会が多くなっているようです。しかし、その調査内容はいささか疑問の場合も多くあります。よく企業のマーケティング部にお話をうかがう機会がありますが、その多くはどのように報告書を作成するべきかの視点が抜けている場合が多いように感じます。往々にして、そのような企業は「アンケート(市場調査)は意味が無い」といった認識になるようです。確かに市場調査を実施したからといって劇的に何かが変わるとは断言できません。しかし実施しなければ、因果関係をデータとして把握することは不可能です。つまり、「市場調査は経営の保険である」といった認識で正しく運用するべきです。 また、「優れた決定をなす為の秘訣は、90%の情報と10%のインスピレーションである。」というような言葉からも、いかに健全な意思決定を行い、着実な経営を繁栄に進ませるために、情報の活用は不可欠であるといえます。
本稿では市場調査を進める際に必要な調査設計の捉え方と調査の方法論についてリサーチャー側から見たクライアントサイドに知っていてほしい項目を提案しています。
2. 調査設計について
市場調査においてもっとも時間を費やすべきは調査設計です。優れた調査設計は優れた経営を行うためのデータの収集を容易にします。優れた調査設計とは
調査の目的を的確に捉えることから始まります。調査の目的とは仮説をどのように捕らえてその仮説にどのように科学的な手法を使ってアプローチをしていくかをさしています。調査の話でよく聞く定量調査や定質調査はその仮説にアプローチをするための手法にしか過ぎません。調査をする上で大切なのは仮説をどのように捉えてどのようにアプローチしていくかを考えることが必要なのです。では、仮説の捉え方ですが実は簡単なのです。仮説は大別して2通りに分けて考えます。
(1) 仮説検証型…ある事象について仮説がひとつ
(2) 仮説摘出型…ある事象について仮説が複数
よくある間違いとして、調査設計をテクニカルな面だけを中心に考えてしまい、仮説がぼやけたり、仮説自体が無い調査となる場合があります。
また、クライントの意向が強い場合は往々にして、その意向を優先させることによって仮説が見えにくくなる場合もあります。聞きたい項目がどんどん増えてくる場合など、その増やした項目に意味があるのかどうか考える必要性があります。また、そのような項目を単純に解析することは多重共線性などの問題があって危険です。「項目を多くすればいい」「発注元だから好きなように言える」は結局、クライアントとリサーチャーの信頼関係を崩します。リサーチャーは調査設計上でその危険性を必ず説明しますが、必ずしもご理解いただいているとは思えません。なぜそれが必要でどのようにその集めた情報を整理して集計し分析・解析するのか描けるようでなければ、その質問の意味はありません。データを取ればいいなんて発想はありえません。「Garbage IN Garbage OUT」とはこのことです。リサーチャーとクライアントはパートナーの立場でなくてはなりません。そのような関係性が作れない場合は調査設計自体が失敗するときもあります。
3. 良い調査票・悪い調査票
良い調査票として確かに言えることは取得したデータが時系列データとして使えることが多いです。その理由は簡単です。仮説が明確にされてそれを調査票上にきちんと反映されているからです。調査データはそのデータを取得した時点で過去のデータになります。その過去のデータをどのように未来につなげていけるかは仮説の持たせ方によります。その仮説に基づいた調査票を時系列に並べていくことは過去のデータである調査データが未来を照らしていきます。
悪い調査票ははっきり言ってその場限りの調査です。時系列にデータを扱うには不適格な場合が多く、その場限りの調査としても不適格な場合もあります。確かにリサーチャーはその道のプロですから報告書をそれなりの形にまとめ上げますし、その調査の過程はすべて科学的であることに間違いはありません。しかし報告書がどのような形にまとまるにしても、仮説がない場合は結果が導けないことが多いです
4. 仮説とは
仮説をもう少し掘り下げて考えます。仮説の定義は簡単に表記するとするならば、「確かめようとする考え」です。仮説は個々の事象や観察から統一的に導かれた試験的な説明ともいえます。事実についての仮説もあれば、現象についての原因としての仮説や将来についての仮説など様々です。市場調査はそれら仮説を確かめるためにおこないます。
5. 実際の調査の流れ
実際の調査は様々な過程を経て報告書作成およびリコメンデーションをおこないます。(一部省略)
6. 調査の妥当性、信頼性、客観性
仮説が適切に設定されて調査票を作成します。調査票作成はテクニカルな面が多く今回は詳しく記述いたしませんが、そこで作成した質問項目は報告書作成にあたりどのように整理・分析・解析されるかをあらかじめ決めていなければいけません。なんとなく使っているスケールも科学的な解釈があります。「よく見かけるからこのスケールでいいや」と言うわけではありません。たとえばクロス集計で関係性を見る。もしくは因子分析、主成分分析、数量化理論など、あらかじめ報告書作成の設計図にもとづいて質問項目は組まれなければなりません。
調査票が作成できた、もしくはその調査の実査が正しくできたかどうかを検討するには3つのものさしを使うのが理解しやすいです。
(1) 妥当性…観察したい内容を正しくはっているか
(2) 信頼性…いつどこで何回はかっても正しくはかれるか
(3) 客観性…誰がはかっても正しくはかれるか
この3つのものさしが成立した場合、初めて市場調査が成立しているのです。
注意点として多くの市場調査はサンプリング調査です。このため測定誤差が生じます。上記3つのものさしはその測定誤差をふまえた上で考察していきます。
7. 昨今の調査環境
インターネットの爆発的な普及に伴い、最近ではインターネット調査が普及してきています。弊社においてもインターネット・サービス・プロバイダーと協力して全国22万人(居住地域人口カバー率98%)の調査が実施できるようになりました。従来の調査手法と比べてコストメリットのある調査が実現可能です。
インターネット調査
特徴…画像を使った商品デザインの調査が可能
紙を使った調査票と比べて自由回答の記入が多い。リアルタイムで集計ができる。
郵便費用・電話費用が掛からず比較的安価で
調査ができる。代表性は現状の利用人口および郵送調査などの回収率からと比較して考察するに一定のクオリティを確保している。インターネット利用人口は様々な統計データがある。
8. まとめ
市場調査を導入したいと法人は年々多くなってきているように感じます。また、独自に市場調査をおこなっている企業も多くなっていると感じています。街に出れば、必ず調査票を見かけますが、その多くの調査票は科学的なアプローチにもとづいておこなっているとは言えないのが現状です。誰にでも、できるように感じる市場調査は実は科学的手法や理論を総合的に調査票という名のデータ収集の網を作っていく作業であり、そして、収集したデータを意味があるように整理、分析、解析することを目的としています。ただ単にアンケートをするだけならば、実はしないほうがましともいえます。なぜならば、使えないデータに振り回されて、経営資源を浪費することを防げるからです。また、専門の調査機関に調査案件を発注しても、その調査設計の過程でさまざまな思いが交錯して仮説自体が無くなることが多いことも事実です。調査の目的は調査をすること自体を目的とすることなく、調査の結果から仮説を検証することであり、未来につなげるためです。
「市場調査は経営の保険である」「優れた決定をなす為の秘訣は、90%の情報と10%のインスピレーションである。
参 考 文 献
[1] 出牛 正芳(1991)“市場調査入門”同文館出版社.
[2] 西澤 昭 (1998) “リサーチメソッド”朝倉書店
参 考 デ ー タ
ネットレイティングス社 月間WEB 利用者データ
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