「日の丸・君が代」強制と「良心の自由」

●2001年4月

                 「日の丸・君が代」強制と「良心の自由」

文部大臣答弁の嘘

 一昨年8月に「国旗・国歌法」が、賛成・反対で世論が2分するにも関わらず、
国会での多数の論理で強行成立させられた。その際、とくに懸念されたのは、
遵守規定がないとはいえ、この法律は憲法第19条にある「思想・良心の自
由」、すなわち「思想及び良心の自由はこれを侵してはならない。」という国民の
権利を侵害するのではないかということであった。
 当時の国会での政府答弁で、文部大臣が次のように答えていた。いくつの文
部大臣の答弁を列挙しておこう。
「このことは(国旗・国歌の指導)は、児童生徒の内心まで立ち至って強制する
趣旨のものではなく、あくまで教育指導上の課題として指導を進めていくことを
意味するものでございます。」
「どのような行為が強制することになるかについては、(中略)例えば長時間に
わたって指導を繰り返すなど、児童生徒に精神的な苦痛を伴うような指導を行う、
それからまた、たびたびよく新聞等々で言われますように、口をこじあけてまで
歌わす、これは全く許されないことであると私は思っております。」
「起立しなかった、あるいは歌わなかったといったような児童生徒がいた場合、
これに対しまして事後にどのような指導を行っていくかということにつきまして
は、(中略)その際に、御指摘のように、単に従わなかった、あるいは単に起立
しなかった、あるいは歌わなかったといったようなことのみをもって、何らかの
不利益をこうむるようなことが学校内で行われたり、あるいは児童生徒に心理的
な強制力が働くような方法でその後の指導が行われるということはあってはなら
ないことと私どもは思っているわけでございます。」
 しかし、その後2度の卒業式・入学式を経るなかで、その答弁は真っ赤な嘘で
あると、新聞報道等に見られるように全国の事例で明らかになった。

「良心の自由」の侵害

 そこで、今年の小学校の卒業式(大阪府高槻市)で、「日の丸・君が代」強制
に関わって、どのような「良心の自由」の侵害、人権侵害が起こっているか、そ
の事例を分かっている範囲で具体的に挙げてみよう。

<ついに起こった差別事件>
 A小学校では、「君が代」の事前指導で、在日韓国人生徒への差別発言が起き
た。音楽の授業で「君が代」の練習があり、4年生の在日韓国人の子どもが耳を
ふさぎ、歌わなかった。その後、教室に帰ってクラスメートから「なぜ歌わない
のか」とせめられ、言い争いになり、そのとき、「韓国人」という差別発言を受
けた。その後、子どもの保護者が学校に抗議の申し入れを行った。また、保護者
・「日の丸・君が代」強制に反対する市民グループ・在日韓国人団体が市教委に
抗議し、市教委は差別事件であることを認め、対応策を検討すると約束した。

<子どもへの事情聴取>
 B小学校では、6年生の在日韓国人の子どもと日本人の子ども5名が、卒業式
に「日の丸と君が代はやらないでほしい」と校長に申し入れた。そして、卒業式
前に担任が子どのたちを個別の呼び出し、圧力をかけた。担任は一人一人に対し
て、「式の時どうするの?」「親には相談したの?」「退場以外にも、友達とし
て協力できることはほかにいっぱいあるでしょう?」と恫喝を加えた。このよう
な圧迫をはねかえして、卒業式当日に10名ほどの子どもたちが起立せず、歌わ
なかった。

<子どもの良心の自由の否定>
 C小学校では、卒業式予行の「君が代」斉唱で、5・6年の子どもたちが全員
すわったので、校長は「国歌は起立して歌うのが当たり前であるが、すわった人
はきちんとした考えをもってすわったのでしょう。自分で判断してもらうのは結
構です。しかし、今日、家の人ともう一度話をして下さい。当日、もしおうちの
人が“なんですわったんや”と言われた時は、ちゃんと答えられるようにして下
さい。」という強制発言した。それにに強く反発して、卒業式当日、(6年担任
2人の着席とともに)6年全員が起立しなかった。

<子どもへの思想調査>
 D小学校では、終了式当日、卒業式に起立しなかった5年生の子ども全員を残
し、校長が「この本(指導要領)には“国旗、国歌は尊重するように”と書いて
ある。」「国旗・国歌が必要ないと思う人、必要だと思う人、わからない人」の
いずれかに手をあげさせた。その後、3人の子どもたちが校長に抗議した。子ど
もは「(憲法は)平和主義でしょう?」と校長に質問し、校長は「攻めてきたら
どうするねん。」「そむく時は先生はやめさせられる。」と発言する。保護者に
よる校長・市教委への抗議が予定されている。

<全教職員への事情聴取>
 E小学校では、6年生は5、6人を除き着席した。その後、校長は再三市教委
に呼び出さた。そのため、校長が6年担任、音楽専科を呼び出し、校長は「児童
がほとんど座ったのはおかしい。半分ぐらいは立つはずだ。どんな指導をしたの
か。」と言い、教員の不起立のことについても、「遺憾である。仕事だと思って
立って下さい。入学式の時には、起立するように。」と強制した。また、「市議
会議員が市議会で追及する。」と校長は脅した。その後、春休み中にかけて、全
職員が呼び出され、「どこの席で、立ちましたか、座りましたか?」と聞かれた。
同様に「入学式では、起立するよう。」と強制した。

「良心の自由」の事前説明の重要性

 法制化後2年目の卒業式、私の勤務校(中学校)では、昨年の取り組みに引き
続き、「思想・良心の自由」についての事前説明を校長に執拗にせまり、卒業式
の予行で、卒業生と式に出席する在校生に「あなたがたの内心の自由(歌えない、
立てない、退席など)は大切にします。」と言わせることができた。また、保護
者には「内心の自由は尊重し、強制はしません。」(昨年は生徒への「良心の自
由」の具体的説明と同様だったが、今年はそれはなかった。)という説明をさせ
ることができた。卒業式・入学式での「日の丸・君が代」の強制に対して、「良
心の自由」の事前説明が今ほど必要なときはないと痛切に感じている。また、
「良心の自由」は、憲法第21条の「表現の自由」と密接に結びついており、
「内心の自由」への侵害に対しては、「立たない自由、歌わない自由、退席の自
由」(強制を拒否する権利)があること、その権利の行使はこの「表現の自由」
を根拠としている。そのような観点を持ち、強制に反対していくことが大変重要
になっていると思う。

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Isao Matsuoka
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