2002年10月22日


 先日、サンアント二オから持ってきた米がきれたため、買出しに行く事にした。最初、オクラホマシティーにある日本食品店に行ってみたのだが、品揃えが悪い上に、賞味期限が切れていない商品がひとつもないと言うありさまにはさすがの俺もまいった。米袋はホコリをかぶっているし、5年前に賞味期限のきれた出前一丁が平気で売られていた。食べたら恐ろしいことになりそうだったので、割り箸だけ買ってその日は帰ってきた。

 それで今日、友達から仕入れた情報で、韓国人の経営するアジア食品店に行く事にした。友達から聞いた通り、結構大きな店で、品揃えも良かった。韓国の品よりも日本の品の方が多いくらいで、サンアント二オ最大の日本食品店である東京マート(宣伝)にもひけを取らない品揃えだった。しかし、アジア食品店と言うわりには、日本製品と韓国製品しかなかった。サンアント二オのアジア食品店は中国人が経営していて、中国製品を中心に、韓国、日本、タイ、台湾、ベトナムなど様々な国の製品があっただけに不思議に思った。

 米10キロ5ドル60セントと一袋1ドルの素麺と蕎麦を4袋をカートに入れてレジに並んだ。かなり年老いたお婆さんがレジを打っていた。下手すると80歳を越えているなあ、などと考えながら並んでいたが、時おり、店員や客と韓国語で元気に話をしている。旧式のレジを使っているためか、一つ一つの値札を英語で読み上げながら値段を打ち込んでいく。これならボケる心配もない。値段を読み上げる様子は、カワイイと言ったら失礼なのだが、日本人の英語の棒読みに少しイントネーションをつけた感じで親しみが湧いた。まさに、日本の駄菓子屋のお婆ちゃんだ。

 ついに俺の番が回ってきた。俺はアメリカにきて体がでかくなった事もあり、たまに韓国人と間違えられる。店内は韓国人ばかりだったので、韓国語で話し掛けられたらどうしよう、と考えていた。しかし、俺の予想は以外な形で裏切られた。「そのお米、新しいお米ですよ。」という、突然の日本語に「え?お婆ちゃん日本語?」と聞き返しそうになった。値段を読み上げる時も、ゆっくりと思い出すかのように日本語で読み上げていく。日本米、蕎麦、素麺という品揃えで俺が日本人だとわかったのだろう。俺が、「日本語上手ですね。」と聞くと、お婆さんは「そうでもないですよ。」と答えた。俺が「さようなら。」と言うと「また来てね。」と言う返事が帰ってきた。

 帰りに、車の中で「あの店に日本製品と韓国製品しかなかったのは、お婆ちゃんが日本語を話せるからだろうか?でもなんで、お婆ちゃんは日本語が話せるのだろう?日本人客とのふれあいで覚えたにしては上手すぎるしなあ。」と考えていて、ふと思い出した。そう、かつて韓国は日本に併合され、日本語教育が施されていたのだ。韓国の年寄りは日本語が話せると言う話を聞いた事があった。それを思い出して、のん気に「日本語上手ですね。」などと聞いた自分が急に恥ずかしく思えた。なぜ、お婆さんはかつての日本語教育の事実を、無知な日本の若者に教えようとしなかったのか?あそこで、「昔、日本軍に強制的に教え込まれたのよ。」と言ったら大事な客を失うからだろうか?それ以上に、過去の事で若い世代を責めても仕方がない。そよりも、若い世代には新しい関係を作っていって欲しいという思いがあったんだと思う。

 北朝鮮に13歳で拉致され死亡したと発表された、横田めぐみさんは朝鮮語を覚えたら両親に会わせてあげると言われ必死で勉強したが、17歳のときにそれがかなわないと知って、精神病になったそうだ。その後、両親にも会えないまま亡くなったと考えると、あまりにも酷い。この事実は過去として考えるには生々しすぎる。

 日本では、北朝鮮に制裁を課すべきだという意見すら出てきているようだ。しかし、俺は、こう言う衝撃的な事実を知ったときこそ冷静になるべきだと思う。金正日に対する憎しみだけで、行動を起こせば悲劇はよりでかくなる。経済封鎖を続けて、援助も打ち切ったとして、貧窮にあえぐのは金正日ではなく、洗脳されている、罪のない国民だ。だったら、一刻も早く軍事行動を起こして、体制を変え、洗脳から開放してやったほうがいい。という意見もでてくるかもしれない。しかし、かつてアメリカは日本国民を洗脳から解き放つために、2度の原爆投下を必要とした。軍事行動に移れば平壌にいる拉致された日本人の家族をも巻き添えにするだろう。拉致された日本人が、何とか北朝鮮でささやかな幸せを築いた。その幸せが今度は日米の経済封鎖もしくは軍事行動によって奪われる。北朝鮮によって最初の家族を失った人が今度は日本によって第2の家族を失ってしまうと言うような悲劇は避けなければいけない。

 仮に軍事行動もしくは経済封鎖が成功して北朝鮮が民主国家となり、戦後の日本のように復興したとしても、それは、かつての加害国による独善的かつ、おしつけがましい解決策によるもので、朝鮮民族の日本民族に対する負の感情を拭い去る事はできない。

 最善の策は北朝鮮をとことん援助しまくって経済発展させる事だ。中国を見てもわかるように、政権はまだ変わっていないにもかかわらず、経済発展によって、国民がより力をもつようになり、国民意識も変わってきている。国民が豊かになり、インターネットなどの情報網が発達すれば、金正日政権は自ずと崩壊する。軍事力や経済封鎖と言った国民を苦しめる解決策よりも、真に北朝鮮国民のことを考えた解決策の方が、朝鮮人は日本人に感謝と親しみの念を抱いてくれる。

 俺が言っていることが、理想論だとか、甘っちょろいとか考える人は長期的、歴史的視点で考えることが出来ない人だ。まさにブッシュ大統領と一緒だ。軍事力による解決策は短絡的な解決策で、長期的に見て負の側面の方が大きい。しかし、援助活動によって北朝鮮を発展させると言う解決策に負の側面はない。結局、金正日に金が流れるだけじゃないかと言うのなら、金正日が使えないほど援助してやれば良い。あまりにも馬鹿げていると思うかもしれないけれど、それによって長期的に日本が得る利益は計り知れない。発展する中国。統一され、経済発展を続ける朝鮮、軍事力に頼らずに東アジアに安定をもたらし、各国から信頼を得た日本。これで台湾問題も解決できれば、東アジアは軍事力を必要としなくなる上、EUやアメリカですら及ばない世界経済の中心地となる。21世紀の世界の中心地として、東アジアは最も可能性を秘めていると思う。その可能性を現実のものとする第一歩が、北朝鮮への寛大な援助に始まる。中国も韓国も日本がその第一歩を踏み出せば、北朝鮮に援助を始めるはずだ。日本がいつまでも踏みとどまっていれば、いずれ中国が北朝鮮を発展させる。そうなったとき、日本は経済力も信頼も中国に負け、真に東アジアの爪弾きものとなる。21世紀のリーダーか?それとも爪弾きものか?決断の時だ。  

 なんか、話し始めと終わりで話題にまとまりがないが、書いているうちに熱くなってしまった。とにかく言いたい事は、日本民族と朝鮮民族が酸いも甘いもかみ分けて、拉致事件も不審船事件も強制連行も従軍慰安婦もすっぱい事ばっかりだけど、これからは甘い関係になっていって欲しいと思う。拉致事件公表によってで怒りと悲しみと恨みが満ちている今の日本に、本当に拉致された人の未来の幸せを考えるなら両国の距離をちじめる以外にないという事に気付いて欲しい。今日会った韓国人のお婆さんは俺の婆ちゃんと何ら変わることなく優しく、笑顔で「また来てね。」と言ってくれた。