エンロン 米企業統治の限界示す
経営破たんした米エンロンは社外取締役に大物をずらりと並べ企業統治の先進事例としても知られていた。盤石に見えた米国流の企業統治にほこりびが生じたのはなぜか。エール大教授でCEOリーダーシップ研究所所長のジェフリー・ゾネンフェルド氏に聞いた。

--破たん直前までエンロンは最も革新的な企業とされていた。
 「パイプラインの空き容量や光ファイバーなどあらゆるものを取引対象とするビジネスモデルは卓越しており、それ自体腐敗も詐欺行為もない。
だが規制の及ばないデリバティブ(金融派生商品)は損失を坊妙に隠せる。
経営陣もいつの間にか順調に利益を上げていると錯覚してしまった」

--優秀な人材が集まっていたはずでは。
 「エネルギー業界で規制緩和を勝ち取るために政府などと戦ってきた。
そのうちルールさえ自分たちで作れるという思い込みが生まれ、世界最大の企業を目指す野望はごう慢さに変質した。異なる発想を許さない『集団思考』が会社全体に広がった。(エンロンの成長が自らの利益に直結する)アナリストや会計事務所、顧問弁護士などがブレーキをかけるどころか火に油を注いだ」

--杜外取締役は何をしていたのか。
 「財務の専門知識を持つ優秀な杜外取締役をそろえ、一部の例外を除いて役員会への出席率も高かった。(エンロン株を取得するなど)利益成長を後押しするインセンティブもあった。人々が求める企業統治のすべてがそこにあった」
「問題は仕組みではなく人間だ。仕組みが形がい化したのは杜外取締役が怠けていたからだ。ビジネスの実態を知らないのに経営陣を信じた。異なる意見の存在を忠誠心の欠如と勘違いし、杜内からの批判を奨励しなかった。優秀だけどよそよをそしい。そんな役員会の文化を生み出した」

--株式市揚からの圧力が強過ぎるのでは。
 「圧力にさらされるのはどの企業も同じだ。ほかの最高経當費任者(CEO)は不正行為をせず株式市場にきちんと向き合っている」

--エンロンは株価急落が疑惑発覚のきっかけになった。
 「問題企業に退出を促す株式市場の自浄機能は生きている。市揚の機能を最大限に発揮させるには、会計募準の見直しで透明性を高めたり会計事務所を定朗的に交代させるなどの仕組み作りは有効だろう」

(ニューヨーク=篠原洋一)
日経産業新聞 2002.04.12 より抜粋