「窓」―国旗と事件


 日の丸掲揚に反対して議長席を占拠した横浜市の女性市議2人が除名となった。
 それを社説で「除名とは行きすぎだ」と書いたら、ある新聞のコラムが切り返すように処分を弁護した。
 「個人の思想や信条のため国旗に敬意を示せないなどという言い分は、わがままな甘ったれ」だと歯切れよい。
 除名理由は議長席占拠などが「議会の品位をけがし、秩序を乱した」というもので、日の丸を議場から下ろそうとした行為には触れていない。だが、コラム氏に通じる「けしからん」の気分がきっとあったのだろう。
 そこで思い出したのが、米国で84年に起きた国旗焼き捨て事件のことだ。
 ときの政権を批判するために星条旗を焼いて罪に問われた男性を、連邦最高裁が無罪にした。男性の行動はあくまで政治的意見の表明が目的であり、憲法が保障した「言論の自由」の保護を受ける、との理由だった。
 当然ながら、保守派は猛反発。連邦議会は国旗の破損行為を犯罪とする「国旗保護法」を作った。
 するとどうだろう。今度は連邦最高裁が、5対4の僅差(きんさ)ながら、この法律を違憲とする判断を下したのである。
 あれほど国旗が好きな国でありながら、同時にこういう原則を曲げない。人権思想が確かに息づく米国社会の、懐の深さを見る思いだった。
 民主主義が本物かは、多数が嫌う少数の思想・信条をいかに守るかで測られる。この国はどうだろう。〈豊秀一〉
[2002-07-02-14:06]

関連リンク
媒体 朝日新聞 掲載日 2002.07.02