野球事始
20年ほど前のこと、ミュンヘンの公園で日本人同士でキャッチボールをしている
と、ドイツ人の若者がやらせろ入ってきた。しかしいくら投げてもボールがグラブに
入らない。最後に「ボールが小さすぎる。せめてサッカーボールの半分にすべきだ」
と言って、グラブを返した。
このとき、ドイツ人がいつの日か野球するようになるなどとは夢にも思わなかっ
た。ところが、この2,3年、野球リーグがドイツ全国南と北と2つでき、野球の記
事が新聞に時々載るようになった。
リーグはそれぞれ8チーム。今年ミュンヘンのチームが南リーグに昇格したの野球
見物にでかけた。郊外のサッカー場兼用の原っぱがグランドだ。見物人は200人ほ
どいた。
試合が始まると、場内放送が絶えず野球ルールを丁寧に説明する。
「投げる人と、棍棒でボールを打とうとする人の間で、走る権利をかけた戦いが始
まりました。この戦いを決するのは眼に見えないゾーンで、ストライクゾーンと呼ば
れ、、、」
熟考の末、私はこの説明は間違っていないと思った。
場内放送は興奮口調だが、観客の反応は今ひとつ。面白さがピンとこなのか、ソー
セージをほおばり、ビールを飲んでいる。
選手は腰が高く、補給も片手捕りが多い。そのために点がたくさん入る。「ホーム
ラン」と場内放送が叫び、一度に3点入った。横に座っていたおじいさんが、「これ
は、百万長者になる双六遊びと同じだ」と私に向かって毒づいて、立ち去った。
結果はミュンヘンチームが21対16で勝利を収めた。
この国で野球バットはスキンヘッドの若者が外国人襲撃のために使って有名になっ
たが、こうして本当の使い方をドイツ人が知るようになるのは、歓迎すべきことであ
る。
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