9月28日
月末恒例の棚卸である。毎回棚卸は夜遅くまでかかるので憂鬱な一日なのだ。
しかも朝から出荷作業準備のパートさんが思いっきり不足して棚卸どころではない。あくまで出荷が優先なので午後1時までには出荷作業が行えるよう商品を揃えて流通加工を完了しなければならない。
ぐうさんは「らいおん丸」の尻尾を引っ張って出荷準備作業へ入る。
「ほぉぉぉ…」
とある棚へ、へなちょこな声を上げて連れて来られた「らいおん丸」、ぐうさんが商品を集めて「らいおん丸」へ渡すと大あくび一発、流通加工に取り掛かる。
検品、返品、出荷作業準備と仕事の幅の広い「らいおん丸」、ぐうさんはもとよりセンターにとっても宝のような存在だと言うことに気づいている者はぐうさんしかいない。所長でさえ気づかない。
大概のパートさんは工場で言う単能工(ある一つの作業しかしない)なのだ。
現状、厳しく人件費の抑制を指示されているセンター側はパートさんの月間出勤日数を制限している。たとえば60人の在籍パートさんがこれまで月曜から土曜日まで稼動するセンターで1日休んでいたのを2日休ませて人件費を浮かそうとすると、これまでの平均出勤パート50人で組み立てていた作業計画を40人で組み直ししなければならなくなる。
実際はどうか? 組み直しは全く出来ていない。減った10人分の穴は社員が埋めるという旧来の方法から抜けていない。残念ながらシゲ所長からT副所長、担当のhaゲに至るまでだ。
前回、中途社員の研修がセンターで行われて本社サイド、特に人事がどういう目で中途社員を見ているか、トド課長の話でわかった。
中途社員は働きが悪い(積極的に動かない)
中途社員は元気がない(覇気がない)
こういった状態に喝を入れる意味で研修を行ったのだろう。
意識を変えろと言いたいのだろう。
そりゃ確かに正しいことなのだが、結果としては間違っている。
積極的に動くことと覇気があることは密接な関連性があって、社員が自分の頭で考え、自発的な意思に基づいて仕事をする、人に指図されなくても自分で自律的に行動できる、ということだが、実は自律的に動く社員はいない訳ではない。
それを単なる叱咤激励や教条主義的に詰め込むといった古いやり方で実現しようとするところに無理がある。むしろ自律的な社員までおかしくなる。
ぐうさんにしてもいくら「この方法が正しいからこれでやれ」と教えられても、やった結果が自分にとって損だと分かっていればやらない。
パートさんにしても同じことだ。同じ時給なのに今度はあっちの作業、それが終わったらこっちと振り回されて、それが特定の偏った人だけに指示しているようなら、そのような損な指示に積極的に従うパートさんなどいないのだ。
じゃあどうすれば自発的にパートさんは動いてくれるのだろうか? 答えは公平に作業を回す環境を作ってあげることだ。パートさんが働きやすい環境を作り上げることが大事なのだが、それを行うべき担当のhaゲはそれが出来ないでいる。
全くもってhaゲが無能だというには酷な面がある。この問題は順次上の方向へ展開していくからである。haゲが自立的に動けないのはシゲさんやT副所長がhaゲが動ける環境を整えてくれないことに原因の一端はあるし、センターが思うように稼動できないのは本社の支援体制に問題があるといったように、中途採用社員の問題よりも会社の体質に問題があることなのだ。
行動が生まれうる条件を具体的に作り出すことで、内発的動機に基づいた動きをつくり出せるようにする。このパラダイム転換なしに、社員が本当にいきいきと自発的に動き出すことなどまずない。
違った意味でぐうさんと「らいおん丸」は自律的に仕事をしていると言える。出荷準備作業に2人が入っても担当のhaゲの指示を受けることはない。自分たちの判断で返品作業が繁忙になればそちらへ入る、入荷が多くなればそちらへ入るとフレキシブルに動いて無駄がない。皆がこういう動きが出来るようになればセンターは変わるはずだ。けれども不良だからこういった動きができるのが現状であって、つらい現実にどっぷり浸った大半の従業員には無理というものだろう。
棚卸は定時後にパートさんが帰ってから深夜にかけて再棚卸を社員が行う。在庫マスターの数を合わない商品をひたすら数える作業はとてもつらい。
皆イライラし、ナイーブなトヨピーなどキレて商品を蹴り始める。ぐうさんだってこんな作業は一刻も早く切り上げて帰りたい。そんなときに元気が出るのは「らいおん丸」からの逐次送られてくる激励のメールだった。
公私共にとても有難い存在の「らいおん丸」。勿論、ぐうさんが自律的に友達になったのだ。
9月26日
毎週木曜日はぐうさんが指定休。で「らいおん丸」は火曜日が指定休だった。それが今月から「らいおん丸」も木曜日に変更しているのに気づいた。ちょっと嬉しい。
午前中はうとうととだらしなくベッドの上にいたが、昼過ぎに相次いで「きち君」と「らいおん丸」のメールで起きる。
「きち君」、昨日の人事の研修の結果が良好だったことを伝えてくれたが、ぐうさんは会社から阿呆に見られていた方が都合がいい。
ちょっと格好を付け過ぎたと反省。明日からまっとうな不良社員に戻ることにする。
一方「らいおん丸」は昼飯の報告から始まって、寝るまでメールのやりとりをしていた。休みの日も身近に「らいおん丸」を感じる。
週末は夜遅くまでの棚卸が待っている。そろそろ寝ることにしよう。
9月25日
人事の中途採用社員研修やらがセンターで行われた。よりによってぐうさんの研修時間は仕事より大事な「らいおん丸」とのトークタイムをツブす時間帯になってしまった。これだけでもぐうさんの怒り心頭に達していた。
さて始まった研修。「きち君」の同僚K君と上司トド課長の二人が交互に研修を進行していったわけだが、冒頭トドが言う。
中途採用社員は働きが悪い
中途採用社員は元気がない
中途採用社員は頭が悪い
おお、全部ぐうさん当てはまるじゃないか!
以下人事の説明は分かりきったことの羅列だった。これで2時間半消費。その穴埋めは2時間半の残業となって跳ね返る。
対部分が中途採用社員で占められるセンター、皆グッタリしているとこへシゲさんの所長会議を踏まえたミーティングを行う。
皆イライラしてるとこへ発表書類の整理もせずに報告と要望を延々述べるシゲさん、それじゃあわれわれの頭に入らない。焦点がボケちゃって。
ぐうさんは「らいおん丸」とのトークタイムを潰されたのが気に食わないのでモロに顔に出ている。
駄目な会社で頑張ったって無駄。
ぐうさんがこの会社にいるのは時間稼ぎみたいなもの。出世するため全国転勤なんかもっての他。
この会社で得たものは友人。すべて極悪ベンダーにとって不良ってのが笑える。
9月23日
季節の変わり目は商品の入れ替えが激しい。コンビニで扱う雑貨ではストッキングや化粧品などの女性向け商品がガラリと入れ替わる。
入れ替えはすべての店が行うのでそれだけ出荷する数量も多くなる。それに加えてガチャボックスが今週新規で4アイテムも。
9月21日
今夜は弟子の「きち君」とぐうさんと「らいおん丸」の3人で焼肉をつつきに行く約束を一週間前からしていた。
夕方の「らいおん丸」とのトークタイム、いきなり「らいおん丸」の携帯が鳴る。電話に出た「らいおん丸」、
「あとで掛け直すよ」
1分もたたないうちにまた電話。
「あとで掛け直すったら」
その後も電話は鳴り止まず、「らいおん丸」はぐうさんに、
「ちょっと待ってて…」
と言い残し、裏手へ消える。きっと彼氏でも電話してきたのかなと思い、しばし待つ。
戻ってきた「らいおん丸」は憮然とした表情をしていた。
「どうしたの?」
とたずねるぐうさんに「らいおん丸」は怒りも露わに話し始めた。
携帯に掛けてきたのはとある配送ドライバー。店からの返品商品を引き揚げてくる配送ドライバーと返品受付を行っている「らいおん丸」だから当然、会話の機会は多い。
その配送ドライバー、「らいおん丸」を飲みに行かないかと誘ったそうなのだ。しかし今日は「きち君」とぐうさんとの予定があるので断った。いきなり今日飲みに行こうと言われても。
そうしたら、かのドライバーは、
「断れよ!」
「ぐうさんと俺とどっちが大事なんだ!」
唖然とした「らいおん丸」であったが、ぐうさんに相談してみるよと言うと
「もういいよ!」
と言って電話を切ったという。
それ「らいおん丸」に非常に失礼な身勝手な行為ではないか?どっちが大事などと迫るに至っては、まるで自分の彼女だと決めてかかっているみたいではないか。
「どうしてあたしが怒られなくちゃいけないの?」
しばらくプリプリしていた「らいおん丸」だったが、そのうち
「ま、そんな人だって分かっちゃったからいいか」
ぐうさんと「らいおん丸」がトークタイムでいつも話しをしている時間と場所は、かの配送ドライバーも知っているはず。あえてその時間を狙って電話してくるのも挑戦的だ。
ま、そんなことでせっかくの焼肉パーティを暗くしちゃいけない。早く忘れようっと。
結果、焼肉パーティは大成功だった。お互いの知り合えなかったことを皆さん知ったのでは。底抜けに明るい「らいおん丸」、主役はあんただ(爆)!
9月16日
ぐうさんは指定休だったが弟子の「きち」君はしっかり仕事だった。都内の本社では8時10分に朝礼が始まる。毎週月曜日の本社朝礼はまことに評判が悪い。
特に今日は9時40分まで1時間半も続いたのだから始末に終えない。そんなに長々と何をしているのかと言えば、創業者である会長が愚痴るのである。
話の内容は整理して話せば5分で終わるほどのもの。それが延々と同じ内容を繰り返し繰り返し何度も…。ただでさえ聞き取りにくい東北弁、話しているうちに感情が高ぶって後半は絶叫に近い。
これでは秘書の女のコが複数具合が悪くなって退場するのも当たり前だ。
いつ逝ってもおかしくない超老齢の会長。一代でここまで相応な規模の会社に育て上げたという自負があるのだろう。自分の息子で現社長がふがいないという気持ちもあるのだろう。
しかし会長は第一線に余りにも長く立ち過ぎた。もっと早くから息子を社長にしておくべきだった。もっと厳しく社長としての教育をしておくべきだった。
そして会長の取り巻きを切って、息子のブレーンを育てるよう仕向けるべきだった。
会長は会社を大きくしたが、後継者の育成も、管理職の育成もことごとく失敗した。まっとうな管理職がいかに少ないことかは今、社内で叫ばれている在庫回転率の向上が一向に進展しないことで明らかだ。
会長、あなたはイエスマンしか置いてこなかったのだ。自負が大きすぎて他人の忠告に耳を貸さなかったのだ。会長のやりかたは経済が右肩上がりの時には通用したが、今ではまったく通用しない。
イエスマンでは自分で考えようにも、する訓練をしていないのだから直属の部下たる部門長もまた通用しない。
会長一族以外の大部分の社員に残された道は、今のうちに何がしかの他社へ行っても通用するスキルを磨いておくことだ。
極悪ベンダーは同業大手他社に比べ5年以上、優良製造業に比べ10年以上遅れていると思った方がいい。その根拠は会社で話題になるテーマが他社ではそれ位前には議論されていたからだ。
これらを踏まえて罪ない社員にはいつどうなってもいいような自分に鍛え上げて行って欲しいものだ。
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