3月

3月31日

 ミーティングが好きな所長にも困りものである。社員のコストを時給換算すれば2500円から3000円、あるいは4000円にもなる。10名が1時間ミーティングすれば3〜4万のコストがかかっていることになる。

 律儀にさしたる議題はないものの取り合えず毎週ミーティングを開く方針のシゲ所長、一ヶ月当たり十数万円のコストがかかっているのをご存知ないらしいのである。

 無理もない。見做し残業制で月30時間分の残業代は給料に常に上乗せされているというまるで嘘くさい極悪ベンダーの方便で、社員はいくらコキ使っても人件費は定時上がりと変わらない(サービス残業)から毎週のミーティングくらい平気だろうと思っているのだろう。

 しかしここに大きな落とし穴がある。サービス残業が分かっているから社員たちのモチベーションはそのコストに見合うくらいに減退するのである。つまり熱の入らないミーティングがだらだらと続くことになる。ついでに光熱費は確実にかかる。

 事務連絡、事実の確認、通達、指示命令なら会するまでもないことなのだ。しかもあらかじめ参加者皆が必要性を感じて提言や意見がない場合は全くの時間の無駄になる。

 一回十数万のコストをかけた結果、大事なのはその議事録であろう。ぐうさんはその議事録を十数万を払って購入したいとは思わない。2、300円の週刊誌を買った方が楽しめる。

 意味のあるミーティングとは過ちを繰り返さない、事故をなくす、効率化する、コストを下げる、うまくやる、速くやる、という業務の改善につながるものでなくては意味がない。少なくとも現場ではそうだ。

 そこでまずミーティングの議題となる問題点について皆で話し合えばよい。「規則通りだったか?」、「そもそも組織割やメンバーの仕事の分担に問題はないか?」、「業務の流れ、システム、業務進捗に無理や無駄はないか?」

 これしかない。

 必然性がない限りミーティングはすべきではない。そんなことをするくらいなら弟子と飲んでいた方が数倍もひらめくものである。

 ちなみに緑字で表した部分、3段論法ばりに仕事以外にも普通に使える。

 「どうして今月金ないんだ?」
 「なぜ俺はフラれたんだ?」

 使える。


3月30日

 日曜日も出勤である。暖かな陽気の中をとぼとぼとセンターへ向かう。道すがら学校のグラウンドで早朝から元気良く野球の試合をしているのを見掛けて意気消沈する。日曜日だろうが深夜だろうが寝る暇があったら仕事しろという極悪会社だ。

 今日はまず再棚卸を行った後に、せっかく変更した場内のレイアウトを元に戻すという無駄もいいところの作業を行うのである。しかも日曜日だぞ、けっ!

 最近はトヨピーと彼に金魚の糞よろしく常にくっついているマツがやたら元気がいい。番長なきあとはぐうさんを屠れとでもたくらんでいるのか、始終ぐうさんの陰口を叩いている。そういう奴らだと思えば口をきかなくて済むからかえって楽だとも言える。しかしどうしてそこまで他人のことが気になるのか?

 ぐうさんにも弟子がいるように、トヨピーにもマツという弟子が出来てトヨピーは嬉しいのかも知れない。しかし弟子と言っても「きち」とマツでは天と地以上の差がある。マツみたいなのを弟子扱いしているトヨピーの器量が知れるというものだ(合掌)。

 

3月29日

 GMS部門に新規配送ルートが入ることになった。輸入雑貨を扱う得意先なのだが、それに伴ってGMS部門の入出荷商品の物量が増えるため、これまでの入出荷スペースではとても商品を捌ききれない。そこでコンビニ部門の現用スペースを変更してくれと依頼がきた。

 それはかなり大掛かりな商品格納や作業場所の移動を要するものであっただけに、両部門とも夜遅くまでここ1週間というもの、通常作業が終わってからのキツい作業が続いた。

 ほぼ完成に近づいた頃、ひょんなことから社長がセンターを訪れたのだったが、レイアウトの変更に気づいた社長、
「何だ、これは?誰が変えろと言った?すぐに戻せ!」

 センター社員一同、
「そんな馬鹿な!」

 GMS部門、コンビニ部門それぞれの所長は稟議書を上げているという。稟議書は役員に回覧されて役員会で決済されて差し戻しされるのが筋だ。実際にレイアウトの変更作業に所長指示で我々が取り掛かったことは当然、決済済みの結果であるとばかり思っていた。

 だが社長はそんなことは聞いていないというのである。稟議書はどこかで止まっている。役員か?それにしても作業指示を出したのはいったい誰なのか?役員なのかそれともスタッフであるセンター管理部か?

 こうなると悲惨なのは現場の長たる所長だ。朝礼で社員の前で平誤りである。もっと悲惨なのはせっせと深夜まで作業した我々である。まったく無駄な仕事をしたわけだ。

 極悪ベンダーの真骨頂である意思の不通がここでも発揮された。

 さて今度はまたしても残業して日曜出勤までして元に戻さなくてはならない。何という壮大な無駄!…………。疲れ切ったはいいが、何の意味もなかったこれまでの残業、そしてこれからの残業。更に今日は棚卸であったが、さすがに明日日曜日は出勤するので再棚卸は明日に回して、今日くらいは早く帰ろうと思っていた矢先に所長、

「ところで元に戻す作業手順のミーティングをこれからやろうと思うんだが」

シゲよ…………、

 今まで散々ミーティングしてきてこうなったのだぞ。もうミーティングなんぞいいから早く家に返せよ。日曜日は早く帰りたいから皆黙っててもちゃんと動くって。

 働いていて空しいと思ったことはあるが、ここまで酷いのはやはり極悪ベンダーで味わうことになったか。人生最悪の就職であったのだなあ、やはり……。


3月13日

 明日はホワイトデー。だが嫌ぁ〜な予感がした。皆が楽しい時は極悪ベンダーは決まって残業になる。ぐうさんは今日は指定休。いや指定休はとうに使い果たして有休だったかな?そんなことはどうでもいい、明日は特別な仕事なかったっけ?

 妙に気になって考えていたら、来週早々あの嫌なガチャボックスの特発出荷があるではないか! ということは明日明後日で残業で作業する公算大だ。あぶないあぶない…、またしても本部と極悪にしてやられるところだった。

 こうなったら裏をかいて今日ホワイトデーを「らいおん丸」としてしまおう。ホワイトデーとは言ったものの、ぐうさんも「らいおん丸」も甘いモノは苦手だ。

単に「飲みの口実」だけだったりもする。

 だが、今夜行く店は決まっていた。本厚木駅ビル4Fにある土風。先日本厚木駅のホームで同郷の「みーちゃん」とばったり出くわした。一昨年だかオーストラリア留学に行くというので送別会をして以来会ってなかったのだ。ケータイを落としてメルアドが分からなくなったというのもあったし。ついホームで長話をしてしまったものだが、めぐちゃんや彼女達とまた会うことになるだろうな。これも何かの縁というものか。そんな時に彼女に教えてもらったのがこの店だ。

 江戸の街並みを模したという内装、最近はおしゃれな居酒屋も厚木には多くなった。だが大事なのは味だ。カウンターと個室があるというので個室を選んだが、狭い!

 ちんまりとひそひそ話しながら飲むにはいいかも知れないが、ぐうさんと「らいおん丸」は話し声はでかい。これだと声が壁に反響して窮屈だ。次からはカウンターにしよう。

 鶏串焼きの盛り合わせとすずき、アワビの刺身を肴に飲む。値段もリーズナブルな上に美味しい!しかも寿司が好みで1かんから頼めるではないか。調子に乗ってズワイ蟹、中トロ、うに、イクラを2かんずつ注文した。

 こりゃあいい店を見つけたものだ。弟子にも紹介しなくちゃな。


3月11日

 センターの外周に植えられた梅が咲いている。この梅越しに見る富士はまた格別だ。

 だが、のどかな景色とは裏腹に、番長の口から衝撃的な言葉が出た。

「実はボク、今月で辞めるんですよ」

ぐうさん、
「え?!」

 聞けばねこと伊豆大島旅行に行く前日にシゲ所長に辞意を伝えたのだという。

 再就職先を既に決めての退職だからシゲ所長も翻意を促すことはできなかっただろう。次の職も流通業で、川崎は鶴見の社宅に一人住まいとなると番長は話した。

 そうか、伊豆大島旅行はねことしばし別れのちょっと悲しい思い出を作るためだったか…。すまん、気がつかなくて。

 だが、ぐうさんに辞めることを告げた番長はむしろサバサバして
いた。無理もない。劣悪な環境と貧弱な報酬、最悪の人間関係で
は残れという方が無理というものだ。むしろ新しい職場で頑張っ
て、ねこを呼び寄せて幸せになってもらいたい。

 トヨピー、マツとは犬猿の仲だった番長。散々二人には影口を叩
かれ続けていた。少ない社員でセンターを切り盛りしていかなけれ
ばならないのに、同僚を攻撃してどうするのだ。その報いは自身に
降りかかることになるというのに。

 シゲ所長もどうかしている。先週土曜日の会社の飲み会で、きち
君に、
「職場を明るくしたいのだが、どうも番長が…」
みたいなことを言った。シゲさん、あんた番長を買ってなかったん
だろう? どんなに隠しても態度には出る。そんな気配を察して番
長はやる気をなくした一面もあるのではないか?

 もっとも最近はぐうさんツブしとも受け取れる言動もあるシゲ所
長、トヨピー路線でいくんだろうね。どんどん人減らしやってくれよ。
その犠牲になる前にぐうさんもさよならするから。

 そこで急遽番長の送別会なのだ。22日土曜日、あくまで内輪で
執り行うことに決定!幹事はぐうさん、出席予定者はねこ、T副所
長、haゲ、きち、「らいおん丸」。

 そうかと思えば「らいおん丸」に対するばばあどものイジめが激し
く、ちょっとした「らいおん丸」のミスで1時間以上もただ働きさせら
れた。なに?相手はシゲ子おばん? サリンまいたろかっ。もう今
夜はおばんどもにはエラい目に合って、北朝鮮のノドンミサイルは
ここのパートおばんどもの頭上で炸裂することを強く望む。

ばばあ…


3月9日

強大な権力を持つ者は、常に十分な批判にさらされる必要がある。強い者の権力行使の結果は甚大だからである。民主主義国において首相や大統領は、常にその行動について注文をつけられる。いかに首相や大統領がマスコミや野党はうるさいと思っても、これはだけは仕方がないことだ。権力に伴う義務としてさまざまな批判に耐えなければならない。それが民主主義社会の根底にあるものだからだ。

 それは国際社会においても同じであってアメリカは批判にさらされるのが当然であり、その用意がなければならない。圧倒的に強力な軍事力を持ち、その全ての行動が世界中に大きな影響を与えるアメリカに対して世界中から批判が起きるのはむしろ国際社会は正常に対処しているとも言えるだろう。

 9・11以後のアメリカの行動についても多くの批判がなされ、国連を無視に対する危惧、独善的であるとの批判、同盟国との協調に対する疑問など、様様な批判がなされてきた。このような批判は、外国からなされるだけではなく、アメリカ国内からもあった。

 しかし、批判ということにはまた、批判責任が発生する。つまり、批判に権力者がそれなりに応えたとすれば、これを評価しなければならない。十分な批判に対して応えた指導者に対しては、評価と支持を与えるという人々の態度がなければ、民主主義国において強力なリーダーシップはありえない。国際社会においても同じことが言える。もし、アメリカが国際的な批判に応えて行動するのであれば、これを評価し、支持するのが当然だろう。

 はたして、アメリカは国際的な批判や注文に応えてきただろうか。イラクの問題に関する限り、ブッシュ政権のこれまでの行動は、国際社会の手続きを重視したものではないだろうか。昨年あたりはブッシュ政権は、先代のブッシュ政権と違って国連を無視してイラク攻撃をするのではないかといわれることが多かった。先代のブッシュ政権が湾岸戦争に際して、いくつもの国連安保理決議を慎重に作りあげていって国際的正統性を獲得したのに対して、現ブッシュ政権は、そのような対応は面倒であるとして「先制攻撃」をするのではないかと言われた。

 現実は、9月にブッシュ大統領は、国連で演説を行い、イラク問題を、これまで11年間に及ぶイラクの数多くの国連安保理決議違反という形で提示し、全会一致で可決された安保理の新たな決議(1441)をもとに、イラクへの査察をスケジュール通り行うことに協力してきた。12月から1月にかけても、単独でのイラク攻撃がありうるのではないかという観測もあったが、国連の査察チームの報告を待った。これまでのところ、アメリカに手続き的に言って誤りはほとんどない。現ブッシュ政権の国際社会への説得工作は、少なくとも先代のブッシュ政権の工作に何ら遜色はない。

 「なぜそれほどフセイン体制打倒が必要なのか?」「民主化に向かう道は一つではない。それぞれの国の歴史、宗教や伝統によって民主主義のありようも違う」朝日新聞3月2日の社説

 「仏独の造反に続き、米国が実際に戦争を行ううえで重要な役割を担うはずの同盟国が抵抗したことの意味は重い」「「中東の民主化を戦争の大義とする米政権にとって、国会が機能すればこそ起きたトルコの事態は何とも皮肉である」朝日新聞3月4日の社説

 「日本は米国の軍事力に依存しているからといって、あまり卑屈になる必要はない。」「日本はイラクに対しても、戦争ではなく、脅威を封じ込めることを通じて大量破壊兵器を廃棄させるべきである」朝日新聞3月6日社説

 これまで一貫して米英に批判的だった朝日新聞もここに至ってフセイン政権を突き放した。朝日新聞3月9日社説
フセイン政権が国際社会にとって危険であることや、国連の権威喪失が今後の国際社会の不安定化に拍車をかけることを重視せざるを得なくなった。

 もちろん、現在のアメリカの行っているのは手続きという形式を踏んでいるに過ぎないという懐疑的見方もある。しかし、もしそうだとすれば、形式的な手続きをさせているのはサダム・フセインであることをともすれば忘れがちになる。その理由はサダム・フセインがイラク攻撃を避ける選択肢を持っているからだ。米政府首脳明らかにしているように、もしイラクが、かつて南アフリカが核保有を認めて国際社会の査察を受け入れたように、国連の査察チームに協力し、大量破壊兵器の全面放棄の姿勢を明白にしさえすれば、イラク攻撃は起きない。またもし、サダム・フセインが、イラク国民の生命財産をなにより重視するというのであれば、どこかの国に「亡命」するというのも立派な選択肢ではないか。アメリカはそれもまた認めてもいる。

 安保理決議1441に代表される国際社会のイラクへの要求は、決して、対イラク攻撃を不可避にしているものではない。マスコミでは、イラク攻撃はブッシュ大統領の決断にかかっていると言われることが多いが、それは逆だ。イラク攻撃は、サダム・フセインの決断にかかっている。

 「決議1441はイラクに対し「武装解除への最後の機会」を与えた。イラクはそれにこたえていない。決議へのさらなる違反であるのは明白だ。」読売新聞3月9日社説

 実のところ、1991年の湾岸戦争の開戦もサダム・フセイン大統領の決断で始まった。彼が国連 安保理決議の要求であるクウェートからの撤退に期限までに応じなかったから湾岸戦争が開始されたのである。

 約束をなかなか実行しないフセイン政権に期限付き猶予を与えるというのは全く理にかなった方法であり、今月17日を期限として大量破壊兵器の完全な武装解除を求める修正決議案を英国が中心となって提出した。これに対してチリの大統領が「一週間足らずでは廃棄は無理だ」と言ったというが、そもそもイラクはこの10年以上の間に何もしてこなかったではないのか?

 アメリカはこの間、何度も国連に提起してきたはずだ。今回の強硬とも取れるアメリカの行動の裏にはアメリカはもはや国連を見限っているとする考えもある。国連にまかせていては、イラクの大量破壊兵器開発を阻止できないし、北朝鮮の核開発も止められない。口を出すだけでは駄目なのだということが、9・11にテロを蒙ったアメリカが思い知らされた現実であるとすれば、国連自体、その存在意義を問い直さねばならない時期がそう遠くないうちにやってくるに違いない。

 もし今回もまたサダムが戦争を不可避とするのであれば、国際社会は、国際社会の手続きにのっとって行動を進めてきたアメリカを支持すべきであり、日本もその例外ではありえないと思う。

 一連のアメリカの動きに対してセンセーショナルな批判を加えている政治評論家もいる。田中宇の国際ニュース解説

 だが暴露記事やリークといった確証のない情報から得た反米を前提とした記事構成であり、イラクに強力な利権を持つ独仏露がなぜアメリカに反旗をひるがえしたのかの説明すらないのでは、やはり反米に誘導しようとしていることは明らかだ。

 戦争は悪であることは周知の通りであるが、イラクから査察結果を引き出してきたのもまたイラク周辺に展開する米英軍の存在があったからこそである。その軍隊の展開には膨大な国家予算が費やされてきたはずだ。それを期限も設けずに査察期間を数ヶ月延ばせと簡単に言うが、それこそ暴論だ。国際社会で米英軍の展開費用を肩代わりする提案が出てもいいくらいなのだ。

 それならばいくらでも査察期間を延ばすことは可能だ。ただし炎熱の地での兵員の疲労を考慮して本国とイラク周辺の展開地区との間で部隊を定期的にローテーションさせてやる必要が生じる。そうなると費用は何倍にも膨らむのだ。

 そんなことを独仏露は知っているはずだが言わない。結果的にフセインに肩入れしているようなものなのだが、国際世論の戦争反対に勇気をつけている。

 もし、独仏露のような考えが通ったならば、査察は長期間を要し、しかも査察の完全な終了は望めず、潜在的核保有願望のある国家の核開発を止めさせることは不可能となる。それは日本の隣国でもある北朝鮮にも当てはまる。

 大量破壊兵器の管理が事実上国際社会での統制不可となった場合、容易にテロ組織の手に入る公算は高くなり、一般市民の蒙る被害もまた想像を絶するものとなる。

 今の国際世論はおそらくそこまで想定しての意見ではないと思う。安保理の意見が分裂した場合、米英は単独でもイラクへ攻撃をかけ、国際世論の集中砲火を浴びることになるのだろう。

 国連の権威は失われ、国際社会は不安定化する。そういった意味でも安保理では統一した結論を出して欲しいものだ。

 戦争反対!日本国民の大部分はそう考えている。政策と国益と世論との間で政府は窮地に立っている。あえてぐうさんは政府を支持する。

3月8日

 事の発端は「らいおん丸」とぐうさんのトークタイム中の夕方、シゲ所長がやってきて、
「実は今度タジイと交替する○木統括所長の歓迎会があるのだが……」
と、話を持ちかけられたことから始まった。いつもの会社の飲み会なら即座に断るのだが、今回はぐうさんも見知った○木さんの歓迎会ならとOKすることにした。

 ただし○木所長は主にGMS部門を見ることになるので、一応別会社の形を取っている上、○木所長を見知った者がコンビニ部門にはぐうさん以外にはカッスィぐらいしかいないので、大部分がGMS部門の者が出席するであろう歓迎会には心細い。そこで本社人事から弟子を呼ぶことにした。

 離れた所にいる弟子に会場の位置や名前、開催時刻を伝達してやる必要があるが、その情報をシゲ所長に頼っていたので以外に難儀した。シゲ所長ったらとんだガセネタばかりぐうさんに伝えやがった。まず、当の○木所長が参加できなくなったとのこと。主役の欠席である。他にも本社へ異動となるY田君の送別会も兼ねていると聞かされていたので、ここで断ってはY田君に失礼である。当初会場は伊勢原駅前とのことであったので、開催時刻の午後8時に弟子は本社からでも十分到着できると考えていた。

 それが当日になって駅から車で10分以上も離れていることが判明し、慌てて弟子に連絡をとった。幸いなことに今回店舗改善プロジェクト・チームのメンバーで、かつての弟子の後輩でもあった「あかね」ちゃんも出席するとのことで、弟子とぐうさん共々駅で拾っていって貰うことに落ち着いた。

 そういえば「あかね」ちゃんの同僚の「ちか」ちゃんも今回チームは抜けずに本社へ異動ということで彼女の送別会もまた兼ねている。

 会場となる街道沿いの蕎麦屋に到着すると既に大方集まっていた。我々待ちだったようだ。待っていたかのようにシゲ所長が弟子から人事情報を聞き出そうというのと、自説を披露する場面がしばし見られた。後に弟子からちょこっと聞いたがシゲ所長、それは全センターの人間関係把握を間違っている。それではシゲ所長が評価していない者が不本意であろう。センターの人間関係については別に一項をさいて説明する機会をいずれ設けたい。

 席中、GMS部門の人間関係のしがらみを興味深く観察させてもらった。でもまあ、あまり深く付き合うものでもないなとも感じた次第である。

 後半は「あかね」ちゃんや「ちかちゃん」と弟子も交えて歓談したが今度「らいおん丸」も入れて鎌倉へでも行ってみたいものだ。

3月5日

 番長とねこが今週末から4連休を取った。ぐうさんは番長に、
「何処へ行くの?」

番長、
「えへへ、ちょっと伊豆大島へ……」
と照れ臭そうに答えた。別に照れることもないだろうに。いいよどんどん行ったらいい。ただ旅行から帰ってくると極悪ベンダーの余りにも悲惨な現実に直面してひどく落ち込むんだよなあ。

 まあ行く前に番長を脅かしても野暮というものだ。黙っていよう。
出社後の掃除が済んで例の労基法違反の朝礼が始まる。そこではたと気づいた。最盛期11人ばかりもいた「店舗改善プロジェクト・チームが何時の間にか4人に減っているやんけ。

 思えば転属と退職が半々でここまで細ってしまったのだったか。是非もなし。

 チームの課長がまたとんでもないワルだからなあ。しかし極悪で上司に恵まれるなんてことは千に一つもない当たり前のことだから、さっさと辞めるのもあてがあれば手ではある。

 定時には仕事を終わって、まだ終礼にならず、仕方ないので神奈川の道路地図を眺めていたぐうさんに、ねこが
「どっか遊びに行くんですかあ?」

と声をかけてきた。自分達は伊豆大島というのがあるからなあ。

ぐうさん、
「いや、別に。今はお金がなくて。ぐうさんじゃなくてらいおん丸が」

ねこ、
「ここのパートさんの給料安いからね」

ぐうさん、
「だかららいおん丸は別なとこでも仕事してるんだよ」

ねこ、
「大変じゃない?」

ぐうさん、
「俺がこの会社にいなければさっさと辞めてそっちメインになるよ」

ねこ、
「わかるわかる、最低の職場だもんねえ、ここったら…」

 どちらともなく、ドン詰まりの生活から抜け出すには次の仕事を見つけて極悪を足抜けするしかないという当たり前な考えを再確認し合ったような気がした。


3月4日

 先日、某GMS(総合スーパー)向け共配センターが泥沼に足を取られたと書いたが、その原因についての噂が流れてきた。噂の出所は先月まで神奈川センターの統括所長だったタジイ。現在は西東京センターの所長のはずだが、着任したばかりの「O木」所長との引継ぎのためか、依然として神奈川にいる。

 得意気にタジイは話し始めたものだ。
「馬鹿な話だよ」

 「GMSはこれまでだと、卸たるうちのような会社へ商品を発注するのが普通だろ?そして卸は自分とこの在庫の中から各店舗へ商品を振り分けて納品するよな」

 タジイの周囲にいたGMS部門の副所長他が思わず身を乗り出す。ぐうさんも聞き耳を立てた。

 ぎょろりと周囲を見回してタジイは続ける。
「GMSの発注データは卸を素通りしてまずメーカーへ飛ぶんだ」

 発注データがメーカーへ直で流れるということは必要な商品数量だけをメーカーが共配センターへ送り込んできて、センターでは店舗別仕分けだけを行う「通過型センター」なのかと思ったが、そうではないようだった。しかし店舗別の発注データがなければセンターとして納品のしようがないではないか。見越したようにタジイは続けた。

「当方としては先付けが出来ないんだよな」

 「先付け」とは店舗別仕分けのことだ。本来の卸の仕事である。そのデータがいつになっても来なくて、受信した頃には手遅れな程遅いというのが今回そのセンターが苦闘しているそもそもの原因だという。

 そういう極悪ベンダーを窮地に追い込む受注システムを誰が構築してしまったのか? 当然、そこに皆の関心は集まる。

「システムのNらしいよ」
と、タジイ。

 自社の仕組みというより、流通の仕組みすら知らない者がシステムを牛耳っていて、しかも会社に莫大な損害を与えている。納品は定期便では間に合わないから赤帽という実態はシステム関連役員としてはどう責任をとるのか?

 しかし極悪の役員は独裁会長の取り巻きだ。ITとETの区別もつかないようなぢぢいが取り合えず高給貰って昼寝している。

「何とかしろっ!」

 下っぱを叱りつけるものの、自分では何もできない。それよりこのぢぢいを
「何とかしろ」


3月3日

 春一番の風が吹いた。午前中は晴れて暖かかったものの、職場はマツの機嫌が悪くて感じ悪い。今時流行らない「坊ちゃん刈り」のような髪型、昔の漫画で「まことちゃん」という洟垂れ小僧にそっくりのカッパのような頭をして、しかも目尻はだらしなく下がり、めくれ上がったタラコ唇と異様に突き出た頬骨、ドス黒い顔はまるでこの世のものとは思えない醜悪さを漂わせている。

 人は顔で判断しちゃいけないものだが、この男ときたら態度も粗暴で性格も悪いので悪し様に罵りたくもなる。

 今日はマツと仲のいいトヨピーが休み。だから気分が不安定なところへマツ嫌いなパートさんに邪険に扱われたものだから脳みそが沸騰しているのだった。

 「世界一最高なオレ様がなぜこんな目に合う?!」

 もう爆発寸前なマツ。もう誰がつついても炸裂だ。しかし日本は1997年にオタワ条約に署名して対人地雷廃絶に踏み切ったのではなかったのか? にもかかわらずこんな非人道兵器が日本国内に存在することは条約違反ではないのか?

 だが残念なことに極悪ベンダーは対人地雷マツを擁しているのだ。地雷処理の方法は3通りしかない。爆破するか、非活性化させて捨てるか、避けて通るかだ。

 今は悩んでいる。


3月2日

 朝から風呂に入る。最近凝っている入浴剤がツムラの「バスクリン・薬湯」だ。配合された薬草のセンキュウは何やら懐かしい過去の「バスクリン」の香りを彷彿とさせる。湯は赤く染まり、開け放った浴室の窓からは昨夜にかけて通過した低気圧の悪天候がまるで嘘のように晴れ渡った青い空が見えて対照的な色のコントラストがまた楽しい。

 ゆっくり朝風呂に漬かったあとで久し振りに米を炊いて冷奴と味噌汁で朝食だ。何と貧弱な朝食というなかれ、ここ一週間というもの、朝食は立ち食い蕎麦だったのだから。普通にご飯を炊いて味噌汁も飲めるなどというのは極悪ベンダーで一人暮らしをしている者にとっては真に幸せなことなのだ。

 食後のコーヒーと共に新聞各社のサイトを一通り見るとまた眠くなったのでゴロリと横になってうたた寝。昨日と今日は「らいおん丸」、別なところで仕事が入っているのでぐうさんはぐうたら生活を決め込むことにした。

 昼にまた入浴して夕方にも入る。そう、これは湯治だ。この一週間ですっかり痛めつけられた体を癒すにはこれしかない。つかの間の癒しなのだった。

 夕方、「らいおん丸」から仕事が終わったとメールが入る。相当お疲れのようだったが、
「飲みに行こっ!」

 茅ヶ崎での仕事を終えて疲れているというのにはるばるぐうさんと飲むために厚木までやってくるのがいじらしい。ま、思いっきり愚痴りたいんだろう。夕刻になって厚木の街中へ出かけていった。


3月1日

 年度末決算を中心に、慌しい一週間がやっと終わった。月が替
わって抑えに押さえた在庫を回復するために今日は怒涛のような
商品入荷のラッシュだった。

 極悪ベンダーでもコンビニ部門はまだマシな方で、新しく立ち上
げた某GMS向け共配センターがはまりにはまっている。何でも当
日終えるべき仕事が翌朝11時過ぎてもまだ終わらないという惨
状なんだそうだ。

 これじゃあセンター社員は全員過労死するだろうが。センター立
ち上げの見通しの甘いことでは定評がある極悪ベンダー。先達の
死屍累々の上に今があるのだが、性懲りもなくまたはまっていると
ころがマネジメント層の馬鹿さ加減を雄弁に物語っていて恥ずか
しい。

 本当に戦死者を出さないうちに本社サイドから関東近辺の社員
は応援に向かえとのお達しが出た。

 冗談じゃない。マネジメント失敗なんだから課長クラス以上の責
任をまず問えよな。しかもいつもいつも失敗ばかりしてるんだか
ら、いい加減にプロの助っ人予備隊を常備しとけよ。

 北朝鮮とオーバーラップする極悪ベンダー。初代の偉大なる親
方社長様が独裁的に長い間君臨する。

 その後有無を言わせず息子に世襲。
 
 親方を崇拝し、意見する奴は即排除。
 
 だから従順極まりない部下だけが、あまりモノを深く考えずに活
動。

 その結果、会社はどんどん危機に。
 
 会社が危機でも上層幹部は贅沢していて小太り。腹回り90セン
チ以上。

 しかし部下には分配が少なく、部下はいつも壊滅的に飢えてい
る・・・・・。

 いかん…。やっぱり脱出するしかないか。


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