マツ



 いちいち説明するまでもなく、過去の日記で「ねこ」に対する執念深い攻撃はセンター全体を巻き込んだ一大騒動を引き起こしたものだった。

 女性に対して度々言葉と行動の両面で暴力的になる一番の原因は「自意識過剰」だ。

 「オレは凄い」
という思い込みが心の本質にあり、それが女性に対する会話にモロに出る。忍耐強く聞いている女性も終いには、
「冗談じゃないわよ」
となるのであるが、マツにとってそれは晴天の霹靂だ。

「なぜ? こんなに凄いオレの話を楽しそうに聞いていたくせに」

 相手が我慢していたのに全く気付かないのがこの男。


 昨今、パートさん不足で出荷作業がはかどらない。パートさんも早く帰りたいから社員が作業に入るのは歓迎するはずなのだが、マツだけは拒否された。

 その性格の悪さが未だに自覚できないマツ、所長に
「所長からそのパートを怒ってやってくださいよ」
ネジ込んだが、所長は
「お前は入んなくていいから場内整理やってろ」
と言われる始末。

 そして目を付けたのが新しく来た「らいおん丸」。
当初は検品中、びったり「らいおん丸」にくっついて自慢話をしていたものだったが「らいおん丸」がキレた。

「あっち行ってよお!」

 それでも気を取り直しては「らいおん丸」に接近を図っていたようだったが、「らいおん丸」に触った瞬間、

「やらしいっ!」

 裏のパートさんにまで聞こえる声で「らいおん丸」に吼えられてしまった。背を丸めてそそくさと退散するマツ、みっともない光景だが今はトヨピーと一緒のときに横から「らいおん丸」に声をかける程度が関の山だ。

 もっとも「ぐうさんの女弟子」に手を出したら半殺なんだから、その辺よく考えた上で行動して欲しい。