計画と法則         ヤルデア研究所 伊東義高


@ 合理的とは、法則とは ・ 物事を考えたり行なったりする場合、然るべき枠と道筋に従っているか否かということ。 ・ 枠や道筋からハズれなければ、間違うハズがないというパターンが合理的だと言われる。 ・ 物事は現象としていろいろな在り方、現れ方、動き方をするが、それらには法則がある。 ・ 多くの事象観察から、それらの背景にある普遍的法則を帰納法的に抽出したものである。 ・ 法則には「AはBである」という内包則と「AならばB」という関係則があるといえる。 ・ 全存在を模した多数存在から帰納した法則の故に"万物は合理的な存在"が導出される。 ・ 私は"自然界は結果合理の世界であり、人間界は目的合理の世界である"と考えている。 A 自然界は結果合理 ・ 自然界は山川草木どれをとっても"よく出来ている"が"よく創られたもの"ではない。 ・ 無機物の天地や山川は淡々と物理法則に従って"在るべくして在る"だけのことである。 ・ 太陽の角度で気温が上昇し、水は蒸気となり、雲となり、雨となり、川となって流れる。 ・ 水素は酸素と化合して水となる法則に極めて稀な例外はあるが、その法則は疑われない。 ・ 猿の時代からその環境に住み馴れている人類には、その在り方が当然の前提条件である。 ・ DNAによって同形の蛋白質が再生されるが、極微少のミスで極微少異質生物ができる。 ・ 生命体の植物や動物は膨大な世代交代での微変異が蓄積して"自然適応種"に進化した。 ・ 花の蜜が甘いのも、キリンの首が長いのも多様変種のうち結果合理的なものが残存した。 ・ 蜜が甘いと甘くない、首が長いと短いの生活優位性(生存率)の差異は実に微少である。 ・ ゼロに近い微少合理性も無限大に近い世代交代数を掛ければ、有意な大きさの数となる。 ・ 自然界の法則を古代人は"絶対則"として考えたが、現代科学は"蓋然則"として見る。 ・ 「AはBである」「AならばBである」は "100%則"ではなく、"99.99%則" である。 ・ 99.99%も確定値ではなく変動値、"ゆらぎ値"であり、この故に多様性を産出している。 ・ 酸素と出会いながら水とはならなかった水素や蜜が苦かった花はあっても気が付かない。 ・ 結果として我々が見る自然現象は全て"存在することが合理的なもの"であるとされる。 B 人間界は目的合理 ・ 原始生命体は環境に対して全く受動的だったが、進化とともに能動的生活が増えてきた。 ・ 神経終端部が発達して中枢神経:脳となった高等動物は意思的行動を取るようになった。 ・ 霊長動物では生理的無意識行動とは別に、目的的意識行動の比率が格段に大きくなった。 ・ 固体保存と種族保存の本能に立脚して、安全で効率的な行動をする学習と判断が生れた。 ・ 山川草木・森羅万象を繰返しよく観察すれば、その在り方には共通性があると学習した。 ・ 「石は重い」「石は落ちる」「石は沈む」「石は硬い」「石は投げられる」…は全部である。 ・ 「石が当ると痛い」「枝が擦れると火が付く」「風が当らないと暖かい」…は毎度である。 ・ 「石を当てて痛めつける」「枝を擦って火を付ける」「風を避けて暖を取る」…と考えた。 ・ 原因結果の観察から「AならばB」を学び、目的手段系の「BのためにA」と変換した。 ・ 「AならばB」の関係則が普遍的であるから、目的手段系に変換をしても裏切られない。 ・ 精密機械でない人間にとって99.99%則は100%則と同じであり、絶対的法則と見えた。 ・ 観察情報を「獲物を得る狩猟」「火を起こす技術」「暖を取る洞穴」の実用知識に変えた。 ・ 法則に基いて"頭の中で考えた通りに実現する"ことが賢いことで、評価の基となった。 ・ 法則を知らず"法則を用いずにやってみて失敗する"ことは愚かと、笑いものにされた。 ・過去事象の観察結果を法則化し、未来における目的行動の効率化を図るのが計画である。 ・目的行動を合理的に実現する諸行為の構造化が人類の文明文化であり、科学技術である。 C 計画と法則 ・ 歴史が過去の現代化ならば、計画は未来の現代化であり、要求実現の予定表作りである。 ・ 科学技術の進歩は年々新しい法則を発見し、その応用による新しい計画を実現してきた。 ・ ミレニアムの転換期に当り、今後の人類発展を「計画と法則」の面から考察してみよう。 ・ 「AはBである」という内包則は類化・概念化・定義と関わることで、計画とは縁遠い。 ・ 「AならばBとなる」という関係則は論理関係をいう場合と因果関係をいう場合がある。 ・ 計画に関係するのは裏返しの因果関係論であり、「BのためにAする」 の妥当性である。 ・目的とは行動を引き起こす要求水準である ・目標とは目的の具象的な状態・行動である ・企画とは目的を目標に変換することである ・計画とは目標に到る手段を作ることである ・効果とは予定した成果の実現化割合である ・効率とは成果量と手段の費用の割合である ・ 計画とは「BのためにAする」というブロック群を順次に積み上げた積み木の城である。 ・ 計画が計画通りに実現するには各ブロックの法則性が完全であるとの保証が必要となる。 ・ 法則は「一定の条件下」では「いつでもどこでも」成立する普遍的・必然的約束である。 ・数学の世界での公理は証明不能・証明不要の絶対的な前提である…100.0% ・物理化学の世界では個々に差異はあるが僅かにゆらぎが含まれる…99.99% ・政治経済やゲーム・スポーツの世界では大まかな法則と思われる…8〜90% ? ・社会現象や人間心理の世界では傾向があるという程度と思われる…6〜70% ? ・ 企業における計画で問題となるのは曖昧な政治経済・社会現象・人間心理の世界である。 ・ 「日本の法則はアメリカで通用するか」 「20世紀の法則は21世紀でどうなるだろうか」 ・ 法則が成立した時・場所と法則を適用する時・場所が変われば法則の妥当性も怪しくなる。 ・ 日進月歩といわれ、パラダイム・チェンジの時代といわれる昨今、保証性は疑わしくなる。 D マニュアル時代はシステム信奉時代か ・ 今はシステム化の時代であり、標準化・マニュアル化が広く採用されている時代である。 ・ システムとは法則に基く単位ブロックの積上げであり、疑わない約束をするものである。 ・ そのシステムにある者は原則として個性を封じられ、決められた行動を約束させられる。 ・ なまじいに「何故そうするのか」「何のためか」と疑うと疎んじられ、素直さが喜ばれる。 ・ 小集団活動、QCサークル活動等がISOに追いやられてからは、特にその傾向が強い。 ・ 一般社員から管理者層まで、自分の頭で考えるよりも基準や先例を覚えるだけが増えた。 ・ 自分の建てている城の耐震性など考えたこともなく、ひたすら積み木をする人が増えた。 E 計画の確実性検証 ・ 現状という土台の上に、目標を天守閣とする城の設計図が出来たら点検する必要がある。 ・ 最下層のモジュール(セット化された手段)から順次、その確実性を確かめるのである。 ・ 「BのためにAする」の原形である「AならばBとなる」 確率は約何%なのか推定する。 ・ 「AならばB'となる」確率はどれほどで、その時どのような問題が起こるかも考える。 ・ その法則が「成立するための条件とは何か」「それが織り込まれているか」 も確認する。 ・ 重要な計画ほど本筋(法則通り)以外の脇道がいろいろと考えられていないといけない。 ・ その分岐点に交通信号を設置し、どのような兆候でどのような判断・行動を取るかを注記。 ・ 崖っ縁に立ってリスク・マネジメントをするのではなく、その脇道に入らぬことである。 ・ 成功の本筋以外に低い確率でも考えられる失敗の脇道を図面に書き込むのがRMである。 F 天使と悪魔の検討会 ・大計画の場合は、計画案が出来た段階で計画者以外の関係者を含めた検討が必要である。 ・ 全員の中から10人を選び、ジャンケンで5人づつ天使組と悪魔組の2班に振り分ける。 ・ 天使組と悪魔組は演台上で八の字状に向かい合った座席に着き、敵味方対決姿勢をとる。 ・ 天使組は役割として徹底的に計画原案を評価・支持し、必要なら適宜補強・補正をする。 ・ 悪魔組は役割として徹底的に計画原案を非難・攻撃し、遠慮のないケチ・カラミをする。 ・ 残り全員は聴衆となって参加する。拍手・ブーイング・野次…全く自由にやってもよい。 (これは私が研修用に開発したものであるが、本番の検討会議としても十分使える) ・ 司会者はいないから発言は自由であるが、突っ込まれて声が出なくなったら負けである。 ・ 計画ブロックの法則性について、嘘を言ってはならないが、仮説は大いに発言してよい。 ・ 条件の整備確率や結果の出現確率など資料のないものには「感覚数値」を代用してよい。 ・ 相手の言葉尻を捕まえても、聴衆の野次を頂いても、自分の思い付きを織り込んでもよい。 ・天使「目標設定はこのように時宜に適い、実現計画も緻密である」 ・悪魔「目標は昨日までは良くても、明日もよいとは言い切れない」 ・悪魔「計画は緻密だから良いとは言えない。要るか要らないかだ」 ・天使「この計画ステップを見てくれ。理論的検証は完璧といえる」 ・聴衆「ふむ、ふむ」「すごいなあ〜」「難しくって、分らないぞ〜」 ・悪魔「前提条件のこれがもしこうなったら、結果はどうなるのか」 ・天使「法律もそうだし、他社もそうだから、我が社だってそうさ」 ・悪魔「外国では一部そうでなくなってきているし、日本だって…」 ・聴衆「そうだ、そうだ」「そこまで言うか?」「日本は違うぞ〜!」…… ・ 書記役は討論の要点、キーワードをメモしておく。据え置きVTRで録画するのも一法。 ・ 十分に検討ができたと思われるところで役割討論を終えて、天使組・悪魔組を解散する。 ・ 全体で「重要な点はどこ」「良かった発言はどれ」「更に検討すべき点は何」と討論する。 ・ 全体検討議事録を基に、後日専門班で実務的に十分検討をして成案に仕上げて提案する。 ・ リスク・マネジメントとしてシステム内の危険摘出が狙いの場合は脇道追求が主となる。 ・その場合は「もしあったら」と「もしなかったら」が突込みの主力となり脇道を攻める。 ・ また危険防止策・被害軽減策の成功確率・費用対効果が各ブロックで重要な問題となる。 G 常識のブロック ・「○○は××である」「○○すれば××となる」はセット化された知識の塊・単位である。 ・ この小単位の塊・知識が常識であり、固定観念であり、思考円滑化の必要条件といえる。 ・ 我々はこの塊・単位を関連させて中塊・中単位とし、さらに結合させて大塊・大単位とする。 ・ 中・大レベルの塊・単位では点検や議論は十分になされるが、小レベルでは無視され易い。 ・ 脳内記憶の全ての小ブロックを調べ、辞書事典の全ての小ブロックを疑うことは難しい。 ・ しかし、重要計画立案や重要システムの安全診断の場合はここまで立ち入って点検する。 ・ 脇道確率がゼロに近いほど小さくても崖で失う価値が無限大的なら、防衛は有用である。 ・ 千尋の谷も蟻の一穴から崩れることもあり、日光華厳の瀧も凍りついて止ることもある。

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