日本の生命保険業界において誰が勝者なのか?
日本は、国民一人あたりの保険金額、国民所得に対する保有契約高の割合からみて、諸外国を大きく上回る発展を遂げてきた。生命保険業界の総資産は1992年3月末では143兆円に達し、各金融機関全体ににおける資金量シェアも約10%に及んだ。このように国民生活や国民経済において、重要な位置を占めてきた生命保険業界なのだが、97年から新規契約高の減少、保有契約高の減少が続き、99年6月末の個人保険の契約保険高において前年同期比が3.5%の減少にまでなった。このような状況の中、日本の生命保険業界において一体誰が勝者となり得るのだろうか、イギリスとの比較を踏まえながら考えてみたい。イギリスの生命保険業界は80年代に急成長を遂げ、90年代に入ると、厳しい周辺環境におかれることになった。そこで、90‐95年のデータから勝者を認識している。
イギリスでは勝者を決めるにあたって以下の指標を用いている。
1 成長率(総資産、収入保険料、新契約)
2 余剰資産率
3 費用水準
4 顧客サービス
5 保険契約者の利益動向
これらの指標を用いて日本の会社を比較していこうと思う。
総資産、収入保険料、新契約のどれにおいても業界のランキングにあまり変化がない。日本生命が堂々の1位を保っている。個人保険と個人年金の収入保険料の89年と95年でのマーケットにおけるシェア推移を見てみる。新規参入の外資系企業はシェア率ではっ急激な変化は見せてはいないものの、成長率には著しいものがある。最近のデータとして、99年の前年比成長率を見てみると、総資産ではオリックス生命が62.7%、アクサ生命が50.3%、プルデンシャル生命が37.4%、ソニー生命が28.5%、INAひまわり生命が15.8%、オリコ生命が12.7%の成長をしている。高成長を遂げたのは外資系のみといえる。収入保険料では、日本の企業のほとんどがマイナス成長の中、唯一、大同生命が2.1%の成長率を示すが、外資系は驚くべき数値を出している。アクサ生命が96.9%、オリックス生命が60.3%、INAひまわり生命が24.6%、プルデンシャル生命が23.8%、ソニー生命の23.6%が成長をしている。新契約に関しては実際の成長率ではなく、98年の93年対比新規契約高の成長率を150点満点で評価したものでみてみる。大和生命が150.0、協栄生命が121.4、大正生命が113.3、平和生命が109.1、ソニー生命が150.0、INAひまわり生命が108.1の成長をしている。大手企業の成長率より大幅に、中堅、外資系企業の成長率が上回っている。イギリスでは1990から1995年の間、総資産、収入保険料、新契約それぞれの成長率がEquitable
Lifeでは172% 、70%、 95%、Scottish Equitableでは169%、 139% 、110%といった高成長を遂げた。平均の成長率が114%、35%、‐8%のなか、この2社の成長率は群を抜いているといえる。
ソルベンシ-マージン比率は予測できないリスクに対してどの程度保険会社が絶えられるかを示したもので、この比率が高いほど、保険金の支払い能力が高く、健全であるといえる。また、これは各会社の経営方針などによって出てくる数値の捉え方が変わってくるため、一概に数値だけでは判断できない。例えば、有配当保険では投資のリスクは保険会社が負担するため、unit-linkedや合同運用ファンドと比べ多くの資本が必要で、イギリスでは有配当保険を行っているところがほとんどであった。 Allied
Dunbarは財政的に強い親会社をもち、unit-linkedを扱っているため、またEquitable
Lifeは総費用などの低コスト化を実現したため、少しの資本ですむという。国内生保においては、97年、98年、99年とも大同生命が1016%、1017%、998%と、1位を維持している。その原因は、含み益に頼らない経営を行うために、価格変動が大きい株式や外国証券などへの投資を一定範囲内にとどめ、安定的に収益を確保できる公社債などに資金を重点的に配布してきたからだ。株式相場の激しい変動は、保険会社の自己資本水準に大きな影響を与える。98年、この大同生命のソルベンシ-マージン比率を大きく上回るのがプルデンシャル生命の1702%、ソニー生命の1546%といった外資系で、この原因には、外資系のほとんどが無配当保険を行っていることが挙げられる。
費用水準とは各会社の総費用と手数料を新契約保険料の50%と一時払い保険料の5%と継続保険料の5%の合計で割ったものである。先にも挙げたようにイギリスではEquitable
Lifeが90年は0.55%、95年は0.35%と、低コスト化を実現している。その次は、Scottish
Equitableで、90年は1.03%、95年は0.81%であった。これら2社の経営状態は非常に良かったと言える。日本においては、98年の収入保険料対比事業費率で見てみる。太陽生命が6.5%、大同生命が9.7%と、低コスト化を実現している。規模の経済性より、規模が大きいほど、これを実現できるため、まだ日本での総資産が少ない外資系ではあまり良い結果ではなかった。
サービス率について。イギリスでは顧客や手数料の支払い効率へのサービスについて調べたものである。イギリスではサービスが5つ星となっている会社はStandard
Life、 Scottish Windows 、Sun Life 、Allied Dunbar であった。日本は、以前、護送船団方式、つまりは費用水準が費用面で芳しくない企業の水準に合わせられていたため、価格競争が行われていなかった。しかし、92年に成立した燉Z制度改革関連法A銀行、証券、信託のの各業態間の相互参入が可能になると同時に、保険制度改革も行われ、各種規制が緩和されて行った。保険商品価格の自由化、生損保の相互乗り入れ、さらには、保険事業と銀行証券の相互乗り入れといった金融自由化のなかで、競争は必至となり、生命保険業界は多様な戦略を展開しなければならなくなった。大手保険会社では、多様な商品サービスの品揃えを通じて顧客に対して、総合的な生活保障を提供する総合生活保障産業を、中堅、外資系保険会社では、商品、販売チャネルで専門性、独自性を発揮した経営戦略を図っている。経営戦略を行う上で、社会構造の変化を把握することは必要である。社会構造の変化には、まず人口の高齢化が挙げられる。日本の高齢化はそのスピードが、欧米よりはるかに速い。つまり、老後生活の保障充実の必要から、顧客のニーズは年金、医療商品といったものに向けられてくるはずだと考える。次に女性の社会進出が挙げられる。これによって、保険商品への女性のニーズが高まり、生命保険の加入率引き上げが期待できる。最後に、高学歴化と価値観の多様化が挙げられる。高学歴化により、商品サービスに対する欲求の高度化が考えられ、社会が成熟してくると物質的欲求が満たされてくるため、次に精神的欲求を満たそうとする。そして、価値観の多様化が生まれる。こうして顧客は、自分のライフスタイルに合った、納得のいく内容の保険を求めるだろうと考えられる。つまり、保険会社は社会構造の変化に対応し、顧客のニーズに合う商品、サービスの開発とともに、コンサルティング力を強め、顧客からの多様な相談に応じられるようにしていくことが必要である。これがサービス率を強めていくことだといえる。外資系企業ではコンサルティングセールスを試みており、特にINAひまわり生命ではコンサルティングのプロフェッショナルが全国の代理店1300店に含まれており、マーケットからの強い指示を受けている。大手企業でも外資系に負けないように顧客を満足させるようなサービス体制や営業チャネルの改革、給与体制を整えてきているが、検討の余地が、まだ大いにある。また、顧客の満足を得るためには、まずは従業員の満足を得なければならない、ということから従業員の給与体制と休日休暇を一つの指標としたいと思う。休日休暇はどこも変わらないが、給与に関しては初任給を見る限り全体的に外資系が良い。
保険契約者は保険を選ぶ際、利益動向をその指標としている。98年の実質運用利回りをみて、AFRACの5.21%、アリコの5.01%、INAひまわり生命の4.40%、ソニー生命の3.87%と続き、外資系の高利回りが分かる。イギリスでは有配当保険と変額保険を調査して、5つ星がEquitable
LifeとScottish Equitableになった。日本の各社は自由化時代での生き残りをかけて、様々な価格勝負を試みている。例えば、日本生命の場合、jッセイ保険講座uし、これに加入することで、トータル保険金額に応じ、保険料率を3段階に設定し、合計金額が多いほど割引高が高くなったり、加入期間など、一定の条件に基づきポイント制を設け、年ごとのポイントに応じ、5年に一回配当金が支払われるなどのメリットが受けることができる。
イギリスでの勝者はScottish Equitable と Equitable
Lifeであった。この2社は常にどの指標でも高いグループの中に入っていた。そのことから日本の生命保険業界での勝者を考えると、外資系の企業に絞られた。イギリス2社の特徴としては、顧客の層別化を行っていることと、グループ企業であることがある。顧客の特性に応じて商品や販売チャネルを工夫する必要があり、層別化の方法は会社によって異なるが、上記2社は専門家と重役などといった所得や職業で分けていた。他には地域、業界で分ける方法もある。自社の顧客を認識することは重要で、認識するのに代理店は高い役割を果たすと思う。しかし、日本で代理店があまり増えていない中、唯一、INAひまわり生命だけが急激な速さで代理店を増やしている。94年の6580店が98年には18275店となっている。また、INAひまわりの親会社はアメリカ大手のCIGNAグループで、このCIGNAは、72年にすでに安田火災と提携を結んでいる。外資系の中でも、INAひまわりは特に勝者なのではないかと私は考えた。