夜這いです

 服部緑地に先日静寂を求めて行って来た。静寂には程遠かったが灰色の街に住む者にはそれなりのものは得られた。昭和三十年代に一度行っているので、知ってはいたが、街が高度経済成長とやらですっかり潤いを失っているせいか、服部緑地がまぶしく見えた。 

 その中に 日本民家集落展 がある。各地から古い民家が移設されている。昔は90%は農家だから集められている民家も大方は農家で、私の感覚ではそれぞれの地方の豪農の家が多かったように思う。

 さて表題の 夜這い の話しだが 実は私は夜這いとは、江戸時代の農村での若い衆が好きな娘の家に夜忍び込む習慣だとばかり思い込んでいたが、そんなロマンチックな話ではなくて、貧しい時代の人々の悲しいしきたりだったことを知った。

 大家族主義とかいって日本の美しいよき制度の代表みたいにいうがとんでもない認識不足で、実態は貧しくて分家など想像もできず、長男以外も全て生まれた家で一生を終えるのであった。その役割は労働力のみで財産を私有することも家を持つ事も許されなかった。

 但し子供(労働力)を産む事だけは許されていた。その子供の作り方が 夜這い なのであった。そしてそれは黙認されていて、家のうらに 夜這い口 という入り口がひっそりと目立たぬところにあった。その横に以上の趣旨の説明板が掲げられていた。貧しい者が生きて行く為の悲しい制度だった事を知り私は暫くそこに立ちすくんだ。