小泉首相の情けない涙

 小泉さんのブラジル訪問を田中真紀子前外相が外国人記者クラブの講演の中で 方向音痴とこきおろしていた。  何故方向音痴なのかの説明は 小泉さんが行かねばならぬ南は沖縄だと言うのである。 沖縄では米軍のヘリコプター墜落事故で日本の措かれている実像があぶりだされて騒然としている。

 日米同盟の実態がいかに屈辱的で韓国やドイツにさえ及ばない事を知り猛反発をして、政府に地位協定の改訂を要求しているのに現地視察さえしないで遥か南のブラジルへ出かけたと言うのである。

  方向音痴とは面白い表現だなぁと感心したが、言われたご本人には強烈なパンチである事は確かだ。  しかも背景を考慮すると誠に的を得た適切な表現で彼女の街頭演説にいつも多数の聴衆が集まるのは単なる 親の七光りでなく彼女の優れた政治感覚によるものであろうことが窺える。

  さてそれとは知らずブラジル訪問をした小泉さんは当地に住む従兄弟との再会も楽しみの一つだったそうで再会の嬉しそうなシーンがテレビに映し出されていた。  それが十数年のこととあれば誰だって嬉しいしそれしそれでいいんじゃないかと誰でも思う。

  問題はそこから先である。 ブラジルに移民して艱難辛苦の末大成功した人もいるだろうし挫折して辛い思いで暮らしている人もいると思う。それらをヘリコプターで視察した首相が素晴らしい農作物の畠の広がりを見て感激して予定に無い着陸を希望して移民たちの集会で挨拶した。

  その中で移民たちの苦労と大成功に感激のあまり絶句して落涙し言葉が続かなかったとニュースは報じていた。  これが女子高生や清純な若者の話ならば美談だが、六十過ぎの大の男が百年も前の人の苦労話をその子孫の方々から聞いて泣いたとはどういう心境なんだと精神分析のひとつもしたくなる。

  同じ泣いたでも田中真紀子前外相がアフガンを訪れた時、荒廃した街角に裸足で集まって来た子供達をみて 同じ地球上に生まれながら・・・と言って絶句しカメラに背を向けて泣いたのとは雲泥の差である。

  私は精神分析の専門家でもないしその能力もないが七十七年生きてきて沢山の人と会ったり自分でもいろいろな経験をしてくると下手な専門家よりもましな見方が出来ると過信している。 その過信の立場で見ると小泉さんは精神的に相当追い込まれていると思う。

 真面目に改革を推進して自分ではある程度の成果があったと自負しているのに、支持率は落ちるわ 参議院選挙は負ける?わ 郵政民営化はどうなるかわからんわ 金正日は動かんわ 家にも外にも話し相手はいないわ で元々がどっしりとした度胸のいい方ではなくヒステリックで繊細な神経の持ち主だと過信男が分析しているので、国を遠く離れて感傷と開放感で心の張りを一挙に失い泣いたと思う。

 とは言え同情に値はする。 何故ならば私達は過去にこれほど真面目な総理大臣を頂いたことはなかったのだ。  強いてあげれば三木総理くらいだろう。  三年も続いて支持率50%など過去に無い。  世界に目を転じてもインドのネール首相 中国の周総理くらいではないか。  現在の世界でも誰もいない。

  いろいろ言うが50%の支持を得ている人を指導者に持っている日本人は 幸せ者 なんだろうと時々思っている。  真面目が一番だ。  一長一短とはよく言ったもので片意地もよいが中国とも仲良くして首脳の往来を実現し国の安全を計って欲しいものである。