※誰にも実践できる、正しい外国人観光客誘致策
〜海外の現場経験者が語る、本当に有効な外客誘致実践ノウハウ
石橋秀樹
次世代総合研究所 共同代表
ウェブサイト・「特殊法人懲罰委員会」 主宰
独立行政法人・国際観光振興機構(JNTO) 元香港事務所次長
【構 成】
1.ようやくインバウンドの時代がやってきた(前頁)
2.国の外国人観光客誘致政策は間違いだらけ(前頁)
3.海外セールスは皆さん自身でもできます。
3.海外セールスは皆さん自身でもできます。
しかし、今からでも実際にアジア諸国からの観光客誘致を始めたい自治体や観光施設のセールスはどうすればよいのでしょうか?ご安心下さい。これから筆者が実践で経験したノウハウを公開します。
現地にコネクションがなくても、以下の方法を取れば大丈夫です。JNTOの手を借りる必要はありません。但し、通訳でも臨時職員でも構わないので、必ず現地語のわかるスタッフを1名確保して下さい。
まず、国内でできることはたくさんあります。
筆者はJNTOに厳しい評価を与えていますが、同機構が刊行している「マーケティングマニュアル」は、唯一実践的な資料として評価できます。以前は観光統計や各種経済指標、業者の連絡先等を羅列した「海外旅行市場要覧」なる資料集がありましたが、学者や総研の研究員のレポート作成の基礎データ以上の使い道がありませんでした。手前味噌ですが、筆者がもっと実践的な内容に全面改訂すべきであると提唱して10年前に新たに編纂されたものです。年々改良されて充実した内容となっています。
筆者は基本的にJNTOは不要だと考えていますが、一部の海外事務所につき一定のマーケティング機能を認めることにはやぶさかではありません。(但し民間で十分代替できます。現に、上海時迅商務諮詢有限公司(NNA中国)コンサルティング事業部では、「日本観光旅行に関わる中国人の意識について」という調査報告書(A4判29頁/\63,000)を刊行しています。)
いずれにせよ、一冊購入する価値はあると思います。国ごとに編集されていますので、ターゲットとする国の該当部分をまずは熟読して下さい。
ただ、これだけ読んでも煮詰まってしまうので、次に「マーケティングマニュアル」を参考に、現地の新聞、雑誌を取り寄せて下さい。(「OCS海外新聞普及社」等で取り寄せできます。)日本に関する記事や、日本ツアーの広告を探してチェックして下さい。新聞は最低1週間、できれば1ヶ月以上継続購読して下さい。旅行会社の広告は週単位で掲載される場合があるためです。(例:日本ツアーは毎週水曜日)
次にマーケティングマニュアルや、現地新聞に出ていた旅行業者のHPをネットで業者のHPを見て下さい。(Google検索も活用して下さい。)
これらの作業を行う際に重要なのは、「想像力」を働かせることです。「どんなツアーなんだろう?」、「日本ではどんな行動を取るだろう?」、「どこがウケそうだろう?」、「どんな問題や不満が出そうだろう?」、「この値段はどこにカラクリがあるんだろう?」といったことを頭に思い浮かべてください。これは実践トレーニングです。
予備知識としてはこれで十分でしょう。次の段階が現地調査です。これは一人で十分です。業者の店舗を見るだけでも勉強になります。
ここで、とっておきの有効な方法をお教えしましょう。それは、現地発の訪日団体ツアーに参加することです。特に現地に駐在員がいる地方自治体には、この方法を強くオススメします。
これは私自身が実践した方法ですが、現地のお客様が何に興味を示し、どこで居眠りをし、自由時間にどこへ向かうか、食事は何が人気か、ショッピングはどういうアイテムが人気か、問題点は何か、宿泊施設が用意すべきものは何か、こういった点が短期間で全て理解できます。(言葉がわからなくても、観察力さえあれば大した影響はありません。)
また、こうしたツアーには日本語のできる添乗員が必ずいますので、彼らにどんどん質問するのも手です。彼らの知識こそは活きた宝です。
事前調査が終わってから、いよいよ現地セールスです。
「現地セールス」といっても、実際に何をやるかが大切です。ここが最大のポイントになりますので、以下に列挙してみます。
(1)無駄な出費を避けよ!
宴会大好きな中国以外では、ホテルの会場を借りてセミナーを開くような無駄な出費はゆめゆめ行ってはいけません。有力旅行会社やプレスに個別アタックをかけてください。
(2)語学力よりも、情熱的なスタッフを派遣せよ!
現地セールスには、一番地元や自分の施設を熱心に売り込めるスタッフを派遣して下さい。語学力はあまり考えなくて結構です。言葉の問題は通訳を雇えば済む話です。ただ、できれば挨拶言葉だけは付け焼刃でいいので覚えてください。相手に与える印象が変わります。
あと、名刺を工夫して下さい。彼らは日頃多くの関係者と名刺を交換していますから、現地語の挨拶言葉同様、相手に印象付けるには有効なアクションだといえます。筆者は名刺の裏面に写真と自己PRを現地語で書いた自作のオリジナルシールを貼っていました。
(3)担当者を短期で交代しないこと!
特にアジア地域、中でも中国、台湾、香港の場合は担当者同士の「顔」がモノを言います。所属組織の名前よりも、担当者の「人物」を重視するからです。しかしながら多くの自治体や観光協会等では、定期的な人事異動のために2,3年で担当者が交代してしまうのが実情です。これは非常に勿体無いことです。
筆者が香港に駐在していたときも、「日本はすぐ担当者が交代してしまう。」とよく嘆かれたものです。
前任者のノウハウは引き継げても、人脈や信頼関係を引き継ぐことは容易ではありません。従って、担当者は最低でも5,6年は同じポストにいることが理想です。もし難しい場合には主担当者と同じ業務を担当する副担当者をもう1名おき、常に人脈が途絶えないようにした方が良いでしょう。
(4)セールスは陳情ではない!
セールスは陳情ではありません。あくまで商談です。相手はビジネスをしているのです。役人同士のプロトコールではありません。裏を返せば、関心を持てば相手のアクションは早いのです。
あなたが自治体関係者の場合、必ず外国人の受入意欲のある宿泊関係者や観光施設の関係者を同行させて下さい。特にあなたの地元に外国人を「滞在」させたいのであれば尚更です。(通過が目的であれば、飲食施設、観光施設の情報を相手に提供して下さい。)
(5)派遣の目的を取り違えないこと!
さて、現地セールスに訪れた皆さんの目的は、報告書の作成ではありませんし、データ分析や名刺の収集でもありません。ここを勘違いして現地を訪れる関係者がいかに多かったか。皆さんは「本気で地元への経済効果を考えていますか?」
(6)皆さんが売りこみたいものは、相手が欲しがっているものですか?
こちらが売りたいものと相手の買いたいもののマッチングが必要です。相手の関心があるものと、こちらの売り込みたいものが合致しなければ意味がありません。日本の関係者が非常に見落としがちな点の一つです。「ひとつ何とかよろしく。」という陳情が通用するのは一昔前の日本だけだと心得て下さい。先程の事前調査が生きるのはこの時です。
(7)地元の旅行業者に宣伝させる。
先程、「セミナーに無駄なカネを使う必要はない。」と述べました。最も有効な方法は、地元の業者自身に宣伝させることです。それにはいかに良質な情報と好条件を提示できるか。もし広告掲載を考えているのであれば、単独でイメージ広告を掲載するよりは、地元の大手旅行会社の宣伝広告やテレビ取材にツール(情報及び画像)や資金を提供した方が効果的です。
くれぐれもカネの使い方を誤るなかれ。特に自治体の場合は地元の人々の血税です。
さて、皆さんが最もお知りになりたい点は、先方とのアポイントの取り方だと思います。
自治体の方が現地関係者とのアポを取る際には、地元の航空会社支店又は現地に支店を持つ大手旅行業者の地元支店に依頼するのが良いでしょう。現地出張の手配事項に含めればやって貰えます。
自分たちでアポを取る場合は、自治体・観光施設の簡単なPRと訪問趣旨を記したFAXを送った後に、電話でフォローする方法がベストです。その際に簡単なパンフレットを同時に送信すると、相手方の参考になります。メールよりはFAXの方が確実です。
宛名はセールスマネージャー又は日本担当責任者宛にすると良いでしょう。
JNTOを通さずに本当に成功するの?と心配な方々もいらっしゃるかもしれません。
しかし、相手は興味を抱いてくれれば、ダイレクトコンタクトでも十分商談に応じてくれます。
そもそも、単なる国の宣伝機関であるJNTOよりは、実際に航空券を供給する航空会社の方が現地業者との関係は遥かに深いのです。(但し、日系旅行業者は現地を訪れる日本人観光客向けのランドオペレーションが殆どなので、あまり役に立ちません。)
現地で観光展に出展される場合でも、JNTOがなくても主催者側の方で、日本は日本でまとまったブースを提供してくれます。
いろいろ述べてきましたが、最も大切なのは、担当者の「現場感覚」と「人脈」です。常にアンテナを高く張り、現地旅行業者の担当者との人脈を築いているスタッフが一人でもいれば、それ自体が立派な「ノウハウ」であり、10回のセミナーを上回る効果をもたらしてくれることでしょう。
2006年4月4日 記
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