@いい加減極まる恐怖の第3次行革審(続き)
こうした組織のあり方は、プロパー職員、特に若手職員の士気を大きく低下させることとなった。目立てば何でも良いという感じであったから、現場サイドから見ると無理のある新規事業が次々と押し付けられるはめになった。筆者がJNTOを退職するに至った直接の原因もこの辺にある訳だが、周囲の人々は異口同音に「どんな組織か知りませんが、身分は保証されているし、給料も安定しているし、観光宣伝なんて面白そうじゃないですか。どうして辞めたんですか?」と尋ねたものである。
具体的な業務を説明してもピンと来ないかもしれないが、以下のようなたとえ話を用いると大体の人が「それは辞めるのも無理ないですね。」と納得してくれた。
「さしずめ、『インドで牛肉を売ってこい』、或いは『リビアでキリスト教を布教してこい、』といった類の無茶な指示が多すぎるんですよ。インドで鶏肉を売れというならわかります。或いは売り物が牛肉であればインドではなく、中国へ売りに行けというならわかります。でもそう反論すると、『アメリカ人も韓国人も牛肉が大好きだ。インド人だって好きに違いない。とにかくインドで牛肉を売ることに決まったからその通りにしろ。ついてはいついつまでに実績を報告せよ。』と聞く耳をもたないんです。『現地事情も考慮せずに勝手な指示をされても困る』と再反論すると、『監督官庁の命令だから、とにかく何でも良いから実績をつくれ』と言われます。
仕方ないので、インド国内の外交官向けスーパーに頼み込んで牛肉を10kgだけ卸させてもらいます。それでも報告すれば通ります。逆に『インドで鶏肉を輸入したいという話があるので送って欲しい。』と報告しても『在庫がない』の一言で突き返されますけどね。
『リビアでキリスト教を布教してこい、』と言われれば、アメリカ大使館とドイツ大使館公邸に出向いてミサをやらせて貰い、それを実績として報告します。本当に無意味もいいところです。一時が万事こんな調子ですから、義理でつきあってくれた人々も「仏の顔も三度まで」と、やがて現場では相手にされなくなります。ましてや税金でこんな事をやっているなんて無駄遣いに加担しているようで、情けなくてやってられませんよ。」
ところで、行革審ではJNTOは人件費率が他の特殊法人と比べて異常に高いから無駄だ、という意見もあったようだが、これもいささか乱暴な論法である。JNTOの場合、公共事業や補助金・交付金を持たず、サービスの提供というソフト業務なのだから必然の帰結である。しかも、人件費に関しては次年度予算の概算要求時に人事院勧告によるベア分の積み増しを大蔵省(現:財務省)から強制的に指示される一方、総枠は抑えられているから、ますます事業費が圧迫される。
改めて言うが、特殊法人問題は、あくまでその業務の必要性の有無からアプローチするべきである。しかしながら、専ら天下りの問題に摩り替わってしまったために、官庁側から組織の「必要論」で切り返されてしまい、抜本的な改革が進まないのである。
従って、あくまで、業務の必要性の点から論じられなければならない。