東京大気汚染公害裁判
原告 西 順 司
1、私は、弁護士報酬敗訴者負担制度に強く反対する立場で意見を述べます。
私たちの東京大気汚染公害裁判は、1996年5月に第1次提訴を行い、第4次提訴まで行い、518名の原告で裁判を闘っています。
この裁判は、これまでの各地の大気公害裁判とは異なり、自動車メーカーを初めて被告にし、東京23区全体の面的汚染を問題にし、国等の救済制度から放置されている被害者の未認定の患者を含む、新たな課題に挑戦の裁判です。
2、まず裁判に取り組んだ私たちが驚いたのは、裁判にお金がかかることです。損害賠償を請求するのに印紙代を取られるなど知りませんでした。弁護団が訴訟救助で努力してもらいましたが、原告本人だけでなく、同居家族の全収入が訴訟救助の判断基準だと知り強く矛盾を感じました。
一定の原告団加入金を取り対処しましたが、このことは、原告に多くの人を加入させることに大きな壁になりました。
3、また、裁判が進行し、立証段階になって、被告が外国人証人を申請し、日本の大気汚染の研究もしていない証人は問題と原告側は反対しましたが、裁判所は、これを認め、このために原告側は、外国人証人の調査するために調査団を外国に派遣しました。研究論文の翻訳等費用含め原告団と、弁護団で費用分担しました。原告団もこのために一人6千円のカンパを募り、支援の人達の協力も得て、400万のカンパと弁護団の負担で賄いました。
4、これだけでなく、面的汚染を立証するためのシミュレーション作成、被害実態を明らかにするための映画の作成(法廷内で上映)等、運動の費用は別にしても裁判だけでも数百万円単位でさまざまな費用がかかるのです。6年間の間、裁判長、裁判官が次々と替わり現在の裁判長は、4人目です。私たちは、被害者の苦しみを新しい裁判官に理解してもらおうと、その度に更新弁論をし法廷で映画も上映するなどしました。これとて費用が掛かるのです。裁判長、裁判官が次々と替わり、被害者の実情を本当に理解してくれているのだろうかと不安を感じます。
5、私は、自分が裁判の原告になり、実際に裁判をしてみて、日本の裁判の仕組みが本当に庶民の裁判をする権利を保障しているかどうか疑問に感じました。
特に、私たちのような、国、都、道路公団の行政機関、自動車メーカーのような巨大企業を相手の裁判は、初めから勝てるかどうか確信があって起こすものではないのです。なんとかしなければという思いで起こすのです。
それでなくても経済的負担も大変です。現実に私たちは、弁護士費用は、弁護士の自弁でやって貰っているのです。
被害者は、原告団の加入金、原告団会費の納入ですら大変なのに、敗訴したら被告側の弁護士料も支払うこととなれば、原告団に加入する人は、大幅に少なくなり特定の人達しか訴訟を起こせなくなることは明らかです。国民の裁判する権利を奪うものとなる弁護士報酬敗訴者負担は反対です。司法改革は、国民がもっと気軽く裁判する権利を保障するものでなくてはならないと思います。
なお、最後に、私たちの裁判は、自動車のディーゼルエンジンの開発研究の経過もいろいろ問題になりました。これらの技術開発研究、エンジンの構造等に関する資料は被告、自動車メーカー、国等がみな独占し、重要な資料は、非公開となっています。被告側は、原告のカルテ、レントゲンその他、総ての資料の提出要求し、裁判官は、原告の反対を認めず、提出命令を出しました。しかし、エンジンの技術開発研究などの資料は被告側は、なかなか応せず、裁判官も原告側の要求に応じ提出命令を積極的に出さないきらいがありました。こうしたことは、裁判の審理の公正性を損なうものです。必要な資料は、総て求めがあれば公開されるべきです。
6、東京大気汚染公害裁判は、先に述べたように、6年前に第1次提訴し、現在まで第4次提訴まで行い、原告は518名となっていますが、既に約60名の原告が、亡くなっています。
第1次提訴は、昨年末結審し、今年10月29日に判決と決定されました。
私たち原告団、弁護団、支援の東京大気裁判勝利目指す実行委員会は、いま判決当日、勝利判決の上に各被告に対し、200名〜150名の交渉団を派遣し「謝罪する、控訴しない、損害賠償を支払う、自動車排ガスによる汚染原因者の財源負担による新たな被害者救済制度の確立をする、大気汚染改善のため抜本的公害対策を行う」との全面解決要求にもとずく交渉で早期全面解決をはかる確認書を取る、大行動を成功させるために取り組みを強めています。
東京大気汚染公害裁判の勝利判決と全面解決要求の実現は、現在、大きく問題になっている道路建設問題の見直し、公共投資のあり方を含め、大きな影響を与えるものになると思っています。それだけに多くの人々の力添えがなければ勝利は実現出来ません。よろしくお願いします。