弁護士報酬の敗訴者負担制度についての被爆者の考え
山本英典 (東京都原爆被害者団体協議会=東友会・事務局長)
原爆被爆者はいま、厚生労働大臣を相手取って、原爆症認定についての集団訴訟を準備しています。訴訟の前提としておこなう認定申請は、7月9日の第1次集団申請で76人、9月6日の第2次申請で60人が参加しました。
申請が却下されたら「異議の申し立て」をおこない、これも却下されたら「却下処分の取消を求める裁判」を起こすことになります。裁判をやってでも認定させようと決意している被爆者は、東京だけでも32人、全国では百数十人になるだろうと見られています。
こんな大がかりな裁判を起こすのは、被爆者運動では初めてです。被爆者は「私の病気が原爆の原因だということを国に認めさせたい」「被爆者の最後のたたかいとして自分も参加する」といっています。
原爆症というのは、ガンや白血病や甲状腺機能低下症など、原爆放射線と深い関係があって起きる病気です。これを認定するということは、厚生労働大臣が「原爆放射線が原因」と認めることです。
被爆者が原爆症認定を求めた裁判で勝利したのはこれまで2件あり、現在は東京と札幌で2件続いています。最高裁で勝利が確定した長崎の松谷英子さんの裁判は12年、京都の高安九郎さんは、大阪高裁で勝利が確定するまで13年かかりました。
もし、弁護士費用の敗訴者負担制度が実施されたら、国の不当な上訴で引き延ばされて、勝てばよいのですが、負けたら被爆者が莫大な費用負担をすることになります。
いまとり組んでいる集団訴訟は、国の被爆者行政を変えさせようとするものですから、勝訴はかなり難しい裁判になります。
被爆者として57年間も苦しめられ、これを是正するために起こした裁判で費用の全額を負担させられるようになったら、被爆者は泣き寝入りするしかありません。
被爆の実相を広め、たたかう力を作り上げようとする裁判をやらせないようにしたら、国の危険な核兵器政策を許すことになります。核兵器廃絶のためにも、弁護士費用の敗訴者負担制度に反対します。