弁護士報酬の敗訴者負担に反対する決議

 当会は、弁護士報酬を敗訴者の負担とする一般的な負担制度の導入に強く反対する。
 以上のとおり決議する。

2003(平成15)年1月14日
東 京 弁 護 士 会

理  由

 2001(平成13)年6月12日、司法制度改革審議会は最終意見書を公表し、その中で、弁護士報酬の敗訴者負担制度につき、「一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入すべきである」とした。この意見を受け、現在、司法制度改革推進本部司法アクセス検討会において、同制度につき本格的な検討がされようとしている。
 当会は、上記最終意見書の案が公表された段階の、2001年5月23日、「敗訴者負担制度の導入に強く反対する」との会長声明を発しているが、検討会における本格的な検討がされようとしている現段階において、改めて、以下の理由から、反対の意見を表明するものである。

1 市民の司法へのアクセスを抑制する。
 上記最終意見書は、「勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、その負担の公平化を図って訴訟を利用しやすくする見地から」敗訴者負担制度を導入すべきだとしている。
 しかし、「勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった」という事例はほとんど想定し得ない。それどころか、一般市民や中小零細企業にとっては、敗訴のリスクをおそれて提訴をためらうことが多くなり、かえって、同意見書のいう「訴訟を利用しやすくする」という目的に背反することになる恐れが強い。従って、国などに対する訴訟で原告が勝訴した場合にのみ弁護士報酬を負担させる片面的負担制度はともかくとして、一般的な敗訴者負担制度を導入することは、市民の司法へのアクセスを抑制することになる。

2 裁判の人権保障機能及び法創造機能を損なう。
 裁判は、社会の変化に対応し、公害・消費者・憲法訴訟など多くの分野で、判決を通じた新たな権利の確立と社会規範の創造を行ってきている。しかし、これらの権利拡大も容易になされてきたわけではなく、幾多の敗訴を乗り越えてのことであり、敗訴者負担制度が導入されたならば、これら新たな権利の拡大を求める事件においては、訴訟の提起が著しく抑制されることになる。ひいては、裁判の有している人権保障機能及び法創造機能が損なわれることが危惧される。


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