弁護士報酬敗訴者負担制度に反対する意見書

                       2000年12月16日

                   クレジット被害対策全国連絡会議

 

第1 意見の趣旨

 司法制度改革審議会「中間報告」が提案する弁護士報酬の敗訴者負担制度は、消費者被害の救済を初めとする経済的弱者の訴訟提起を著しく萎縮させるものであり、その導入には絶対に反対である。

 一定種類の訴訟について例外を設けるという中間報告の方針は、的確な要件の設定が事実上不可能であり、むしろ敗訴者負担制度自体の導入を放棄すべきである。

 

第2 理 由

1、私たちは、ココ山岡の買戻商法、モニター商法、名義借り事件など、悪質販売業者によるクレジット契約被害の救済と防止に取り組む弁護士・学者・消費生活相談員・被害者等の連絡組織である。

2、クレジット契約の抗弁対抗を巡る紛争は、消費者保護規定が存在しなかった当時から多数の訴訟において抗弁切断を定める契約条項の効力が争われ、次第に抗弁接続を認める先駆的裁判例が積み重ねられた結果、1984年の割賦販売法改正により、未払金の支払い停止を認める規定(割販法30条の4)が制定された。

 しかし、信販会社の加盟店管理責任が法定されていないことや、法律知識のない消費者が抗弁事由の存在に気づかずに割賦金を支払ってしまうともはや既払金の返還の必要がないことなど、現行法の規定が不完全なため、悪質販売業者による被害は後を絶たない。

 そこで私たちは、ココ山岡訴訟をはじめとする今後のクレジット被害救済訴訟を通じて、既払金の返還を含む完全な被害救済の判例形成を目指すとともに、割販法の抜本的な改正または統一消費者信用法の制定を実現することを求めるものである。

3、しかしながら、仮に司法制度改革審議会の「中間報告」が提示する弁護士報酬敗訴者負担制度が導入されるならば、こうした消費者被害の救済と判例形成に向けた訴訟提起は大幅に萎縮せざるを得なくなろう。

 なぜなら、消費者訴訟の多くは、実体法上の消費者の権利が不完全または不明確であるうえ、証拠資料も極めて不十分な立場に置かれる中で、自ら依頼する弁護士費用を何とか負担してようやく訴訟提起に踏み切るのが通常だからである。こうした被害者にとって、「敗訴した場合は相手方の弁護士費用まで負担するおそれがある」となれば、多くの被害者が訴訟提起を断念せざるを得なくなることが明らかである。

 さらに、クレジット訴訟の多くは、信販会社が消費者を訴える形態の訴訟が多いところ、消費者側に何らかの言い分があるような場合であっても、信販会社から「争うなら訴訟にする。その場合は信販会社側の弁護士費用も負担することになる」などと迫られると、多くの消費者は法律相談を受ける前に事実上法的に争う機会を奪われるおそれが強い。

4、ところで、中間報告は、今後は「労働訴訟、少額訴訟など敗訴者負担制度が不当に訴えの提起を萎縮させるおそれのある一定種類の訴訟は、その例外とすべきである」として、「例外とすべき訴訟の範囲及び例外的取り扱いの在り方」を検討すべきであるとしている。

 しかし、消費者訴訟は、不法行為損害賠償、債務不履行解除、錯誤無効、詐欺取消など、一般民事訴訟と共通のさまざまな訴訟形態をとっており、「訴訟の種類」を的確に区別することは不可能である。仮に「消費者が事業者に対して訴訟を提起する場合」という当事者の属性によって区別するのであれば、片面的敗訴者負担制度をすることにほかならないが、中間報告はそのような制度は認めないようである。

 また、裁判官が「判決に当たり事情によって敗訴者負担を除外できる」としても、訴訟提起に当たっての萎縮効果は拭うことができない。

 つまり、例外の設定に関する検討は、敗訴者負担制度の問題点をごまかすための議論のすり替えに終わるおそれが大きい。

5、そもそも、弁護士報酬敗訴者負担制度は、濫訴・濫上訴を抑制する方策として過去にも裁判所・法務省から再三提案されていたが、訴訟の利用を抑制すべきではないとしてその都度否定されて来た。

 ところが、今回の議論は、これを「訴訟を利用しやすくする制度」として提案しており、まやかしの感を禁じ得ない。

 むしろ、真に経済的側面から訴訟の利用を促進するためには、 法律扶助制度の大幅拡充とともに、勝訴の場合の償還義務を原則免除とすべきこと、 少額訴訟について当事者の無資力を要件としない弁護士費用援助制度を設けること、 損害賠償額の算定基準や慰謝料額の認定を大幅に拡充することなどを、積極的に検討すべきである。

6、よって、私たちは、弁護士報酬敗訴者負担制度の導入には絶対に反対であ る。