弁護士報酬の敗訴者負担制度導入に反対する
弁護団・原告団共同声明
我々は、裁判を現実に経験している被害者・原告団・弁護団として、司法アクセスを阻害する弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に強く反対する。
1 司法制度改革審議会は最終意見書において、「裁判所へのアクセスの拡充」のための課題として、弁護士報酬の敗訴者負担制度が「訴訟の活用を促す場合もあれば、逆に不当にこれを萎縮させる場合もある」という認識に基づき、同制度を「一律に導入すべきでな」いという基本的立場を明らかにして、「一定の要件の下に……導入すべきである」が、「不当に訴えの提起を萎縮させるおそれのある場合には、このような敗訴者負担を適用すべきでない」と提言した。かかる提言に基づき、現在、司法制度改革推進本部司法アクセス検討会において、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入が検討されている。
2 我々は、この弁護士報酬の敗訴者負担制度について、次のような理由から反対する。
(1) 司法制度改革は、「国民がより利用しやすい司法制度の実現」を基本理念のひとつとしており、そのために「裁判所へのアクセスの拡充」を図るべきとしている。そして、「裁判所へのアクセスの拡充」のための制度設計は、何よりも裁判の現場・実情を踏まえたうえで行われなくてはならない。
我々が経験している裁判の現場・実情に鑑みれば、市民にとって弁護士報酬の敗訴者負担制度が「裁判所へのアクセス」を阻害するものであることは明らかである。このような制度が導入されると、私たちの「裁判所へのアクセス」は現在よりも困難になる。敗訴者負担制度は、私たちに「裁判所の門を閉ざす」ものとなるのである。
このような制度が、「国民がより利用しやすい司法制度の実現」「裁判所へのアクセスの拡充」に反するものであることは明らかである。
(2) また、同制度の導入は、裁判の人権保障機能及び法創造機能を失わせる。
国民は、社会の進展に応じて、裁判を通じた新たな権利の確立と新しい社会規範の創造を行なってきた。公害訴訟、消費者訴訟、薬害・医療過誤訴訟、労働訴訟・労災訴訟、ハンセン病訴訟、議員定数などの憲法訴訟、行政訴訟、セクシュアル・ハラスメントやDV被害など女性の権利に関する訴訟等多くの分野において、裁判の力によって人権保障機能と法創造機能が実現された。
敗訴者負担制度が導入されると、これら新たな権利の拡大を求める裁判や新しい社会規範を求める裁判の提起は、著しく困難となる。
4 司法アクセス検討会は昨年11月28日から本格的検討に入っているが、1月29日までの検討会における議事運営は、同制度が「裁判所へのアクセス」をどのように促進するかという制度検討の上で最も重要な議論を抑制する方向で行われており、公正な議事運営が行われているとは言い難い。また、同制度の検討は、裁判の現場・実情を踏まえて検討されることが必要であり、検討会においても各界からのヒアリングを行うべきとの意見が出されてるが、このようなヒアリング等がおこなわれることのないまま審議が進められている。我々は、司法アクセス検討会において、公正かつ適正な議事運営が行われていないことを懸念する。
5 弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入は、市民による「裁判所へのアクセス」を阻害し、裁判の人権保障機能及び法創造機能を失わせるものである。この問題に対する反対の声は顕著であり、その声は現在も広がりつつある。
我々は、同制度の導入に強く反対するとともに、司法アクセス検討会に対し、この問題に対する反対の声を重く受け止め、公正かつ適正な議事運営を行うとともに市民団体や我々裁判当事者等からのヒアリングを行うなど慎重な検討を行うよう求める。
以 上