2003年11月20日
司法制度改革推進本部 御中
弁護士報酬の敗訴者負担制度に反対するみやぎネットワーク
代 表 伊藤博義
弁護士報酬の敗訴者負担制度に反対するみやぎネットワーク(略称ハイソネット)は、弁護士報酬の敗訴者負担制度に反対することを目的に2002年12月2日に設立され市民団体である(連絡先事務局後記のとおり)。
司法アクセス検討会において検討されている「当事者の合意による敗訴者負担制度」及び検討会の議事進行について、以下のとおり意見を述べる。
意見の趣旨
「合意による弁護士報酬の敗訴者負担制度」導入に反対である。
司法アクセス検討会に対し、合意制度について性急に意見のとりまとめを行うことなく、国民の意見を聴取した上で充分な検討を行うことを強く要請する。
意見の理由
1 合意による制度も弊害のある、弱い者いじめの制度であること
ハイソネットは、弁護士報酬敗訴者負担制度に対し、国民の司法制度利用を妨げることになるという理由で反対してきた。
合意による制度についても、これによって市民が司法を利用しやすくなるということは考えられず、以下のように市民に訴訟を萎縮させる弊害が生じることが予想されることから、反対である。
(1)合意による敗訴者負担制度は、当事者の自由選択により敗訴者負担を排除できる弊害が少ない制度であるかのように説明されているが、当事者は、敗訴者負担の選択を迫られることによる心理的負担だけで提訴萎縮するであろう。両面的な敗訴者負担制度は、どのような形態であったもその弊害を除くことはできないのである。
(2)特に、選択を迫られる当事者の力が対等ではない場合(消費者と事業者、中小零細企業と大企業、労働者と使用者など)には、選択による経済的リスクを負担できない弱者においてより選択に困難を感じることは明らかであり、弱者が不利な立場に立たされる。
また、「合意による敗訴者負担」が制度として認知されるようになれば、消費者と事業者の契約約款や力の格差のある事業者間取引(商工ローン訴訟やフランチャイズ契約、下請契約等)に、「敗訴者負担」の約定が盛り込まれるようになり、消費者や下請零細企業が契約に基づく敗訴者負担を求められることによって、実質的に敗訴者負担制度が導入されたと同様の状況になることが危惧される。
当事者が選択できる制度であっても、実質的に弱い者をより不利にする弱い者いじめの制度となってしまう恐れが高いのである。
(3)従前の検討会における議論では、労働事件や消費者事件については当事者間に構造的格差があることを主な理由として除外すべきであるとの意見が大勢を占めていた。力の格差を理由に敗訴者負担導入が適当でないとされた当事者間に、「合意」という形で敗訴者負担制度を持ち込む合意制度は、弊害がある場合は導入しないという方向で検討を重ねてきた従前のアクセス検討会の議論にも逆行するものであって問題である。
2 国民の意見を聞いておらず、国民の理解も得ていないこと
(1)司法アクセス検討会では、公平を理由に原則導入・例外とする類型とその理由の議論が進められてきた。そのような検討の方向性には賛同できないものの、これまでの類型別検討により、行政事件訴訟や公権力の行使に当たる訴訟、労働訴訟、人事訴訟、不法行為のうち人身損害に関する請求訴訟、消費者事件訴訟を敗訴者負担を適用しないこととする旨の意見が大勢を占め、8月に募集されたパブリックコメントの意見を踏まえて、更に検討が継続される予定であったと理解している。
ところが、10月10日の検討会において、突然に当事者の選択制や合意制の意見が出され、10月30日の検討会では、従前の類型別検討に代わって「合意論」が中心テーマに変更された。
(2)ハイソネットは、これまで、仙台弁護士会とともに署名活動や反対デモ、街頭ちらし配布の反対運動を行ってきた。日弁連及び反対する市民団体に寄せられた導入反対署名は既に100万筆を超えている。
また、8月に募集されたパブリックコメントに対する意見は5132通を超えており、その大部分が反対意見であったと聞いている。しかるに、パブリックコメントの結果の全容は未だ明らかにされないまま、検討会において、意見募集の際に全く検討の対象とされていなかった合意論が突然持ち出され、これまでの検討経過を根底から覆すような方向に議論が転換された。検討会は、敗訴者負担制度に関する議論は11月21日で終了し、12月25日の検討会で何らかのまとめをする予定と聞き及ぶが、このような議事進行は国民の意見を無視するものであって大きな問題である。
(3)司法制度改革審議会報告書は、「国民の理解にも十分配慮すべき」ことを求めている。それにもかかわらず、国民に説明し、国民の理解を得ないままの「合意論」に議論を転換し、性急にとりまとめようとする検討会の態度は、国民のための司法制度改革を議論すべき本来の役割を忘れたものであって強く非難されなければならない。
司法アクセス検討会に対し、国民の意見を聞いた上で合意制度の問題点について充分検討するよう、強く求める。