「司法制度改革審議会中間報告」の問題点
─変額保険被害裁判の不合理性に苦しめられた私たちの願いはどのように扱われたか─
私たち融資型変額保険被害者の会は、昨年来「司法総行動実行委員会」「日民協司法制度研究集会」「消団連司法改革研究グループ」等に参加して変領保険事件裁判の不合理性を事実によって訴え、司法制度改革審議会への要請書に私たちの意見を組み込んでもらいました。これらの内容は当会会報の9月、10月、11月号でお知らせしたとおりです。
司法制度改革審議会は去る11月20日に改革へ向けての中間報告書を発表し、翌21日の新聞各紙にはその内容や論説が掲載されました。この改革の方向は現在継続中の私たちの裁判にも影響を与える面があるので、報告書の中の関係する部分の問題点については、来年7月の最終答申が作成される前に、より強力な改訂意見を審議会に提示する必要があります。
今後、上記の委員会やグループで鋭意検討が進められることになっていますが、当会がとりあえず指摘して会員各位の認識を深めていただきたいのは以下の点です。
1.改革の基本姿勢
短期間の審議によって、司法制度全般にわたる抜本的改革の方向づけを明らかにした点は認められますが、その方向の中に、市民・消費者を行政や企業の権力から守ろうとする意欲が示されていません。審議会がこの中間報告書をいくら自画自賛しても、審議会のメンバ13人の中に、真に弱者の立場を代弁する委員がわずか3人しか選はれていないことが問題です。消費者代表の主婦連事務局長吉岡初子委員の発言の影響力を高めるために、今後強力なバックアップ活動が必要です。
2.国民が求める裁判官像(その資質と能力)
審議会は国民から寄せられた裁判官への批判を受けとめ、少なくとも裁判官一人ひとりが法律家としてふさわしい多様で豊かな知識、経験と人間性を備えていることが望ましいとの共通認識を得るにいたったと述べています。しかし私たちに言わせれば、政治的にも経済的にも弱い立場の、発言力を持たない個人や少数者の権利及び人権を、法に照らして公正に守ることこそ司法の使命であり、そのために裁判官は市民社会的常識をそなえ、その規範を尊重し、行政の怠慢や企業の横暴を「法と良心」によって裁くことができる人であってほしいのです。市民・消費者は社会を構成する一方の権利者であるという認識を持って、その権利をもっと強く主張しなければ我が身を守ることはできません。
3.証拠開示制度の充実
この問題について改革審議会は、証拠が構造的に偏在している民事事件においては早期に証拠が収集される手段の必要性を述べ、新民訴法における文書提出命令や当事者照会制度の拡充の成果をうたっています。しかし米国のような証拠開示制度に対しては、業界出身の委員の猛反対があったせいか煮え切らない表現にとどまっています。私たちは今まで、銀行や生保の違法の事実を立証するために大きな困難を味わってきました。その上最高裁の決定によって、銀行の稟議書が提出すべき文書の対象から外されているのです。何としても私たちが持っていない重要な証拠を、積極的に開示させるように求めていかなければなりません。
私たちの救済を確実なものにするために最も力
を入れるべきことは、この証拠開示の要求ではないでしょうか。
4.陪審制と専門参審制
私たちは、変領保険事件の判決があまりにも一般常識から外れた理不尽きわまりないものであることから、民事にも陪審制導入をと主張したいところです。しかし改革審は刑事事件においてさえいわゆる陪審制という形に賛成していません。これに代わる国民参加の司法のあり方を検討すると述べていますが、この成りゆきに注目すべきです。
また専門的知見を要する訴訟には専門家の関与が望ましいとしていますが、裁判官の心証過程が不透明になるおそれや、当事者が裁判官の判断資料を知り、意見を述べる権利を不当に侵害されるおそれについては検討すべきとしています。その他、中立的な専門的助言者が関与する専門委員制度を、裁判官の中立公平に疑義が生じない場合に導入するむねの積極的な姿勢を示しています。
なお、この部分で例に上げられているのは医療過誤事件や建築暇疵事件であり、複雑なしくみを持つ複合的金融商品被害の事件に触れていないことが気になります。
5.弁護士費用の敗訴者負担
この問題に対しては理屈ではなく、理不尽な判決に泣いた当事者の声に耳を傾けてほしいものです。裁判官が上記の2.で述べたような私たちの求める資質を持っていない限り、この制度には絶対反対です。しかし改革審はこの方向を決定してしまいました。ただし、この制度が不当に訴えの提起を萎縮させるおそれのある一定種類の訴訟については例外とするとしています。この「一定種類」の中には、立法や行政に対する政策形成訴訟と並んで、社会的・経済的に著しく優位にある企業や団体の横暴を許さないための訴訟を加えるべきです。私たちが経験したような、劣位にある個人の権利を法に照らして公正に守ろうとしない裁判が行なわれる可能性がある限り、この例外範囲の適用を裁判官の裁量にまかせるのではなくあらかじめ厳格に定めておくべきです。そしてこの範囲の訴訟においては、原告が勝訴したときのみ弁護士費用の敗訴者負担を認める「片面的敗訴者負担制度」の導入によって、行政の怠慢や企業の横暴を抑止しなければなりません。