2003年1月28日
司法制度改革推進本部 司法アクセス検討会 御中
座長 高 橋 宏 志 殿
弁護士報酬敗訴者負担反対全国連絡会
代表:清水鳩子
清水 誠
甲斐道太郎
事務局 〒102-0085
東京都千代田区六番町13番地中島ビル1階
四谷の森法律事務所内
事務局長 瀬戸和宏
弁護士報酬敗訴者負担制度導入問題の検討の進め方に関する要請書
11月28日に開催された第11回司法アクセス検討会で、弁護士報酬敗訴者負担制度に関する本格的な検討が始まりました。司法制度改革審議会では訴訟提起を促進する立場からこの制度の導入が検討されました。しかし、この制度は、訴訟抑止効果が強く、そのためにこの制度を導入している諸外国でも、その弊害を少なくするための例外措置を設けていることはご存じのとおりです。
また、裁判制度自体に内在する結果の不透明性は、情報の偏在のもとにおける現代型訴訟では情報の限られる消費者や市民には特に著しく、両当事者に経済力格差がある場合には劣位にある側にとって相対的に負担の重い制度です。更にいわゆる政策形成型訴訟や判例変更を求める訴訟の絶滅が危惧されるなど、この制度は提訴に対する萎縮効果を持つ危険な制度であります。
導入のされ方如何によっては、訴訟提起を促進するという審議会意見書に反する結果となり、実質的に市民の裁判を受ける権利を奪い、ひいては、強者側が提訴を切り札にすることを通じて相対交渉での公平な紛争解決をも阻害することにつながる恐れがあります。当連絡会は、こうした危険な制度の導入について危惧する市民が結集し、市民の裁判を受ける権利を守る立場から制度の導入に反対してきました。
こうした経過から、当連絡会では貴検討会における弁護士報酬敗訴者負担制度の検討について重大な関心を持っています。貴検討会における検討がどのように進められ、どのような結論が出されるかが、自らの権利を自らの手で実現しようとする自立的な市民にとって、致命的な影響を与えかねないからです。当連絡会としては、貴検討会におけるこの制度の検討を、責任をもって進めていただく立場から、検討の進め方に関して以下の3点を要請いたします。
1.検討会の議事録を顕名とすること
貴検討会の議事録は発言者の氏名が分からない形で作成されています。この制度の検討は、上述のように市民全体にとって重大な意味を持つものであり、検討経過の透明性を高める意味からも、委員としての発言に責任を持っていただく意味からも、議事録に発言者の氏名を記載する方式が適切と考えます。
推進本部には11の検討会が設置されていますが、議事録の発言者の氏名が記載されない検討会は、貴検討会のみとなりました。議論の経過を余すところなく明らかにしてこそ、「司法制度の意義に対する国民の理解を深め、司法制度をより確かな国民的基盤に立たしめる」(審議会意見書3ページ)という審議会の問題意識に沿った司法制度改革の実現に資する進め方であると考えます。いやしくも、今後半世紀にわたる国の重要な制度のあり方を検討する場において、匿名性に隠れた無責任な発言を疑わせることがないよう、議事録には発言者の氏名を記載することを強く要請いたします。
2.提訴萎縮効果の有無に関して広範な関係者からヒアリングを行うこと
司法制度改革審議会意見書では、「勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、……訴訟を利用しやすくする見地から」この制度の導入が提言されています。その一方で、この制度には訴訟の活用を「不当に……萎縮させる場合」もあり、その場合には「このような敗訴者負担を適用すべきでない」と記述されています(上記引用はいずれも審議会意見書29ページより)。
貴検討会における検討では、こうした審議会意見書の立場を正しく受け止め、提訴促進効果のある場合と提訴萎縮効果を生ずるケースについて実情をきちんと踏まえた検討を行うために、一般市民−事業者、一般市民−行政、大規模事業者−中小事業者など、当事者間に情報、経済力などの格差があると認められるケースを中心に、広範な関係者からヒアリングを行うべきです。
なお、2001年1月18日付の経営法友会意見書に見られる通り、この制度を「濫訴の歯止めとして有効」であるという理由から制度導入を支持する見解も見られます。これは、この制度の提訴萎縮効果に着目し、提訴自体を減少させる目的でこの制度を導入しようという立場です。審議会意見書は、この制度の提訴促進効果に着目して裁判を利用しやすくする立場からこの制度について検討すべきという立場をとっており、両者は結論においては類似していても立場は全く異なるということを踏まえるべきです。いやしくも、審議会意見書を受けた検討の場である貴検討会において、この両者の立場を混同することのないよう、消費者・市民の立場から強く要請いたします。
3.制度導入に反対する多数の署名を市民の声として受け止めること
当連絡会では、冒頭に述べたようにこの制度の導入に関して反対する立場から、署名運動を行ってきました。その結果集められた13万筆に及ぶ署名は、既に推進本部に提出されています。また、当連絡会とは別に、日本弁護士連合会においても制度導入に反対する署名運動が開始されており、開始後1ヵ月余りの間に5万筆を超える署名が集まっています。この数は、司法が市民にとって身近なものであるとは言えない現状にあって、決して少ない数字とは言えません。むしろ、この制度の導入に関しては相当多数の自立的な市民が反対の立場であるということを意味しています。
貴検討会においては、こうした市民の声を真摯に受け止めて検討を行う責務があると考えます。いやしくも、こうした広範な市民の声を一部の意見として黙殺し、その結果として多くの市民の司法や行政に対する更なる失望と権利の抑圧を招くことのないよう、強く要請いたします。
以上、要請いたします。
なお、この要請書については書面による回答をお願いいたします。回答については、下記の当連絡会事務局までご送付ください。
[事務局]
〒102−0085 東京都千代田区六番町13番地中島ビル1階 四谷の森法律事務所内
TEL 03(3265)2771 FAX 03(3263)1084
以 上