2000年9月1日

 

 日本弁護士連合会

  会長 久 保 井 一 匡  殿

 

                   公害対策・環境保全委員会

                    委員長 藤  原  猛  爾

 

    

   「弁護士費用の敗訴者負担」をめぐる司法制度改革審議会における

    日弁連の今後の対応について(要望)

 

 

             要 望 の 趣 旨

 

弁護士費用の負担のあり方について、日本弁護士連合会としては、敗訴当事者に弁護士費用を負担させることを一般的に導入すべきでない立場を堅持し、その趣旨を明確にした書面を速やかに司法制度改革審議会に提出して、当該制度が導入されないよう適切な取り組みをするよう要望します。

 

             要 望 の 理 由

 

弁護士費用制度について、当委員会は、1997年(平成9年)10月31日付けの日弁連法第197号書面による意見照会に対する回答書および意見要旨で、公害の防止および環境保全の見地から、「裁判の類型を問わず、一律に弁護士費用を訴訟費用に含ませ、これを敗訴者に負担させることには断固反対する」との意見を述べており、現在も同じ意見である。

その後、日弁連民訴費用制度等検討協議会が1999年(平成11年)11月に発表した「民訴費用制度等検討協議会報告書」は、会内のアンケート結果などをふまえ、争点を選定し、対立する考えを適正に整理し、代替的な案をも検討の上、一般的な弁護士費用の敗訴者負担制度を採用しないことで意見の一致をみている。この結論は、弁護士実務を通じて得られた多くの国民の意識を反映しており、当委員会も、基本的に同協議会の意見に賛成するものである。

すなわち、裁判を利用する事件は、勝訴・敗訴の見込みが明確でない場合が多く、弁護士費用は権利実現のための必要費と考えられていること、敗訴者負担はかえって裁判へのアクセスに重大な支障をきたすおそれがあること、濫訴、濫上訴や訴訟引き延ばしの問題は概念が明確でなく一部の事例であって、しかも正当な裁判の利用について敗訴者負担とする合理性を欠くこと、日米などで採用する弁護士費用の各自負担は長い歴史があることなど、敗訴者負担制度の問題性は顕著である。

とりわけ、重要な社会的意義をもつ公害・環境訴訟を含む政策形成訴訟では、権利の存否がはっきりしない事例が多いばかりだけでなく、訴訟提起それ自体に対する抵抗意識があり、弁護士費用敗訴者負担制度を導入することは、裁判回避をさらに促進する可能性が大である。仮に政策形成訴訟を例外的に取り扱うとしても、その例外適用の不明確さなどから、裁判回避に至るおそれが高い。

ところで、司法制度改革審議会は、本年5月30日開催の審議会で、弁護士費用の敗訴者負担制度を基本的に導入することで認識が一致したとされている。しかしながら、かかる結論は、法曹三者のヒアリング以前にまとめられた意見であり、国民の裁判を受ける権利を確保・促進する観点から十分かつ適切な議論を尽くしたものとは到底いえない。

そして、日弁連は、6月13日開催の審議会ヒアリングにおいて、一般的な敗訴者負担制度の問題を指摘した上、片面的敗訴者負担制度の導入を検討すべきとする趣旨の同日付け文書を提出し、意見を述べている。しかし、後者の内容および必要性については前記協議会の結論においても固まったものとはいえず、また、特殊な訴訟形態を前提とする議論は、一般的な訴訟を念頭におく審議会委員に対して、「日弁連が原則として弁護士敗訴者負担制度の導入を承認した」との誤解を招いたおそれがある。そのため、審議会の審議においては、審議委員の前記認識を是正するに至らず、かえって日弁連の立場も敗訴者負担導入の方向に位置づけされる印象が残った。

今後は、日弁連として、敗訴者負担導入による国民の裁判を受ける権利への脅威を明確にし、敗訴者負担制度を導入すべきでないとの立場を鮮明にして、その趣旨の文書を審議会に提出するなど、審議会委員の前記認識を是正するために全力を挙げて取り組むことが必要である。