弁護士費用敗訴者負担に反対する連絡会趣意書

2000(平成12)年12月22日

代表 甲斐道太郎(大阪市大名誉教授・全国クレジット・サラ金問題対策協議会代表) 

    松浦米子(市民グループ「見張り番」) 

    森岡孝二(関西大学教授・株主オンブズマン代表) 

事務局 国府泰道(弁護士) 

     大阪市北区南森町1丁目2番25号南森町iSビル4階 太平洋法律事務所
     TEL06-6365-9182 FAX06-6365-7298
     メール yasukkf@msj.biglobe.ne.jp

第1 設立の経過

 当連絡会は、2000年12月22日に設立され、弁護士、消費生活相談員、市民団体、弁護団、研究会、学識経験者によって構成する団体です。連絡会は、司法審議会の最終報告書から弁護士費用敗訴者負担制度導入をなんとしても阻止するために、以下のような行動を行います。 

   1 諸団体に意見表明を呼びかけること、 

   2 各団体の意見表明を集約すること、 

   3 マスコミなどを通じて意見を表明し、世論を形成していくこと

第2  弁護士費用敗訴者負担についての考え方

1 なぜ、弁護士費用の敗訴者負担に反対するのか。

(1)判例形成型、政策形成型の訴訟への萎縮効果  

  消費者、公害、医療、過労死など、判例形成型もしくは政策形成型訴訟と称される事件については、法的不備や司法の限界のある中で被害者の救済のために被害者自身や支援グループ、弁護士が手弁当で挑戦し、幾度もの敗訴や犠牲をのりこえて勝訴にこぎつけ、新しい法理論の形成や被害防止の諸立法の制定にまで及び、戦後司法の中で重要な役割を果たしてきた。また敗訴した場合でも一定の社会的効果により事態が改善されることも見られる。これらの裁判は敗訴者負担ではとうてい不可能であることは明らかであり、またこのような事例全部を敗訴者負担の例外として扱うことは不可能である。例えば、消費者事件といっても、開発やサラ金、証券取引、クレジット、製造物責任などいろいろあり、その外延は極めて大きい。また株主代表訴訟を例外とすることも困難であろう。原則敗訴者負担として例外を定めていくという手法では、極めて広範囲にわたって例外を定めることが必要となろうが、そのようなことは不可能である。 

(2)一般事件でも萎縮効果 

  民事裁判の多くは提訴ないし応訴段階においては、証拠が十分収集できずに訴訟の見通しがたたないことが多く、地裁と高裁で逆転することもある。.また判決では一方が勝訴他方が敗訴となるが、中身ではどちらにも相当の理由がある場合が多く、敗訴者が係争したことが無価値とはとうてい言えない。従来は敗訴していても、その後の社会情勢の変化や証拠の確保、関係者の努力により新しい判例法理の形成により結論がかわってゆくこともある。このような状況下で敗訴者負担が導入されれば、相手方の弁護士報酬の負担をできかねる市民層は司法の判断をあおぐことに極めて強い躊躇を感じることになる。また、状況の変化による判例の形成が妨げられることにもなりかねない。 

(3)被告事件では、泣き寝入り示談が増加 

  また、例えばクレジット請求のような事件では、訴訟前の示談交渉において、消費者側が販売店の債務不履行などの抗弁事由を主張してねばり強く交渉しようとするときでも、信販会社から不利な示談条件を示されそれに応じなければ訴訟提起すると言われれば、よほど勝訴の確信できるような事件でなければ、泣く泣く不利な内容の示談に応じることとなるであろう。離婚事件などでも、同様の事態が考えられる。 

(4)経済力のある者だけが裁判を利用しうるものになること 

  結局のところ、弁護士費用敗訴者負担は、相手方の弁護士費用を負担するリスクの少ない者やたとえ負担してもよいという財力の持ち主だけが有利になり、通常の市民は躊躇やあきらめになる。いわば強い者が司法をどう喝の手段に使って自己の意思を貫徹し市民を司法から遠ざけ排除する制度であり結果的には強者の事件も含めて多くの事案は司法をすり抜け法曹の関与しない分野に追いやられる。これらのことは市民のための司法という司法改革の共通の目的、スローガンに正面より反するものである。 

2 敗訴者負担論への反論 

  敗訴者負担論の根拠は、裁判で勝って正義と認められたのに弁護士費用を負担することは公平感にあわず正当な権利の目減りであり、完全な権利回復にはなっていないという素朴な正義感によるものである。しかし敗訴者負担のもたらす悪影響を考慮するならば、弁護士費用の各自負担を原則としつつ、その原則にあわない事件、例えば明らかな不当提訴や不当応訴、不法行為の被害者事件、国・自治体相手の事件、少額事件、社会的・経済的にハンディーがある当事者等については、個別的に弁護士費用敗訴者負担の判例法理の形成や懲罰的賠償制度や公的資金による補填等の制度を導入して対応すべきである。 

第3  当連絡会からのお願い 

  裁判を利用する国民の声として、各弁護団・原告団、研究会、市民団体、労働団体等が自分たちの抱えている具体的な事例を通して、敗訴者負担の不当性を訴え、その意見を表明して下さい。

  意見書は、司法制度改革審議会へ送付してください(その際、委員への配布を求めておいたほうがよいでしょう)。意見書の写しを下記宛にも送付してください。連絡会では、皆さんの意見をホームページに掲載します。 

         〒105-0001 東京都港区虎ノ門1−18−1 虎ノ門10森ビル 司法制度改革審議会事務局 

            ※意見送付のメールは、こちらから送付できます。

 送付先: 日弁連司法改革実現本部(FAX03−3580−9814)

       弁護士費用敗訴者負担に反対する全国連絡会(国府宛FAX06-6365-7293)


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