三菱石油株主代表訴訟と敗訴者負担制度
都民中央法律事務所 松井繁明 瀬野俊之
1 1987年から95年までの間、三菱石油(株)(その後、日本石油と合併)がい
かがわしい「石油商」泉井純一に60億円以上の資金を提供していた事件が発覚。泉井は逮捕されたが(その後有罪確定)、三菱石油では非役員の担当者だけが懲戒解雇されたにとどまり、役員らはいっさい責任を取ることがなかった。
このことに憤った株主のYさんが、1999年株主代表訴訟を提起し、私たちがその代理人となった。
関連訴訟(刑事・民事)の記録などから金の流れは明白。いくら何でも、60億円もの金の流出に取締役のだれも責任を取らなくてもよいなどということは有りえない、と勝訴を確信していたのだが、2001年7月の一審判決は完敗。司法の反動化≠ネどというものではない。司法の文字通りの崩壊≠ナある。マスコミも、この判決をつよく批判した。
2 ともかく控訴して、今年4月、ついに逆転勝訴=B−−といえば格好はよい が、じつは、60億円のうち認容額はわずか1億8000万円にすぎなかった。 それでもまあ、完敗よりは少しはよかったか、という程度のものである。
しかしここで言いたいのはそのことではない。もし訴訟費用敗訴者負担制度が導入されていれば、この訴訟自体ありえなかった、ということである。
3 原告(控訴人)の株主Yさんは、自分も会社の経営者であり、三菱石油の経営陣の無責任さにはつよい憤りをもっていたものの、はじめから株主代表訴訟を考えていたわけではない。同じく三菱石油の状況につよい怒りをおぼえてはいたが株主ではない人間がYさんを知り、私たちの事務所を紹介してきた、という巡り合わせがあったのである。
一審ではもちろん、訴訟費用は全額Yさんの負担。二審の逆転勝訴≠ナも、 Yさんが9/10を負担することになった。もしこれが、相手の弁護士費用まで 負担することになったらどうなるか。
株主側の弁護士たちは57億2000万円分の勝訴≠ネのである。その、たった3%でも弁護士費用を請求すれば、Yさんは1億7000万円以上を支払わなければならない。勝訴の1億8000万円はどうなるのか、といえば、株主代表訴訟の性格上、会社側に入る。
Yさんがはじめて事務所を訪れたとき、私たちがそんな説明をすれば、いかに憤っているYさんといえども、とうてい提訴には踏みきらなかった。これだけは確実である。