『ご立派』


「俺らも4年かかったけど卒業だ な」

「楽勝楽勝国試も受かってるし」

「やたら先生俺の肩たたくんだけ ど、大丈夫だっつーの」

「あいつら俺らの実力全然わかっ てねーからなー」

「やっべ、あいつ村瀬じゃ ねー?」

「ほんとだ、あの腹はあいつしか いねーよ」

「こっち来たよ」

〜村瀬登場〜

「村瀬だけど」

「こんちはー」

「おめーらももう卒業だな」

「そうなんすよ」

「お世話になりました」

「そういやお前、あれ聞きたいっ つってたじゃん」

「大腿近位半月の取り付け位置」

「あー、そうだ。村瀬さんあれど こでしたっけ?」

〜無言で銭要求〜

「お前そんなんで国試大丈夫なの か?」

「教務と一緒のこと言わないでく ださいよ」

「けどお前教務にはお世話になっ たんだろ」

「えー、まー」

「最近どうなの?主任はどうな の?」

「あ〜、ダメダメ」

「あいつ、鼻にマーキングして たよ」

「あれなに突起物だよ」

「あれでいったい何つくるんだ よ」

「赤いマーキングペンなんか ねーよ」

「いつまでつけてんだか」

「あんなの教わってねーよ」

「俺ら3年間で教わったのなんか あれだけだよ」

「骨盤の前傾、矢状面から前傾」

「そういやお前、鍋やるっつって やってなかったな」

「鍋っていやー主任だよ」

「あの人あれだよ、俺ら卒研で鍋 やった時も、俺の鍋の方がうめーうめー言うんだよ」

「何人もの女を鍋のだしでとった らしいよ」

「このマエ食ったよな。ビックリ しちゃったよ」

「なんだよ、お前そんなにうま かったのか」

「ダシが秘訣ダシが秘訣うるせー んだ」

「でダシなんだったの?」

「ほんだし」

「まーうまかったけど、誰が作っ ても一緒だよな」

「結局俺らも一本だしぬかれ ちゃったな」

「そうか、さすが主任だな。あい つはどうだ?俺の同期の利田はどうだ?」

「あ〜ダメダメ」

「あいつ、大腿義足教えてもらっ たんすけど」

「あいつ右足採型して、左足のギ ブスソケット作りましたから」

「どういうこと?」

「つまり〜」

「内側が外側、前壁がこう壁に なっちゃったんすよ」

「モデルさんもどっち進んでい いかわかんないすよ」

「進行方向あべこべっすよ」

「義肢学にも異常歩行のところに も載せて欲しいよ。原因1前壁がこう壁にあるっつってねー」

「ドッチ進むか教えて欲しいか教 えて欲しいよ」

「進むっちゃーあれだよ。娘の進 路にうるさいらしいよ」

「最近お習字に通わせたらしくて ね。墨を鼻頭につけて帰ってくるらしいよ」

「それじゃーお前、主任と一緒だ よ」

「お習字のおかげで、こずかい削 られたらしいよ、5,000円」

「お習字もいいけど、人生の進行 方向だけまちがわねーようにしてもらわねーとな」

「あいつマンション買ったらしい じゃねーか」

「そうなんすよ」

「けど、あいつ最近調子のってん すよ」

「けど、調子乗りすぎてカレー職 人に芸やれ芸やれっつって、職人の機嫌損ねたらしいっすよ」

 

「そうか全然ダメだなー。あいつ は大丈夫だろ。ミウケンはどうだ?」

「あ〜、ダメダメ」

「あいつ、典型的な日本人で餅 ばっか食ってるくせに、茶髪にしちゃて、小粋にパンタロンなんか履いて、アメリカンのってんすよ」

「さながら、ヤンキー先生母校に 帰るだな」

「そ〜いや〜なんでバイク手に入 れたンだよ」

「いや、なんかねー、いかつい黒 のスッテップワゴンのってたんすけど、10tトラックについとつされたらしくて、最近まで頚椎捻挫してカラー巻いてました」

「巻いてるっつったら、最近まで ここに女の腕巻いてたらしいっすよ」

「かわいいから写メール見ろ、写 メール見ろうるせーんだ」

「ホントくでーんだ」

「あれらしいよ。嫁と別れて、付 き合うとも言ってたらしいよ」

「でどうなったんだ」

「あ〜、ダメダメ」

「結局振られちゃったらしい」

「なんで?」

「餅ばっか食わしてたらしいよ」

「けど、あいつあれだろ審判はっ てんだろ、車椅子バスケの。」

「まーそうですけど、結局自分の 人生まではジャッジできなかったらしいですよ」

「僕なら一発レッドっすよ」

「そうか。じゃーあいつは大丈夫 だろ。出井は大丈夫だろ」

「あ〜ダメダメ」

「あいつ適合までに何本ソケット つくるんだ」

「よくもまー毎晩ゴシゴシ、モ デル擦れるもんですよ。まー当然あっちのほうも毎晩ゴシゴシやってんすけどね」

「でも出井もあれだろ、彼女の一 つでもできたんだろ」

「あ〜、ダメダメ」

「でも俺みたんすよ。あの人上司 帰ってから教務室でコンパやってましたよ」

「誰とやってたんだ」

「何学科の教務かは分かんないん すけど、おんなじフレッシュマンでねー。」

「聞こえたらボタン押してくださ い。ピー」

「ん〜聞こえた聞こえた。ポ チッ」

「あーん、もう裕司ッたら」

「じゃあ今度はもっと高音よ」

「よーし」

「す・き」

「ん〜、もう一回」

「す・き」

「おい、何やってんだ。コラッ、 ぶん殴ってやる」

「ッてことがありましてね」

「だめだな。おいおい日聴の教務 やばいんじゃないか。あの人は大丈夫だろ。青山先生は」

「あ〜、ご立派ご立派」

「ん・、大丈夫なの?」

「あー、ご立派ご立派」

「じゃー日聴も大丈夫だな。けど お前らあれだろ、4年も学校いて、さんざん教務にお世話になったんだろ」

「そりゃ、そうっすよ」

「なんだかんだ言って、あの人た ちがいなかったら、僕らここにいませんよ」

「そうだよ、名古屋に足向けて寝 れねーよ」

「そうだな、お前ら教務の教えて くれたこと忘れんじゃねーぞ。じゃー俺帰るから」

「俺らも中川先生みたいな人にな らねーとな」

「そうだな」

「とりあえず、鼻ニキビ作る事か ら始めるか」

「じゃ秋田こっちだから、愛媛 こっちだから」

「じゃー」