映画鑑賞ノート

毎週金曜日は映画鑑賞の日。映画初心者の私が毎週見た映画をノートにしていきます。

2004年12月

 

24日

クレイマー・クレイマー

1979年、作品賞・主演男優賞・助演女優賞・監督賞・受賞、

ロバート・ベントン監督、

原題:Kramer vs. Kramer


仕事に一途なため妻に逃げられた父親(ダスティン・ホフマン)が、息子との二人暮しを
通じて、家庭の重要性を再認識し、親子が心を通い合わせてゆく心温まるドラマです。

原題のタイトルでは、両親の離婚訴訟である、「クレイマー対クレイマー事件」
というニュアンスが強く出るのに対し、和題の「クレイマー・クレイマー」は、より意味深です。
むろん、意味がぼやけているという批判も成立します。
もっとも、原題にも両親の戦いだけではなく、親子の戦いの意味
(アイスクリームのシーンなどですね)が含まれているのかもしれません。

重要なのは、両親のいずれも悪者に描かれていない点です。
観客は、仕事と家庭の両立が困難であることを、家庭の問題としてではなく、
社会のシステムの問題として認識します。

この作品は、その後の社会が家庭内の分業という選択肢以外の選択を
可能にする制度を整備してきたことに大きく寄与したと思われます。
有給休暇や、産休・育休も、こうした映画のおかげで整備されていったのでしょう。
映画の絶大な影響力を感じました。

ダスティン・ホフマンは「真夜中のカーボーイ」の時のとは
まったく違う表情をしています。付属していたメイキングでは、
当時彼自身が離婚訴訟を抱えていて、その体験が作品に反映していることが
明らかにされています。彼は、共演者にいい演技をしてもらうために
さまざまな小技(演技指導?)を使っているようで、彼のスゴさを認識させられます。
(脚本を彼の望むように自由に変えさせた監督もすばらしい。)
 

 

23日

ドライビング・Miss・デイジー

1989年、作品賞、主演女優賞受賞、ブルース・ベレスフォード監督、

原題:Driving Miss Daisy

南部ジョージア州の裕福なユダヤ人女性(ジェシカ・タンディ)と
黒人運転手(モーガン・フリーマン)の間に長い年月をかけて生まれる友情と愛情を描きます。


平板に述べればアメリカ社会における人種差別を乗り越えていくお話ですが、
家庭内の微妙な力学や、田舎町に残る古い慣習、そして高齢化、など
普遍的なテーマも織り込んであるところが丁寧です。

題名のdriveですが、「Miss・デイジーが運転する」とも
解釈できますが、映画で彼女が運転するのは冒頭のごくわずかな部分であり、
「Miss・デイジーを車で送っていく」という意味のほうが正しそうです。

映画の発表された80年代末の一般アメリカ人からみてこの映画の舞台である50年代、
60年代から80年代までにアメリカの人種問題がどれほど改善したと
考えられていたのか興味があります。(キング牧師の演説を織り込むなどから、
映画の作者は改善していないというスタンスであることは間違いないでしょう。)
差別を扱う場合に、知識者層の沈黙や無関心を取り上げるのは、「紳士協定」
から続く正統的手法といえます。

25年間を取り上げるので、役者のメイクやしぐさも年齢の変化を感じさせる
ものとなっています。(ただし、映画の終わりのほうで老人ホームのMissデイジーを
見舞いに行ったホークの手がつるつるで若々しかったのが残念。メイクの限界でしょうか・・・。)

キャデラックはともかく、ハドソン、乗ってみたいです・・・。
(ハドソンは吸収合併され、紆余曲折を経て現在のクライスラーの一部になっているようです。)
 

 

4日

スティング

1973年、作品賞、監督賞、脚本賞、美術賞、衣装デザイン賞、受賞
ジョージ・ロイ・ヒル監督

原題:The Sting


連続して長編モノだったので、息抜きに軽いものにしてみました。

1930年代のシカゴを舞台に詐欺師のチンピラたちが知恵を絞って大芝居を打ち
マフィアの大物をカモにします。

9月に行ったシカゴの昔が描かれていて、聞き覚えのある通りの名前もちらほら。
ちゃんと高架を走る地下鉄も走っていました。

マフィアとチンピラといったアンダーグラウンドの話は、以前の**カーボーイのようで、つまらないかなぁと思っていたのですが、全く違いました。各章(何章かに分かれています)のタイトルもウィットに富んでいます。

ポール・ニューマン、相変わらずかっこいいです。
とにかく楽しかったです。(最後は「やられたぁ」という感じですね。詳細は略で。)

ところで「エンターテイナー」ってこのテーマソングだったのですね。

テンポの軽さと画面の中で展開されている事件の巧妙さが絶妙な組み合わせでした。

なんとなく、バカにしたような感じがなんともいえません。

自動車のCM(Lapin)で流れる「パイナップル・ラグ」も出てきました。

うーん。よかった。
 

 

 

2004年11月

 

21日

マイ・フェア・レディ

1964年作品賞、主演男優賞、他8部門受賞

ジョージ・キューカー監督

原題:MY FAIR LADY


いわずと知れたオードリー・ヘップバーン主演のミュージカル。
(オードリー・ヘップバーンが歌っていないのは残念。)
軽いタッチで気軽に見ることが出来ました。

とはいえ、扱っているテーマは階層、ジェンダー、言語、社会実験、社会規範
など意外とへヴィーなものがあります。これをさらっと笑い飛ばしてしまうところに
ミュージカルのすごさを感じました。

特に言語が社会生活上無意識に格差を生んでいること、格差の中には必ず「正しい言語」と
「間違った言語」が存在するため「矯正」しなければならないこと、などは、
笑えるようで意外と笑えないことなのかもしれません。
井上ひさしの「國語元年」や「吉利吉利人」を思い出しました。
金田一秀穂氏のように言葉の多様性が「みだれ」ではなく、「生きている証拠」として
考えられるようになるといいのですが・・・。

もっとも、現在ではイギリスの英語のみが「正しい英語」ではなくなっているのも事実です。
およそ僕の読む論文の9割5分がアメリカの雑誌に投稿されたもので、スペルなども
英語ではなく米語で統一されています。時々イギリス英語を読むと
読みづらくて仕方ありません。(←これもいかがなものかと・・・。)
そう考えると、この当時は、ハリウッドにおいても、まだ「英語」のスタンダードが
イギリスだったのかもしれません。
各国で話されている英語が今後どんどん訛りが強くなって
いずれは通用しなくなるだろうという予想もあります(出典を忘れました)。

このように、案外シビアな問題も音楽に乗せて楽しく歌ってしまうミュージカル。
いいですね

 

8日

風とともに去りぬ

1939年、作品賞、主演女優賞ほか、アカデミー賞10部門受賞

ヴィクター・フレミング監督

原題:GONE WITH THE WIND

今週からは大作シリーズです。
 

この年までみたことがないことをずっと負い目に感じていたので、
ようやく見れたという感じです。(いかに映画に疎いがわかります。)
 

タイトルを目にするたびに「何が」風とともに去っていったのかが
疑問だったのですが、「文明(civilization)」だったのですね。
18世紀当時の「文明=ヨーロッパ」の思考からすれば、南部の田舎町であっても
ヨーロッパ的生活を(奴隷制という無理な制度のうえに)何とか
成り立たせようとしていたことがよく分かります。
しかし、この映画のスタンスは南部田舎町の「文明」が
似非で空虚なものであると最初から断定しています。
「文明」の替わりの処方箋も明確で、「地に足をついた生活」=タラの賛美です。
この点はアメリカにおけるナショナリズムがパトリア(郷土)を愛するパトリオティズム
(愛国心)を基盤としていることと無関係ではないと思われます。
バロック的で退廃的な「文明」よりは土にまみれる「勤勉」を選ぶあたりは
プロテスタンティズムを強く意識していますね。
このあたりに現在の米欧対立の根源がある、と言うのは
あながち見当違いではないかもしれません。


一方、スカーレットや母親の生き方に女性解放の思想があることは
明白ですが、同時に奴隷制に対する懐古趣味的なテイストがあることも
否めません。進歩的なのか保守的なのか・・・。
 

映画の構造はきわめてミュージカル的であると感じました。
Overture―第1幕―intermission & entr'acte―第2幕―exit music
という構成は4時間の大作を観客に見せるためには不可欠かもしれませんが、
舞台の手法とは無関係ではなさそうです。
また第1幕も第2幕もスカーレットの迫力のモノローグによる幕引きをしていますが
観客の気分は大きく盛り上がります。
1幕、2幕ともにエンディングは純粋に感動しました。
 

やはり名作は名作でした。
 

 

 

2004年10月

 

8日

タクシードライバー

(1976年、カンヌ映画祭パルムドール受賞、

マーティン・スコセッシ監督)

原題:Taxi Driver)

アカデミー賞受賞作品の棚にあったので借りたのですが、ノミネートのみでした…。
でも、カンヌでパルムドールならいいかと。

ヴェトナム帰りの主人公トラヴィス(ロバード・デ・ニーロ)は、平凡で、しかし救いのない毎日に憤りを募らせていきます。

剃刀の刃のように繊細で壊れやすく傷つけやすい主人公の心がとても丁寧に描かれていました。


テンポとしては、序盤がトラヴィスの心象描写中心となるため、やや見ていてしんどかったのですが、終わってみるとすべてが必要だったのだと納得です。

ふとこんなことを考えました。

・個人の憤りは、必ずどこかに向けなければならないし、向けざるを得ない。
・個人の憤りは、どこに向けても個人的には発散可能である。
・社会的には憤りをぶつけた方向性によって意味するものが大きく異なる。

もしこれが本当だとすると刑事事件や国際政治に意味するものって大きいですね。
いずれ「憤り」も一種の脳内物質で説明されるようになるのかもしれません。

それにしても、売春婦役の少女がジョディ・フォスターだったとは・・・。

 

2日

真夜中のカーボーイ(1969年、作品賞、監督賞、脚本賞、

ジョン・シュレンシンジャー監督)

原題:Midnight Cowboy

田舎者が粋がってニューヨークに出てきて、楽な生活を夢見ているのですがなかなか思い通りにならないという話です。

・・・が、はっきり言って、まったく理解できませんでした・・・。

「早く分をわきまえてまじめに働け!」という感じです。

自分も田舎から東京に出てきたときにあんなふうに思われていたのかと思うと、ちょっとぞっとしますが・・・。

この映画の何がいいのだか・・・。

郷愁を誘う風景、心象描写の斬新さか、ドラッグやサイケデリックな趣向か・・・アカデミー賞って全くわかりません。

音楽はよく耳にする曲です。これだけはよかったです。

というわけで、今回は明らかに失敗でした・・・。

 

 

2004年9月

 

16日

紳士協定(1947年、作品賞・監督賞・助演女優賞受賞、

エリア・カザン監督)

原題:Gentleman's Agreement

今月末の論文の締め切りで追われています。
なのに、なぜか映画の日を復活です。(現実逃避以外の何ものでもありません・・・。)

今週は『紳士協定』(1947年、作品賞・監督賞・助演女優賞受賞、エリア・カザン監督、原題:Gentleman's Agreement)ユダヤ人差別を題材として記事を書こうとした主人公の記者(グレゴリー・ペック)は特別の「アングル」を求め、自らユダヤ人と偽って生活することを試みます。


その過程で彼が直面するさまざまな困難は、じつは日常のしかも「良識派」
とされる人々が生み出しているものであることをわれわれに突きつけます。
無害な小市民であることは有害であるのか。なかなか難しい問題です。
(みんなが活動家になっても社会は動かないし…。)

主人公の友人である、一人の「本当の」ユダヤ人は、反ユダヤ主義を
「君たち(クリスチャン)の問題だ」とばっさり切り捨てるところが
印象的でした。

差別の深層にあるこうした問題があまり表面化していなかった時代ですので仕方がないのですが、問題を浮き彫りにするために少々くどいところがあったのが少し残念です。

彼のお母さんは「いずれアメリカもソ連も原爆もなくなってみんな一つの世界になる」
と当時としてはきわめて楽観的な予測していますが、ソ連がなくなった今からみると、感慨深いです。後の二つはどうなるのでしょうか。
50年後にもう一度見てみたい映画です

 

 

2004年8月

 

17日

ミス・サイゴン(ミュージカル、キャメロン・マッキントッシュ製作)

原題:Miss Saigon

今週は、有楽町でミス・サイゴンをみてきました。製作C・マッキントッシュ、音楽CM・シェーンバーグは「レ・ミゼラブル」と同じです。

音楽がきれいでとてもよかった。まるで音の洪水。

エンジニア:市村正親、キム:知念里奈というのも最高でした。

(↑私の表現力が乏しくてこの程度の描写しか出来ません。すみません・・・。)

非西洋人からするとストーリーが偏見の香りたっぷりなのが気になりますが・・・。

 

?日

ハリーポッターとアズカバンの囚人

(2004年、アルフォンソ・キュラソン監督)

原題:Harry Potter and the Prisoner of Azkaban

みてきてしまいました。これは劇場で迫力満点で見たほうがいいと思って・・・。

子供向けとは思えないくらいのホラーな描写が多く、みているだけで体力を使いました。

やはりゲーリー・オールドマンがいいですね。

 

7日

80日間世界一周(1956年作品賞)

原題:Around the World in Eighty Day

ジュール・ヴェルヌの原作を元にした冒険ファンタジー(?)です。
題名通り80日で世界を一周をめざし、全財産をつぎ込んで
旅に出た英国紳士と召使いのコメディーかもしれません。

オチが何とも言えないドタバタです。
所々にウィット(毒?)がちりばめられていて笑えます。
世界版『東海道中膝栗毛』といったところでしょうか。

それにしても現地ロケでインドや日本を撮ったところがすごいです。
有名人が端役で出ていたことも最後のテロップでわかります。

どこまでがヴェルヌの原作を反映したものなのか
興味は尽きません。とにかく面白かったです

 

 

1日

(ワルシャワ蜂起の日)

戦場のピアニスト(2002年、カンヌ・パルムドール受賞)

原題:The Pianist

ロマン・ポランスキー監督。

第二次大戦中のナチス占領下にあって生き延びたユダヤ人ピアニスト(ウワディスワフ・シュピルマン)の実話です。

「シンドラーのリスト」もそうですが、この手の映画でナチスの極悪非道な様子を描くシーンは、どうしても沈黙せざるを得ません。とはいえ、映画がその沈黙をわれわれに強いているように感じられるのも、そして、そのなかに若干安易なレベルでの政治性があるように感じられるのも、正直な感想です。
ソ連軍によるワルシャワ解放間近になってドイツ将校が見せたやさしさをもって、ナチスの多様性や「救い」を表現できたと思っていたとしたら、ちょっと安易だと思います。

それにしても、今回はコメントが辛めですね。

政治心理学を勉強していると、実験室の中では、集団間の対立がいとも簡単に起き、殺し合いのレベルに容易に発展してしまうことを思い知らされます。
実社会ではそれがかなり防がれている。その点では奇跡的といえるかもしれません。
どのように実社会では集団間の対立がコントロールされているか。
そして、なぜ時々失敗するのか。

こういったところを研究していかないといけないなぁと思っています。
 

 

 

2004年7月

 

25日

シカゴ(2003年、作品賞 他6部門受賞)

原題:Chicago

ロブ・マーシャル監督。

1920年代の実話をもとに、1970年代にミュージカル化されたのですが、
90年代になってリバイバルし、映画化されたものです。

とにかく音楽とダンスがいい。
ミュージカルも、映画化されるとさびしくなるものはありますが、
これは十分圧倒してくれました。

この夏の学会はシカゴ@アメリカなので、タイムリーです。
ジャズなどもあらかじめ勉強してから行きたいと思います。
 

 

23日

アニー・ホール(1977年、作品賞)

原題:Annie Hall

ウッディー・アレン監督。

アカデミック(?)な会話を次々と観客にぶつけ、その力量を試しているような
作品でした。メディア論の教授にマクルーハンがだめだしをするというような
ナンセンスというか、挑発的というか、なんとも不思議なシーンがいくつか・・・。
結局は毒入りの(?)楽しいラブストーリーです。

彼のトークを本当に理解するためには相当程度の基礎知識が必要だと思われますが、深刻に考えなくてもよく、適当に流すことも可能な作品です。

ただし、性を強調する精神分析は、フロイトの影響を受けすぎで、
当時はすでに古くなっていたと思われます・・・。
 

 

16日

波止場(1954年、作品賞他8部門受賞)

音楽がバーンスタインとは、なんとも豪華な。

ニューヨークで荷揚げをする人足を束ねる元締め=マフィアに敢然と立ち向かう青年(マーロン・ブラント)を描いたものです。
『法の支配』について考えさせられました。(マフィアのボスは法の網をかいくぐって生活しているのであり、法の網を破ってないところがみそですね。)

 

9日

失われた週末

 売れない作家が、アルコール依存症に直面する、ある意味ホラーな作品です。まっさらな白紙の挟んであるタイプライターを前にして、プレッシャーのあまり、一字もかけない…。 あれ、どこかで見たような光景、と思いました。

 しかし、この作品を、ビール片手に見ようとしたことは間違いでした。あっという間に酔いは 吹っ飛んでしまいました・・・。ネタがネタですからね。

それにしても、手が込んでいます。最後は「やられた・・・」と言う感じでした。

 

2日

(おやすみ)

 池袋でミュージカル『レ・ミゼラブル』のコンサートを聴きに行きました。本物の上演ではないので、その分の物足りなさはありましたが、基本的にはよかったです。

 

2004年6月

25日

フレンチ・コネクション

今週の作品は、先週から気になっていた『フレンチ・コネクション』。
麻薬捜査の刑事ものです。
ノンフィクションで、リアリティを追求したものだとか。
うわさに聞く昔のニューヨーク(怖い、汚い・・・)・・・って感じでした。
きっとその後の刑事ドラマに影響を及ぼしたであろうシーンがいくつか・・・。

 

18日

レベッカ

ヒッチコックのサスペンスです。

単なる恐怖をだけではなく、驚きと感心を感じました。

最後のオチがすごい・・・。

 

11日

地上より永遠に

ジンネマンの軍隊映画。フランク・シネトラが出ていたりする。

真珠湾攻撃の直前のハワイの米軍における、退廃的で投げやりな様子がリアルでした。

意思決定の論文で真珠湾攻撃の分析をしているので、タイミングとしてもちょうどよかったです。

 

 

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最終更新日:2006/01/12