書評

「THE ROLE OF MONETARY POLICY(Milton Friedman, 1968)」

フリードマンは論文の中で、まず大恐慌後以降の金融政策の衰退と混乱の歴史を述べ、それから金融政策の実行不可能、実行可能な目的の明確化をして金融政策のあり方を述べ、そして最後に具体的な金融政策の例について述べている。

実行不可能な目的としては利子率一定、失業率の安定化の2つがあげられている。利子率一定が不可能な理由として、彼は、貨幣供給量の増大による初期の利子率減少の影響は長期的には支出を通じた流動性選好の増大でおこる相対価格の上昇により実質貨幣供給量が減少すること、フィッシャーに指摘された価格期待効果が何十年もの長期間で調整される間に逆に利子率を上昇させてしまうことにより相殺され長期的には変化してしまうこと等をあげている。

また、失業率の安定化が不可能な理由として、彼は自然失業率と市場の失業率の乖離は労働者の予想外の物価変動が原因であり、物価上昇率と失業率のトレードオフは短期的には存在するが長期的にはケインズ政策、物価水準に関わらず失業率は自然失業率に収束していくからと説明している。これは自然失業率仮説として知られている。また、名目賃金上昇率と失業率の負の相関関係を示したフィリップス曲線の期待物価上昇率の変化によるシフトが現実に適合的であるとも主張している。

金融政策の実行可能な目的として、彼は経済かく乱からの貨幣の保護、経済の安定、別の要因より起こる経済体系内の主要なかく乱要因の相殺という3つを挙げている。 金融政策で必要な指針として、第一に操作可能なもの、具体的には為替レート、物価指数、名目貨幣供給量の3つ、を操作するべき、第二に政策の影響が明確に現れるのにはいくらかの時間が必要だから政策の急激な変化を避けるべき、と彼は述べている。最後に具体的な手段として彼は貨幣供給量増加率の固定化を例にあげている。以上がこの論文の要旨である。

 この論文に対しての批判として、期待物価上昇率の具体的な期待形成過程の特定化や貨幣供給量の増加率の固定する基準の定め方の問題、また実際にこの非裁量的な政策が利用可能で効果があるのか、等があげられる。しかしながらこの論文は従来の拡張的財政政策による利子率上昇を抑えるために利用された当時の金融政策のあり方を批判し、金融政策の新たな指針について述べられ、その後の政権の経済政策にも影響を与えた点を考慮すれば歴史的に重要な論文であることは間違いない。

 

 

 

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